EC ストアでの不正利用の防止と検知: 事業者のための 16 のベストプラクティスと戦略

  1. はじめに
  2. EC ストアでの不正利用とは
  3. EC ストアでの不正利用の種類
  4. EC ストアでの不正利用の防止と検知
    1. 1. 多要素認証 (MFA)
    2. 2. 機械学習と人工知能
    3. 3. 安全なペイメントゲートウェイ
    4. 4. SSL 証明書と暗号化
    5. 5. IP 追跡と地理位置情報
    6. 6. 速度チェック
    7. 7. 不正防止対策チーム
    8. 8. セキュリティの定期的な監査と更新
    9. 9. 従業員のトレーニングと意識向上
    10. 10. 顧客教育
    11. 11. チャージバック管理
    12. 12. 取引とユーザー行動の監視
    13. 13. 不正検知のルールとフィルターの設定
    14. 14. 住所・カード確認システムの採用
    15. 15. 他の事業者や業界団体とのつながり
    16. 16. 生体認証と行動分析の活用

今日の EC ストア事業者は、自身のプラットフォームの安全性を確保し、顧客を EC ストアでの不正行為から守る必要があります。オンライン取引の脆弱性を絶えず狙っている巧妙なサイバー犯罪者の増加は、事業者と顧客の双方にとって常に脅威です。

このガイドでは、EC ストア事業者が遭遇する可能性のある EC ストアでの不正行為の種類と、不正行為の検知と防止に役立つ幅広い戦略とツールについて知っておくべきことをご紹介します。

この記事の内容

  • EC ストアでの不正利用とは
  • EC ストアでの不正利用の種類
  • EC ストアでの不正利用の防止と検知

EC ストアでの不正利用とは

EC ストアでの不正利用とは、オンライン取引中に発生するあらゆる種類の不正行為または詐欺的行為であり、一般に、金融情報や個人情報の盗難、不正購入、製品やサービスに関する虚偽の請求などが含まれます。このような行為は通常、オンライン小売業者や決済システム、顧客を標的とし、金銭的損失、評判の低下、顧客からの信頼の失墜を引き起こします。

EC ストアでの不正利用の種類

EC ストアでの不正利用はさまざまな形で発生するため、どのような形で行われるかは、不正行為者がどのようにして事業者や顧客を標的に選ぶかによって異なります。ここでは、特に一般的な種類の不正行為について、概要を簡潔にご説明します。

  • なりすまし犯罪: 盗み出した個人情報を使ってオンラインで不正購入をするもので、多くの場合、何も知らない被害者に金銭的損害が生じます。

  • クレジットカードの不正利用: 多様な手段でクレジットカード情報を取得して、未承認の取引に利用する手口で、カード保有者や事業者が金銭的損失を被ることにつながります。

  • 不正チャージバック: 顧客が正当な取引に対して不審請求を申請し、購入したことなどない、あるいは商品を受け取っていないと主張する手口であり、最終的に事業者が経済的損失を被ることになります。

  • フィッシングとソーシャルエンジニアリング: サイバー犯罪者が詐欺的な手法を使って顧客を言葉巧みに操り、機密性の高い個人情報や金融情報を口外させたり、不正利用やセキュリティ侵害につながる行為をさせたりします。

  • アカウントの乗っ取りによる不正利用: 権限のないユーザーが、たいていはログイン認証情報を盗み出すなどして被害者のアカウントにアクセスし、不正な取引や個人情報の盗難に利用します。

  • 返金詐欺: 返金ポリシーや返金手続きを悪用し、商品を受け取っていない、あるいは商品に損傷があるなどと偽って、不当な返金や交換をさせようとする手口です。

  • アフィリエイト詐欺: 悪質なアフィリエイトが、アフィリエイト向けマーケティングプログラムの報酬体系を悪用し、偽のリード、売上またはクリック数を発生させることで、違法に支払いを受けようとする手口を指します。

  • 偽造品: 低品質の商品または偽造品を正規品と偽って売り出し、顧客をだまして、ブランドの評判を失墜させます。

  • 直送詐欺: 顧客をだまして、実際には発送していない商品の代金を受け取る手口や、盗み出したクレジットカード情報を使って他の小売業者から商品を購入し、被害者宛に直送させる手口を指します。

