カート放棄は、顧客とのオンライン取引を扱うビジネスすべてが長年にわたり抱える複雑な課題であり、その影響は業務、販売、顧客関係管理にまで及びます。購入前に放棄されるオンラインショッピングカートの割合は 70% を超え、これはビジネスにとっては収益や機会の損失につながる可能性があります。顧客がカートに入れた商品を購入しない理由はいくつかありますが、多くの場合、それは企業側でコントロールできます。
オンライン販売プロセスは、企業がカート放棄の根本的な原因を理解し、対策を積極的に講じることで改善することができます。この記事では、カート放棄の理由、カート放棄から得られる事業運営に関するインサイト、カート放棄を減らすための現実的なアプローチなど、カート放棄に関するさまざまな情報を提供します。
この記事の内容
- カート放棄とは?
- カート放棄が発生する理由
- カート放棄を減らす方法: 知っておくべき 11 の施策
- Stripe がサポートできること
カート放棄とは?
カート放棄とは、オンラインショッピングの利用者が仮想のショッピングカートに商品を追加したものの、購入せずにウェブサイトやアプリから離れてしまうことです。EC ストア事業者が、購買プロセスに存在する可能性のある問題の指標としてカート放棄を利用して、ウェブサイトの機能性、顧客の迷い、意思決定の障壁を監視することはよくあります。しかし、カート放棄は EC ストア事業者だけの問題ではありません。オンラインで新規顧客を獲得し、取引を行うビジネスにとって、カート放棄はおそらく最重要課題でしょう。
カート放棄が発生する理由
カート放棄は、オンラインショッピングプロセスの特定の要素と結び付けることができます。カート放棄率を効果的に減らすには、企業はまずその根本的な原因を理解する必要があります。ここでは、何が原因でカート放棄が発生するかを詳しく見ていきます。
予期せぬコスト
会計時に予期せぬ費用、たとえば配送料、税金などの追加費用が発生したときに、買い物客がカートを放棄することはよくあります。これには、ショッピングの初期段階で透明性のある価格を提示する、こうした費用を相殺するプロモーションを提供する、といった方法で対処できます。複雑な購入プロセス
購入プロセスの工程が多かったり、不必要な項目があったりすると、潜在的な顧客が離れてしまう可能性があります。ゲスト購入を可能にする、フォームの項目を減らす、といった工夫によって購入プロセスをシンプルにすれば、このような負担を減らすことができます。アカウントを作成する必要がある
一度きりの購入に対してアカウントを作成したくない、と考える買い物客もいます。ゲスト購入オプションを提供したり、登録プロセスを簡素化したりすることで、こうした顧客を購入に導くことができます。セキュリティに関する懸念
支払いプロセスに不安を感じた買い物客がカートを放棄することもあります。信頼できるペイメントゲートウェイを使用し、セキュリティバッジを表示し、データ保護対策について明確な情報を提供することは、信頼を築くのに役立ちます。ウェブサイトのエラーまたは読み込み時間が遅い
技術的な問題が購入を妨げることもあります。スムーズな顧客体験を生み出すには、サイトのパフォーマンスを定期的に監視し、不具合に迅速に対処することが重要です。不明確な返品ポリシー
返品や返金に関するポリシーが不明確だと、顧客はためらってしまいます。明確で賛同を得やすい返品ポリシーを作成し、目立つように表示すれば、潜在的な買い手からより大きな信頼を得ることができます。商品の在庫切れ
購入プロセスを最後まで進めたのに、結局それは入手できない商品だったという状況は、顧客にとってはストレスになります。在庫状況を正確に追跡し、迅速に更新することで、このような状況を減らすことができます。比較購買
顧客によっては、リサーチや比較検討のために商品をカートに追加することがあります。このような顧客は、今すぐに購入する意思はありません。この顧客を再獲得するには、メールリマインダーや個別提案などのリターゲティング戦略を活用します。集中できない
オンラインショッピングでは、他のデバイスからも現実の世界からも邪魔が入るなど、たくさんの気を散らす要素があります。リマインドメールやプッシュ通知を賢く利用することで、顧客を呼び戻し、購入を確定させることができます。
カート放棄を減らす方法: 知っておくべき 11 の施策
