Visa は決済処理分野の主要プレーヤーであり、小規模な小売企業から大規模な多国籍企業まで、さまざまな企業で利用されています。Statista のデータによると、2022 年、Visa が世界中で扱った取引数は 2,420 億件に上りますが、その人気とは裏腹に、特に地域固有の決済手段が普及している地域では Visa には制限があります。中国やアフリカの一部の国といった市場では、さまざまな機能や料金体系を提供する地域固有のネットワークやモバイル決済ソリューションが好まれる傾向にあります。
Visa の利用方法と Visa の決済処理の意味合いを知るには、まずは Visa の製品とグローバル市場におけるプレゼンスを理解しなければなりません。たとえば、Visa に適したビジネスの種類や顧客について知る必要があります。
前述のとおり、Visa は地域固有の決済システムが普及している市場では競争を強いられています。また、不正防止や分析など、多くのサービスを提供していますが、その多くは大企業のニーズに合わせたもので、中小企業やスタートアップ向けではありません。Visa はセキュリティに重点を置き、多層的な保護を取引に採用していますが、そのセキュリティ機能は、必ずしもすべての企業の要件に対応しているわけではなく、特にカスタムソリューションを求めている企業や、特別な法令遵守が必要な分野で事業を展開している企業には合わないことがあります。
ここでは、Visa が事業を展開している場所、方法、サービスの対象、各市場に存在する代替手段について幅広く説明します。また、Visa が提供するサービス、サービス提供に伴う手数料やコストのほか、取引プロセスの各段階でどのようにセキュリティに対応し、支払いを保護しているかについても詳しく説明します。
この記事の内容
- Visa とは?
- Visa が使用されている場所
- Visa の利用者
- Visa の仕組み
- Visa を受け付けるビジネス上のメリット
- Visa のセキュリティ対策
- 企業が Visa 決済を開始するための要件
- Visa に代わる選択肢
Visa とは?
Visa は、顧客、企業、銀行、政府を結び付けて、現金や小切手の代わりにデジタル通貨を利用できるようにしている世界的な決済テクノロジー企業で、金融仲介機関として、最先端かつ広範な決済処理ネットワークを運営しています。Visa はカードネットワークでありながら、カードの発行や金利の設定は行っておらず、電子送金 (EFT) を円滑に行うためのインフラを、承認済みカード発行会社とカード保有者に提供しています。
Visa は主にカードベースの取引を扱っていますが、機能を拡張することで、モバイル決済、非接触型決済、ブロックチェーンベースのソリューションにも対応しています。この適応性の高さが、多様な支払いオプションを求める人から選ばれる大きな理由となっています。
Visa が使用されている場所
世界で流通している Visa デビットカードの数は約 30 億枚に上り、これは Visa が最も広く利用され、受け入れられている決済ネットワークの 1 つであることを示しています。世界の主な金融機関、企業、政府機関のデジタル通貨取引が、Visa のおかげで容易に行われています。
Visa の事業は複数の市場分野と地域で展開され、そのプレゼンスはほぼすべての大陸に及んでいます。
北米とヨーロッパ: Visa は、特にアメリカ、イギリス、アイルランドの支払いカード市場のリーダーで、小売から B2B 決済まで、さまざまな取引形態で顧客や企業に幅広く利用されています。
アジア太平洋: Visa の利用率は、日本、オーストラリア、シンガポールなどで高くなっています。国内の決済ネットワークが充実している中国やインドなどの国では、特に国際取引で支持されています。
中南米: Visa 決済ネットワークは、ブラジルからメキシコまでの間でよく使用されています。現地の金融機関と提携することも多く、現地市場のニーズに合ったカードや決済ソリューションを提供しています。
中東とアフリカ: アラブ首長国連邦、南アフリカ、サウジアラビアなどの主要な経済拠点で受け入れられており、国内および国際的な取引で推奨されることが多くあります。また、金融デジタル決済インフラが発展途上にある、サハラ以南のアフリカ諸国などの市場にも積極的に進出しています。
このような地域の金融機関が Visa を選択することが多いのは、十分なセキュリティ対策と拡張性が確保され、世界中で広く受け入れられているからです。地理的に広く展開され、市場に深く浸透している Visa は、国際的な事業や取引を行う企業にとって、最良の選択肢であり続けているのです。
Visa の利用者
Visa は複数の主要地域で圧倒的な市場シェアを占めており、特にアメリカでのシェアは、クレジットカード市場全体の 60% を超えます。その結果、あらゆる業種の企業が Visa で支払いを行い、顧客からの支払いを受け付けています。ここでは、Visa がよく使われている主な業種の一部をご紹介します。
小売業と EC ストアビジネス
