このガイドでは、決済不正利用 を防止し、優れた顧客体験を実現するための重要な要素であるトークン決済について説明します。オンライン小売業者、サブスクリプション型サービス、プラットフォームビジネス、実店舗型小売業者など、さまざまなビジネスモデルにおけるトークン化の関連性とメリットについて説明します。
この記事の内容
- トークンとは
- トークン決済とは
- トークン化の仕組み
- トークン決済を利用する必要があるビジネス
- トークン決済のメリット
- Stripe Payments はどのように役立つか?
トークンとは何ですか?
トークンとは、機密情報を置き換えるランダムな文字列のことです。決済では、トークンがクレジットカード番号や一次口座番号 (PAN) の代わりとなり、実際の番号が見えないようにすることができます。
トークン決済とは
トークン決済とは、クレジットカード番号などの機密性の高い決済情報を、トークンと呼ばれる一意のランダムな文字セットに置き換えるセキュリティ技術です。このプロセスは、実際のクレジットカードデータが使用または保管されないため、取引中の決済データを安全に保つのに役立ちます。もし誰かがトークンにアクセスしたとしても、トークンには実際の決済情報が含まれていないため、トークンを使って不正な買い物をすることはできません。トークンをカード情報の代わりに使用することで、事業者はデータ漏洩や不正利用のリスクを軽減しながら、顧客に安全でシームレスな決済体験を提供することができます。
トークン化の仕組み
トークン化は、機密性の高い決済データを機密性の低い同等のデータに変換するもので、元のデータを潜在的なセキュリティ脅威にさらすことなく、安全に保管・送信することができます。トークン化の決済処理における仕組みは次のとおりです。
1.データ回収: 顧客が取引を開始する際、顧客はクレジットカード詳細などの決済情報を事業者に提供します。
2.トークン化リクエスト: 事業者の決済システムの設定方法によっては、機密データをセキュアトークンサービス (通常、決済代行業者 またはサードパーティのトークン化ベンダーが提供) に送信する場合があります。トークン化が可能な決済ハードウェアまたはソフトウェアStripe端末を使用している場合、トークン化は決済処理の基本部分として自動的に行われます。
3. トークンの生成: トークン化プロセスでは、アルゴリズム、暗号化方式、安全な保管方法を組み合わせて使用し、元の決済データを表す一意のトークンを生成します。通常、このトークンはランダムな文字列かランダムな数字であり、その決済システム以外の場所では何の価値も意味もありません。
4. トークンの保管: トークンは決済データの代わりに事業者のシステムに保管されます。元の決済データはトークン化サービス側の安全なボールトにしっかり保管されます。このボールトは不正アクセスやデータ侵害から決済データを保護するように設計されています。
5. トークンの使用: 事業者が取引を処理する必要がある場合は、事業者から決済代行業者またはトークン化サービスにトークンを送信します。サービス側でトークンと元の決済データを安全に対応付けて、機密情報を事業者や他の仲介業者に公開せずに取引を完了できるようにします。
6. トークンの再利用: サブスクリプションなどの継続取引の場合、保管された顧客プロファイルが使用されますが、決済に関する機密データをその都度収集する必要はなく、同じトークンを複数回使用できます。そのため、決済プロセスがシンプルになり、セキュリティも維持できます。

トークン決済を利用する必要があるビジネス
トークン化は、機密性の高い決済データを扱うさまざまなビジネスに大きなメリットをもたらします。以下のような利点があります:
EC小売業者
トークン化で顧客決済データを保護しながら、オンライン取引での侵害や不正利用のリスクを軽減できます。サブスクリプションベースのサービス
継続課金 を提供する会社は、トークン化を使って継続取引の顧客決済データを安全に扱うことができます。実店舗を持つ小売業者
オンライン取引ではより一般的ですが、トークン化は、POS (Point of Sales) システムやモバイル決済 ソリューションを使用する実店舗にとっても、セキュリティのレイヤーを増やすことでメリットがあります。プラットフォームとマーケットプレイス
トークン決済により、複数人が関与する複雑な取引における機密性の高い決済データの管理が合理化されるため、プラットフォームビジネスにおける信頼が醸成され、拡張性が向上します。
トークン決済のメリット
トークン決済は、業種やビジネスモデルを問わず、さまざまなメリットをもたらします。、顧客からクレジットカードやデビットカード の決済を受け付けるほとんどのビジネスが、トークン化を取り入れることでメリットを享受できます。トークン化のメリットは以下のとおりです。
