ディスカバーは特にクレジットカードサービスで有名な金融サービス企業です。ディスカバーは革新的な金融プロダクトとカスタマーサービスを誇り、クレジットカード業界とバンキング業界でその名をよく知られています。ディスカバーはアメリカの大手小売業の Sears によって 1985 年に設立され、Dean Witter や Morgan Stanley の傘下だった時代を経て 2007 に独立企業となりました。
ディスカバーはディスカバーネットワークという、独自のクレジットカードの決済ネットワークを運営していて、個人や学生向けのローン、住宅担保ローン、バンキングサービス (普通預金口座、当座口座など) も提供しています。ディスカバーのダイレクトバンキングと決済サービスは金融サービス業界に衝撃を与えましたが、今ではアメリカ最大のカード発行会社の 1 つとなっています。ディスカバーのクレジットカードの特長は、利用限度額の高さ、年会費無料、いち早く導入されたキャッシュバック制度です。ディスカバーは、金融テクノロジー、特にモバイルバンキングとオンライン取引に注目して、利用者が利用しやすいバンキングとクレジットカード管理を実現してきました。ディスカバーの年次報告書によると、同社の 2023 年の純利益は 290 億ドルとなっています。
以下に、ディスカバーの主な機能、主な利用者、要件とベストプラクティスなど、ディスカバーを決済手段として受け付ける際に事業者が知っておくべきことをご紹介します。
この記事の内容
- ディスカバーの仕組み
- ディスカバーが使用されている地域
- ディスカバーの利用者
- ディスカバーを受け付けるメリット
- ディスカバーの受け付けをめぐる課題
- ディスカバーのセキュリティ対策
- ディスカバーを決済手段として受け付けるための要件
- ディスカバーに代わる選択肢
ディスカバーの仕組み
ディスカバーはカード発行会社であると同時にカードネットワークでもあり、この点がこの業界ではやや異色です。ディスカバーの運営側は、直接的な顧客関係、競争力のあるクレジットサービス、強力なセキュリティ対策、総合的なデジタルサービスを重視し、こういった特徴を強みとして、金融サービス市場大手の座を維持してきました。決済手段として、そして金融サービス会社としてのディスカバーの仕組みをご紹介します。
クレジットカードの発行
ディスカバーは、第三者である銀行を使わずに、自社のクレジットカードを利用者に直接発行します。この消費者直接取引モデルには、クレジットサービスとカスタマーサービスの体験を管理しやすいというメリットがあります。クレジットカードネットワーク
ディスカバーは、カードネットワークとして、カード保有者がクレジットカードで行う取引を処理します。カード保有者が購入を行うと、そのカード保有者の口座から加盟店アカウントに売上が送金されます。このとき、取引のオーソリ、売上処理が行われ、不正行為防止のためのセキュリティ対策が確実に実施されます。利息と手数料
クレジットカードの利用残高に対する利息や支払い遅延手数料などの手数料は、ディスカバーの収入源となっています。手数料体系は他社と比べて利用者にとって有利なものとなっていて、年会費・海外取引手数料なしのカードオプションを多数提供しています。特典プログラム
ディスカバーのキャッシュバック特典プログラムは有名で、カード保有者には、すべての購入について購入金額の 1% が還元されます。また、一部商品は 5% のキャッシュバックを受けることができ、対象商品は 3 カ月または最大 6 カ月ごとに変わります。「ディスカバーキャッシュバックマッチ」というプログラムでは、カード保有者には初年度に獲得したキャッシュバック全額と同額 (上限なし) が自動的に付与されます。カスタマーサービス
ディスカバーは独自のカスタマーサービスが有名で、年中無休 24 時間体制のカスタマーサポートを提供しています。このサポート体制が、問題を素早く解決し、高水準の顧客満足度を維持することに寄与しています。デジタルバンキングサービス
ディスカバーは、クレジットカードに加えて、オンラインおよびモバイルバンキングサービスも提供しています。当座口座と普通預金口座、個人向けローン、学生ローン、住宅ローンを扱っていて、ディスカバーのデジタルプラットフォームからは、同社のすべての金融商品にアクセスできます。
ディスカバーが使用されている地域
ディスカバーカードが最も利用されているのはアメリカで、柔軟な支払いオプションや、利用者に有利なキャッシュバック制度が支持されています。アメリカ全土で広く受け付けられているという事実が、決済手段としての魅力を高めています。
世界規模で見た場合、ディスカバーの普及度は Mastercard は Visa といった一部の大手クレジットカード会社ほどではありません。国際展開の取り組みを続けていますが、他のクレジットカードネットワークが優位な立場を確立しているため、苦戦を強いられています。ディスカバーカードの受け入れ状況は、国や地域によって異なります。アメリカ以外で受け入れ率が高いのは、カナダとメキシコです。ヨーロッパとアジアでの存在感は大きくなく、その理由は、これらの地域の利用者の習慣やビジネスのやり方、規制環境の違いなどによるものです。
