China UnionPay Co., Ltd. (一般に中国銀聯 (CUP) または銀聯と呼ばれる) は、中国最大の決済ネットワークであり、グローバルにおいても中核的存在です。上海に拠点を置く国営企業の銀聯は、カードベースの決済ソリューションを中心に、幅広い金融サービスを提供しています。プリペイドカード、商用カード、テーマカード、プレミアムカード、デビットカード、クレジットカードなど、同社ではさまざまな種類のカードが取り揃えられています。また、オンライン決済やモバイル決済、モバイル POS (mPOS)、IC カード、およびクロスボーダー B2B プラットフォームといった決済ソリューションも充実しています。他にも、クロスボーダー送金、加盟店サービス、緊急サポートソリューション、グローバルアシスタンス、税金還付、VIP ラウンジ、グローバルトラベルサービス、中国ビザ申請用エクスプレスサービスといった臨機応変なサービスもあります。
今や銀聯の決済取引総額は、Visa や Mastercard などの主要競合他社を上回っており、中国だけにとどまらず、東アジア、韓国、ヨーロッパなどの地域にも事業を拡大しています。加盟銀行と協力して、クロスボーダー決済をサポートするデビットカードおよびクレジットカードを発行しているため、中国の顧客や海外の貿易パートナーを持つ企業にとって銀聯は、望ましい選択肢となっています。
アメリカの企業にも銀聯は受け入れられつつあります。ネットワークは、決済代行業者や加盟店アクワイアラーとの提携を広げています。その拡大の中でも特に大きかった進展は、ディスカバーとの提携です。これにより、銀聯カード保有者は、ディスカバーを受け付けるアメリカと中国の企業で商品やサービスを購入できるようになりました。また、銀聯の個人識別番号 (PIN) 付きデビットカードも、ディスカバーの Pulse ネットワークを通じてアメリカで受け付けられるようになっています。
銀聯の決済処理の導入を検討している企業は、銀聯ネットワーク、セキュリティプロトコル、取引処理について理解しておかなければなりません。以下では、銀聯の利用地域や利用者、企業が銀聯を決済手段として導入する方法について探っていきます。
この記事の内容
- 銀聯の利用地域
- 銀聯の利用者
- 銀聯の仕組み
- 銀聯を受け付けるメリット
- 銀聯のセキュリティ対策
- 銀聯を決済手段として受け付ける
- 銀聯の代替えになる決済手段
銀聯の利用地域
銀聯は中国およびアジアで広く利用されており、さらにグローバル展開も進んでいます。中国では、政府の支援と大規模な消費者基盤によってその成長が支えられています。その他の国でも、銀行やペイメントプロバイダーとの提携で普及率を伸ばしています。今や銀聯は、アメリカ、韓国、ヨーロッパ、および多くの発展途上国で使用されています。
この項目では、各市場で銀聯がどのように機能しているかを詳しく見てみましょう。
中国
銀聯は中国でのデビットカードとクレジットカード取引の大半を処理しています。RBR のレポートによると、銀聯は中国の 2019 年における決済カード支出の 93% を占めていました。この支配力は、中国政府の金融包摂イニシアチブによっても支えられています。Alipay や WeChat Pay といった国内の大手デジタル決済プラットフォームと熾烈な競争を繰り広げているにもかかわらず、銀聯の地位は堅調を保っています。
銀聯のクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードは、中国全土のほぼすべての ATM と企業で利用できます。
また、文化的なつながりがあり、中国人人口が多い中国本土以外の地域 (香港、マカオ、台湾など) でも銀聯のカードは広く受け入れられています。香港にいたっては、ほぼすべての ATM で CUP カードが使えます。
グローバル
中国以外の地域でも銀聯は大きく躍進しており、中国本土を除いても 2 億枚以上のカードが流通していると報告されています。この成長は、政府が銀行システムへの参入を奨励している発展途上国での後押しが主な要因です。ただし、中国以外では、銀聯の全体における利用シェアは約 1 % と大幅に低下している点に注意が必要です。このかい離は、同社のグローバル展開が強力な国内市場基盤に大きく依存していることを示しています。世界の各地域の利用状況を以下で詳しく見てみましょう。