オンラインショッピングとデジタル取引の急速な増加に伴い、EC ストアでの不正利用に対する懸念が高まっています。このような脅威に対処するため、事業者は、堅牢なセキュリティ対策、不正検知システム、従業員トレーニングに投資して、不正行為が行われるリスクを最小化し、顧客と自社の両方を守る必要があります。事業者が活用できる戦略は、EC ストアでの不正利用の種類と同じように多様であり、固定的なものではありません。

EC ストアでの不正利用の防止と検知

事業者はさまざまな脅威から自社と顧客を守るため、EC ストアでの不正防止、検知、対応に向けて、複数の方法を組み合わせて使用しています。その方法の一部を以下に示します。

1. 多要素認証 (MFA)

多要素認証とは、2 段階認証 (2FA) とも呼ばれる、セキュリティ上のプロセスのことです。このプロセスでは、ユーザーはログインしたり、機密性の高い取引を完了させたりする際に、本人確認のために少なくとも 2 つの異なる形式の本人確認情報を提供するよう求められます。MFA を設定してセキュリティを一段階引き上げておけば、権限のないユーザーが 1 つの形式の本人確認情報に不正アクセスした場合でも、不正利用者がアカウントやシステムにアクセスするのが困難になります。

認証要素には、主に次の 3 つのカテゴリーがあります。

  • 記憶情報 (Something you know): ユーザーが本人確認のために提供または回答する必要のあるパスワード、PIN、セキュリティ質問など。
  • 所持情報 (Something you have): ハードウェアトークン、認証アプリがインストールされたスマートフォン、スマートカードなど、ユーザーが所持する物理的なモノやデバイス。
  • 生体情報 (Something you are): 指紋スキャン、顔認識、音声パターンなど、個々のユーザーに固有の生体情報識別子。

MFA では通常、ユーザーがアクセスするためには、これらの要素から少なくとも 2 つを組み合わせる必要があります。たとえば、ユーザーはパスワード (記憶情報) を入力し、スマートフォン (所持情報) の認証アプリで生成されたワンタイムコードを入力しなければならない場合です。こうなると、攻撃者は複数の認証要素を侵害する必要があるため、不正アクセスがより困難となります。

2. 機械学習と人工知能

機械学習 (ML) と人工知能 (AI) は、EC ストアでの不正利用の防止と検知に利用される機会が増えています。大量のデータを分析し、パターンを特定し、変化し続ける傾向に適応する能力を備えているためです。こうした技術には、不正利用の可能性がある行為を検知する精度と効率を高め、手作業によるレビューとルールベースシステムへの依存を減らす効果があります。

ここでは、ML と AI を EC ストアでの不正利用の防止と検知に応用する方法をいくつかご紹介します。

  • 異常検知: ML アルゴリズムは、膨大な取引データを分析することで、一般的に見られるパターンから逸脱した異常行動や不審行動を特定できます。その結果、こうした変則行動にフラグを立て、さらに調査できるようになります。

  • リスクスコアリング: AI システムは、取引履歴、ユーザー行動、地理位置情報、デバイス情報など、さまざまな要因に基づいてリスクスコアを取引に割り当てることができます。リスクの高い取引にはフラグを立て、手動レビューや追加の認証措置を実行することが可能です。

  • 予測分析: 過去のデータからパターンを特定することにより、ML モデルは不正利用の可能性がある行為を予測できるため、事業者はリスクを軽減するための対策を事前に講じることができます。

  • 行動分析: AI を利用したシステムでは、タイピング速度、マウスの動き、閲覧パターンなどのユーザー行動を分析することで、不正利用やアカウントの乗っ取り行為を示唆している可能性のある不規則な動作を特定できます。

  • リアルタイムの監視: ML と AI は大量のデータをリアルタイムで処理できるため、潜在的な脅威を即座に検知して対応できます。

  • 適応学習: ML と AI の主なメリットの 1 つは、新たな傾向や、不正行為者が使う進化し続ける戦略を学習し、適応できるようにする能力です。こうした継続的な学習プロセスは、不正検知システムの効果を長期的に維持するのに役立ちます。

