オンライン販売に移行する事業者が増えるにつれ、EC ストアの決済は、デジタル戦略の重要な側面となっています。たとえば、最近のレポートによると、全世界の EC ストアの売上は 2023 年に合計で 5.9 兆ドルになると見込まれています。さらに、2023 年の全世界の小売業の売上のうち、20.8% がオンラインでの購入による売上になると予想されています。EC ストアが増加を続けることで、事業者に求められる水準は高まり、顧客のニーズと好みに合った、強力な EC ストア決済戦略策定の必要性が生じています。
ただし、EC ストアの決済という複雑な世界で舵取りを行うのは大変な作業です。適切な決済手段の選択から、決済処理の安全性の確保、業界の規制の遵守まで、検討が必要な事柄が多数あります。また、ペイメントプロバイダーとプラットフォームの選択肢も増え続けているので、自社の事業に最適なものを決定するのも簡単ではありません。
以下では、さまざまな EC ストアの決済手段、EC ストアの決済処理の仕組み、EC ストアの決済手段を選ぶ際に考慮すべき要素、EC ストアの決済を保守し、改良するためのベストプラクティスをご紹介します。ここでご紹介する EC ストアの決済に関する情報は、まったく新しい EC ストア事業者にとっても、事業を拡張して新市場へ参入するために決済戦略を改良しようとしている事業者にとっても、成功するために知っておくべき内容です。
この記事の内容
- EC ストアとは何か
- EC ストアの決済手段には何があるか
- EC ストアの決済処理の仕組み
- EC ストアのペイメントプロバイダーの選び方
- EC ストアの決済に関するヒントとベストプラクティス
EC ストアとは何か
EC ストア (EC は Electronic Commerce (電子商取引) に由来する用語) は、オンラインで商品やサービスの購入および販売を行うことを指しています。これには、オンラインショッピング、電子決済、オンラインオークションなど、さまざまな種類のオンライン取引が含まれます。近年の EC ストアの普及に伴い、消費財から B2B ソフトウェアのサブスクリプションまで、あらゆる商品やサービスをオンラインで取引する消費者と事業者が増えています。
EC ストアの決済手段には何があるか
顧客がオンラインで商品やサービスを購入する場合の決済手段はいくつかあります。EC ストアの決済手段には、クレジットカードやデビットカードといった従来の方法から、デジタルウォレット、モバイル決済、後払い (BNPL) オプション、仮想通貨など、従来の方法に代わる新たな決済手段まで、さまざまなものがあります。
競争力が高く、コンバージョンが最大限に高まるような EC ストアのプレゼンスを創出するためには、顧客のニーズや好みに対応できるように、さまざまな決済方法を提供する必要があります。ペイメントプロバイダーとプラットフォームの数が増加している今、事業者が適切な EC ストアの決済手段を選択するときには、選択肢を慎重に検討する必要があります。自社の事業に最適な決済手段を選ぶ方法に関するヒントなど、EC ストアの決済手段の詳細については、Stripe のガイドをご覧ください。
EC ストアの決済処理の仕組み
EC ストアの決済処理には、ペイメントゲートウェイ、決済代行業者、加盟店アカウント、セキュリティおよび不正防止対策、規制の遵守など、複数の独立した要素が関与します。これらの要素が連携することで、オンライン決済を安全かつ効率的に処理しています。事業者は、決済プロセスに関与する多数の要素を統合して自動化する決済ソリューションを提供している、Stripe などの決済処理プロバイダーと提携することで、EC ストアの決済プロセスの複雑さを緩和し、社内チームの負担を軽減できます。
EC ストアの決済処理の重要な構成要素には、次のものがあります。
ペイメントゲートウェイ
ペイメントゲートウェイは、オンラインストアのウェブサイトと決済代行業者のシステムをつなぐ、ソフトウェアアプリケーションです。これは、顧客が決済情報を安全に入力できるようにして、決済代行業者への決済データの送信を促進します。決済代行業者
決済代行業者は、オンライン決済のオーソリ、処理、売上処理が円滑に行われるようにする、サードパーティーのサービスプロバイダーです。決済代行業者は顧客の銀行やクレジットカード発行会社と連携し、決済を確認してオーソリを与え、加盟店の銀行口座に対して決済を売上として処理します。加盟店アカウント