セキュリティの強化
トークン化によって、決済に関する機密データを機密性のないトークンに置き換えることで、データ侵害と不正利用のリスクが軽減されます。このようにすると、取引時に実際の決済データを公開しなくて済み、不正アクセスや悪用される可能性が最小限に抑えられます。PCI DSS 準拠
トークン化を利用すると決済に関する機密データの保管と処理が最小限で済むため、PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) などの業界標準に準拠できます。顧客の信頼を維持し、罰則や罰金が科せられないようにするには、PCI DSS に準拠することが重要です。データ管理の簡略化
トークン化により、事業者は顧客の決済情報をより効率的に管理できます。トークン化は将来の取引に再利用できるため、決済プロセスを合理化し、機密データを繰り返し徴収して保管する必要性を低減します。これにより、データ管理が簡素化され、関連コストが削減されます。顧客体験の向上
不正利用の可能性を減らすことで、決済時のスムーズな体験が生まれ、顧客のデータ保護に加え、会社に対する信頼が構築されます。再来店客へのトークンの再利用など、シンプルな決済体験は顧客のロイヤルティを高め、リピート購入を促進します。データ侵害の対象範囲の縮小
トークン化は、万が一データ漏洩が発生した場合でも、漏洩したデータが機密性の低いものであり、不正取引に使用されないことを保証することで、潜在的な損害を制限します。これにより、ビジネスや顧客への悪影響が軽減され、ブランドの評判が維持されます。ユニファイドコマース
トークン化を利用すると、オンラインストアや実店舗、顧客ロイヤルティプログラムなど、さまざまなチャネルで決済データを安全に管理できます。シームレスに連携するため、取引にどのチャネルを利用しても、一貫性がある安全な顧客体験と、バックエンドデータの統合を実現できます。最新の決済テクノロジーへの対応
決済手段は進化し続けています。トークン化はデジタルウォレットや非接触型決済といった新しいテクノロジーにも適用できます。そのため、事業者は高度なセキュリティを維持しながら、革新的な決済ソリューションを導入できます。
特に、EC小売業者、サブスクリプション型ビジネス、実店舗型小売業者は、それぞれのビジネスモデルに特有のチャレンジとチャンスがあるため、トークン決済のメリットを享受できます。ここでは、トークン化がこれらの事業形態に特に有利な理由を詳しく説明します。
EC 小売業者
EC 事業者がトークン化を利用するメリットには、次のようなものがあります。
セキュリティの強化
オンライン取引では決済に関する機密データをインターネットで転送する必要があるため、EC 小売業者はデータ侵害やサイバー攻撃を受けるリスクが高くなります。機密情報をトークン化して機密性のないトークンに置き換え、取引時に実際の決済データを公開しないようにすると、このリスクが大幅に軽減されます。法令遵守
オンライン小売業者は顧客の信頼を維持し、罰則や罰金が科せられないようにするために、PCI DSS などの業界標準に準拠する必要があります。トークン化を利用すると、EC ストア事業者のシステム内に機密データを保管して処理する必要性が最小限に抑えられるため、標準に準拠しやすくなります。顧客体験の向上
安全な取引を実現でき、データ侵害のリスクも低減されるため、顧客の信頼が得られ、顧客ロイヤルティの向上やリピート購入につながります。また、トークン化を利用すると、リピーターの決済プロセスも簡略化できます。トークンを再利用できるので、今後の取引で顧客に決済情報を再入力してもらう必要がありません。
サブスクリプションベースのビジネス
サブスクリプションベースのビジネスがトークン化を利用すると、次のようなメリットがあります。
継続取引
サブスクリプションベースのビジネスは継続請求に頼ったビジネスモデルであり、継続取引用に顧客の決済データを安全に保管・処理する必要があります。トークン化で機密情報をトークンに置き換えると、実際の決済データを長期間保管するというリスクが軽減されます。顧客維持率の最適化
トークン化を利用すると、顧客に決済情報を何度も入力してもらう必要がなくなるため、継続決済の処理がスムーズになります。そのため、負担の少ない顧客体験になり、顧客維持率が向上します。アカウント管理の効率化
サブスクリプション型ビジネスは顧客の決済設定の変更、プランのアップグレードやダウングレード、解約を処理しなければならないことがよくあります。トークン化を利用すると、同じトークンをさまざまな取引に使用でき、機密データを公開せずに変更に対応できるため、アカウント管理が簡略化されます。
実店舗を持つ小売業者
実店舗を持つ小売業者にとって、トークン化を利用すると次のような大きなメリットがあります。
POS のセキュリティ
