自動カード更新機能 (CAU) は、クレジットカード会社やペイメントゲートウェイが提供するサービスで、ビジネスで最新のクレジットカードおよびデビットカード情報を保持するのに役立ちます。カードの有効期限切れや交換によって利用者の支払い情報が変更されると、CAU でビジネスのシステム内のカード詳細を自動的に更新します。CAU は、古くなったカード情報による支払いの中断を減らすのに役立つため、継続支払いやサブスクリプションを扱うビジネスにとって有益です。
以下では、このサービスを使用するうえでビジネスで知っておくべきこととして、CAU の仕組み、考えられる課題、決済システム全体に適合させる方法について説明します。
この記事の内容
- 自動カード更新機能の仕組み
- 自動カード更新機能を使用するメリット
- 自動カード更新機能を使用する場合の課題
- 自動カード更新機能の選択および実装方法
自動カード更新機能の仕組み
CAU は、カードの有効期限切れ、カードの再発行、アカウントの閉鎖、カードのアップグレードなどの理由で利用者のカード情報が古くなっていることがわかったときに使用されます。CAU サービスの主な特徴は、新しいカード詳細の取得に利用者とビジネスが関与することはほとんどなく、代わりにクレジットカードネットワーク、決済代行業者、カード発行会社を活用することです。このサービスでは機密性の高い財務情報が送信されることを前提に、プロセスを PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) などの厳格なセキュリティおよび法令遵守プロトコルで管理します。このようなプロトコルはカード保有者のデータを保護するために必要です。
CAU は、あらゆる大手クレジットカード会社が提供しています。すべて似たような方法で機能しますが、各会社のサービスに固有のシステムや手順があります。たとえば、Visa の Account Updater CAU と Mastercard の Automatic Billing Updater CAU は、異なる方法でカード情報を更新します。Mastercard はプッシュ / プルモデルを使用し、Visa は加盟しているアクワイアラーを通じて直接更新します。
CAU の動作の一般的なプロセスを以下で概説します。
ビジネスからのリクエスト: ビジネスが、利用者のクレジットカード情報の更新が必要になったことを把握したら、まずは決済代行業者にリクエストして、利用者の既存のカード詳細を通知します。決済代行業者はリクエストを受け取ると、仲介役となってこのリクエストを適切なクレジットカードネットワーク (例: Visa、Mastercard、American Express) に転送します。このようなリクエストに含める必要がある具体的な詳細は、ネットワークによって異なります。決済代行業者は、転送するリクエストの形式が適切で、必要な情報がすべて含まれていることを確認する責任を負います。
クレジットカードネットワークからのリクエスト: クレジットカードネットワークは、決済代行業者からリクエストを受け取ると、利用者のクレジットカードを発行した金融機関 (カード発行会社とも呼ばれる) に連絡します。カード発行会社でリクエストを確認し、レコードをチェックして、口座番号や有効期限などの最新のカード詳細を収集します。その後、こうした情報をクレジットカードネットワークに安全に送り返します。
安全なデータ送信: カード発行会社から新しいカード情報を取得した後、クレジットカードネットワークは利用者の機密性の高い財務データを保護する安全なチャネルを通じて、このデータを決済代行業者に送信します。
ビジネスレコードの更新: 更新されたカード情報を受け取ったら、決済代行業者はそれに応じてビジネスのレコードを更新し、ビジネスで利用者の最新かつ正確なカード詳細を使用して今後の取引を処理できるようにします。ビジネスのレコードの即座更新をトリガーする自動更新メカニズムを用意している決済代行業者もあります。新しいカード詳細が追加されるとビジネスに通知され、更新された利用者のカードや更新の理由を要約したレポートが届くこともあります。
データベースの更新: クレジットカードネットワークと決済代行業者は、利用者のクレジットカード情報を格納したデータベースも維持します。カード発行会社から新しいカード詳細が届くと、これらのデータベースが更新されます。
自動カード更新機能を使用するメリット
自動カード更新機能は、特にサブスクリプションベースのサービスや分割払いプランなどの継続支払いに依存しているビジネスにとって重要です。CAU の主な特徴として、古くなったカード情報が原因の取引の失敗を防ぎ、安定した収益源をビジネスに提供し、ビジネスの利用者に中断されることのないサービスを提供することが挙げられます。クレジットカードには、有効期限切れ、紛失や盗難による再発行、アカウントの閉鎖、アップグレードなどのライフサイクルイベントが絶えず発生します。長期にわたって正確なカード情報にアクセスする必要があるビジネスには、このようなイベントに対応するための CAU のようなシステムが必要です。