アメリカ・ヨーロッパ:アメリカとヨーロッパにおける銀聯の戦略は、市場で受け入れられるためのパートナーシップと現地規制への準拠に重点が置かれています。主要な決済代行業者や金融機関との提携により、これらの地域でも銀聯カードの受け入れは進んでいます。この立ち回りは、Visa や Mastercard といった他のカードネットワークがすでに確立されている欧米市場に参入する上で、現地パートナーシップが重要であることを銀聯が理解している表れです。
受入率:銀聯カードは、まだ広く普及しているわけではありませんが、アメリカやヨーロッパの主要な小売店、観光地、交通機関では受け入れが進んでいます。ヨーロッパにある 90% 以上の企業が銀聯を受け入れており、アメリカの企業でも 80% 以上が決済を受け付けています。
取引件数:Visa や Mastercard と比べるとまだ少なめですが、中国以外での銀聯の取引量は着実に増加しています。
ディスカバー:同社と提携したことで銀聯カード保有者は、ディスカバーを受け付けているアメリカ企業へのカード支払いが可能になりました (中国ではこの逆)。これにより、アメリカでの銀聯のリーチが、特に中国人観光客や学生向けに大幅に拡大しました。
グローバル ATM ネットワーク:銀聯は、PLUS や Cirrus などの主要な ATM ネットワークとも提携しており、カード保有者がアメリカとヨーロッパの ATM で現金を引き出せるようにしています。アメリカでは、90% 以上の ATM が銀聯カードに対応しています。
現地のアクワイアリング銀行:銀聯はアクワイアリング銀行との積極的な提携を通じ、銀行ネットワークを自社のシステムに統合しています。これにより、中小企業でも導入が容易になり、銀聯のリーチが大手チェーンの枠を超えて広がります。
アジア (中国以外)
欧米への参入が緩やかだったのとは対照的に、銀聯はアジアで広く受け入れられています。アジア各国での銀聯の利用状況は以下の通りです。
広範な受け入れ
東南アジア (タイ、マレーシア、ベトナム):中国の観光とデジタルウォレットの人気が急成長を後押ししています。タイでは、銀聯カードは約 90% の企業に受け入れられています。
日本と韓国: JCB や BC Card との提携により、人気のある企業や交通機関での利用が可能になっています。日本では、約半数の企業と 8 万台の ATM で CUP カードが使用できます。
パートナーシップ
フィンテック:インドやインドネシアなどの市場で現地のフィンテック企業と提携し、既存のインフラを活用しながら導入を急速に進めています。
小売・旅行業:AirAsia や Booking.com などの大手小売業者、旅行代理店とのコラボレーションによる限定セールを通じて、ブランドの認知度も高まっています。
イノベーションによる成長促進
デジタルウォレット:銀聯の QuickPass ウォレットには、非接触型決済、ロイヤルティプログラム、請求書払いなど、テクノロジーに慣れ親しんでいる顧客にとって魅力的な機能・サービスが備わっています。
クロスボーダー決済ソリューション:「一帯一路」プログラムをはじめとする銀聯のイニシアチブは、クロスボーダー取引を促進し、貿易活動の支えとなっています。
金融包摂:銀聯は、銀行口座を持たない人々に手頃な価格の決済ソリューションを提供する取り組みを積極的に行っています。
課題と機会
- 規制の違い:各国の金融規制にそれぞれ適応する必要があるため、銀聯は常に拡大遅れの問題を抱えています。
- Visa や Mastercard との競合:銀聯は取引総額こそトップですが、Visa や Mastercard が支配的な地域では熾烈な競争を繰り広げています。
- 中国人観光客以外の取り込み:銀聯は自社の存在感を高めるため、国際市場で現地の消費者を引き付けることに取り組んでいます。
銀聯の利用者
銀聯は幅広い顧客層や企業に利用されており、そのユースケースもさまざまです。銀聯の利用者を以下で詳しく見ていきましょう。
顧客セグメント
中国居住者:銀聯は、中国の顧客がオンライン / オフライン取引でよく利用しています。中国本土の人々の 45% が銀聯を利用しているとの報告が上がっていることからも、中国では人気の決済アプリのひとつに間違いないですが、市場占有率の約 90% を占める Alipay や WeChat Pay には後れを取っています。