Visa は、小規模なブティックから大規模な百貨店まで、実店舗でよく利用されています。また EC ストアプラットフォームでも定番の支払い方法であり、そのスピードとセキュリティ機能がよく好まれています。接客サービスと旅行業
ホテル、航空会社、旅行代理店での予約や支払いの処理に Visa が広く利用されています。世界中で利用されているため、旅行者や国際的なビジネスからも好まれています。ユーティリティとサービス
電気通信事業者や公共サービス事業者などの継続支払いや 1 回限りの請求に Visa がよく使用されます。自動決済システムが、顧客への請求を簡素化するために Visa 取引をサポートしていることはよくあります。教育機関と公共部門
政府機関や教育機関では、調達やサービスに Visa が利用されています。Visa は大量の取引を処理できるほか、詳細なレベル 3 データを提供します。このデータは、B2B および企業対政府のクレジットカード取引に必要な包括的な取引情報セットで、商品の説明、数量、税金の詳細などの情報が含まれます。レベル 3 データを提供することで、インターチェンジフィーを下げられることが多いため、この情報を収集して送信することは、組織にとってはメリットとなります。B2B ビジネス
Visa は、バーチャルカードや電信送金など、ベンダーへの支払い、給与支払い、一括支払い向けに最適化されたさまざまな B2B 決済オプションをサポートしています。デジタルウォレットとモバイルペイメントプロバイダー
Apple Pay や Alipay などのデジタルウォレットを含む新しい決済技術には、トークン化された取引用の主要カードネットワークの 1 つとして Visa がよく組み込まれています。国際的なコマース
Visa は国際取引決済を得意としており、通貨換算や多通貨に対応しています。これは、国際的なコマースに重点を置くグローバル企業や、海外から買い物をするデジタルネイティブにとっては特に重要です。サブスクリプションサービス
メディアプラットフォーム、サービスとしてのソフトウェア (SaaS) プロバイダーを始めとした、さまざまなサブスクリプションベースのモデルが、自動継続支払いに Visa をよく利用しています。金融市場
ヘッジファンド、アセットマネージャー、および金融セクターのその他の事業体が、資金の移動や流動性の管理など、さまざまな投資活動に Visa を利用しています。
Visa が世界中の金融機関から利用されることが多いのは、Visa が多様な顧客に広く利用されているからでもあります。たとえば、次のような顧客です。
個人の顧客
Visa カードは、日常生活におけるデフォルトの支払いオプションであることが多く、簡単な買い物から複雑な財務管理まで、幅広いニーズに対応しています。Visa は広く受け入れられているだけでなく、セキュリティ面でも優れているため、多くの人から支持されています。個人富裕層
経済的に余裕のある個人を対象とした Visa のプレミアムカードには、旅行保険、コンシェルジュサービス、イベントへの特別参加などの特典があります。多くの場合、利用限度額が高く、高度な財務追跡機能を備えています。フリーランサーとギグワーカー
フリーランスのプロフェッショナルは、支払いの受け取りやビジネス関連の経費の支払いに Visa を利用しています。柔軟性と多様な収入源がこのワークモデルの特徴ですが、Visa は幅広い金融商品でこれに対応しています。デジタルネイティブ
デジタル技術を利用することが多いユーザー、特に若い世代は、デジタルウォレットやモバイル決済システムとの互換性から Visa を選ぶことがよくあります。QR コードやトークン化された取引など、Visa のテクノロジーインフラは、デジタルネイティブの生活スタイルに合っています。旅行者
Visa は世界中で受け入れられており、多通貨機能も充実しています。飛行機をよく利用する人や海外旅行者が Visa を選ぶことが多い理由がこれです。旅行者の多くは海外取引手数料が無料のカードを特に探していますが、この機能は、Visa の多くの商品がサポートしています。中小企業のオーナー
Visa の中小企業向けカードは、経費管理、ビジネス関連の支出に対する特典など、特別なソリューションを提供しています。このようなカードの多くに、支出を分類して追跡するツールが付属しているため、税務書類がさらに作成しやすくなります。起業家とスタートアップ
新しいビジネスベンチャーは、決済プラットフォームや POS システムと容易に統合できることから Visa をよく利用しています。Visa は、バーチャルカードや電信送金などのオプションによって、俊敏性が求められるスタートアップの支出に対応します。学生
Visa のデビットカードやプリペイドカードは、その使いやすさと手数料の安さから学生に人気があります。学生はこのようなカードをよく財務管理への手引きとして利用し、支出を監視したり、クレジット履歴を作成したりします。退職者
高齢者は、Visa のシンプルさと広く受け入れられていることに価値を見いだします。わかりやすい特典があり、メンテナンスをほとんど必要としないカードを選ぶ人が多く、選ばれたカードは、年金や社会保障の支払い管理によく利用されます。