  • 誤検知を減らす: 従来型のルールベースの不正検知システムでは、大量の誤検知が発生する恐れがあり、顧客の不満と売上の損失につながる可能性があります。ML とAI は、より幅広い要素を考慮し、新たな情報に動的に適応することで、不正検知の精度を向上させることができます。

3. 安全なペイメントゲートウェイ

安全なペイメントゲートウェイには、顧客、事業者、金融機関の間で、オンライン決済をより安全に処理できるようにする効果があります。こうしたゲートウェイでは、クレジットカード番号や銀行口座情報など機密性の高い金融情報が確実に暗号化され、安全に送信されるため、不正アクセス、データ侵害、不正利用を防ぐことができます。

4. SSL 証明書と暗号化

SSL (Secure Sockets Layer) 証明書と暗号化は、ユーザーのブラウザーとウェブサイトのサーバーの間で送信される機密データを保護するため、情報を不正アクセスや改ざん、傍受から遠ざけ、機密性と安全性を確保します。

SSL 証明書はデジタル証明書の一種で、ウェブサイトの身元を認証し、ユーザーのブラウザーとウェブサイトのサーバー間に暗号化した接続を確立するために使用されます。ここでは、SSL 証明書と暗号化が安全なオンライン通信にどのように役立っているのかをご説明します。

  • 認証: SSL 証明書はウェブサイトの身元を確かめるために、ドメイン名が正しい組織に登録されていることを確認します。これにより、ユーザーは、自分が今通信しているのは目的のウェブサイトであって、悪意のあるなりすましサイトではないことを確信できます。

  • 暗号化: SSL 証明書は、ユーザーのブラウザーとウェブサイトのサーバー間で送信されるデータを安全に暗号化する暗号化アルゴリズムの使用を可能にします。暗号化しておくことで、ログイン認証情報、クレジットカード番号、個人データなどの機密情報の漏洩を防ぎ、権限のない人物が傍受したり読み取ったりできないようにします。

  • 安全な閲覧体験: SSL 証明書のあるウェブサイトには、ユーザーのブラウザー上に南京錠のアイコンまたは緑色のアドレスバーが表示され、接続が安全であることが示されます。こうした視覚的な表示があれば、ユーザーは自分の情報が保護されているという安心感を得られます。

  • 信頼性と信用性の向上: SSL 証明書を取得し、暗号化を活用することで、そのウェブサイトがユーザーのデータとプライバシーの保護に取り組んでいることを示し、ユーザーとの信頼関係を築くことができます。その結果、ユーザーからの信用、購入完了率、顧客ロイヤルティが高まります。

  • SEO のメリット: Google などの検索エンジンでは、SSL 証明書と安全な接続が検索アルゴリズムのランキング要素として考慮されます。SSL 証明書があるウェブサイトは、検索エンジンによるランキングが向上し、知名度の向上とトラフィックの増加をもたらす可能性があります。

  • 法令遵守: クレジットカード情報の取り扱いに関しては、多くの業界と、PCI DSS (Payment Card Industry Data Security Standard) をはじめとする規制が、SSL 証明書と暗号化の使用による機密データの保護を義務付けています。

ウェブサイトの所有者が SSL 暗号化を導入するには、信頼できる認証局 (CA) から SSL 証明書を取得し、ウェブサーバーにインストールする必要があります。インストールが完了すると、ウェブサーバーはその SSL 証明書を使用してユーザーのブラウザーとの間で暗号化された接続を確立し、送信されるすべてのデータを安全に保ち、不正アクセスから保護することができます。

5. IP 追跡と地理位置情報

IP 追跡と地理位置情報は、インターネットに接続されたデバイスの地理的位置を、その IP (インターネットプロトコル) アドレスから判断するための技術です。こうした手法は、不正取引や不正アクセスである可能性のある異常行動や不審行動を特定するのに役立つため、EC ストアでの不正利用の防止と検知に広く採用されています。

ここでは、IP 追跡と地理位置情報を EC ストアのセキュリティに活用するいくつかの方法をご紹介します。

  • 異常なパターンの検知: IP アドレスと地理位置データを監視することで、複数の取引がそれぞれ異なる場所から短時間内に行われている、あるいは、なじみの薄い場所からログイン試行が実行されているといった、不正利用やアカウントの乗っ取り行為を示唆している可能性のある不審な行動を見つけられます。