Z 世代の顧客:特に中国で急成長しているソーシャルコマース分野では、Z 世代 (1995 年から 2010 年生まれ) が市場を牽引しています。彼らは、動画サイトやライブストリーミングサイトなど、簡単かつ便利なプラットフォームでのショッピングを重視しており、そのことが間接的に銀聯を含むさまざまな決済手段の利用に影響を与えています。
観光客・海外旅行者:銀聯の利用はヨーロッパ、アメリカ、東アジアに拡大しており、海外に渡航する中国人観光客や駐在員にとって便利な選択肢となっています。今では、多くのグローバル加盟店や ATM が銀聯のクレジットカードとデビットカードを受け付けています。
銀行口座を持たない人々:銀聯は金融包摂の取り組みを積極的に支援しており、十分なサービスを受けられないコミュニティにも手頃な決済ソリューションを提供しています。
海外中国人観光客:銀聯は、国際ネットワークや現地銀行との提携を通じて、海外での手間のかからない取引を実現しています。銀聯カードは、世界 180 以上の国と地域で利用可能です。
中小企業 (SME):銀聯は、コスト効率の高い決済処理ソリューションの提供を通じて、中小企業がデジタル市場で競争力を発揮できるようサポートしています。
企業
小売業および E コマース:銀聯は、中国の主要な EC プラットフォーム (アリババ、JD.com、拼多多など) で広く受け付けられています。また、中国人人口の多い地域では、実店舗でもよく利用されています。
銀行および金融機関:中国の主要銀行は金融セクターを支配し続けている存在であり、銀聯カードはその主要サービスを担う存在となりつつあります。銀聯が世界のカード利用シェアで優位に立つことができているのは、主に中国国内での支出の寄与によるものですが、即ちこれは、銀行セクターで広く利用されていることを意味します。
ソーシャルコマースプラットフォーム:中国ではソーシャルコマースが急成長しており、銀聯をはじめとする複数の決済手段が使用できる環境が整っています。Tmall、Luxury Pavilion、JD.com などのプラットフォームにストアを構える国際的な高級ファッションブランドやその他の小売業者も同様に、決済手段として銀聯を受け付けています。
クロスボーダー B2B 取引:中国の「一帯一路」構想の拡大に伴い、多くの国際企業が人民元 (RMB) での支払いや融資の返済に銀聯を利用しています。
旅行業およびホスピタリティ:中国国際航空などの航空会社や Hilton などのホテルチェーンは、銀聯と提携して中国人観光客向けの特別割引を提供しています。
EC プラットフォーム:中国の有名な E コマース企業であるアリババ、JD.com、拼多多は、銀聯と提携して QuickPass などの人気のあるデジタルウォレットでのs支払いをオンラインで簡単に行えるようにしています。2022 年の GlobalData の調査によると、中国ではモバイルウォレットが広く普及しており、84% の人がモバイルウォレットを使用している現状です。
公共サービスおよび公益事業:請求書の支払いから交通機関の発券まで、銀聯はさまざまな公共サービスのキャッシュレス取引を促進し、利便性とアクセス性の高さを証明しています。
ユースケース
モバイル決済およびオンライン決済:銀聯はカード取引だけに限定されているわけではありません。モバイルウォレットや QR コード決済などのモバイル決済ソリューションも取り入れ、進化する顧客のニーズに対応できるようにしています。
クロスボーダー取引:中国政府によるクロスボーダー決済システムの強化と、銀聯カードの国際的な普及が相まり、銀聯はクロスボーダー取引で広く利用されるようになっています。
旅行・観光関連の決済:銀聯カードは、フライトやホテルの予約から海外でのショッピングや食事まで、旅行関連の費用を支払うのによく使用されます。
マイクロペイメントおよび日常の取引:屋台での支払いから交通機関での非接触型決済まで、銀聯は日常的な少額取引を円滑に行えるようにしています。
貿易および投資:銀聯の国際的なネットワークとパートナーシップにより、企業と個人は簡単にクロスボーダー取引を行うことができます。
寄付および慈善活動:銀聯は、慈善団体や非政府組織 (NGO) への安全で透明性の高いオンライン寄付を可能にしています。
銀聯の仕組み
銀聯は、企業と顧客に総合的な決済エコシステムを提供しています。このエコシステムには、デジタルバンクカード、商用カードソリューション、B2Bソリューション、グローバル決済ネットワークなどが含まれます。デジタルイノベーション、グローバルな相互運用性、セキュリティを重視することで、企業や顧客にどのように貢献できるかをこの項目でご紹介します。
