サービスとしてのソフトウェア (SaaS) 業界が急成長していますが、あらゆる規模の SaaS 企業が決済処理に関連する共通の課題に直面しています。SaaS 決済処理では請求書作成からサブスクリプションプランの管理、地域の税法や決済に関する規制への準拠にまで対応しなければならないため、1 回限りの支払いの収集よりも複雑です。
The Business Research Company のレポート によると、2022 年における世界の SaaS 市場の規模は 2,406 億 1 千万ドルで、2026 年には 3,744 億 8 千万ドルに成長すると予想されており、このような課題に効果的に対処できる統合決済ソリューションの需要が高まっています。SaaS ビジネスが事業を拡大して新たな市場に参入するようになると、請求、支払い、サブスクリプションを包括的に処理できる効果的な SaaS 請求ソフトウェアが重要になります。決済プラットフォームでは、安定した収益源を維持しながら解約率を下げられるような仕組みを、追加のコーディングを一切行わずに簡単に実現できなくてはいけません。
SaaS 請求に関する課題にすでに直面している方にも、先回りして準備しておきたい方にも、SaaS 決済処理に関する課題とその解決策について知っておくべきことをご紹介します。
この記事の内容
- SaaS 決済処理とは
- SaaS 決済処理に関係するもの
- SaaS 決済処理の課題と解決策
- SaaS 請求ソフトウェアを選ぶポイント
SaaS 決済処理とは
SaaS 決済処理とは、企業が決済を受け付けて処理する方法を表します。EC ストアの売上は 1 回限りの支払いによるものですが、SaaS ビジネスの多くはサブスクリプションモデルを採用しており、継続請求とサブスクリプションの管理が重要な課題になっています。
SaaS 決済処理に関係するもの
SaaS 製品の料金の支払いを回収する処理は、単純な金銭取引のレベルを超えます。サブスクリプションベースのビジネスでは、各利用者に契約プランに基づいた請求書を送付し、簡単に支払いできる方法も提供する必要があります。サブスクリプションのライフサイクル全体も考慮する必要があり、いつでもプランのアップグレード、ダウングレード、一時停止、更新、キャンセルを行えるようにしなくてはなりません。請求書作成、請求、サブスクリプション管理を手動で行っていると事業を拡大できません。そこで SaaS 決済処理の出番です。
新しい請求システムを社内構築するには多額の費用が必要です。請求業務と支払い業務の処理に異なるソフトウェアサービスを使用すると、コストがかかるうえ、混乱を生じかねません。しかし、統合型の決済代行業者を利用すると、こうした課題のすべてに対応できるだけでなく、各取引からのデータに基づいて、購入者に関するインサイトも得ることができます。
SaaS 決済処理の課題と解決策
SaaS 企業の決済処理は複雑になる可能性があります。SaaS 製品の多くが継続サブスクリプションモデルを基本としており、1 回限りの購入よりもさらに一貫性のある管理が必要になるからです。SaaS 企業が直面している一般的な課題とその解決策をご紹介します。
請求書の発行と請求
サブスクリプションベースのビジネスは、1 回限りの販売モデルと比べて関連する要素が多いため、請求書の発行と請求が悩みの種となる可能性があります。利用者ごとにサブスクリプションプランが異なり、請求額も、支払いを行うタイミングも異なります。そのほかにも、トライアル期間やサブスクリプション割引などの要素があるため、請求書発行がさらに複雑になります。そのうえ、企業ごとに継続請求の仕組みが異なるため、画一的な決済ページとサブスクリプション請求コンポーネントを利用する場合は、チームがかなりのコーディング作業をしなければなりません。
一方、優れた SaaS 請求ソフトウェアを導入すると、利用者のサブスクリプションの詳細に関係なく、継続利用者にシームレスに請求書を発行し、支払いを回収することができます。また、そのようなソフトウェアでは、決済処理システムに対応するためにエンジニアリングチームの時間と労力をかけることなく、SaaS 企業固有のサブスクリプションプランと継続支払いスケジュールを設定することもできます。
グローバルな事業展開に対応
SaaS ビジネスを成長させるには、インフラをグローバルに拡大する必要があります。決済処理においては、購入者がさまざまな言語で支払いプロセスを行えるようにし、さらに、さまざまな通貨と複数の決済手段で決済を受け付けられることが必要です。たとえば、アメリカでは、オンライン購入の際の決済手段としてクレジットカードとデジタルウォレットが特に人気ですが、ドイツの購入者は PayPal や Amazon Pay などのオンライン決済を好みます。さまざまな通貨で決済を受け付けるには、ヨーロッパの決済サービス指令改訂版 (PSD2) や強力な顧客認証 (SCA) など、電子決済サービスに対する地域の規制に確実に準拠できる決済代行業者を選ぶ必要があります。
