近年、キャッシュレス決済がますます多様化し、さまざまなシーンにおいて利用されるようになっています。日本でも、コンビニやスーパー、レストランをはじめ、自動販売機などでも多様なキャッシュレス決済が利用可能となっています。
EC モールなどの EC サイトについても同様に、サイト利用者の利便性の向上を考慮し、複数の決済手段を提供することが重要視されています。なお、EC サイト運営事業者が決済サービスを導入するにあたっては、どのような決済方法がよく使われているかを理解したうえで、自社 EC サイトに最もふさわしい決済方法を選ぶ必要があります。
本記事では、日本の EC サイトにおいて幅広く利用されている決済方法にはどのようなものがあるか、決済システムの接続方法や決済方法の選び方などを踏まえて解説します。
目次
- EC サイトでよく利用される決済方法
- EC サイトに導入する決済方法の選び方
- EC サイトへの決済システムの接続方法
- 複数の決済方法を導入すべき理由
- 決済代行業者を選ぶ際の注意点
- 決済方法を増やして顧客が満足できるビジネスを目指そう
EC サイトでよく利用される決済方法
EC サイトで買い物をする際、一般的によく利用されている決済方法としては、クレジットカード決済やコンビニ決済がまず思い浮かぶのではないでしょうか。しかし、現在の日本において利用可能な決済方法は実にさまざまで、EC サイトではクレジットカード決済やコンビニ決済以外にもその他多くの決済方法が採用されるようになっています。
総務省の報告書 (2023 年に調査実施) によると、「インターネットを使って商品を購入する際の決済手段」として以下が代表的となっています。なお、括弧内は前年 (2022 年) のデータとなります。
- 1 位: クレジットカード決済 76.7% (75.9%)
- 2 位: 電子マネー決済 (QR コード決済、楽天 Edy、Suica など) 38.5%⬆︎ (34.8%)
- 3 位: コンビニ決済 34.7% ⬇︎ (36.4%)
- 4 位: 銀行・郵便局窓口や ATM での振込・振替 23.0% (23.0%)
- 5 位: インターネット・モバイルバンキングによる振込 21.9% ⬆︎ (19.0%)
- 6 位: 代金引換 17.8% ⬇︎ (20.5%)
- 7 位: キャリア決済 (通信料金・プロバイダ料金への上乗せによる決済) 16.2% (17.5%)
ここで特筆すべき点は、2022 年にコンビニ決済が 36.4% で第 2 位にランクインしていましたが、2023 年 には電子マネー決済がコンビニ決済を約 4% 上まわりさらに普及しているということです。 同じくインターネット・モバイルバンキングによる振込についても前年と比べて、代金引換を追い抜く結果となりました。
クレジットカード決済については、毎年圧倒的な普及率を維持しているものの、このように電子マネーなどクレジットカード以外の決済方法を好んで利用する人が、着実に増えていることがわかります。
以下でそれぞれの決済方法について見てみましょう。
クレジットカード決済
クレジットカード決済とは、クレジットカードを利用する消費者の信用、すなわちクレジットによって後払いで商品やサービスを購入できる決済です。したがって、オンラインショップでクレジットカード決済を行った時点では、支払いそのものが完了しているわけではなく、後日、毎月あらかじめ決められた日付で、指定の銀行口座から代金が引き落とされる仕組みとなります。
つまり、クレジットカード決済の場合、商品の注文完了時点において金額はまだ移動しないため、EC サイトでの注文時に現金を手元に置いておく必要はありません。このように利便性に優れているクレジットカード決済は、日常のさまざまなシーンで用いられており、EC サイトにおいては最も利用率の高い決済方法となっています。
電子マネー決済
電子マネー決済とは、現金に代わって電子化されたお金で支払う決済方法です。情報通信技術が飛躍的に進歩している今日では、日本だけでなく世界規模で電子マネー決済の普及が進んでいます。
電子マネーの種類はさまざまで、Suica などの IC カードやスマートフォンを用いるのが主流となっています。また、仕組みとしては、事前に資金をチャージするか、クレジットカードを紐付けしておくことで決済が行われます。電子マネー決済もクレジットカード決済と同じく現金を持ち歩く必要がなく、利便性の高い決済方法といえます。なお、EC サイトで購入する商品に対し電子マネーで支払う場合、スマートフォンなどに支払い情報を登録することで利用が可能です。