顧客への場合
デジタルバンクカード:銀聯は、銀聯アプリ、バンキングアプリ、またはスマートフォンメーカーが開発したデジタルウォレットを介してオンラインで申請・管理できるバーチャルバンクカードを発行しています。このカードで、資産管理、購入、支払いなどのサービスが利用できます。モバイル QuickPass 決済、QR コード決済、トークン化などの機能も充実しており、セキュリティに力を入れています。
世界的な受け入れ:銀聯カードは、大型百貨店を含む多くの海外企業で受け入れられており、北米とヨーロッパでもその受け入れは加速しています。
銀聯アプリ:ユーザーは、銀聯アプリからデジタルバンクカードをリアルタイムで管理し、さまざまなグローバル限定特典を利用できます。
モバイル決済:銀聯は、QuickPass による非接触型決済、QR コード決済、NFC 決済に対応しています。
企業への場合
商用カードソリューション:銀聯は、出張、経費管理、B2B 取引のためのビジネスカードとコーポレートカードを発行しています。
統合型 B2B ソリューション:銀聯の B2B ソリューションには、越境 EC 向けの「エンドツーエンド」サービス、商用デジタルカード発行、海外企業向けの革新的な決済ソリューションなどがあります。
Shop the World プラットフォーム:銀聯は、地域に合わせた決済オプションを提供し、国際加盟店が中国の E コマース市場へ参入できるようサポートしています。
機能・特長
クロスボーダー決済サービス:銀聯は、中国渡航者の決済をサポートする機能を強化しています。中国本土以外で発行された銀聯カードが 2 億枚を超えることからも、海外からの渡航者や旅行者に対する多様な決済オプションの提供に力を入れていることが窺えます。
ネットワーク間の相互接続と相互運用:銀聯は、中国国内および海外の決済ネットワーク間の相互接続を促進し、国内 / 海外決済製品の開発を支援しています。この取り組みには、銀聯カードと互換性のあるウォレットや、アプリ内でバーチャル銀聯カードを発行できるウォレットをサポートするための、国際銀行や決済代行業者との提携も含まれます。
取引手数料:オフライン取引で銀聯カードが使用される場合は、販売時にカードスキャンデバイスが必要になります。取引手数料に関しては、銀行の手数料と銀聯の手数料が売り手 (オンラインまたはオフライン事業者) に請求されるため、顧客には手数料がかかりません。銀聯の料金体系については、記事の後半部分で説明します。
セキュリティ対策:デジタルバンクカードによる支払いは、トークン化やリアルタイムリスク監視などのテクノロジーによって保護され、資金と個人データは安全に保たれます。これらについても、以下で詳しく説明します。
相互運用可能なウォレット:銀聯は、国際的なカード発行会社や決済代行業者とのデジタルウォレット連携を進めており、中国本土以外のアプリユーザーも、現地の銀聯カードと連携したり、バーチャルカードを発行することで、銀聯の QR コード決済を受け付けている企業に支払うことを可能にしています。
中国における銀聯
銀聯は中国の国有企業であるため、政府の直接的な影響力と監督の下で運営されており、行政および規制環境に沿った固有の機能がいくつかあります。これらは、セキュリティ面にもある程度の影響を及ぼしています。
データセキュリティ基準の強化:中国政府は厳格なデータセキュリティ規制を敷いており、銀聯もその基準に準拠しています。多くの場合、これらの基準は国際的なベストプラクティスを上回っています。規制の中には厳しいデータローカライゼーション要件も含まれ、ほとんどのユーザーデータは中国国内で保管されることになります。
強力な政府支援:銀聯は、中国の法執行機関や政府のサイバーセキュリティ機関と緊密に連携しています。これにより、サイバー脅威や不正利用の調査にも迅速に対応できるようになり、顧客に生じた問題をすばやく解決へと導けます。
国際市場への限定的なアクセス:銀聯は積極的に海外展開を続けていますが、中国が主要拠点であることに変わりはありません。そのため、他の地域で発生する可能性のあるセキュリティ脆弱性の影響は制限されます。
独自の技術とインフラ:銀聯は、中国特有のテクノロジーやインフラストラクチャーを活用しています。