国際展開戦略の一環として、現地の決済ネットワークと提携して、既存のインフラストラクチャを利用し、利用者の信頼を得ています。
ディスカバーの利用者
ディスカバーは利用者のニーズに合った商品とサービスを提供することで、競争の激しいクレジットカード市場で確固たる地位を確立し、さまざまな市場区分の利用者を対象に、魅力に富んだ各種の商品を打ち出しています。ディスカバーの主な利用者と、ディスカバーがよく利用されているビジネスのタイプは以下のとおりです。
小売業の顧客
ディスカバーの顧客基盤の中心となっているのは、小売業の購入者です。ディスカバーは日々の買い物によく利用されていますが、その理由は優れたキャッシュバック特典にあると言えます。また、年会費無料のため、カード保有の費用がかからないというのも大きな魅力です。学生
学生の利用者が多いのも、ディスカバーの特徴です。ディスカバーの学生向けカードを利用することで、信用の構築を始めることができ、キャッシュバックも獲得できます。アメリカの大学生の 32% が、クレジットカードを選ぶ際の基準として年会費無料であることを最も重要視していて、ディスカバーの特長はこの基準にぴったり合致しています。中小企業のオーナー
中小企業のオーナーも、ディスカバーの重要顧客層です。このような購入者は分かりやすい報酬と信頼できるカスタマーサービスを求める傾向にあり、このどちらも、ディスカバーの重要な特徴となっています。オンラインの買い物客
ディスカバーのセキュリティ機能の高さと、ディスカバーと提携しているオンライン小売業者が多いことから、ディスカバーに注目するオンライン買い物客が増えています。ディスカバーはオンラインショッピングポータルで、買い物客の実質的な節約につながるようなプロモーションを実施しています。たとえば、人気のある E コマースサイトで限定キャンペーンや割引を行うなどです。旅行者
ディスカバーは海外取引手数料がかからないため、費用効率の高い支払いオプションとして海外旅行者に利用されています。ディスカバーの受け入れ率は、世界中で受け付けられている競合他社ほどではありませんが、国際市場で拡大中であり、現時点で 200 カ国以上で受け付けられています。テクノロジーに精通した利用者
ディスカバーのデジタルサービスはテクノロジーに精通した利用者を引き付けていて、ディスカバーのモバイルアプリは高い評価を得ています。社会保障番号が利用された場合のアラート機能や、カードを紛失した場合にアプリを使って口座を凍結できる機能があり、これらは無料で利用できます。E コマースとオンラインサービス
E コマースプラットフォームとオンラインサービスでは、ディスカバーのトークン化、不正防止対策などのセキュリティ機能が高く評価されています。ディスカバーはデジタルウォレットの導入も拡大しているため、オンライン事業者がディスカバーを受け付けやすい環境が整っています。
ディスカバーを受け付けるメリット
ディスカバーを受け付けることは、取引手数料が他社と比べて低い、幅広い顧客基盤があるというメリットがあります。ディスカバーを受け付けるメリットを以下に記載します。
Discover Deals への参加
ディスカバーには、Discover Deals と呼ばれる独自のプログラムがあり、カード保有者に特別割引やキャッシュバックボーナスが付与されます。ディスカバーと提携する事業者はこのプログラムに参加することができるため、ディスカバーカード保有者による利用が喚起され、売上と顧客獲得数の上昇につながります。ディスカバーネットワークの利用
ディスカバーを受け付ける事業者はディスカバーネットワークの一員となり、ディスカバーカード保有者へのダイレクトマーケティングの機会が得られるため、認知度を高めて客足を伸ばすことができます。顧客ロイヤルティの高さ
利用者に有利な機能があるため、ディスカバーカード保有者は強いロイヤルティを持っている傾向があります。事業者は、ディスカバーを受け付けることで、このようなロイヤルティの高い顧客基盤とつながりを持つことができます。カード保有者は、ディスカバーのキャッシュバック特典を最大限に利用するために、ディスカバーを受け付けている事業者を、そうでない事業者よりも優先して選ぶ可能性があります。チャージバック率が低い
ディスカバーのチャージバック率は他のカードネットワークと比較して低めであり、これは、費用と時間のかかるチャージバックプロセスの多い事業者にとっては大きなメリットです。強固なセキュリティ機能
ディスカバーの高度なセキュリティ機能である、カードの紛失または盗難の際の口座の凍結、事前対策としての不正利用監視などは、事業者にとって直接的なメリットがあります。不正利用のリスクが減れば、不正取引、チャージバック、その関連費用も減ります。マーケティングサポート