カート放棄の理由を理解することで、企業はオンラインショッピング体験を改善し、顧客が購入の過程で直面する障壁に直接対処できます。潜在的な危険それぞれに体系的な方法で対処し、コンバージョン率を高め、売上アップを実現しましょう。ここでは変化をもたらす 11 の施策をご紹介します。
1. 透明性の高い料金体系
透明性の高い料金体系は、潜在顧客との信頼関係を築くうえで重要です。よくある顧客の不満の 1 つが、購入の最終段階で予想外の費用が発生することです。これに対処するためにも、企業は関連する費用すべてをショッピングプロセスの早い段階で提示するよう努める必要があります。これには商品価格だけでなく、送料、税金、その他手数料などの追加コストも含まれます。さらに送料計算ツールなどのツールを、商品ページやショッピングカートに直接統合すれば、購入プロセス終盤で起こりうる想定外の事態をを防ぐことができます。
実践ポイント:
- 最後になって慌てさせることのないようにショッピングプロセスの早い段階ですべてのコストを提示する。
- 商品価格、送料、税金、追加料金など、コストの内訳を顧客に示す。
- 商品ページやカート内に送料計算ツールを組み込むことを検討する。
2. シンプルな購入
購入プロセスがあまりにも複雑だったり長かったりすると、いくら意思が固い買い物客でも購入に二の足を踏んでしまうかもしれません。購入プロセスをシンプルにして、必要な工程数を減らすことで、顧客体験がよりスムーズかつユーザーフレンドリーなものになります。自動入力オプションのような技術によりショッピングの負担が減り、買い物客が商品を購入するまでに必要な工程数を最小限に抑えられます。さらに、さまざまな決済フローの A/B テストを一貫して実施することで、購入完了率を最大限に高めるプロセスを、企業が理解し実装することができます。
実践ポイント:
- 購入プロセスの工程数を減らす。
- 可能な場合は自動入力オプションを提供し、買い物客の手作業での入力を減らす。
- 購入完了率を最大限に高めるプロセスを判断するために決済フローの A/B テストを定期的に実施する。
3. 柔軟な支払いオプション
柔軟な支払いオプションはますます重要になっています。多様化する買い物客の好みに対応するため、企業はクレジットカードやデビットカードなどの標準的なオプションから、ますます人気が高まっているデジタルウォレットのような代替手段まで、さまざまな支払い方法を受け入れるよう努める必要があります。高品質商品やプレミアムサービスについては、支払いプランや融資オプションがあれば、このような商品やサービスが顧客の手に届きやすくなりハードルが下がります。これがカート放棄の減少につながります。
実践ポイント:
- 広範な支払い方法に対応する。
- 高額商品の場合は、支払いプランや融資オプションを用意する。
4. 信頼構築の手段
カスタマージャーニーを通じて信頼を確立し、維持することが重要です。信頼を構築する手段として、たとえば、セキュリティバッジや証明書を目立つように提示すれば、顧客の個人データや財務データの安全性を顧客に保証することができます。信頼をさらに高めるために、商品のカスタマーレビュー、評価、推薦文を掲載するのもよいでしょう。これにより商品の正当性と品質が強化されます。
実践ポイント:
- セキュリティバッジや認証を明示して、顧客にデータの安全性を保証する。
- 商品のカスタマーレビュー、評価、推薦文を掲載し、購入の意思決定をより確かなものにする。
5. ウェブサイトのパフォーマンスの最適化
顧客の期待がますます高まる中で、ウェブサイトのパフォーマンスの最適化は欠かせない要件となっています。読み込みに時間がかかったり不具合が発生したりすると、顧客の購買意欲はすぐに失われてしまいます。このことからも、モバイルとデスクトップの両方のインターフェイスを定期的に監視し、最適化する必要があります。顧客の多くがデバイスを切り替えながら買い物をしているため、企業はすべてのプラットフォームで一貫性がある、かつレスポンシブな体験を保証する必要があります。
実践ポイント:
- サイトのスピードを定期的に監視し、モバイルとデスクトップ向けに最適化する。
- 複数のデバイスが買い物中に使用される可能性があることを認識し、サイトがどのデバイスに対してもレスポンシブであることを確認する。
6. 明確な返品、返金、キャンセルポリシー