全国決済ネットワーク:銀聯は、Visa や Mastercard などの国際ネットワークから独立した独自のクローズドループネットワークを中国国内で運営しています。これにより、セキュリティと取引の監視をより厳密に制御できます。
行政システムとの連携:銀聯は、政府や国の金融システムとのつながりを利用して、ユーザーの本人確認と不正利用防止を強化しています。このサービスには、セキュリティ強化を目的とした銀行口座と公民身分番号の関連付けなどが含まれます。
モバイル決済への注力:中国ではモバイル決済システムが活況を呈しており、銀聯はこのトレンドの最前線にいます。銀聯 QuickPass などのモバイル決済プラットフォームは、生体認証やトークン化などの高度なセキュリティ機能が保証されています。
ただし、このような環境でも、以下のような懸念が生じていることに注意してください。
限定的な透明性:ネットワークのクローズドループな性質と政府との緊密な関係は、中国国外の顧客にとって透明性とデータプライバシー慣行に関する懸念を生じさせる要因になります。
政府の潜在的影響力:政府の密接な関与により、取引データは操作や監視の対象になる可能性があり、このことが一部の顧客の懸念を強めています。
限定的なクロスボーダー相互運用性:銀聯は国内市場に重点を置いているため、国際的な受け入れや他の決済ネットワークとの相互運用性が制限され、海外顧客のアクセシビリティに影響が及ぶ可能性があります。
銀聯を受け付けるメリット
企業が銀聯を決済手段として受け付けると、特に中国の顧客に対応するうえでのメリットがいくつか得られます。この項目では、その主要メリットをいくつかご紹介します。
膨大な顧客基盤へのアクセス:銀聯カードの流通枚数は 94 億枚に上り、企業は世界中に点在する何百万人もの中国人消費者にリーチできます。
中国人顧客に対する強い訴求力:移民、学生、渡航者を含む中国人人口は重要な市場です。アメリカには 200 万人以上の中国人移民と約 30 万人の中国人学生がおり、その多くが銀聯カードを日常的に使用しています。これらのカード保有者は、多くの場合、銀聯を唯一の決済カードとして持ち歩いているため、銀聯を受け付けない企業は、この顧客ベースを獲得できない可能性があります。
グローバル展開:銀聯はグローバルなプレゼンスを大幅に拡大し、今では 181 の国と地域で受け入れられています。このように幅広く受け入れられているため、企業は中国からの顧客だけでなく、幅広い海外の顧客に対応できます。
パートナーシップによる商機:銀聯が Trip.com のような大手プラットフォームと提携していくことで、銀聯カード保有者の決済体験は向上します。これには、オンライン利用の拡大や、主要市場の旅行者の支払いニーズを満たすことも含まれます。このようなパートナーシップは銀聯を利用する顧客を惹きつけ、延いてはビジネスにも利益をもたらします。
海外のデジタルウォレットユーザーに対する使いやすさ:銀聯は、中国国内の銀聯を受け付ける企業で 170 の国際ウォレットを使用できるようにしました。これにより、中国本土に滞在する世界中の旅行者の支払いプロセスが簡素化され、顧客体験が向上します。このことは、海外からの渡航者に依存している企業にとって競争優位要因になる可能性があります。
厳格な決済セキュリティ:銀聯はトークン化や 3DS2 などの高度なセキュリティ対策に力を入れ、不正取引のリスクを軽減しています。これにより、企業は安全な決済処理オプションを利用できるようになり、顧客の信頼を築けるともに、不正利用に関連するコストを削減できる可能性があります。
中国人インバウンドの促進:中国人観光客の購買力は高いため、観光が盛んな地域の企業は銀聯を受け入れることでそのメリットを得られます。中国人観光客は海外旅行中に多額の支出をすることで知られており、中国人観光客が好む決済手段に対応することで、より多くの顧客を引き付け、収益を伸ばすことが可能です。
増え続ける中国人顧客の獲得
総発行枚数 94 億枚の銀聯カード:中国を中心とする銀聯の膨大な顧客基盤は、巨大市場の可能性を秘めています。2022 年、銀聯は総額約 252 兆元 (約 35 兆ドル)、2,470 億件以上の取引を処理し、カード保有者の購買力を浮き彫りにしています。
収益性の高いアウトバウンドツーリズムの活用: 中国のアウトバウンド観光支出は、2023 年にショッピングを中心として 1,680 億ドルに達することが見込まれています。銀聯を受け付けることで、これらの観光客との取引はスムーズになります。