コンビニ決済
コンビニ決済とはその名のとおり、日本全国のコンビニエンスストアで代金を支払うことのできる決済方法です。わたしたちの身近にあり、24 時間いつでも支払いができるコンビニですが、特に、諸事情によりクレジットカードを持っていない人や、EC サイト上でクレジットカード情報を入力することに抵抗がある人にもコンビニ決済は重宝されています。
EC サイトでの買い物でコンビニ決済を選択すると、支払いに関する詳細が記載された払込票が購入者に送付されます。また、事業者によっては払込票の代わりに、Web 上で払込用番号が提供されるペーパーレス決済を用いることもあります。
払込票を使って支払う場合は、コンビニのレジスタッフに払込票を提示して代金を支払います。一方、ペーパーレス決済の場合、払込用番号をスタッフに伝えて支払いを行うか、コンビニ店内に設置されている専用端末に番号を入力し、画面に表示される手順に沿って支払いを完了します。
銀行振込
ここでは銀行振込を一例として解説します。
窓口・ATM での振込
銀行振込は、日本人にとって馴染みのある決済方法で、EC サイトで購入した商品の代金を、事業者側が指定する口座に振り込む仕組みとなります。EC サイトによっては、代金が振り込まれたことが確認できた後で商品が発送される前払い式と、注文者が商品を受け取った後で振り込んでもらう後払い式に分けられます。いずれの場合も銀行や郵便局の窓口や ATM で直接振り込むか、次に解説するインターネットやモバイルバンキングからオンラインで支払うことも可能です。
インターネット・モバイルバンキングによる振込
インターネット・モバイルバンキングの場合、インターネット上で自宅から簡単にパソコンやスマートフォンを使って振込や残高紹介などの取引ができます。これまでは、紙ベースの通帳を持参して窓口や ATM で取引を行うのが主流でしたが、今日では店頭へ出向かずにさまざまな取引が行えるインターネットバンキングが多くの人に利用されるようになっています。
先ほど紹介した総務省のデータでは、支払いにおける窓口や ATM の利用率が 23.0% で、インターネット・モバイルバンキングが 21.9% と、わずかの差で前者の方が利用率が高くなっていますが、後者も前年の 19.0% と比べるとより一般的となっていることがうかがえます。
代金引換
代金引換は、通称「代引き」と呼ばれ、購入者の自宅に商品が届いた時点で、商品受け取りの際に配送スタッフに代金を手渡す決済方法で、配送業者を介して最終的に販売事業者まで代金が支払われる仕組みとなります。代金引換ではほとんどの場合現金ですが、配送業者によってはクレジットカードやデビットカードでの支払いを受け付けていることもあります。
先ほどの総務省の同データによると、代金引換は前年の 20.5% から 17.8% へと利用率が低下し、上述のインターネット・モバイルバンキングと順位が入れ替わる結果となっています。このことからも、代金引換のような現金中心の取引に代わって、着々と決済方法がデジタル化していることがわかります。
キャリア決済 (通信料金・プロバイダ料金への上乗せによる決済)
キャリア決済の「キャリア」は、docomo、au、SoftBank、楽天モバイルなどの携帯キャリア (携帯電話会社) を指す言葉です。つまりキャリア決済とは、携帯キャリアが提供する決済サービスのことで、利用者は契約中の携帯電話の通信料金と合わせて EC サイトで購入した商品代金を支払うことができます。オンラインショップでキャリア決済を選ぶと、通信料金と一緒に商品代金も請求されるため、できるだけ手間を省きたいという消費者に好まれる傾向があります。
EC サイトに導入する決済方法の選び方
ここまでで、EC サイトでよく利用されている決済方法について紹介しましたが、すべての決済方法を導入してしまうと、イニシャルコストや運用コストが膨大となってしまうでしょう。また、せっかく導入したにも関わらず、利用者のニーズにともなっていなかったことで、ほとんど利用されないといった結果にもなりかねません。そのため、決済方法が数多く存在する今こそ、どの決済方法が最適かどうかについて導入前に十分調査することが大切です。
販売する商品・サービスとの相性を確かめておく