明確な返品、返金、キャンセルポリシーには 2 つの目的があります。1 つは潜在的な買い手に信頼感を与えること、もう 1 つは顧客が購入した商品やサービスに満足できなかった場合に取るべき手順を明確にすることです。こうしたポリシーを、特に購入時に目立つように提示することで、購入後の後悔に関する懸念を払拭できます。元払いの返品用ラベルを提供する、無料で返品できることを宣伝する、といった施策が購入完了率をさらに高めます。
サブスクリプションベースのビジネスやマーケットプレイス、プラットフォームの場合は、サブスクリプションの種類の変更、一時停止、キャンセルを簡単に行えるようにします。既存の顧客が簡単に離れられるようにすることでカート放棄を減らす、という考えは、常識的に考えると理解しにくいかもしれません。しかし、ブランドと関わるのをやめようとしている顧客を思いとどまらせようとすることは、ネガティブな口コミやブランド全体へのダメージにつながります。必ずしも顧客を引き留めることにはなりません。
実践ポイント:
- ポリシーは目立つように (できれば購入時にクイックリンクで) 表示する。
- さらに、元払いの返品用ラベルを提供するか、無料で返品できるようにする。
- セルフサービスポータルを使って、サブスクリプションレベルの変更やキャンセルを顧客が簡単に行えるようにする。
7. 在庫管理
在庫管理が効果的に行われているかどうかは、カート放棄率に裏で大きな影響を及ぼします。時間をかけて購入手続きを進めたのに、最後になって在庫切れであることがわかった、という状況は、買い物客にとってはストレスになります。リアルタイムの在庫追跡システムは、このような問題を軽減できます。また、顧客が希望する商品が再び入手可能になったことを再入荷通知で知らせることで、潜在的な買い手を囲い込むことができます。
実践ポイント:
- リアルタイム在庫追跡を導入し、商品の購入プロセスの後半で在庫切れであることが判明する、という状況を避ける。
- 在庫切れだった商品の再入荷通知を送ることを検討する。
8. リターゲティング戦略
リターゲティング戦略によって、カートを放棄した潜在顧客に再度アプローチします。特にカートに商品を入れたままにしている顧客へのメールキャンペーンは、説得力のあるリマインダーになります。さらに、顧客がカートに追加した商品やサービスのダイナミック広告をソーシャルメディアプラットフォームに配信すれば、顧客の興味を再燃させ、コンバージョンを促進することができます。
実践ポイント:
- カートを放棄した顧客を対象にメールキャンペーンを実施し、選択した商品を思い出させる。
- 顧客のカートにあった商品のダイナミック広告をソーシャルメディアプラットフォームに配信する。
9. 魅力的なユーザー体験
魅力的なユーザー体験とは、美しさだけではありません。人目を引くビジュアルと詳細な商品説明が重要な役割を果たす一方で、インタラクティブな要素、たとえば 360 度の商品ビューでもエンゲージメントは深まります。また、営業時間中のライブチャットサポートで、顧客からの問い合わせや、カート放棄につながる可能性のある懸念事項にリアルタイムに対応することも効果的です。
実践ポイント:
- 営業時間中にライブチャットサポートを提供し、緊急の質問や懸念に対応します。
- 魅力的なビジュアル、詳細な商品説明、360 度の商品ビューなどのインタラクティブな要素を活用して顧客の興味を引きつける。
10. 比較購買への対応
比較購買は微妙な意味合いを持つ課題です。顧客がより賢く、そして要領よくなると、ブランドを差別化することが何にも増して重要になってきます。ブランド独自の強みをアピールするだけでなく、最安値保証やロイヤルティプログラムによってリピーター客に特典を提供するなど、目に見えるメリットを提供する必要もあります。
実践ポイント:
- ブランド独自の強みを目立たせ、競合他社との差別化に焦点を当てる。
- 最安値保証やリピーター客向けロイヤルティプログラムを提供する。
11. 気が散る原因となるものを最小限に抑える
焦点が絞られた合理的な購入プロセスで、気が散る原因を最小限に抑えることで、顧客が買い物を中断するポイントを減らし、カート放棄を減らすことができます。プロモーションコードは魅力的ですが、控え目に提示する必要があります。コード入力ポイントが目立つと、顧客は割引を求めてサイトを離れてしまい、そのまま戻らず購入が確定されないというリスクが生じます。
実践ポイント:
- 購入プロセスをすっきりとしたデザインにして、中断ポイントを減らす。