加盟店アカウントは、事業者がクレジットカードやデビットカードでの支払いに対応するために使用する銀行口座です。通常は、加盟店サービスプロバイダーまたは銀行がこのアカウントを提供します。これは、オンラインでの支払いを処理する事業者にとって必須です。セキュリティと不正防止
EC ストアの決済処理では、不正アクセスや不正利用から保護する必要がある、機密性の高い決済データを取り扱います。世界中で EC ストアの決済数が増加している今、不正利用の検出と防止のための強固な対策を取る必要性も高まるばかりです。このため、決済代行業者は通常、暗号化やトークン化といったセキュリティ対策を導入して決済データの保護と不正取引の防止を図っています。法令遵守
EC ストアの決済処理はさまざまな規制要件の対象になります。たとえば、PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) は、決済データの取り扱いに関する基準を定めたものです。決済代行業者は、オンライン決済のセキュリティと完全性を確保するために、これらの要件に確実に遵守する必要があります。
EC ストアの決済処理の各要素がどのように連携するかは、事業者がそれらをどのように設定するかによって異なります。たとえば、サードパーティープロバイダーと自社製ツールを組み合わせて決済処理システムを構築することを選択する事業者もいれば、Stripe のような包括的なペイメントプロバイダーと提携する事業者もいます。このようなプロバイダーは、ペイメントゲートウェイ、加盟店アカウント、決済代行業者の機能を提供し、不正利用検出および防止機能を標準装備しています。
EC ストアの決済処理: 詳細
EC ストアの決済処理には、顧客、オンラインストア、ペイメントゲートウェイ、決済代行業者など、複数の関係者が関与します。初めて見せられると、この詳細なプロセスは複雑に見えることでしょう。しかし、どのパーツも、決済のオーソリ、承認、売上処理が安全かつできる限り速く実行されるように設計されています。
ここでは、EC ストアの決済処理を構成する各段階を詳しく見ていきます。
顧客が注文する
顧客がオンラインストアを閲覧し、購入したい商品を選んで、購入へと進みます。顧客が決済情報を入力する
購入時に、顧客はクレジットカードやデビットカードの詳細といった決済情報を、オンラインストアが提供するペイメントゲートウェイに入力します。決済のオーソリ
ペイメントゲートウェイが決済情報を決済代行業者に送信すると、決済代行業者が顧客の銀行またはクレジットカード発行会社に情報を照会して、その決済がオーソリを受けることを確認します。決済の承認
決済情報が確認され、オーソリを受けたら、決済代行業者は承認メッセージをペイメントゲートウェイに送信します。すると、ペイメントゲートウェイが、決済が承認されたことをオンラインストアに通知します。注文の確定
決済が承認されたら、オンラインストアは顧客の注文を確定して、顧客に確定メッセージを送信します。売上処理
決済代行業者は、通常は数営業日以内に、加盟店の銀行口座に対して決済を売上として処理します。決済の消し込み
オンラインストアは、注文の決済を消し込んで、決済金額が注文金額と一致していることを確認します。
EC ストアのペイメントプロバイダーの選び方
決済機能は、顧客が円滑かつ安全に購入できるようにするために必要不可欠であるため、自社の事業に適した EC ストアのペイメントプロバイダーを選択するときには、時間をかけてすべての選択肢について検討してください。
Stripe では、EC ストアのペイメントプロバイダーの選び方に関する包括的なガイドをご用意していますが、以下に検討すべき要素をいくつかあげます。
自社の決済ニーズを決定する
提供したい決済手段、継続支払いやサブスクリプションをサポートする必要があるかどうか、複数の通貨による決済に対応する必要があるかどうかを考えます。現在事業を展開しているすべての市場と、拡大していきたい市場を考える
1 つの国でのみ事業を行っている事業者は、グローバルに事業を展開している大規模な EC ストア企業よりも、決済ニーズがシンプルであるはずです。通貨や地域固有の決済手段、考慮すべき各国および地域の規制まで、すべての市場で自社のニーズに対応できるペイメントプロバイダーを選ぶようにしてください。セキュリティと法令遵守を確認する