こうしたカテゴリの顧客それぞれが、Visa の機能やメリットに価値を見いだしています。その決済ネットワークは、さまざまな消費行動やライフスタイルに適応し、汎用性が高く、幅広い魅力を備えています。
Visa の仕組み
Visa は取引の承認、決済、売上処理の役割を担っています。取引は暗号化され、通常はミリ秒以内にリアルタイムで処理されますが、これは遅延の少ない大容量の環境で重要です。Visa が注力しているのは不正防止とデータセキュリティで、高度なアルゴリズムと機械学習の技術によって不正行為を検出し、アカウント情報を保護することで実現します。企業やプラットフォームにとってはこれが特に有用です。このような環境では処理する決済が多く、不正利用のリスクによってもたらされる負債が大きくなるためです。
ここでは、Visa が、カードネットワークとして、どのように決済処理を促進しているかをご紹介します。
カード発行とパートナーシップ
Visa は、Visa ブランドのカードを発行する金融機関と提携しています。その金融機関は、顧客関係とリスク評価の責任を負います。取引の開始
カード保有者が取引を開始すると、情報はビジネスの POS 端末からアクワイアラー (ビジネスの銀行) に移動します。取引の経路選定
その後 Visa が仲介者となり、取引情報をカード発行会社に振り分け、さまざまな要因 (利用可能な資金や不正の可能性など) に基づいて承認または拒否を行います。データセキュリティ
この経路選定プロセスにおいて、Visa は機密情報を保護し、不正行為を阻止するために、何重ものセキュリティプロトコルを採用しています。これには、トークン化や多要素認証などが含まれます。売上処理と決済
取引が承認されると、Visa はカード発行会社からアクワイアリング銀行への送金を調整します。これには、すべての取引を照合し、売上として処理する手順が含まれます。これは、通常、各営業日の終了時にまとめて実行されます。手数料体系
Visa は取引ごとに少額の手数料 (通常は取引額全体の数分の一) を請求します。この手数料は、事前に定義された契約に従って、企業、カード発行会社、アクワイアリング銀行の間で分配されます。取引データ
Visa は分析機能やレポート機能も提供しており、企業はこのような機能を利用して、取引パターン、顧客の動向、その他の関連する指標を監視することができます。この情報は、多くの場合、業務効率の改善やビジネス戦略の策定に活用されます。
Visa はまた、アプリケーションプログラミングインターフェイス (API) やソフトウェア開発キット (SDK) も提供しており、決済機能をさまざまなデジタル環境に簡単に統合できます。そのネットワーク相互運用性により国際取引が可能になるため、グローバルに事業を展開する企業に適しています。
Visa を受け入れるビジネス上のメリット
Visa を利用することでビジネスにもたらされるメリットは、基本的な取引の円滑化だけではありません。ここでは企業が得られるメリットをご紹介します。
顧客へのリーチの拡大: Visa を受け入れることで市場アクセスの幅が広がり、カード決済を好む顧客や、他の決済手段を利用できない顧客にリーチできるようになります。これは特に、世界的に認知されている決済システムを利用している海外の顧客に当てはまります。
迅速な取引: Visa の技術により、迅速な取引の承認、決済、売上処理が実現します。このスピードが企業と顧客にメリットをもたらし、大量の売上を短時間で処理できるようになります。
リスク管理: Visa の堅牢なセキュリティプロトコルが不正行為に対する保護を提供し、デジタル取引で企業が直面する可能性のあるリスクを低減します。
顧客のインサイト: 利用可能な詳しい取引データから顧客の動向を分析し、データに基づく意思決定を行うことができます。その後、この情報はマーケティング戦略、在庫計画、その他の業務に活用できます。
汎用性: POS 端末から EC ストアのウェブサイトまで、複数の決済プラットフォームと互換性がある Visa では、決済を受け付ける方法を企業が柔軟に選択できます。
運用上の利点: Visa が提供する API と SDK は、既存のビジネスシステムに統合できるため、経理・会計、在庫の追跡、財務報告がさらに容易になります。
ロイヤルティプログラム: ロイヤルティプログラムや特典プログラムの統合に対応している Visa のインフラにより、リピーター増加や顧客エンゲージメントが促進されます。
Visa はあらゆる業種の企業を対象に、意思決定に役立つデータに基づくインサイトを提供します。企業は高度な分析を通じて、顧客の消費行動や取引の傾向をより深く理解することができます。この詳細なデータは、決済戦略の策定に非常に役に立ちます。
Visa のセキュリティ対策
Visa がサービスを提供している企業や顧客の多様性と、そのグローバルな展開を考えると、Visa の広大な決済環境にとってセキュリティは非常に重要です。取引の完全性とデータの機密性は、高度な何重ものセキュリティメカニズムによって保護されます。以下はその例です。