- プロモーションコードを提供する場合は、コード入力ポイントが目立たないようにして、顧客が割引を求めてサイトを離れるのを防ぐ。
こうした戦略には継続的な分析と反復が求められます。企業はデータを収集し続け、顧客からのフィードバックを求め、観察された行動パターンや市場の変化に合わせて調整を行っていかなければなりません。カート放棄には継続的に対処していく必要がありますが、真剣に取り組むことで、購入完了率を大幅に改善することができます。
Stripe がサポートできること
Stripe が提供するソリューションの中には、カート放棄の主な理由に直接対応するものもあります。これにより、顧客の購入体験がよりスムーズになり、購入完了率が大幅に高まる可能性があります。ここでは、カート放棄のリスクを軽減するうえで Stripe がどのように役立つかをいくつかご紹介します。
予期せぬコストへの対応
カート放棄の主な理由は、購入プロセスで発生する予期せぬコストです。Stripe を使用すれば、送料や税金などのすべてのコストを最初から明確に表示できるほか、プロモーションや割引コードを、Stripe Checkout のインターフェイスに直接統合することも可能です。顧客が支払い金額を正確に把握できるため、カート放棄につながりかねない驚きをなくすことができます。購入プロセスの簡素化
購入手続きが面倒だと、顧客の購買意欲に水を差すことになりかねません。Stripe Checkout では、すっきりと 1 ページにまとめられたページに必要な情報のみを入力すればよいため、このプロセスがシンプルです。これにより顧客の工程数が減り、カート放棄の可能性も低くなります。ゲスト購入とアカウント作成
Stripe には、ゲスト購入オプションが用意されています。これはアカウントを作成したくない顧客のためのオプションで、一度しか購入しない顧客には特に便利です。また、アカウントを作成することを選択した顧客は、自身の情報を保存できるため、今後の購入手続きをより迅速かつ簡単に行うことができます。セキュリティ対策
オンライン取引では信頼が重要な役割を果たします。Stripe は、PCI 準拠や暗号化など、堅牢なセキュリティプロトコルを備えています。また、購入時に Stripe のよく知られたセキュリティバッジを提示することで、データの安全性に対する顧客の懸念が和らぎ、セキュリティ上の不安によるカート放棄が発生しにくくなります。ウェブサイトのパフォーマンス
Stripe ではウェブサイトのスピードやエラー率を直接コントロールすることはできませんが、Stripe API は、迅速な読み込みと低遅延を実現できるよう設計されています。また、継続的にパフォーマンスが監視され、顧客の購入を妨げる決済プロセスの中断を最小限に抑えることができます。透明性の高い返品ポリシー
Stripe では企業向け返品ポリシーを扱っていませんが、カスタマイズ可能な購入インターフェイスの購入ペインに返品ポリシーへのリンクを含めることができ、顧客は購入を完了する前に簡単に返品ポリシーを確認できます。これにより、カート放棄につながりかねない懸念に対処できます。在庫の更新
Stripe は在庫管理システムと統合して、商品の在庫状況をリアルタイムで反映させることができます。このため購入の最後の段階になって、結局それが入手できない商品だったことが判明する、という状況がなくなります。リターゲティングとリマインダー
Stripe は、他のマーケティングソリューションと連携して、メールリマインダーや個別提案などのリターゲティング戦略を促進できます。これはリサーチや比較購買にカートを利用している顧客に対応するうえで特に効果的です。気が散る原因となるものを最小限に抑える
気が散る原因を完全には排除することはできませんが、Stripe のスピーディーな決済機能を使えば、リピーターが購入プロセスの大部分をバイパスできます。このため、たとえ中断されたとしても簡単に購入を完了することができます。
Stripe の包括的な一連の機能は、カート放棄の原因となる根本的な問題の多くを解決するのに役立ちます。Stripe の決済ソリューションを導入することで、企業はよりスムーズで魅力的な決済体験を生み出し、さらに多くの購入を完了まで導くことができます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。