E-コマースビジネスのリーダーにとって、購入コンバージョン率を理解することは長期的な成功を実現する鍵となります。「コンバージョン率」とは、ウェブサイトの閲覧者のうち、閲覧やスクロールの段階から、特定の行動 (購入するなど) を実行する最終的な段階に至る人の割合を指します。
顧客の体験の中で最も重要な段階の 1 つである決済には、コンバージョン率を向上させるための多くの機会があります。ただし、E-コマース企業が、コンバージョン率の概要と、コンバージョンファネルの各段階でコンバージョン率を最適化する方法を考える手段は多種多様にあります。
決済ファネルを改良するために徹底した計画を立てるのであれば、カード支払い拒否の誤判定、決済時のフリクション、不正利用のリスクなど、購入プロセスに時間がかかる原因になったり、顧客の購入を妨げたりする可能性のある複雑な問題に対処する必要があります。これを十分に行うことにより、顧客満足度、全体的なコンバージョン率、収益を向上させることができる決済ファネルになります。
この記事では、E-コマースのコンバージョン率について知っておくべきことと、決済ファネルの微調整によってコンバージョン率を向上させる方法について説明します。
この記事の内容
- 一般的な E-コマースのコンバージョンアクションとは
- E-コマースビジネスでのコンバージョン率の計算方法
- E-コマースの良いコンバージョン率とは
- E-コマースのコンバージョン率最適化とは
- コンバージョン率を向上させるための戦略
一般的な E-コマースのコンバージョンアクションとは
ウェブサイトの閲覧者が取るアクションで、企業がコンバージョンとして計測できるものには多くの種類があります。E-コマース以外のウェブサイトのコンバージョンアクションとしては、メールニュースレターへの登録からレポートのダウンロード、購入の実行まで、ビジネス目標に応じてさまざまなものがあります。しかし、E-コマースウェブサイトの場合は、ウェブ注文が計測すべき最も重要なコンバージョンアクションになります。
企業は、コンバージョン率の背景状況を把握し、最良のコンバージョン最適化戦略を決定するために、直帰率や離脱率など、ウェブサイト閲覧者の挙動に関連する追加の分析情報を収集することもできます。
E-コマースビジネスでのコンバージョン率の計算方法
E-コマースのコンバージョン率は、一定期間中のサイト閲覧者の総数に対する、注文 (主要なコンバージョンアクション) に至ったサイト閲覧者の割合です。企業のコンバージョン率を計算するには、最初に調査期間を設定する必要があります。次に、その期間に完了したコンバージョン数と、ウェブサイトへのユニークビジターの総数を求めます。
注文数を訪問総数で割ります。そして、全体を 100 倍にします。たとえば、1,000 人のユニークビジターに対して 50 件の注文があった場合、コンバージョン率は 5% になります。
E-コマースの良いコンバージョン率とは
2023 年の世界の E-コマースの平均コンバージョン率は 3.68% でした。E-コマースの新規参入企業は、まず 1% - 2% のコンバージョン率を目標とし、そこから向上を図ることがよくあります。とはいえ、E-コマースの良いコンバージョン率を生み出す要素は、業界や季節といった企業の制御の及ばない要因や、決済ファネルの改良や機能性に優れたウェブサイトの維持といった企業の制御の及ぶ要因に応じてさまざまに変化します。
サイト滞在時間、直帰率、広告費用対効果、顧客獲得単価、クリックスルー率、1 訪問あたりのインタラクション数など、その他の指標のすべてが、コンバージョンファネルの健全性を表しています。
E-コマースのコンバージョン率最適化とは
E-コマースのコンバージョン率最適化 (CRO: Conversion Rate Optimization) とは、ウェブサイトの閲覧者がコンバージョンする割合を向上させる幅広い戦略を指します。これは、ホームページから商品ページ、決済体験に至るまで、ウェブサイト上のすべての顧客タッチポイントで実施できます。
E-コマースのコンバージョン最適化は、継続的かつ発展的に行うものであり、1 回限りで終わる対処方法ではありません。コンバージョンはビジネスのさまざまな側面に影響されます。コンバージョン率を高めるために、多様な最適化アプローチを取り入れ、継続的に実験して、アプローチを改良していくことができます。
コンバージョン率を向上させるための戦略
コンバージョン率には非常に多くのビジネス要素が影響するので、どこから始めればよいかわからないことがあります。
購入の瞬間を含め、コンバージョンファネルの最も重要な段階について考えてみましょう。顧客の購入体験を可能な限り手早く簡単なものにするために、さまざまな戦略を取ることができます。これにより、コンバージョン率を向上させ、最終的にはビジネスを成長させることができます。
ここでは、購入数とコンバージョン率の向上に役立つツールや戦略の概要について説明します。
優れた決済インフラとインターフェイスを構築する
ビジネスの決済体験を改良するには、細部が重要です。つまり、インフラのコンポーネント、ポリシー、業務ワークフローを一つ一つ調整する必要があります。ただし、それらの要素やプロセスのすべてが相互接続されて実現する機能を見直しながら、顧客体験全体について検討することを忘れないでください。E-コマース企業の場合は特に、購入体験がスムーズでなければなりません。そのためには、効率的で信頼できる決済インフラと直感的なユーザーインターフェイスが必要です。これを実現するソリューションをいくつか次に示します。
