決済業界のエコシステムについて: 主要な関係者、プロセス、動向

  1. はじめに
  2. 決済業界のエコシステム
    1. 主要な関係者
    2. 決済エコシステムの決済処理の仕組み
  3. 決済業界の動向と予測
    1. 市場勢力図
    2. 非接触型決済
    3. 小売チャネルの統合
    4. デジタルウォレット
    5. 仮想通貨
    6. 生体認証
    7. モノのインターネット (IoT) 決済
    8. 人工知能 (AI) と機械学習
    9. クロスボーダー決済と送金
    10. リアルタイム決済
  4. 企業と決済業界のエコシステムの連携方法

安全で効率的な統合型決済体験を提供するには、企業、特に複数のチャネルで売上を処理している企業が、決済業界のエコシステムを理解する必要があります。

決済体験を最適化すると、顧客満足度が向上するだけでなく、企業の収益や成長見通しにも影響を与えます。決済システムが効率的だと、決済を受け付けられる市場が増えるだけでなく、業務コストの削減やキャッシュフロー管理の改善にも役立ちます。

このガイドでは、決済業界のエコシステムに関する洞察を提供することで、あらゆるチャネルにおける顧客体験を向上させる優れた決済戦略を企業が策定できるようにします。

この記事の内容

  • 決済業界のエコシステム
  • 決済業界の動向と予測
  • 企業と決済業界のエコシステムの連携方法

決済業界のエコシステム

決済業界のエコシステムは、商品やサービスの金銭的価値の交換を促進する、利害関係者、テクノロジー、プロセス、規制の複雑なネットワークであり、顧客、企業、金融機関の間で安全な取引を効率的かつシームレスに行えるよう設計されています。

決済業界のエコシステム内では、カード発行会社、アクワイアリング銀行、決済代行業者、ペイメントゲートウェイ、決済ネットワークが連携し、スムーズなオペレーションを実現。エコシステムは、非接触型決済、デジタルウォレット、リアルタイム取引など、新たなトレンド、テクノロジー、顧客の好みに常に適応し、このような流れを取り入れています。さらに、金融システムの完全性と安定性を維持するために、法令遵守、セキュリティ、消費者保護対策を実施するグローバルおよび地域の規制当局の指針に従って動いています。

主要な関係者

決済エコシステムは、次のような複数の要素と参加者で構成されています。

  • 顧客
    顧客とはもちろん、決済サービスを使用して購入、請求書の支払い、送金を行う個人または組織のことです。

  • 企業
    企業は、オンラインまたは対面で商品やサービスの決済を受け付けます。

  • 決済ネットワーク
    決済ネットワークは、カードネットワークまたは決済スキーマとも呼ばれ、決済エコシステムにおけるさまざまな当事者間の電子取引を促進するシステムです。クレジットカード、デビットカード、デジタルウォレット取引など、決済処理に必要なインフラストラクチャー、ルール、標準を提供しており、主な決済ネットワークの例としては、Visa、Mastercard、American Express、Discover などがあります。

  • カード発行会社
    カード発行会社は、クレジットカードやデビットカードなどの支払いカードを顧客に提供する金融機関で、カードに関連する信用リスクの引き受け、カード保有者のクレジット限度額の設定やアカウント管理を担当します。決済プロセスで取引を承認し、売上に対して責任を負い、決済エコシステムでは重要な役割を果たしています。

  • アクワイアリング銀行
    アクワイアリング銀行は、加盟店の銀行またはアクワイアラーとも呼ばれる金融機関で、企業と提携してクレジットカードやデビットカード取引などの電子決済を処理します。加盟店アカウントの開設と管理、取引の決済、カード保有者のアカウントからビジネスアカウントへの売上の移動などを行い、電子決済の受け付けを促進します。電子取引が円滑に処理および決済されるようにするアクワイアリング銀行は、決済エコシステムにとっては重要な存在です。

  • 決済代行業者
    決済代行業者は、企業やそのアクワイアリング銀行に代わって電子決済取引プロセスを管理する会社で、カード発行会社、アクワイアリング銀行、企業間の取引における承認、決済、処理の技術的な側面を担当します。クレジットカード、デビットカード、モバイルウォレットなど、さまざまな形態の電子決済を企業が受け付けられるようにするのが決済代行業者であり、決済エコシステムで重要な役割を担っています。