ディスカバーでは、ディスカバーカードを受け付ける事業者を対象に定期的にマーケティングキャンペーンを実施しています。これは、大企業と比べて少ないマーケティング予算で露出を高める機会を求めている中小規模の事業者にとってメリットの 1 つです。デジタル連携が簡単
ディスカバーは最新の POS システムや E コマースプラットフォームと簡単に連携できるため、購入者の決済体験を向上できます。競争力のあるコスト
ディスカバーは、料金体系がわかりやすく、競争力があることで知られています。これは、コストを削減したい小規模事業者にとって特にメリットがあります。
ディスカバーの受け付けをめぐる課題
ディスカバーを受け付ける事業者は、以下のような課題に直面する可能性があります。ディスカバーを受け付けるかどうかは、事業者特有の顧客基盤、財務上の考慮事項、市場での存在感に基づいて決めることをお勧めします。
国際的な受け入れ率が限定的
ディスカバーはアメリカ国内では広く受け付けられていますが、Visa や Mastercard と比べると、国際的な受け入れ率は限定的です。世界的な顧客基盤を持つ事業者や、海外顧客を対象にしている観光業界にとっては、このことが課題となる可能性があります。顧客認知度
市場での存在感が限定的であるため、一部の利用者はディスカバーを大手クレジットカードほど好意的に認知していない可能性があります。取引の処理時間
ディスカバーのカード取引と売上処理にかかる処理時間は、決済代行業者によって異なるため、キャッシュフロー管理に影響する可能性があります。
ディスカバーのセキュリティ対策
カード保有者および事業者を保護するために、ディスカバーでは以下のセキュリティ対策を実施しています。
不正防止: ディスカバーの不正防止システムは、通常とは異なるアクティビティがないか、取引を常に監視しています。予期しない支出パターン、場所、取引タイプがないかを事前予防的に監視します。潜在的な不正利用が検知されると、電話、メール、ショートメッセージなど、さまざまな方法でカード保有者にすぐにアラートが送られます。
Freeze it®: ディスカバーの Freeze it® 機能を使うと、カードの紛失または盗難の際に、カード保有者はすぐに対応をとることができます。ディスカバーのモバイルアプリまたはウェブサイトから、わずか数秒で口座を凍結し、新たな購入、キャッシング、残高送金をブロックできます。この即時対応機能は、不正利用による請求を防ぐために重要です。
社会保障番号のアラート: ディスカバーは、カード保有者の社会保障番号が流出していないか、ダークウェブ (インターネットの一部であり、不正行為で有名) を監視しています。リスクの高いウェブサイトで社会保障番号を見つけた場合、カード保有者にアラートを送ります。この機能の利用手数料は無料であり、なりすまし犯罪や関連する不正利用を防ぐために重要です。
ゼロライアビリティ保護制度: ディスカバーのゼロライアビリティ保護制度により、カード保有者は不正な購入の責任を問われないことが保証されます。このポリシーにより、不正行為による金銭的負担をカード保有者が負担しないで済むため、カード保有者との信頼関係が構築されます。
口座ログインの安全性: ディスカバーの口座のセキュリティは強固なログインプロトコルに従っているため、不正アクセスの可能性が低くなっています。口座へのアクセスに多要素認証が実装されているため、2 つ以上の認証要素を提示する必要があります。
暗号化: 高度な暗号化テクノロジーにより、取引処理中にデータが保護されるため、カード番号や個人情報などの機密情報が安全に送信されます。第三者がアクセスすることはできません。
なりすまし犯罪からの保護: なりすまし犯罪が発生した場合、ディスカバーはカード保有者の信用情報と本人確認情報を保護するためにカード保有者が次にとるべき手順を案内し、回復のための複雑なプロセスを支援します。
ディスカバーを決済手段として受け付けるための要件
決済手段としてディスカバーを受け付けるには、事業者側が以下の手順を実施する必要があります。また、以下の要件を満たす必要もあります。この中には、多くのクレジットカードに一般的なものもあれば、ディスカバー独自のものもあります。
加盟店アカウントの開設: ディスカバーと連携するには、加盟店アカウントが必要です。加盟店アカウントは銀行口座の一種であり、これを利用することで、クレジットカードやデビットカードによる決済を受け付けられるようになります。このアカウントの開設は、銀行、独立販売組織、決済サービスプロバイダーを通じて行うことができます。
決済処理の同意書: ディスカバーを受け付けるには、ディスカバーによる取引を扱っている決済代行業者と同意書を交わす必要があります。この同意書に、ディスカバーカードによる決済処理の利用規約、手数料その他の詳細が記載されます。
POS システムとの適合性: 事業者が使用している POS システムがディスカバーカードの処理に対応していて、クレジットカード取引の電子的処理を扱えることを確認する必要があります。