- Stripe Checkout では、コンバージョンのために最適化された構築済みのホスト型決済ページが、すぐに利用できる状態で企業に提供されます。
- Stripe Payment Links では、ブラウザを利用できるすべての人に送信できるスタンドアロン型決済ページへのリンクや QR コードを生成することにより、ウェブサイトを持たない企業でもオンライン販売を行えるようにします。
- Stripe Elements は、Stripe の豊富な UI 構成要素のスイートです。企業が自社サイトに完全にマッチした、コンバージョンを促進する安全な決済体験を設計するのに役立ちます。
決済時のフリクションを軽減する
顧客は、決済時に困難なことがあると、購入を完了せずに去ってしまうかもしれません。摩擦のない決済体験を構築することは、コンバージョン率の向上だけでなく、顧客生涯価値 (LTV) の向上にもつながります。
結局、コンバージョンのための決済プロセスの最適化で重要になるのは、スピードと使いやすさです。顧客が行わなければならない作業が少なければ少ないほど、顧客が取引を実行する可能性は高くなります。つまり、顧客がクリックしなければならない回数や、手動で情報を入力しなければならないフィールド数を減らします。
E-コマースビジネスでは、努力の要らない決済体験をサポートするソリューションに投資することが重要です。たとえば、Link は顧客の決済情報を自動入力するので、ログインユーザーのコンバージョン率を 7% 以上向上できます。Link では、顧客がワンクリックで決済できます。
不正利用対策を実施し、支払い拒否の誤判定を防止する
オンラインの不正利用は、多大な金銭的損失をもたらし、企業経営に深刻な影響を及ぼす場合があります。2022 年の Stripe の調査で、世界中のビジネスリーダーの 70% 以上が、不正利用に対処するためにリソースの転向を余儀なくされたことが判明しました。不正防止は、E-コマースビジネスにとって常に最重要課題ですが、過度な対策は大きな犠牲も生むことがあります。不正利用の軽減に取り組んでいる企業が、正当な支払いを誤ってブロックしてしまい (「支払い拒否の誤判定」と呼ばれます)、その顧客を完全に失ってしまうことがよくあります。
企業は、不正防止に積極的に取り組むと同時に、支払い拒否の誤判定を防止する必要もあります。Stripe Radar は、世界中の何百万もの企業から収集したデータに基づいてトレーニングされた機械学習 (ML) を使用して不正利用を検出および軽減するソリューションです。Stripe では、不正利用パターンの変化とビジネスニーズの進化に対応するために、Radar のアルゴリズムを更新し続けています。また、他の Stripe 製品と完全に連携しているので、配送先住所やその他の顧客情報など、他の決済情報にすばやく簡単にアクセスできます。
すばやく簡単に顧客が認証できるようにするツールは、支払い拒否の誤判定の防止に役立ちます。Stripe Adaptive Acceptance では、ML を使用して支払い拒否の誤判定の可能性を減らし、支払い拒否の誤判定で失われることがある収益を回復させます。
多様な決済手段を提供する
企業が多様な決済オプションを十分に提供していないことが原因で、コンバージョン率が低くなる場合があります。Stripe のデータによれば、世界の E-コマースのうちカード決済が占める割合は 40% に過ぎません。顧客の好みに合う決済手段に対応している企業は、世界中のより多くの顧客にリーチし、取引コストを削減し、コンバージョン率を向上させることができます。
国際的なビジネスの場合は、さまざまな国や地域で好まれている幅広い決済手段を検討する必要があります。自社のビジネスに適していて、かつ地域の顧客に好まれている決済手段がどれなのか見当が付かない場合があります。Stripe なら、主要なカードネットワークのカードを含む、世界中で最も人気のある 50 種類以上の決済手段に対応できます。
後払い (BNPL) 決済オプションは、顧客に購入代金を提供して分割支払いを可能にするものです。金利や追加手数料はかからないことがほとんどです。このオプションにより、より柔軟な決済を顧客に提供できます。Affirm、Afterpay、Klarna などの BNPL サービスが、決済時に他の決済オプションと一緒に表示されます。
長期的な返済が可能であれば、顧客が大きな額の買い物をする可能性は高くなります。BNPL を利用すると、企業はより多くの顧客にリーチできます。特定の商品を購入できない人、つまり、多額の買い物をクレジットカードで決済できない人が、すばやく購入して決済できるようになるからです。また、企業は、前払いで支払いを受けるので、平均注文額の増加とコンバージョン率の向上というメリットがあります。
BNPL サービスは、企業が資金提供を工面することなく、顧客の購入ハードルを下げるので、コンバージョンの向上と収益の増加に役立ちます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。