BPAY はオーストラリアの電子請求支払いシステムです。BPAY を利用する個人や企業は、金融機関のオンライン、モバイルまたはテレフォンバンキングシステムを通じて、BPAY 請求者として登録されている組織に支払いを実行できるようになります。BPAY は、請求者と顧客を各々の銀行を通じて結び付け、送金プロセスをシンプルにする一元的な請求支払いサービスの実現を目的として設立されました。2022 年 9 月期末の時点で BPAY を使用しているオーストラリア人は約 44% に上ります。
BPAY は利便性の高さで知られています。BPAY のユーザーは 24 時間 365 日どこからでも自分の希望するバンキングプラットフォームを使って支払いを行うことができます。BPAY は 1 回限りの支払いにも、継続支払いにも対応しています。利用者には取引ごとに一意の BPAY コードと請求者コードが発行されます。これらを使用して、支払いの追跡や管理を簡単に行うことができます。
この記事では、オーストラリア国内外に所在する企業が BPAY について知っておくべきことを取り上げます。BPAY の仕組み、BPAY の使用者、BPAY にかかるコスト、ビジネスで BPAY の使用を始める方法についてご説明します。
この記事の内容
- BPAY の使用目的
- BPAY を使用できる企業の種類
- オーストラリア国外に所在する企業による BPAY の使用可否
- BPAY の仕組み
- BPAY にかかるコスト
- BPAY を通じた支払いの処理にかかる期間
- BPAY の使用で企業が得られるメリット
BPAY の使用目的
BPAY はオーストラリアのさまざまな支払いシナリオで使用されています。BPAY を受け付ける企業は 6 万社以上で、150 以上の銀行・金融機関が決済手段として BPAY に対応しています。BPAY は以下のような多くの種類の取引で使用されています。
納税: BPAY を使用してオーストラリア税務局 (ATO) への納税が可能です。所得税や事業活動報告書で申告するその他の税金など、さまざまな種類の税金に対応しています。
企業による請求: 企業は BPAY を使用して電子請求書を顧客に発行できます。BPAY が代替決済手段となります。
個人の請求書の支払い: 個人は BPAY を使用して公共料金、クレジットカード、地方税など、さまざまな個人の請求書を支払うことができます。
一括決済 (企業向け): BPAY は一括決済に対応しています。これは、企業が複数の取引を一度に処理できる便利な機能です。
API 連携 (企業向け): BPAY はアプリケーションプログラミングインターフェイス (API) 連携に対応しています。他の業務システムと簡単に連携できるため、請求プロセスの自動化や支払いプロセスの自動化が可能です。
BPAY を使用できる企業の種類
BPAY はさまざまなシナリオで役立つシステムであり、複数の業界で広く使用されています。BPAY を使用している主なビジネスモデルの内訳を以下にご紹介します。
サービスプロバイダー
公益事業: 電気、ガス、水道、廃棄物処理といった幅広い企業が請求の支払いに BPAY を使用しており、利用者は使い慣れた安全性の高い支払い方法を選択できます。
電気通信: 携帯電話、インターネット、有料テレビのプロバイダーは請求の支払いの利便性を高めるために BPAY を使用しています。BPAY を使用することで顧客体験およびプロバイダーのキャッシュフローが向上します。
プロフェッショナルサービス: 会計事務所、弁護士、コンサルタントは BPAY による請求書の支払いを受け付けています。プロバイダーとクライアントの双方にとって支払い処理がシンプルになります。
金融機関
銀行・信用組合: 金融機関の利用者は BPAY を使用することで、ローン返済、クレジットカードの支払い、その他の金融上の義務の履行をオンラインバンキングによって簡単に行うことができます。
保険会社: 保険会社は BPAY による保険料の支払いを受け付けており、保険契約者は手間のかからない支払い方法を選択できます。
小売業と E コマース
小売店: 大小の小売店は Lay-by (取り置き) 支払い、分割払いプラン、ギフトカード購入に BPAY を使用しています。
E コマースプラットフォーム: オンラインストアではクレジットカードなどの支払い方法と並んで BPAY を使用できます。利用者は安全性が高く使い慣れた方法でオンライン決済を行うことができます。
公共部門・非営利団体
政府機関: 地方自治体や州・連邦の政府部局は、駐車違反の罰金、許可、税金といったさまざまな手数料や料金の徴収に BPAY を使用しています。
教育機関: 学生は授業料や学生ローンなどの教育費の支払いに BPAY を使用しています。
非営利団体: 慈善団体や非営利団体は BPAY による寄付を受け付けています。これにより、支援者のプロセスがシンプルになり、募金活動を促進できます。
その他
サブスクリプションサービス: 配信プラットフォームやジム会員などのサブスクリプションベースのビジネスでは継続支払いに BPAY を使用できます。月次や年次の請求サイクルをスムーズに進めるのに役立ちます。