一般的に、クレジットカードを提示する取引はより安全であると考えられていますが、実店舗は POS システムを侵害しようとする詐欺師の標的になる可能性があります。トークン化は、カード保有者の重要な決済データが POS システム内に保管されないようにすることで、決済セキュリティを強化し、侵害や不正アクセスのリスクを低減します。モバイル決済ソリューション
実店舗を持つ小売業者もますますモバイル決済オプションに対応するようになっているため、安全で簡単な取引を実現するにはトークン化が重要です。トークン化はデジタルウォレットや非接触型決済手段でも機能するため、セキュリティを強化しながら、新しい決済テクノロジーにも対応できます。オムニチャネル決済の統合
実店舗を持つ小売業者の多くはオンラインストアを運営していたり、顧客ロイヤルティプログラムを提供していたりするため、複数のチャネルで決済データを管理する必要があります。トークン化を利用すると、セキュリティと法令遵守状態を維持しながら、オンラインチャネルとオフラインチャネルの決済データをシームレスに統合できます。
プラットフォームとマーケットプレイス
これらは、トークン化によってプラットフォーム・ビジネスが得られる独自のメリットの一部です:
複数の当事者が関わる取引の円滑な処理
プラットフォームは複数の当事者が関わる取引に関与することが多く、すべてのユーザーの決済に関する機密情報を安全に処理・保管する必要があります。この機密情報をトークン化して機密性のないトークンに置き換えることで、関係するすべての当事者の体験が安全でシームレスになり、データ侵害のリスクも軽減されます。入金管理の簡略化
プラットフォームは売り手、代行業者、アプリ開発者への入金を管理する必要がありますが、手数料体系や入金スケジュールが異なるため、複雑な作業になる可能性があります。トークン化により、プラットフォームでの継続決済にトークンを再利用できるようになり、ユーザーが決済情報を繰り返し入力する必要性が減るため、安全で簡単な入金管理が可能になります。拡張性
プラットフォームビジネスが成長して新市場に参入するようになると、新しいユーザー、通貨、決済手段に対応するように決済インフラを改良する必要があります。トークン化を利用すると、新しいテクノロジーや決済手段とシームレスに連携できるため、すべての市場で一貫性のある安全な決済体験を実現できます。カスタマイズと柔軟性
プラットフォームでは、特定のビジネスモデルやユーザーのニーズに対応するために固有の決済フローが必要になることがよくあります。トークン化を利用すると安全で柔軟な決済処理が可能になるため、データセキュリティを損なうことなく、カスタムの決済フローを設計・実装できます。責任の軽減
トークン化を導入すると、決済に関する機密データに触れる機会が少なくなるため、データ侵害が発生したときの責任を実質的に減らすことができます。そのため、金銭的な損失や評判の失墜を防げます。
トークン化がStripeの決済プロダクトでどのように機能するかについては、ネットワークトークンのメリットを理解する のガイドをお読みください。
Stripe Payments でできること
Stripe Payments は統合型のグローバル決済ソリューションです。成長中のスタートアップから大企業まで、あらゆるビジネスがオンライン、対面、世界各地でスムーズに決済システムを導入できます。
Stripe Payments では次のことができます。
- 決済体験の最適化: 構築済みの決済 UI、125 種類以上の決済手段へのアクセス、Stripe が構築したウォレットである Link により、スムーズな顧客体験を実現し、エンジニアリングの工数を何千時間も節約できます。
- 新市場への迅速な展開: 195 カ国、135 以上の通貨で利用可能な国際決済オプションにより、世界中の顧客にリーチし、多通貨管理の複雑性と費用を軽減できます。
- 対面とオンライン決済の統合: オンラインと対面チャネルにまたがるユニファイドコマース体験を構築することにより、顧客ごとにパーソナライズされたサービスを提供し、ロイヤルティを高め、収益を伸ばします。
- 決済パフォーマンスの向上: ノーコードの不正利用対策や承認率向上のためのアドバンスケイパビリティを含む、カスタマイズ可能で設定が簡単な各種決済ツールにより、オーソリ率を向上させます。
- 柔軟で信頼性の高いプラットフォームによる迅速な成長: 99.999% の稼働時間と業界トップクラスの信頼性を備え、スケールに合わせて拡張可能なプラットフォーム上で構築できます。
Stripe Payments のオンラインおよび対面決済がビジネスにどのように役立つかについて、詳しくはこちらをご覧ください。または、こちらから今すぐ始める。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。