  • 地理位置情報ベースの制限: 地理位置情報フィルターを設定すると、不正利用率の高い特定の国や地域からの取引やアクセス試行をブロックし、不正行為が起こるリスクを低減できます。

  • 住所確認サービス: IP アドレスの地理位置データと、取引の際に顧客から提供された請求先住所情報を比較すると、不一致の検知と不正取引の防止に役立ちます。

  • デジタルアイデンティティ分析: IP 追跡と地理位置情報を、指紋認証など他のデータポイントと組み合わせると、ユーザーについてより包括的なデジタルアイデンティティを作成できます。そうすることで、取引に伴うリスクをより正確に評価し、不正利用の可能性があるか見極めるのに役立ちます。

  • 地理位置移動速度 (Geo-velocity) チェック: 連続した複数回の取引やログイン試行間の時間と距離を監視することで、不審な行動を検知しやすくなります。たとえば、ユーザーがある国で購入し、その後、非現実的な時間内に別の国で購入したのであれば、アカウントの不正アクセスやクレジットカード情報の盗難があったことを示している可能性があります。

  • ユーザー体験のカスタマイズ: 地理位置データを使用して、ユーザーがいる場所に応じてコンテンツ、言語、通貨オプションをパーソナライズし、顧客体験全般を向上させることができます。

  • 法規の遵守: 事業者によっては、データプライバシー、課税、またはコンテンツ制限に関連する現地の法令・規制への遵守が求められます。IP 追跡と地理位置情報は、ユーザーがいる場所を特定し、適切なルールを適用することで、法令遵守要件への対応に役立ちます。

IP 追跡と地理位置情報を不正利用の防止・検知戦略に組み込むことで、EC ストアビジネスのセキュリティ対策を強化し、不正行為が行われるリスクを低減して、顧客体験全般を向上させることができます。同時に、事業者が現地の規制を遵守し、顧客の所在地に応じてより適したユーザー体験を提供するためにも役立ちます。

6. 速度チェック

速度チェックは不正行為を防止・検知するための技術の 1 つで、ユーザーまたはデバイスに関連する取引やログインなどのオンラインアクティビティの速度と頻度を監視し、分析します。このチェックは、不正行為やアカウントの乗っ取り行為を示唆している可能性のある異常なパターンや不審なパターンを特定するのに役立ちます。速度チェックは、ユーザーアカウント、IP アドレス、デバイス、クレジットカードなど、さまざまなレベルで実施できます。

7. 不正防止対策チーム

不正防止対策チームは、オンライン上のさまざまな種類の脅威から事業者と顧客を保護するための包括的なセキュリティ戦略を策定し、実施します。このチームは、サイバーセキュリティ、データ分析、リスク管理などの分野のエキスパートで構成され、不正である可能性がある行為の監視、検知、対応を、連携しながら遂行します。また、自身の組織のセキュリティ対策を常に効果的かつ適応力のある状態に保つため、不正行為の新たな傾向、技術、ベストプラクティスについて最新情報を把握する責任を担います。

8. セキュリティの定期的な監査と更新

セキュリティを定期的に監査して更新すると、潜在的な脆弱性を特定し、現行のセキュリティ管理の有効性を評価して、最新のセキュリティ標準とベストプラクティスを維持できるようになります。

ここでは、EC ストアがセキュリティの定期的な監査とアップデートを行う際の重要点を大まかに示します。

  • 脆弱性評価: セキュリティの定期監査では、EC ストアのプラットフォーム、サーバーインフラ、アプリケーションをスキャンしてテストし、サイバー犯罪者に悪用される恐れのある脆弱性や設定ミス、弱点がないか確認します。このプロセスは、重要なセキュリティ問題に優先順位を付けて対処し、不正利用やデータ侵害が起こるリスクを最小化するために役立ちます。

  • 侵入テスト: 倫理的ハッキングとも呼ばれる侵入テストでは、サイバーセキュリティの専門家が実際の攻撃のシミュレーションを行い、セキュリティ対策の有効性を評価し、改善が必要な領域を特定します。