専門職: 配管工、電気工などの専門サービスでも、サービス料金の支払い方法として BPAY を受け付けることが多くなっています。顧客の要望に応じるとともに、請求プロセスがシンプルになります。
オーストラリア国外に所在する企業による BPAY の使用可否
BPAY はオーストラリア向けの決済ネットワークであるため、オーストラリア国外に所在する企業が BPAY を直接使用して決済を受け付けることはできません。BPAY はオーストラリアの金融システム内で運営されており、オーストラリアの銀行と金融機関とのパートナーシップに依存しています。オーストラリア国外の企業がそうしたパートナーシップやインフラにアクセスすることはできません。
規制上の制約: BPAY の運営には、オーストラリア決済ネットワーク (APN) が定める特別な規制・法令遵守要件が適用されます。オーストラリアに登録されていない企業はその要件を満たさないため、オーストラリア決済ネットワークに加盟できません。
技術的な制約: BPAY はオーストラリアの通貨とバンキングシステムに特化したシステムです。外国企業との連携には複雑な技術的適応が必要となり、実現は不可能と思われます。
ただし、以下のような代替手段を使用することで、外国企業はオーストラリアの顧客から支払いを受けることができます。
国際クレジットカードの処理: 安全なペイメントゲートウェイを通じて国際クレジットカードを受け付ける方法が簡単です。
直接銀行振込: 一部の企業は銀行口座情報を通知して、外国の顧客から直接銀行振込による支払いを受けています。
グローバル決済プラットフォーム: Stripe のような世界規模の決済プラットフォームを利用すると、オーストラリアを含む複数の国から支払いを受けることができます。
BPAY の仕組み
BPAY の機能は通常、既存の決済システムに簡単に導入でき、企業と顧客の双方にとってシンプルな請求を実現します。分割払いの仕組みは次のとおりです。
企業の場合
請求者登録: 金融機関と提携して BPAY 請求者として登録します。規約や手数料への同意、管理設定の完了などが必要です。
請求者 ID: 登録が完了すると、一意の請求者コードが発行されます。これは BPAY ネットワーク内でのデジタル ID となります。
請求書の設計: 請求書と電子請求書に請求者コードと個別の顧客参照コード (CRN) を記載します。これで支払いを追跡できます。
請求書の表示: BPAY ビューと連携すると (任意)、請求書を顧客のオンラインバンキングプラットフォームに直接送信できるようになります。
支払いの照合: 銀行から、未払いの請求書との照合用に、CRN を記載した詳細な取引レポートが届きます。
顧客の支払い管理: 銀行からリアルタイムで支払いデータが送られます。企業はそれを使って売掛金をモニタリングしたり、延滞の発生に前もって備えたりできます。
顧客の場合
支払いへのアクセス: 銀行のオンライン、モバイルまたはテレフォンバンキングのインターフェイスを通じて BPAY の機能にアクセスします。
支払いの開始: 請求書に記載された請求者コードと CRM を使って支払いを行います。
取引の処理: 支払いを確定すると、プラットフォームで支払いが処理され、すぐに承認されます。
BPAY ビューとの連携: 取引相手の企業が BPAY ビューを使用している場合、請求書が顧客のオンラインバンキングプラットフォームに直接送信されます。
支払いスケジュール: 定期的な請求に対し、今後の支払いスケジュールを立てたり、継続支払いを設定したりできます。
支払いの追跡: オンラインバンキングサービスから、参照や請求の支払い管理に使用できる詳細な取引履歴が提供されます。
多彩な支払いオプション: 関連付けられた銀行口座から希望する支払い元を選択できます。
BPAY にかかるコスト
BPAY にかかるコストは企業と顧客で異なるほか、取引の具体的な種類によっても異なります。概要は以下のとおりです。
企業の場合
開設手数料: 銀行によっては、BPAY 請求者として登録するために 1 回限りの開設手数料がかかります。
取引手数料: BPAY で支払いを受けるには、ほとんどの銀行で取引ごとに取引手数料がかかります。銀行によっては、一括取引や大量取引の手数料が安くなる場合があります。
追加手数料: BPAY 口座引き落としや API 連携など、BPAY での取引の種類によっては追加手数料が発生する可能性があります。
顧客の場合
基本手数料無料: 多くの場合、顧客による BPAY での支払いに手数料はかかりません。ただし、銀行によっては、クレジットカード支払いなどの特定種類の取引に少額の手数料がかかる場合があります。
間接費: 企業によっては自身が負担する取引手数料を顧客に転嫁する場合があります。これは請求額に追加料金として加算するか、代替決済手段を選択した場合に割引を提供することで行われます。
BPAY を通じた支払いの処理にかかる期間
BPAY は支払いを直接送金するわけではなく、オーストラリア決済システム内での仲介役として機能します。実際の送金スピードは次の 2 つの要素に左右されます。