導入を検討している決済方法について、自社 EC サイトで取り扱う商品との相性がよいかどうかをあらかじめ確認しておきましょう。たとえば、比較的高額な家具やブランドウェアなどの商品を購入する際に、代金引換しか選択できない EC サイトだと、購入者は前もって現金を用意しておかなければなりません。しかし、安全性を考慮すると手元に高額な現金を置いておくことはできれば避けたいものです。
安全面以外でも、現金でしか決済が行えないとなると銀行から現金を引き出す手間もかかるため、消費者の利便性は著しく下がってしまいます。さらに、商品が高額になるほど分割払いを希望する消費者も増えるため、代金引換のような一括払いとなると、購入を断念してしまうケースも出てくるでしょう。
このようなことから、支払い回数が選べるクレジットカード決済をはじめ、キャッシュレス決済が活発化する今日においては、電子マネー決済やキャリア決済などのキャッシュレス決済を導入しておくことは不可欠といえるでしょう。
自社 EC サイトの客層が求めている決済方法かを確認する
EC サイトがどの年齢層や性別を対象としているかで、消費者が選択する決済方法も異なってきます。たとえば年齢層に着目すると、キャッシュレス決済は若い世代からの認知度が高い一方、シニアの顧客には馴染みが薄いため、現在でも現金で支払いを行うケースがよく見られます。また、クレジットカードを持ったことのない 10〜20 代の場合、クレジットカードの代わりにコンビニ決済やキャリア決済を好む傾向にあるため、自社 EC サイトがこの年代を対象とする商品を販売している場合、これらの決済方法の導入を考慮する必要があります。
このように、EC サイト運営事業者は、利用する消費者の年齢、性別にも着目し、客層を見極めておくことが大切です。
EC サイトへの決済システムの接続方法
EC サイトへ決済システムを接続する方法には、以下の 4 つがあります。
リンク型
リンク型では、EC サイトから移動して決済代行業者の決済画面で決済処理が行われます。EC サイトで商品を購入するときに注文画面上に表示される購入ボタンをクリックすると、決済代行業者の決済画面に遷移します。
決済システムは、決済代行業者が提供する手順を踏むことで簡単に EC サイトに接続できるため、自社で決済画面をゼロから構築する手間を省くことができます。また、顧客の個人情報の取り扱いについても、決済代行業者のサーバーにて保管、管理されるため、EC サイト運営事業者側としては安心して EC ビジネスを行えます。
トークン型
トークン型とは、顧客のクレジットカード番号などの情報を別の文字列に生成および置き換え ることで決済処理を行う接続方法です。これをトークン化と呼びます。クレジットカード情報などを保持せずに生成されたトークンを使用するため、セキュリティー面において最も強力な方法といえるでしょう。
リンク型と異なる点としては、自社 EC サイト内で決済を完結させる JavaScrip プログラムを組み込む必要があるという点です。また、決済処理の途中で別のページへ遷移することがないため、サイト離脱のリスクの軽減につながります。
データ伝送型 (API 型)
データ伝送型 (API 型) とは、EC サイト運営事業者側で SSL サーバーを構築し、顧客から得た決済情報を決済代行業者に送信することで決済処理を行う方法です。データ伝送型の場合もトークン型のように自社 EC サイト内に決済機能を組み込むことで、自社サイト内ですべての決済フローを完結させることが可能となるため、画面遷移数の低減につながります。また、自社 EC サイトに特化したデザイン性豊かな決済ページを構築することができることから、注文件数が多い大規模な EC サイトや、EC プラットフォームを使用せず自社で構築した EC サイトで主に用いられています。
メールリンク型
メールリンク型とは、購入者にメールや SMS で決済用の URL を送信し、受信側の購入者が メッセージ内に表示されている URL をクリックすると決済画面に誘導され、決済が行われます。また、URL の代わりに QR コードが用いられることもあります。
メールリンク型の場合、ショッピングカートや決済ページ上のシステムを構築する必要がなく、決済処理は決済代行業者が管理する決済ページで簡単に完結できます。また、オンラインによる注文だけでなく、電話注文に対応したい場合にも向いています。
複数の決済方法を導入すべき理由
EC サイトの利用者に快適なショッピング体験をしてもらうには、できるだけ多くの決済方法を導入しておくことが理想的といえます。これは、選択肢として複数の決済方法を設けておくことが、より幅広い客層に対する自社 EC サイトの利便性のアピールにつながるからです。