中国人学生・駐在員へのサービス提供:銀聯は、海外に住む多くの中国人学生や駐在員に好まれている決済手段です。銀聯カードは 2 億枚以上が中国国外で発行されており、主要な留学先や就労先でその存在感を示しています。
クロスボーダー取引と決済の効率化
効率的なクロスボーダー取引の促進:銀聯の国際的なネットワークとパートナーシップにより、中国の顧客と取引する企業はスムーズに決済を行うことができます。
通貨換算に伴うリスクと手数料の抑制:銀聯のダイレクト決済システムは、為替変動と関連手数料のデメリットを最小限に抑えます。売上処理が人民元で行われるため、中国企業は売上が予測しやすくなり、その上費用対効果の恩恵も得られます。
取引の遅延と複雑さの最小化:銀聯が提供するリアルタイムのオーソリおよび決済プロセスにより、取引の遅延が抑制され、クロスボーダー取引の決済プロセスがシンプルになります。
銀聯のセキュリティ対策
銀聯は、テクノロジーと機能を包括的に駆使して、顧客のデータと取引を保護しています。主なセキュリティ対策の概要は次のとおりです。
カードセキュリティ
チップ・PIN 技術:ほとんどの銀聯カードに EMV チップ技術が搭載されており、磁気ストライプに比べてセキュリティが強化されています。チップカードは使用ごとに一意の取引コードを生成するため、偽造は困難です。
トークン化:カード情報を漏洩リスクから保護するため、機密性の高いカードデータは、オンライン取引の際に一意のトークンに置き換えられます。
リアルタイムのリスク管理:銀聯は高度なアルゴリズムを駆使して取引をリアルタイムで分析し、疑わしいアクティビティを特定・ブロックします。この分析には、ベロシティチェック、ロケーション分析、行動プロファイリングなどが含まれます。
動的な認証:高額取引やリスクが高いと見なされる取引は、ワンタイムパスワードや生体認証などの追加の認証リクエストの対象になります。
ネットワークセキュリティ
安全な通信プロトコル:銀聯は、Transport Layer Security (TLS) などの強力な暗号化プロトコルを導入し、ネットワークとユーザーデバイス間で転送されるデータを保護しています。
データセンターのセキュリティ:銀聯のデータセンターは、機密情報を保護するために厳格なセキュリティ基準と物理的なアクセス制御に準拠しています。
不正利用防止システム:高度な不正利用検知システムで取引を継続的に監視し、不審なパターンやハッキング行為を特定します。
PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) への準拠:銀聯は PCI DSS に従い、データセキュリティに関する国際的なベストプラクティスの遵守を徹底しています。
銀聯を決済手段として受け付ける
この項目では、銀聯決済の処理要件と開始プロセスについて概説します。
中国所在の事業者
要件
営業許可証:営業業種を管轄する中国当局に登録された有効な営業許可証が必要です。
法定代理人:この人物は、会社を代表して加盟店アカウントを管理する権限を保有し、法規制要件を順守する必要があります。
銀行口座:銀聯の処理に対応し、かつビジネスニーズに合った中国の銀行口座を選んでください。
技術インフラ (2 通りのオプション):
- POS 端末:銀聯の取引が承認されている対応 POS 端末を入手します。これらの端末は、銀聯ネットワークに接続し、自社に応じた設定を行う必要があります。
- ペイメントゲートウェイ:銀聯対応のペイメントゲートウェイをオンラインページまたはモバイルプラットフォームに導入します。このオプションにより、E コマース事業者の柔軟性と拡張性がさらに高まります。
- POS 端末:銀聯の取引が承認されている対応 POS 端末を入手します。これらの端末は、銀聯ネットワークに接続し、自社に応じた設定を行う必要があります。
法令遵守:決済処理、データセキュリティ、マネーロンダリング防止 (AML) 規則を統制する中国の関連規制をあらかじめ熟知しておかなければなりません。また、銀聯の運用基準を理解し、自社の業務慣行が銀聯の加盟店要件に沿っていることを確認する必要があります。
開始プロセス
アクワイアリング銀行を選択する:銀聯の決済処理サービスを提供している中国のアクワイアリング銀行を調査・比較します。手数料、サービス品質、ネットワークのカバー範囲、導入オプションなどの要素を重点的に検討するようにしてください。