  • 法令遵守監査: 事業者は、自社の EC ストアのプラットフォームを、PCI DSS、一般データ保護規則 (GDPR)、または他の業界固有の規制など、関連するセキュリティ標準に確実に準拠させる必要があります。法令遵守監査を定期的に実施することは、法令遵守の状態を維持し、罰金や罰則が科される可能性を回避するのに役立ちます。

  • セキュリティポリシーの見直し: セキュリティに関するポリシーと手順を定期的に見直して更新すると、進化する脅威に適応しやすくなり、全従業員に、安全な EC ストア環境の維持における各自の役割と責任を確実に認識させることができます。

  • パッチ管理: ソフトウェア、プラグイン、およびシステムを最新のセキュリティパッチで定期的に更新することは、既知の脆弱性に対処し、サイバー攻撃のリスクを低減するうえで重要です。確固としたパッチ管理プロセスを導入すると、適切なタイミングで効率的に更新を実行できるようになり、ダウンタイムが発生する可能性や互換性の問題を最小限に抑えられます。

  • サードパーティーベンダーの評価: 事業者はさらに、決済代行業者やクラウドサービスプロバイダーといったサードパーティーベンダーのセキュリティ対策と法令遵守も評価する必要があります。こうしたベンダーによって、潜在的な脆弱性が EC ストア環境に持ち込まれる可能性があるためです。

9. 従業員のトレーニングと意識向上

従業員のトレーニングと意識向上は、組織全体のセキュリティ戦略において重要な要素であり、特に EC ストア事業の場合はその重要度が高くなります。従業員は、EC ストアのプラットフォームと事業者の双方のセキュリティと完全性を維持するうえで重要な役割を果たします。というのも、従業員が機密性の高い顧客データを取り扱い、非常に重要なシステムにアクセスし、顧客とやり取りする機会が多いからです。セキュリティのベストプラクティスに関して、定期的なトレーニングを実施し、意識を高めてもらうことで、警戒を怠らない組織文化を築き、セキュリティインシデントや不正利用を引き起こしかねない人的ミスが発生する可能性を下げることができます。

ここでは、EC ストアにおける従業員のトレーニングと意識向上について、重要な点をいくつか取り上げます。

  • 新入社員研修: 新入社員には、新入社員研修の一環としてセキュリティトレーニングを実施し、セキュリティに関する組織のポリシー、手順、ベストプラクティスを、入社時から認識できるようにする必要があります。

  • 継続的な学習: セキュリティトレーニングを定期的に更新して強化することで、従業員は新たな脅威、新技術、および進化するセキュリティのベストプラクティスについて最新情報を得ることができます。ワークショップやオンラインのトレーニングモジュールなどがこれに該当します。

  • フィッシングに対する意識の向上: 従業員は、フィッシングメールやソーシャルエンジニアリング攻撃など、サイバー犯罪者が機密情報やシステムに不正アクセスする際によく使う手口を認識して報告できるように、トレーニングを受ける必要があります。

  • 強力なパスワードの運用: 一意で強力なパスワードの作成と MFA の使用について従業員をトレーニングすることで、EC ストアのシステムと顧客データが不正アクセスを受けるリスクを大幅に低減できます。

  • データの取り扱いとプライバシー: 従業員には、適切なデータの取り扱いとプライバシーに関する実務対応のトレーニングを実施する必要があります。トレーニングの内容には、機密性の高い顧客情報を安全に保管、処理、送信する方法、および GDPR やカリフォルニア州消費者プライバシー法 (CCPA) などのデータ保護規制を遵守する方法などを含めるとよいでしょう。

  • インシデント対応: 従業員は、所属組織のインシデント対応計画に精通し、セキュリティ侵害を確認した場合や不正行為が疑われる場合に、どのような手順を踏めばよいかを理解している必要があります。

  • セキュリティ意識の高い組織文化: セキュリティ意識の高い組織文化を醸成することで、安全な EC ストア環境の維持に責任を持ち、セキュリティ上の問題や懸念事項となり得る点があれば報告するよう従業員を促します。

  • 定期的な評価と更新: 従業員トレーニングプログラムの有効性を評価し、フィードバックや新たな出来事に基づいて改善を加えることで、トレーニングの妥当性と有効性を維持するのに役立ちます。