そのため、クレジットカード決済が最もメジャーな決済方法だからといって、顧客が利用できる決済手段をクレジットカード決済だけに絞ってしまうと、電子マネー決済や代金引換を好んで利用する客層からの支持を得ることができず、結果としてカゴ落ちに陥る可能性があります。このように「日頃から頻繁に使っている決済方法がある」ことこそが、自社 EC サイトを選んでもらうためのキーポイントといえます。
決済代行業者を選ぶ際の注意点
決済方法を導入する際に決済代行業者を活用すれば、一度で複数の決済方法を導入できるため、導入にかかるプロセスがスムーズになります。なお、さまざまな決済代行業者の中から自社に見合った業者を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。
導入したい決済方法があるか
導入を希望する決済方法について、決済代行業者が取り扱っているかを確認しておきましょう。その際、顧客の決済ニーズを十分考慮し、できるだけ数多くの決済方法に対応している業者を選ぶとよいでしょう。また、海外向けの販売活動を行う場合は、進出先の国の消費者が希望する決済方法を提供できることがとても重要です。そのため、越境 EC で求められる決済方法にも柔軟に対応しているかどうかを確認のうえで決済代行業者を選びましょう。
利用手数料とサービスの質が釣り合っているか
決済代行業者が提供するサービスが、初期費用や毎月発生する手数料などのコストと見合っているかどうかを比較してから業者を決めることも大切です。また、複雑な工程を要する、ワンランク上のサービスを利用する際には追加料金がかかることがあるため、オプションとして提供されるサービスにも注意が必要です。したがって、知らないうちにコストがかさんでしまったということのないよう、業者との事前確認を怠らないようにしましょう。
セキュリティ面の対策が徹底されているか
EC サイトを利用する顧客の安全面を確保しておくことは何よりも重要です。これは、顧客の個人情報の保護が信頼性に直結するからです。もし、セキュリティ面において不備があったことで、一度でもデータの漏えいなどの事故が発生すると、多くの顧客を失うだけでなく、社会的信用も大きく損なわれ、売上は激減してしまうでしょう。こうした理由から、強力なセキュリティ対策を実施している決済代行業者を選ぶことは、すべての事業者が考慮すべき重要要素であるのです。
セキュリティ面に関する確認点については、以下のようなものが挙げられます。
- 利用する決済代行業者で独自のセキュリティ対策を講じている
- 2025 年の 3 月末より義務化された 3Dセキュア 2.0 を導入済み
- クレジットカード情報の国際セキュリティ基準である PCI DSS に準拠
- プライバシーマーク (個人情報保護対策を評価された事業者が使用できるマーク) を取得済み
- ISMS 認証 (セキュリティ基準を満たしたシステム運用を行っていることの証明) を取得済み
決済方法を増やして顧客が満足できるビジネスを目指そう
事業者が自社の EC サイトを成功に導くためには、客層にあわせて最適な決済方法を導入する必要があります。加えて、今後はさらに多様化した決済方法が生み出されると予想されていることから、決済方法を種類豊富に揃えるのはもちろん、時代の変化にも柔軟に対応している決済代行業者を検討してみることをおすすめします。
また、決済方法の導入だけでなく、EC サイトの運用、管理など充実したサポート体制が整っている決済代行業者であれば、より心強いといえるでしょう。
Stripe は、クレジットカード決済を含むキャッシュレス決済やコンビニ決済、銀行振込など、さまざまな決済方法の導入をはじめとし、情報処理や収益管理など、日々の決済業務の効率化を後押しするツールや機能を幅広く提供しています。たとえば、オンライン決済に柔軟に対応可能な Stripe Payments を導入すると、自社システムの開発を行わずに事業スタイルに合った決済環境を構築できるだけでなく、PCI DSS の全要件を満たした高いセキュリティを確立しているため、消費者が安心できるショッピング体験の提供が可能です。
Stripe を活用すれば、決済プロセスの簡素化や運用コストの削減など、多くのメリットを得られるほか、複数の決済方法の導入により、EC サイトの利便性を高め、売上の最大化を図ることができるでしょう。
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