  • ペイメントゲートウェイ
    ペイメントゲートウェイは、電子取引中、企業、決済代行業者、アクワイアリング銀行の間で決済情報を送信するデジタルサービスで、企業のウェブサイトや POS システムと決済代行業者をつなぐ役割を果たしています。ペイメントゲートウェイは、決済エコシステムの重要な要素であり、機密性の高い決済データを安全かつ確実にやり取りし、オンラインおよび対面での購入取引の承認、キャプチャー、処理を容易に行えるようにします。

  • 加盟店サービスプロバイダー (MSP)
    MSP は、企業が電子決済を受け付けて処理するのに役立つさまざまなサービスを提供しています。アクワイアリング銀行と緊密に連携することが多く、ペイメントゲートウェイ、POS システム、不正防止などの追加サービスを提供することもあります。通常は、さまざまな企業や業界のニーズに合わせて、多様な決済ソリューションを提供しています。

  • 独立販売組織 (ISO)
    ISO は、企業とアクワイアリング銀行を仲介するサードパーティー企業です。アクワイアリング銀行や決済代行業者に代わって、加盟店アカウントや決済処理サービスを販売する役割を担い、企業にサービスを販売する販売代理店または再販業者のネットワークを持っていることがよくあります。また、POS システム、ペイメントゲートウェイ、ビジネス管理ツールなどの付加価値サービスを提供する場合もあります。ISO は Visa や Mastercard などの決済ネットワークによって規制されており、そのステータスを維持するには一定の法令遵守基準を満たす必要があります。

  • ペイメントファシリテーター (payfacs)
    ペイメントファシリテーターは、決済サービスプロバイダー (PSP) とも呼ばれ、企業がアクワイアリング銀行や専用の加盟店アカウントと直接取引することなく、電子決済を受け付けられるようにします。ペイメントファシリテーターは、1 つのマスター加盟店アカウントに複数のビジネスをまとめて、アカウント登録プロセスを簡素化し、ビジネスコストを削減します。取引の承認、売上処理、不正利用の管理など、決済処理のさまざまな側面を扱います。

  • 規制当局
    決済業界のエコシステムにおいて、規制当局とは、決済業界の完全性、セキュリティ、効率性を維持するためのルールや規制を策定して施行する政府機関や組織のことです。決済業界は、金融活動作業部会 (FATF)、消費者金融保護局 (CFPB)、欧州中央銀行 (ECB)、金融行動監視機構 (FCA)、欧州銀行監督局 (EBA)、気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク (NGFS)、各国の中央銀行など、複数のグローバル規制当局の影響を受けています。このような組織は決済業界を形成するうえで中心的な役割を担っており、基準を設定し、法令遵守を実施し、安全で安定した金融エコシステムを確保します。

こうした多様な要素が連携することで、カード提示取引、カード非提示取引、デジタルウォレット取引など、さまざまな種類の取引が可能になります。決済業界のエコシステムは、技術の進歩、顧客行動、規制のシフトに合わせて常に変化しており、これが新たな支払い方法、サービス、ビジネスモデルの出現につながっています。

決済エコシステムの決済処理の仕組み

決済処理エコシステムでは、複数の関係者が複雑に絡み合いながらシームレスで安全な取引が実現しています。「エコシステム」という言葉が示すように、そこには相互に結び付いた関係や役割が存在しています。ここでは、このような関係者が決済処理においてどのように関連し合っているかを概説します。