従業員トレーニングと意識向上プログラムを実施することで、従業員がセキュリティ上の脅威や不正行為に対する防御の最前線として行動できるようにします。その結果、顧客に提供するオンラインショッピング環境の信頼性と安全性を強化し、業務全般の効率と不正利用への対応力を高められるようになります。

10. 顧客教育

顧客教育には、安全なオンラインショッピング体験を促進し、EC ストアの不正利用から顧客を保護する効果があります。必要な情報と手段を事業者から顧客に提供することで、顧客が十分な情報に基づいて意思決定を下し、自身の個人情報を保護して、不正利用やセキュリティ上の脅威の可能性を察知できるよう支援することが可能です。

ここでは、EC ストアでの不正利用対策を強化できる顧客教育の方法をいくつかご紹介します。

  • オンラインショッピングを安全に行う方法: オンラインショッピングを安全に行う方法、たとえば信頼できるウェブサイトでのみショッピングをする、HTTPS や SSL 証明書などのセキュリティ指標を導入しているか確認する、公共の Wi-Fi での取引を避けるといったことを、顧客に教育します。

  • 強力なパスワードを使う習慣: 強力で一意のパスワードを作成してアカウントに使うこと、および可能な限り MFA を使用することを顧客に促します。そうすることで、不正アクセスやアカウントの乗っ取りを防ぎやすくなります。

  • フィッシングやソーシャルエンジニアリングを見分ける: 顧客をだまして機密情報を提供させたり、悪意のあるリンクをクリックさせたりしようとする、フィッシングメール攻撃やソーシャルエンジニアリング攻撃の見分け方と報告方法を顧客に伝えます。また、自社が顧客とのコミュニケーションに使う手段と使わない手段について、顧客に理解してもらう必要があります。

  • 安全な決済手段: クレジットカードやデジタルウォレットなど、安全な決済手段を利用するメリットについて顧客に伝えましょう。こうした決済手段では、多くの場合、追加的な不正防止策や不審請求の申請オプションを利用できます。

  • アカウントの監視: アカウントの使用状況を定期的に監視して、不正取引や個人情報の変更がないか確認するよう顧客に促します。

  • プライバシー意識の向上: 顧客の個人情報保護の重要性と、関連するプライバシー規制に従った事業者によるデータの取り扱い方法について、顧客を教育します。

  • 不審な行動の報告: 不正取引、フィッシング行為、アカウントの乗っ取り行為など、不審行動を事業者または関連当局に報告する方法にについて、顧客に明確な手順を提供します。

  • セキュリティの更新と警告: 新しいセキュリティ機能、潜在的な脅威、または EC ストアのプラットフォームに適用されるプライバシーポリシーの更新について、ニュースレター、ブログ投稿、またはソーシャルメディアの更新を通じて、顧客に最新情報を提供します。

11. チャージバック管理

チャージバック管理は、チャージバックがもたらす財務的影響を軽減し、将来的に不審請求の申請が生じる可能性を低減し、決済代行業者やカードネットワークとの健全な関係を維持するのに役立ちます。チャージバックとは、ある取引に対して顧客が不審請求を申請し、代金がカード発行会社から顧客に返還されることを指します。これは、不正取引、製品への不満、配送上の問題など、さまざまな理由で発生します。

チャージバックの防止について、詳細はこちらの記事をご覧ください。

12. 取引とユーザー行動の監視

取引とユーザー行動を監視することで、不審な行動をリアルタイムで特定して対応できます。取引パターンやログイン試行などのユーザー行動を追跡して分析することで、不正利用の可能性や、アカウントの乗っ取り行為、その他のセキュリティ上の脅威を検知できます。

ここでは、取引とユーザー行動を監視するための方法をいくつかご紹介します。

  • リスクスコアリング: 個々の取引に対して、取引金額、場所、デバイス、過去の購入履歴などの要素を基にリスクスコアを割り当てると、不正取引の可能性がある取引を特定して適切な措置を講じるのに役立ちます。

  • リアルタイムの監視: 取引とユーザー行動をリアルタイムで継続的に監視することで、潜在的な脅威を素早く検知して対応できるため、金銭的損失と組織の評判への悪影響を最小限に抑えられます。