Stripe Payments のように世界中の購入者を念頭に置いて構築されているプラットフォームは、各国で好まれる決済手段の違いを考慮しながら、法令遵守の負担も軽減する仕組みを提供しているため、全世界での売上が増え、外国市場にスムーズに参入できます。
セキュリティ
継続取引では、決済処理に特化したセキュリティシステムを用意することが特に重要です。SaaS 企業は利用者データを安全に保管する責任や、暗号化ツール、トークン化ツールを使用して購入者のクレジットカードデータを保護する責任を負っています。機密情報が自動的に保護され、決済を受け付ける際に不正利用を防止する対策が取られている SaaS 請求ソフトウェアを選ぶ必要があります。そうすれば、SaaS 企業も利用者もデータのセキュリティを気にする必要はありません。
意図しない解約
利用者がサブスクリプションを解約する割合を一般には解約率と呼びます。解約率がゼロになることは決してありませんが、この数字をできるだけ低く抑えることが重要です。新規利用者を獲得するためのコストは、既存の利用者を維持するコストよりも 5 倍高くなることが調査で判明しています。
意図しない解約は、決済処理が失敗したときや利用者のサブスクリプションが解約されたときに発生しますが、ユーザー体験を効率化して、決済に問題がある場合は利用者に通知するような SaaS 請求システムを利用すれば回避できます。複数のサードパーティーの請求管理ツールと売上管理ツールをつなぎ合わせて使うよりも、決済とサブスクリプションのあらゆる面を 1 つのプラットフォームで処理できる、Stripe の SaaS ソリューションのようなソリューションを導入すると、意図しない解約を減らすことができます。
収益分析
SaaS ビジネスが成長するにつれて、発生主義会計や売上報告の作業が大変になります。財務レポートの計算をする専用のソフトウェアを使わなければ、作業にとても時間がかかります。また、顧客基盤が拡大すると使用可能なデータも増えるので、新しいビジネスチャンスに関するインサイトが得られ、決済処理中に購入者が直面する問題を発見できます。
総合的な SaaS 決済処理プラットフォームには収益管理機能も含まれているので、すべての取引の会計処理が自動的に行われます。たとえば、Stripe Revenue Recognition はアップグレード、ダウングレード、返金、不審請求の申請を追跡できるため、ビジネス全体をすぐに把握できます。
SaaS 請求ソフトウェアを選ぶポイント
効率的な SaaS 決済処理システムを利用すると、請求に関連する悩みが解消されます。請求、支払い、サブスクリプション管理のツールが統合されているソリューションを導入すると、月々の時間とコストを節約できます。SaaS 請求ソフトウェアを選ぶポイントをご紹介します。
請求
SaaS 企業は請求書を発効して請求を行わない限り、支払いを受けることはできません。そのため、請求ソフトウェアではこのような基本的な作業を素早く簡単に処理しなければなりません。請求ロジックを柔軟に設定できるソフトウェアを利用すると、定額制サブスクリプションや、利用者のサービス使用量に応じて請求額が決まる従量課金など、ビジネスに最適な請求方法のタイプを選べます。決済
SaaS 請求ソフトウェアには、さまざまな決済手段を受け付け、不正な支払いを未然に検出し、ペイメントカード業界 (PCI) のセキュリティ基準に準拠していることが基本的な要件として求められます。収益管理
ビジネスの拡大に合わせて、収益管理を自動化できるシステムを利用すると、ビジネスの財務状況を引き続き総合的に把握でき、利益を増やすことができます。サブスクリプション管理
サブスクリプション管理には、無料トライアルの管理から、返金への応対と処理まで、自動化するのが難しいサブスクリプションの運用と管理に関連するあらゆる変動要素が含まれます。各地域への適応
グローバル企業は、世界各国の利用者の言語と通貨に対応でき、なおかつ、すべての取引が現地の決済規制に準拠できるようにしてくれる決済代行業者を求めています。VAT と売上税
世界各国の VAT と売上税の法令を常に遵守するには、専任のチームが必要です。甘く見ていると、罰金を科されかねません。取引をモニタリングし、購入者の所在地に基づいて適切な税額を計算して徴収できる請求システムが重要になります。
統合 SaaS 決済ソリューションはこのようなすべての機能を網羅しているため、エンジニアリングの作業時間を増やさなくても、効率化、ミスの低減、経常収益アップを実現できます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。