  1. 顧客: このプロセスは、顧客がクレジットカード、デビットカード、デジタルウォレットなどの支払い方法を使用して購入することを決めたときに始まります。
  2. 企業: 顧客は、物理的な POS 端末でカードを通したり、差し込んだり、タッチしたりすること、オンラインでカード情報を入力すること、またはデジタルウォレットを使用することで、支払い方法を企業に提示します。
  3. ペイメントゲートウェイ: オンライン取引では、ペイメントゲートウェイが、支払い情報を、企業のウェブサイトやアプリから決済代行業者に安全に送信します。
  4. 決済代行業者: 決済代行業者は取引の詳細を受け取り、承認を受けるためにその詳細を決済ネットワーク (Visa、Mastercard、American Express など) に転送します。また、不正利用の可能性やセキュリティ基準への準拠もチェックします。
  5. 決済ネットワーク: 決済ネットワークは決済代行業者から取引の詳細を受け取り、承認を受けるためにその詳細をカード発行会社に振り分けます。
  6. カード発行会社: カード発行会社は、カード保有者のアカウント残高など取引の詳細を確認し、この情報に基づいて、取引を承認または拒否して、その決定を決済ネットワークに送り返します。
  7. 決済ネットワーク: カード発行会社からの応答を受け取った決済ネットワークは、承認または拒否のメッセージを決済代行業者に転送します。
  8. 決済代行業者: 決済ネットワークからの応答を受け取った決済代行業者は、その応答を、直接またはペイメントゲートウェイ (オンライン取引の場合) を介して企業に送信します。
  9. 企業: 承認応答を受け取った企業は、それに従って取引を完了します。承認された場合、企業は商品またはサービスを消費者に提供します。承認された取引は、後に売上として処理される一連の取引に追加されます。
  10. 売上処理: 一日の終わりまたは所定の期間ごとに、企業は、承認された一連の取引を、売上処理のために決済代行業者に送信します。決済代行業者はその一連の取引を決済ネットワークに転送し、決済ネットワークは、その取引を各カード発行会社に振り分けます。
  11. カード発行会社とアクワイアリング銀行: カード発行会社は、承認された取引の売上をアクワイアリング銀行に送金します。このプロセスには通常 1 ~ 3 営業日かかります。その後、アクワイアリング銀行は、手数料を差し引いた売上を企業の口座に入金します。

決済処理の過程において、各関係者は、取引が業界標準や規制に従って迅速かつ安全に行われるようにする独自の役割を担っています。決済エコシステムが円滑に機能するためには、こうした関係者間の連携が不可欠です。

決済業界の動向と予測

ここでは、決済業界の現状、および今後に影響を与える主な動向について企業が知っておくべきことをご紹介します。

市場勢力図

決済業界は競争が激しく、銀行や決済ネットワークなどの昔ながらの関係者と、フィンテック企業や大手テクノロジー企業が市場シェアを奪い合っています。この競争によりイノベーションが進み、顧客体験の向上に焦点が当てられるようになりました。企業はこれをうまく利用して、競争力のある価格設定、強力なテクノロジー、優れた顧客サポートを提供する決済パートナーを選ぶ必要があります。

非接触型決済

近年、Tap to Pay クレジットカードやデジタルウォレットなどの非接触型決済の需要が、利便性、スピード、清潔さを求める顧客の声に後押しされ大きく伸びています。企業は非接触型決済ソリューションに引き続き投資し、顧客の好みに対応しながら、ショッピング体験全体を向上させる必要があります。

小売チャネルの統合

顧客がすべてのチャネルでシームレスな体験を期待するようになり、オンラインショッピング、実店舗での買い物、モバイルショッピングの境界線が曖昧になりつつあります。企業は販売チャネル、在庫管理、決済システムを統合し、ユニファイドコマース体験を生み出すことに注力すべきです。これにより顧客体験が向上するだけでなく、業務が効率化され、データに基づく意思決定が容易になります。

デジタルウォレット

Apple Pay、 Google Pay、Samsung Pay など、デジタルウォレットの普及が進み、スマートフォンを利用して取引を行う顧客が増えています。企業はデジタルウォレット決済を確実に受け付けることで、このような顧客層の拡大に対応し、スムーズな決済体験を提供する必要があります。

仮想通貨

ビットコイン、イーサリアム、ステーブルコインなどの仮想通貨を決済に利用する動きは、他のトレンドに比べるとペースは遅いものの拡大しています。仮想通貨に関する規制環境や一般的な認識が進化する中、テクノロジーに精通している顧客や、海外に顧客がいる企業の場合は特に、仮想通貨を決済手段として受け付ける準備を整えておく必要があります。

生体認証

指紋スキャン、顔認識、音声認識などの生体認証方式が、支払いのオーソリに使用されることが増えています。こうしたテクノロジーはセキュリティを強化し、不正利用のリスクを低減します。企業は対面取引で生体認証を採用することを検討し、オンラインおよびモバイル決済に応用する可能性を探る必要があります。

モノのインターネット (IoT) 決済

IoT デバイスの普及に伴い、車内決済が可能なコネクテッドカーや、商品の注文と決済を自動的に行うスマート家電など、新たな決済機会が生まれています。企業は関連する IoT 決済の機会を探り、この新たな動向を受け入れる準備を整える必要があります。