  • 行動分析: 潜在的な不正行為者やボットの行動は、本物の顧客の行動と大きく異なるため、閲覧パターン、マウスの動き、キーストロークダイナミクスといったユーザー行動を分析すると、両者の識別に役立ちます。

  • アカウントの監視: ユーザーアカウントを定期的に監視して、複数回にわたるログイン試行の失敗、個人情報の変更、異常な取引パターンなど、通常とは異なる行動がないか確認すると、潜在的なアカウントの乗っ取りや不正行為の検知につながります。

  • クロスチャネル監視: ウェブ、モバイル、ソーシャルメディアなど、複数のチャネルにわたってユーザー行動を監視することで、顧客とのやり取りと潜在的な不正利用パターンについて、より包括的に把握できるようになります。

13. 不正検知のルールとフィルターの設定

不正利用を検知するためのルールとフィルターを設定しておけば、潜在的に疑わしい行動や取引を特定し、適切なタイミングで効率的に対応できるようになります。不正行為を示唆する可能性のある具体的な基準としきい値を定義することで、該当するパターンに合致する取引に対するフラグ設定やブロックが可能になります。

EC ストアビジネスでの不正利用を検知するためのルールとフィルターの仕組みには、以下のようなものが含まれます。

  • カスタマイズ可能なルール: 取引の規模、顧客の人口統計学的属性、製品タイプ、過去の不正利用パターンなど、自社のビジネスに固有のリスク要因に基づいてカスタマイズした不正検知ルールを策定します。このようなルールは、変化を続ける不正利用の傾向とビジネスニーズに適応できるよう、調整可能である必要があります。

  • 動的しきい値: 取引金額、取引頻度、速度チェックなど、さまざまなリスク指標に対して動的なしきい値を導入します。そうすることで、誤検知を効果的に防止でき、正当な取引が誤って不正とフラグ付けされる事態を避けることができます。

  • リアルタイムのスクリーニング: 不正利用を検知するためのルールとフィルターをリアルタイムで適用し、潜在的な脅威を速やかに特定して対応することで、不正利用が自社のビジネスと顧客に与える影響を最小限に抑えることができます。

  • 機械学習と AI: 不正検知システムに機械学習と人工知能アルゴリズムを組み込むことで、過去のデータから継続的に学習し、新たな不正利用パターンに適応できるようにします。そうすることで、ルールとフィルターの精度と効果を長期的に向上させることができます。

  • 多層的アプローチ: ルールとフィルター以外に、IP 追跡、地理位置情報、指紋認証、多要素認証など他の不正防止技術も組み合わせて、包括的で強固な不正検知システムを構築します。

  • 定期的な見直しと最適化: 不正行為を検知するためのルールとフィルターの有効性を定期的に見直しして分析し、必要に応じて調整することで、新たな不正行為の傾向に対処し、誤検知を減らして、本物の顧客への影響を最小限に抑えます。

  • 他のツールとの連携: 不正行為を検知するためのルールとフィルターを、セキュアなペイメントゲートウェイ、SSL 暗号化、顧客認証システムなど、他の不正防止ツールやリスク管理ツールと連携させて、一貫性のある包括的なセキュリティ戦略を構築します。

14. 住所・カード確認システムの採用

住所・カード確認システムを採用することで、顧客の請求先情報が本当に正しいかどうかを確認し、不正取引となる可能性を低減することができます。これらの確認システムでは、購入プロセスで顧客から提供された情報と、カード発行会社に登録されている情報を比較することで、使用されているカードが正規のものであり、購入者本人のものであることを確認します。

ここでは、EC ストア事業者が取引を検証するための方法をいくつかご紹介します。

  • 住所確認サービス (AVS): 住所確認サービス (AVS: Address Verification Service) とは、決済代行業者が、顧客から提供された請求先住所情報を、カード発行会社に登録されている住所情報と照合するためのツールです。住所が一致しない場合、その取引はフラグを立てられるか拒否される場合があり、不正行為のリスクが軽減されます。