暗号化方式
Visa が暗号化に使っているのは、基本的な SSL/TLS 技術だけではありません。より階層的な暗号化戦略によって、たとえば、転送データと保存データが異なる方法で暗号化され、データ処理のさまざまな段階で脆弱性が軽減されます。トークン化
トークン化によって、カードデータが置き換えられます。トークン化は、多くの場合、取引履歴などの追加データポイントと統合され、これにより解読が困難な多次元トークンが作成されます。リスク評価アルゴリズム
このアルゴリズムでは、膨大なデータセットで学習させた機械学習モデルを使用してリアルタイム評価を継続的に実施し、その精度を高めていきます。多要素認証の仕様
この機能には、SMS コードベースの認証や、フィッシングに強いアプリケーションベースおよびハードウェアベースの 2 要素 (セキュリティキーなど) が含まれます。生体認証モダリティ
Visa は、指紋認証や顔認証だけでなく、音声認識や行動生体認証などにも対応するように、サポートする生体認証モダリティの数を拡大しています。法令遵守
欧州連合 (EU) の PSD2 (第 2 次決済サービス指令) は、EU の電子決済市場における決済セキュリティの向上、イノベーションの促進、顧客保護の強化を目的とした規制フレームワークです。EU の PSD2 はよく知られていますが、シンガポール、オーストラリア、カナダなど、別の管轄区域にも Visa が準拠する独自の規制があり、その規制によって、満たすべき暗号化またはデータ保存の要件が規定されていることがあります。高リスクの業種
リスクの高い分野、たとえば規制対象物質を扱う業種の企業は、さらに厳しく調査されます。たとえば、取引手数料が引き上げられたり、特定の高度なセキュリティ機能の使用が求められたりします。カスタマイズ製品
別のカードや決済ソリューションが、カスタムセキュリティ機能を備えていることはよくあります。たとえば、コーポレートカードは、財務管理およびセキュリティ機能として動作する、高度な支出管理やリアルタイム通知を備えている場合があります。
Visa が提供する適応性の高い多層的なセキュリティソリューションには、グローバルな決済処理の複雑さと、それに求められるセキュリティへの取り組みが反映されています。
企業が Visa 決済を開始するための要件
企業は、さまざまな API や SDK を通じて、Visa のインフラをカスタムのペイメントゲートウェイに直接統合し、プラットフォームやアプリケーションの枠を超えて拡張性と適応性を実現できます。Visa での決済を開始するには、他の種類のカード支払いと同様、通常は、アクワイアリング銀行や Stripe などの決済処理プロバイダーを通じて加盟店アカウントを設定する必要があります。
企業が Stripe 製品を使用して支払いを受け付けている場合、Visa はすでに有効になっており、Stripe がこの機能を提供しているため、別途加盟店アカウントを設定する必要はありません。契約条件、義務、権利は、通常、企業と加盟店サービスプロバイダー間の契約に記載されています。
企業は加盟店アカウントの機能を確立したら、通常、Visa カードと互換性のある決済端末または POS システムを統合します。これに含まれるハードウェアとソフトウェアは、企業が支払いを受け付ける方法 (対面、オンライン、またはモバイルアプリ) によって異なる場合があります。Visa と Stripe はこれらすべての環境での支払いに対応しており、物理的な Visa クレジットカード、デビットカードのほか、デジタルウォレットに保存されたカードを使用している顧客も利用することができます。
Visa ネットワークでも他のカードネットワークでも、企業は PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) を遵守する必要があります。PCI DSS は、金融取引中および取引後のカード情報を保護するために設計された一連のセキュリティ基準です。
Visa の代替手段
グローバル決済に利用できるのは Visa だけではありません。企業や顧客はそれぞれのニーズに応じて別の方法を選択できます。なお、選択できるものは、地理的な場所、取引の種類、関連するコストによって大きく異なります。アメリカの主要カードネットワークは他に次のようなものがあります。
Mastercard: Mastercard は Visa の競合企業で、同様の特典を提供し、世界中で利用されています。また、分析ツールなどの専門的なビジネスサービスも提供しています。
アメリカンエキスプレス: アメリカンエキスプレスは、あまり一般的ではありませんが、より充実したポイントプログラムや特典 (買い手保護、旅行保険など) を提供していることがよくあります。
ディスカバー: 主にアメリカで利用され、カスタマーサービスと、手数料が比較的安いことで知られています。
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