人工知能 (AI) と機械学習

決済業界では、AI と機械学習が不正利用の検出、リスク管理、顧客体験のパーソナライズに広く利用されています。企業はこうしたテクノロジーを活用することで決済プロセスを強化し、不正利用を減らし、顧客の行動を的確に把握する必要があります。

クロスボーダー決済と送金

EC ストアや国際取引の拡大に伴い、低コストで効率的なクロスボーダー決済に対する需要が高まっています。企業は、クロスボーダー取引に対応し、国際決済特有の課題や規制要件を理解している決済代行業者と連携する必要があります。

リアルタイム決済

即座に売上を送金できるリアルタイム決済システムは、スピードと利便性に対する顧客の需要に後押しされ、一般的になりつつあります。企業は各市場におけるリアルタイム決済への取り組みを認識し、顧客体験の向上とキャッシュフローの合理化を実現するためにも導入を検討すべきです。

企業と決済業界のエコシステムの連携方法

ビジネスで決済エコシステムを最大限に活用するには、以下のステップを検討します。

  • ビジネスニーズと目標の評価
    まずは対象となる顧客層、販売チャネル、平均取引額、予想される決済額など、ビジネス独自の要件を分析します。成長計画や新しい市場またはチャネルへの進出の可能性について検討してください。

  • 支払いオプションの調査
    さまざまな支払い方法 (クレジットカード、デビットカード、モバイルウォレット、銀行振込など) を評価し、顧客層とビジネスモデルに最も関連しているものを特定します。国際市場にサービスを提供する予定がある場合は、複数の通貨とクロスボーダー決済機能に対応することを検討します。

  • 加盟店サービスプロバイダーの選択
    連動する広範な決済ソリューションを提供する包括的な加盟店サービスプロバイダーを探してください。Stripe のようなプロバイダーは冗長性を減らしながら、決済を効率化し、シームレスな顧客体験を提供します。

  • 統合とカスタマイズ
    Stripe が提供する API と開発者ツールにより、決済処理ソリューションを、既存のウェブサイト、モバイルアプリ、POS システムに簡単に統合できます。これにより決済体験を自社ブランドに合わせてカスタマイズし、すべてのチャネルで一貫したユーザーインターフェースを提供することができます。

  • 不正防止
    不正防止を優先するプロバイダーと連携することで、顧客データのセキュリティを確保し、顧客からの信頼を維持できます。たとえば、Stripe Radar の高度な機械学習アルゴリズムとセキュリティ機能は、不正使用取引からビジネスを保護するのに役立ち、チャージバックとそれに伴うコストを削減します。

  • 拡張性と柔軟性
    決済処理のニーズは、ビジネスの成長に伴って変わる可能性があるため、今だけでなく将来にわたって顧客をサポートできる決済処理プロバイダーを探してください。Stripe の決済ソリューションスイートは、顧客のビジネスに合わせて拡張できるように設計されており、請求書発行、サブスクリプション管理、マーケットプレイスでのペイメントファシリテーションなど、必要に応じて追加の機能やサービスを提供できます。

  • レポートと分析
    確かな戦略の中心となるのがデータに基づく学習です。このことからも、決済のパフォーマンスの監視、動向の特定、データに基づく意思決定による決済戦略の最適化を支援する、包括的なレポート / 分析機能を提供するプロバイダーを見つけたいものです。

  • 顧客サポート
    統合プロセス中やサービス利用中に発生する可能性のある問題や懸念に対処できるように、選択した加盟店サービスプロバイダーが、迅速で信頼できる顧客サポートを提供していることを確認してください。

  • 規制への準拠
    加盟店サービスプロバイダーによって法令遵守に関するサポートのレベルは異なるため、必要なものを提供してくれるプロバイダーを選んでください。Stripe の決済ソリューションは、PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) や一般データ保護規則 (GDPR) などの規制への準拠に対応するよう設計されており、このような複雑な要件を社内で管理する負担を減らすうえで役立ちます。

  • コスト分析
    さまざまな加盟店サービスプロバイダーの価格と手数料体系を比較し、予算と取引量に合ったものを見つけてください。Stripe の価格モデルについては、こちらを参照してください。

Stripe のような包括的な加盟店サービスプロバイダーと連携すると、決済の効率化、重複の削減、不正利用からの保護を実現するユニファイドコマース体験を構築することができます。このアプローチは、成長企業の幅広いユースケースに対応し、複数のチャネルや市場にわたり、顧客からの決済を効率的に受け付けて処理することができます。

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