PCI 基準の準拠: ディスカバーグローバルネットワークを受け付ける事業者は、PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) に準拠する必要があります。PCI DSS は、クレジットカード情報の保管、処理、送信を行うすべての事業者が、セキュリティ上安全な環境を確実に維持するための基準です。ディスカバーでは、事業者とその代理店が PCI セキュアソフトウェア基準に従っていることも要件としています。また、POS 端末 への PIN 入力を受け付ける事業者の場合は、PIC PIN セキュリティ要件への準拠が求められます。この準拠要件は、ディスカバーによる取引を処理するすべてのアクワイアラー、サービスプロバイダー、代理店に適用されます。
ディスカバーの代替となる決済手段
ディスカバーの主要市場には、代替となる決済手段が多数存在します。どの決済手段を受け付けるかを選ぶ際は、顧客基盤、取引額、地理的な位置、具体的なビジネスニーズを検討する必要があります。
たとえば、高額商品を扱う小売業者の場合は、富裕層の顧客基盤に強いアメリカン・エキスプレスが好ましい可能性があります。これに対し、地元の食料品店の場合は、手数料が低く、現地で普及しているという理由から、現地のクレジットカードネットワークまたは直接銀行振込を利用するかもしれません。テクノロジーに精通した若者をターゲットとする事業者や、従来の銀行システムへの依存を下げることを目指している事業者は、デジタルウォレットや仮想通貨を選ぶ可能性もあります。ディスカバーの代替となる決済手段の長所と短所、主な機能を以下にご紹介します。
Visa と Mastercard
Visa と Mastercard は世界的に広く展開しているクレジットカードネットワークであり、特に国際市場でのカード受け入れ率の高さと幅広い顧客層を求めている事業者に最適です。さまざまな特典プログラムがあり、人気が高いカードですが、ディスカバーと比べて処理手数料が高い可能性があり、これは小規模事業者にとって重要な検討事項です。
アメリカン・エキスプレス
アメリカン・エキスプレスは、購買力が高い顧客層に人気が高く、高額の商品やサービスを扱う事業者に適しています。このような商品やサービスを購入する購入者は、アメリカン・エキスプレスが受け付けられることを期待するからです。さまざまな特典プログラムがあることも、特定の顧客基盤に評価されていますが、ディスカバーと比べて加盟店手数料は高めです。
現地のクレジットカードネットワーク
現地のクレジットカードネットワークは、現地の事業者や、これらのカードを持っている購入者が多い地域の事業者に適しています。現地のカードネットワークの方が、世界的に展開しているカード会社よりも受け入れ率が高く、加盟店手数料が低い可能性がありますが、これらのカードの利用と受け入れは、特定の地域や国に限定される場合があります。
デビットカードと直接銀行振込
デビットカードと銀行振込は、クレジットカード利用率の低い市場で好まれる決済手段です。直接銀行振込への利用者の信頼は高いですが、銀行振込の場合はクレジットカードと同レベルの顧客保護や特典は提供されません。事業者側から見ると、デビットカードと直接銀行振込は一般にクレジットカードよりも処理手数料が低く、クレジットカードの普及率が低い地域や、取引費用を低く抑えたい場合に適しています。
デジタルウォレット
デジタルウォレットには、Apple Pay、Google Pay、Samsung Pay などがあり、最先端の決済テクノロジーを提供して若い世代やテクノロジー志向の高い購入者にアピールしたい事業者に向いています。デジタルウォレットはモバイルデバイスとの親和性が高く、トークン化や生体認証などの高度なセキュリティ機能を備えています。ただし、受け入れ率がさまざまであるため、従来の決済オプションと比べて人気が低く、また、決済手段として利用するには、対応している POS システムが必要です。
PayPal
PayPal は世界的に認知されている決済代行業者で、特にオンライン購入における購入者の信頼が高いという特徴があります。PayPal は、オンラインの世界での存在感が高い事業者や、国際取引を行う事業者に適していますが、PayPal を受け入れる実店舗も増えてきています。ただし、PayPal の場合、従来の加盟店アカウントと比べて手数料が高く、アカウントの制限事項が多いという特徴があります。
仮想通貨
ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨は、最先端の決済テクノロジーを採用して特定の顧客層を引き付けたい事業者に適した新たな決済オプションです。テクノロジーに精通した顧客基盤にアピールする決済手段であり、事業者が負担する手数料は低い傾向にあります。ただし、仮想通貨は変動性が高く、決済手段として、まだあまり広く受け付けられていません。
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