  • カード検証値 (CVV): カード検証値 (CVV: Card Verification Value) は、クレジットカードやデビットカードに組み込まれているセキュリティ機能で、各カードに固有の 3 桁または 4 桁のコードで構成されます。- 購入プロセスで CVV の入力を顧客に求めることで、事業者は、その購入を行っている人物がそのカードを物理的に所持しているか検証でき、盗難カード情報が使われた不正取引となる可能性を低減できます。

  • 3D セキュア (3DS): 3D セキュアは、クレジットカードやデビットカードによるオンライン取引のセキュリティを高めるための追加の認証手段です。この認証プロセスでは、ワンタイムパスワードや生体認証による本人確認が必要となるので、確実にカード保有者本人による購入であることが保証されます。3D セキュアのプロトコルの例には、Visa の Verified by Visa、Mastercard のMastercard SecureCode、アメリカン・エキスプレスの SafeKey などがあります。

  • ペイメントゲートウェイとの連携: 住所・カード確認システムをペイメントゲートウェイと連携させることで、顧客に簡単で安全な購入プロセスを構築できるようになり、不正取引のリスクも軽減されます。

  • セキュリティとユーザー体験のバランス: 住所・カード確認システムを採用することは不正防止に役立ちますが、セキュリティ対策とスムーズなユーザー体験との間でバランスを取ることが大切です。確認プロセスが厳格すぎると、誤って支払いを拒否されて顧客が不満を抱く可能性があります。確認プロセスを定期的に見直し、最適化することで、このバランスを取りやすくなります。

15. 他の事業者や業界団体とのつながり

他の事業者や業界団体とつながりを持つことは、EC ストア事業者が不正利用に対処するうえで有益な戦略となる可能性があります。事業者同士で相互に協力し情報を共有することで、互いの経験から学び、不正利用の新たな傾向について洞察を得て、不正利用の防止と検知のためのベストプラクティスを採用できるようになります。このような協力型アプローチは、より強固で安全な EC ストアのエコシステムを構築するうえでも効果的です。

業界フォーラムへの参加、会議への出席、専門業者のネットワークや団体への加入によって、事業者、決済代行業者、セキュリティの専門家、法執行機関との間で情報伝達と協力を円滑に進められます。不正利用のパターン、手口、被害軽減方法に関する情報を共有することで、事業者は進化を続ける脅威に対して先手を打って対応し、より効果的な不正防止戦略を策定することができます。

また、専門的な助言や脅威インテリジェンス、最先端のソリューションを提供するサイバーセキュリティ企業やセキュリティ研究者との協力から得られるメリットを活かして、不正利用を防止・検知する能力を向上させることができます。

16. 生体認証と行動分析の活用

生体認証と行動分析を EC ストアでの不正防止に活用することで、顧客の本人確認と、潜在的な不正利用の検知を、強力かつ洗練された方法で行うことができます。こうした技術は、ユーザー認証のために固有の身体的特徴とユーザー行動のパターンを分析し、不正行為者による模倣や回避を困難にする追加の認証手段を提供します。

生体認証とは、指紋、顔認識、音声パターンなどの身体的特徴を基にユーザーの本人確認をすることを指します。最近のスマートフォンなど多くのデバイスには生体認証センサーが搭載されており、顧客はこうした機能を認証プロセスで使用できるので便利です。生体認証をセキュリティ対策に取り入れることで、EC ストア事業者は顧客確認の精度を向上させ、不正アクセスやアカウントの乗っ取りが発生するリスクを下げることができます。

他方、行動分析では、ユーザー行動のパターン、たとえば、マウスの動き、キーストロークダイナミクス、閲覧傾向、ページ滞在時間などを分析します。悪意のある行為者は、多くの場合、標準的な行動とは明確に異なる行動を取ります。そのため、上記のようなパターンに注目することで、本物の顧客と不正行為者とを区別しやすくなります。これらのパターンを監視・分析することで、EC ストア事業者は、不正利用の可能性がある行動をリアルタイムで検知して対応し、金銭的損失と組織の評判の低下を最小限に抑えることができます。

こうした追加的な戦略を、既存の不正防止、検知、対応の枠組みに組み込むことで、セキュリティ対策をさらに強化し、EC ストアでの不正利用から自社と顧客を守ることができるのです。

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