申請書を提出する:アクワイアリング銀行に連絡し、加盟店口座の申請書に記入します。通常は、会社、法定代理人、銀行口座、技術インフラに関する詳細情報を提供する必要があります。
契約交渉:アクワイアリング銀行との加盟店契約に記載されている条件と手数料を慎重に確認し、交渉します。契約要件には、取引手数料、ネットワーク手数料、月額料金、また場合によっては最小取引量が含まれます。
技術構築:選択した POS 端末やペイメントゲートウェイに応じて、アクワイアリング銀行や技術サービスプロバイダーと連携して必要なインフラストラクチャーを構築・設定します。この際にテストと認証の手順が必要になる場合があります。
テストと承認:すべての設定が完了したら、テストフェーズを経て、取引が円滑に処理できることを確認します。アクワイアリング銀行と銀聯によるテストと承認を受けた後に、銀聯の決済処理を開始する準備が整います。
中国国外の事業者
要件
事業登録:事業を運営する法人であることを示す自国の有効な事業登録書が必要です。
PSP:銀聯のクロスボーダー取引の仲介実績が豊富で、中国関係に強く、評判の良い PSP と提携しましょう。この PSP は、銀聯ネットワークとの仲介者の役割を果たします。
法令遵守:事業者の実務は所在する国の関連規制に従いますが、クロスボーダー決済については国際的な規制を順守しなければなりません。さらに、クロスボーダー取引に関する銀聯固有の要件にも従う必要があります。
開始プロセス
PSP を選択する:PSP の実績、料金、対象地域、および既存システムとの連携能力に基づいて、PSP を慎重に調査・比較します。
コンプライアンス審査:選択した PSP によって徹底的なコンプライアンス審査が実施され、銀聯の決済処理を開始するための法律上および規制上の要件をすべて満たしているかどうかが確認されます。
アカウントを設定する:PSP と協力して、銀聯の取引に対応する専用の加盟店口座を開設します。その際、追加の書類や財務情報の提出が必要になる場合があります。
技術構築:PSP のペイメントゲートウェイを会社のオンラインプラットフォームやモバイルアプリと連携させます。PSP は、このプロセス全体を通じて技術サポートとガイダンスを提供します。
テストと有効化:PSP と銀聯の厳格なテストフェーズを経ることで、クロスボーダー取引の処理をシンプルに行うことが可能になります。すべてのテストと承認が完了すると、中国の顧客からの銀聯の決済処理を開始する準備が整います。
Stripe で銀聯の決済処理を開始する
Stripe を介して銀聯を受け付けられるようにすることで、中国だけでなく世界中でその恩恵にあずかることができます。Stripe は銀聯とのパートナーシップ事業を拡大したことで、30 を超える市場の企業が銀聯カード保有者からの支払いを簡単に処理できるようになりました。この連携は特に、中国およびアジアの E コマース市場への参入を目指す企業に大きなメリットをもたらします。

主な特長とメリット
世界規模のアクセシビリティ:オーストラリア、シンガポール、香港、カナダ、アメリカ、イギリス、EU 全域の企業は、世界中の銀聯カード保有者から支払いを受け付けることができます。一方で、この幅広いリーチにより、企業は数十億人の銀聯ユーザーへのアクセスが可能となり、グローバルな商取引を促進するとともに、市場アクセスを拡大できます。
現地に適した柔軟な購買体験:Stripe と銀聯の連携により、中国人民元をはじめ複数のグローバル通貨での取引が可能になり、現地ならではの購買体験を提供できます。さまざまな顧客の好みに対応し、海外顧客の購買体験を向上させるためには、この柔軟性が不可欠です。
返金と不審請求の申し立ての管理の自動化:Stripe と銀聯を連携させることで利用できる機能には、返金や顧客の不審請求の申し立ての管理を自動化する機能などがあり、複雑になりがちなプロセスを合理化し、この管理に関わる企業の負担を軽減します。
支払い管理のための強力なダッシュボード:Stripe はすべてのプロダクトで、銀聯の取引をはじめ、支払い、レポート作成、入金を管理する強力な単一インターフェイスを提供しています。この一元化により、わかりやすい決済管理が実現され、事業者は財務業務に関する包括的なインサイトを獲得できます。
受入率の向上:銀聯と Stripe を導入した企業は、現地で好まれる決済手段を提供できるため、取引承認率が向上します。この最適化は、購入完了率と収益の向上につながります。