請求者による処理: 顧客が BPAY による支払いを開始すると、その情報が BPAY のクリアリングハウスに送信されます。その後、請求者は支払いデータを受信して処理する必要があります。請求者の内部システムやプロセスによっては、処理の完了までに最大 24 時間かかる可能性があります。
銀行による決済処理: 請求者による支払いの処理が完了すると、オーストラリア銀行決済システムを通じて顧客の銀行から資金が送られます。この決済処理は通常、請求者が支払いを処理した翌営業日までに行われます。
BPAY による支払いが送金先の口座に反映されるまでの期間は、場合によって異なる可能性があります。
当日: 顧客が早い時間に支払いを行い、請求者がそれを素早く処理した場合、当日 (営業日) 中に送金が反映される可能性があります。
1 ~ 2 営業日: これが最も一般的な処理期間です。請求者による処理が 24 時間以内に完了し、銀行の決済処理が翌営業日に行われます。
遅延: まれに技術的な問題や特殊な事情のために、請求者または銀行の処理が遅延することがあります。
公休日で銀行や一部の企業が営業時間を短縮している場合、処理時間に影響を与える可能性があります。通常は、オンラインバンキングプラットフォーム内で確認するか、銀行に問い合わせることで、個々の支払いにかかる予想期間を知ることができます。
BPAY の使用で企業が得られるメリット
BPAY は安全性が高く、顧客にとって使いやすい、オーストラリア企業向けのソリューションです。BPAY には、キャッシュフロー管理、コスト削減、顧客満足度、内部効率といった面にメリットがあります。企業が BPAY を利用する主なメリットを以下にご紹介します。
キャッシュフロー管理の円滑化: BPAY の最も重要なメリットの 1 つがキャッシュフローの加速です。BPAY を利用することで決済処理を早めることができます。通常は 1 営業日以内に銀行口座への入金が完了します。これにより、請求書の発行から支払いの回収までの所要時間が短縮し、流動性が向上します。その結果、企業は短時間で売上を回収して、金融上の義務を効率的に管理し、成長の機会を得ることが可能になります。
管理業務の削減: BPAY によって売掛金の一元管理が可能になり、支払い回収プロセスがシンプルになります。決済手段を 1 つに絞ることで管理の複雑さが軽減されるため、時間とリソースを節約できます。
顧客体験の向上: BPAY に対応することで顧客満足度や顧客ロイヤルティを高めることができます。電子決済手段の利便性と柔軟性は顧客から高い支持を得ているため、顧客関係を強化し、適時な支払いを促すことができます。これにより、安定性が高く予測可能な収益源を確保できます。
消し込みの自動化とミスの削減: BPAY による支払いでは顧客参照番号 (CRN) が発行されます。これは消し込みの自動化に役立ちます。消し込みを自動化することで、企業は支払いを顧客の口座および請求書と正確に照合できるようになり、手作業に伴うミスや遅延を減らすことができます。これがひいては、キャッシュフロー管理の強化につながります。
セキュリティと不正利用の削減: BPAY のプラットフォームはセキュリティ保護されており、不正利用のリスクを減らすことができます。BPAY 請求者コードによって、送金先が正規の企業の口座であるという信頼性が高まるため、偽の銀行口座に送金するリスクを減らすことができます。
顧客の支払いの柔軟性: BPAY の利用時、顧客は口座引き落としやクレジットカードなどの決済手段を選ぶことができます。このように支払いを選択できることで、期日までに支払いが行われる可能性が高まり、総合的な顧客満足度が上昇します。
BPAY ビューによる請求書送付の効率化: BPAY ビューを利用すると、企業は請求書や明細書を顧客のオンラインバンキングアプリに直接送信できるようになります。この機能を活用することで、時間の節約、コスト管理の効率化、電子リマインダーによる速やかな支払いの確保につながります。
サービス拡張: BPAY にはサービス拡張機能が備わっています。たとえば、企業をマスター請求者やサブ請求者に設定できます。マスター請求者は他社に代わって支払いを回収できるようになり、サブ請求者は請求に関するサポートを受けられるようになります。サービス拡張機能を利用することで、企業は自社サービスの拡張やパートナーシップの構築が可能になり、自社の金融業務をより向上させることができます。
コスト効果: BPAY による支払いは多くの場合、従来の銀行取引や決済手段よりもコスト効果に優れます。BPAY は手数料が低く、他のビジネスサービスと連携できるため、企業全体のコスト削減につながります。
カスタマイズオプション: BPAY にはインテリジェント CRN (iCRN) などのオプションが用意されており、企業は支払い規約、金額、期日を細かく管理できるようになります。このようなカスタマイズは財務計画や顧客関係管理に役立ちます。
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