クレジットカード決済に対応する事業者は、不正利用や窃盗から顧客の決済データを保護するために、PCI DSS に準拠する必要があります。具体的には、顧客データを保護するために、暗号化などのセキュリティ対策を使用します。Stripe のようなペイメントプロバイダーを利用して、自社の EC ストアプラットフォームを確実に PCI に準拠させることで、罰則や罰金を回避できます。導入しやすさを評価する
請求サポートから、ホスト型の決済ページ、埋め込み型の決済まで、新しい EC ストアソリューションを現在のデジタル店舗にオンボーディングして組み込む方法を理解します。Stripe のようなプロバイダーは、カスタマイズ可能な連携機能と柔軟な API を提供することで、事業者用に特別に調整した決済体験を提供できるようにしています。カスタマーサポートを考慮する
電話、メール、チャット、あるいはそのすべてを利用して、すぐに対応してくれるカスタマーサポートを提供しているペイメントプロバイダーを選ぶことが重要です。
EC ストアの決済に関するヒントとベストプラクティス
EC ストア事業者のあらゆる戦略は、コンバージョンと売上を増加させる方法に焦点を当てているはずです。適切な決済処理プロバイダーを選択することに加え、直感的で安全、かつコンバージョンを促進する決済体験を顧客に提供しながら、不正利用とチャージバックのリスクを最小化するために、事業者が利用できるヒントとベストプラクティスがあります。
以下では、EC ストアの決済に関して事業者が従うべきヒントとベストプラクティスを紹介します。
多様な決済手段を提供する
顧客の多様なニーズや好みに対応するためには、多様な決済手段を提供すること、また、過去の決済データと顧客調査を活用して、提供している決済手段が適切であることを確認することが重要です。たとえば、高価格帯の家具を販売している場合は、後払いが顧客に必要な決済手段であると考えられます。信頼できるペイメントゲートウェイと加盟店アカウントを使用する
EC ストア事業者が成功できるかどうかは、安全で使いやすく、信頼性の高いペイメントゲートウェイと加盟店アカウントを利用しているかどうかで決まります。決済プロセスを最適化する
決済プロセスは、EC ストアの体験において重要な瞬間です。決済プロセスが複雑だったり、時間がかかったりすると、カート放棄が発生して売上を失う可能性があります。手順やフィールドの数を最小限にし、ゲスト購入オプションを設け、わかりやすい説明とフィードバックを提供することで、決済プロセスを改善します。決済ポリシーを明確に伝える
混乱や不審請求の申請を防ぐためには、決済ポリシーを顧客に明確に伝えることが重要です。これには、受け付ける決済手段、決済処理時間、返金と返品に関するポリシー、決済に伴う手数料や料金に関する情報などがあります。明確な返金と返品に関するポリシーを提供し、利用しやすいカスタマーサービスチームを設けることも、チャージバックを最小限に抑えるための強力な方法です。不正利用とチャージバックを監視する
チャージバックの監視は、決済に関する内部業務として積極的に行う必要があります。不正取引とチャージバックは事業者に多大なコストをもたらすため、不審なアクティビティーがないか監視し、不正利用を防ぐ対策を積極的に取ることが重要です。不正利用検出ツールを導入し、住所確認とカードのセキュリティコードの確認を行い、チャージバックの申請に迅速に対応します。また、次のような不正利用とチャージバックの傾向を把握することも役立ちます。不正利用やチャージバックが急増する特定の時期がありますか。売上におけるチャージバックの頻度が高いチャネルがありますか。このような傾向を特定すると、対策を強化する必要がある可能性がある時期や場所などをより正確に理解できます。決済体験を改善し続ける
最後に、顧客の決済体験を継続的に評価し、改善することが重要です。顧客にフィードバックを求め、コンバージョン率や取引時間といった主要な指標を追跡し、顧客のフィードバックとデータのインサイトに基づく改善を導入してください。
スタートアップからグローバルなプラットフォームまで、EC ストア事業者が Stripe を利用して決済を改善する方法について詳しく知るには、まず、こちらをご覧ください。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。