事業拡大の好機:銀聯は、中国人顧客だけでなく、世界中の中国系移民にも広く利用されています。Stripe は、Alipay、WeChat Pay に加え、銀聯にも対応しているため、中国の高価値消費者惹きつけ、ビジネスに戦略的優位性を持たせることができます。
収益成長率:銀聯、Alipay、WeChat Pay を決済手段に追加したことで、中国人顧客からの収益が大幅に増加したという報告が上がっています。たとえば、デジタルコンテンツマーケットプレイスの Humble Bundle は、これらの人気の高い決済手段を導入することで中国からの売上を 600% 以上増加させることに成功しました。
銀聯の代替えになる決済手段
中国における銀聯の主な競合相手は、Alipay と WeChat Pay の 2 つです。この項目では、それぞれの概要と機能の対比について解説します。
Alipay
利用度とユーザーベース:アリババグループが立ち上げた Alipay は、中国国内で9億人という膨大なユーザーを抱えて市場をリードしており、中国の顧客の日常生活に広く浸透し、溶け込んでいることが窺えます。
提供サービス:Alipay は、Apple Pay や Google Pay といった他のデジタルウォレットと同様のサービスを提供し、決済の利用にはアカウントを 1 つ以上のカードと関連付けることを義務づけています。即時クレジット、分割払い、キャッシュバックなど 100 を超えるサービスを提供し、実店舗での決済機能も兼ね備えています。
国際連携:Alipay は、Visa や Mastercard などのグローバルカードネットワークと強力なパートナーシップを結び、中国を訪れる海外観光客の決済を円滑に処理しています。
市場での位置づけと顧客ニーズ:Alipay が市場で牙城を築けているのは、主に市場への早期参入とアリババ経済との深い結びつきによるものです。Taobao や Tmall などのプラットフォームと連携していることから、オンラインショッピングにおける有力な選択肢となっています。
長所:Alipay の強みは、E コマースの分野で広く受け入れられていることと、資産管理や与信などの多様な金融サービスを提供していることです。
短所:Alipay は汎用性が高い決済手段ですが、主にオンラインに焦点を当てたプラットフォームであるため、より統合された決済体験を好む一部の顧客にとっては、有用性の面で制約を受ける可能性があります。
WeChat Pay
WeChat アプリとの連携:メッセージングアプリ WeChat から導入され、Tencent が運営する WeChat Pay は、WeChat アプリと統合されているため、幅広いユーザーベースを持っています。10 億人を超えるすべての WeChat ユーザーは、デフォルトで WeChat Pay にアクセスできるため、非常に利用しやすく、現に広く普及しています。
サービスとアクセシビリティ:Alipay と同様、WeChat Pay はマーケットプレイスを含むさまざまなサービスを提供しています。ただし、WeChat Pay はモバイルデバイス向けに設計されているため、ウェブサイトに統合する際には問題が生じる場合があります。
ソーシャルメディアとの連携:WeChat Pay の人気の高さは、中国最大のソーシャルメディアプラットフォームである WeChat と連携していることに起因します。この連携は、社会交流と金融取引の間の移行を円滑にしています。
長所:WeChat Pay は、包括的なソーシャル体験と決済体験を両立しています。アプリ内システムでは、請求書の支払い、予約サービス、マーケットプレイスなどのサービスがサポートされています。
短所:WeChat Pay はモバイルプラットフォームに重点を置いているため、Alipay と比べて純粋な E コマース利用のシナリオにはあまり適していないというデメリットがあります。
EC 企業、小売業者、サービスプロバイダーのいずれであっても、Stripe の安全でスケーラブルな決済インフラを利用すれば、組み込みの不正利用防止機能やリアルタイム分析、不審請求の申し立てに対する自動解決機能といったメリットを享受しながら、銀聯取引をシームレスに受け付けることができます。
Stripe と連携し、今すぐ銀聯で支払いを受け付けられるようにしましょう。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。