CAU を利用するビジネスでは、次のような業務上のメリットを得られる場合があります。
取引拒否の低減: ほとんどのクレジットカードは 3 ~ 5 年ごとに有効期限が切れるため、利用者がカード詳細の更新を忘れるとビジネスの売上が失われます。CAU では、最新のカード詳細を維持することで、取引の成功率を高め、売上の流出を防ぎ、堅実な収入とキャッシュフローをサポートします。また、全体的な財務健全性が高められ、ビジネスでより正確な予測と財務計画を実現できます。たとえば、Postmates では売上が CAU によって 1.72% 増加し、1 年で 6,000 万ドルになりました。
継続的なサービス提供: サブスクリプションモデルまたは分割払いプランで運営されているビジネスにとって、サービスの継続性は重要です。CAU では、古いクレジットカード情報によってサービスが中断されないようにすることで、サービスの継続性を維持できるように支援します。
管理負担の軽減: クレジットカード情報を手作業で追跡および更新すると、非常に多くのリソースが必要になります。更新機能を活用することで、こうした手作業をなくし、収入を生み出す活動に貴重なリソースを費やすことができます。また、管理コストや、データの手動入力、カスタマーサポートへの問い合わせ、チャージバック手数料にかかるコストも削減できます。
顧客維持率の向上: スムーズな請求プロセスは、サブスクリプションモデルや継続支払いモデルで利用者を維持するために重要な要素であり、支払いの問題が頻発すると利用者の不満のほか、最終的には解約につながる可能性があります。サブスクリプション解約の半数は、有効期限切れクレジットカードなどの回避可能な支払いの失敗が原因です。更新機能では、有効なサブスクリプションを維持し、継続的な収入源を安定させることによって解約を低減できます。また、CAU では、支払い関連の混乱を最小限に抑え、利用者に連絡を取らずにアカウントの更新を処理することで、顧客体験を改善することもできます。利用者への連絡は、煩わしくて迷惑だと受け取られる場合があります。
データセキュリティの強化: 手作業でカードの保存や更新を行うと、ビジネスでデータ侵害にさらされるリスクが高くなります。更新機能では、機密情報を安全に処理し、攻撃を減らして、PCI DSS 規則に確実に準拠できます。また、不審な行動を事前に特定し、不正利用による損失を最小限に抑えることもできます。さらに、不正利用されやすい古くなったカードのアカウントの詳細を速やかに差し替えることで、ビジネスを保護します。
拡張性の向上: ビジネスの成長に伴い、管理する取引や顧客データの量も増えます。CAU はビジネスに合わせて拡張できるため、手作業での処理を増やさずに効率良く取引の増加に対応できます。
マーケティング機会の向上: カードの更新の傾向に関して更新機能が得たインサイトから、ビジネスで利用者セグメント、解約パターン、支出傾向に関する有益な情報を取得し、マーケティングキャンペーンをパーソナライズして顧客エンゲージメントを高めることができます。
自動カード更新機能を使用する場合の課題
CAU には多くのメリットがあると同時に課題もあります。ここでは、CAU で課題が生じる可能性がある主な領域について説明します。
実装: 既存の決済システムへの CAU の実装は、特に堅牢な IT インフラストラクチャを持たないビジネスにとって、技術的に複雑な場合があります。選択した CAU がさまざまな決済処理プラットフォームや会計システムと互換性があるかどうか確認するには、幅広い技術的専門知識とリソースが必要です。
コスト: CAU サービスの実装では、サブスクリプション、実装、メンテナンスのコスト、潜在的な取引手数料などの追加コストが生じる可能性があります。一部のビジネス、特に中小企業にとって、このようなコストは重要な検討事項になり得ます。
セキュリティ: 機密性の高い利用者の支払い情報を処理する場合、CAU サービスがデータセキュリティ標準やプライバシー標準に準拠しているかどうかをビジネスで評価する必要があります。このようなセキュリティ要件の管理は、特にセキュリティの専門知識を持たないビジネスにとって困難な場合があります。
信頼性: サードパーティの CAU サービスを利用すると、依存関係が生じる可能性があります。サービスプロバイダーでダウンタイム、技術的な問題、または利用規約の変更が生じると、ビジネスの決済処理機能に影響が及ぶ可能性があります。
柔軟性: 特定の業務ニーズがあるビジネスでは、適切な CAU を見つけることが困難な場合があります。CAU によっては、対象となる取引のタイプ、サポートされているカードネットワーク、レコード更新の頻度などの機能に関するカスタマイズオプションが制限されていることがあります。
技術的なエラー: あらゆる技術ソリューションと同様に、CAU は技術的な不具合やシステムエラーと無縁ではありません。不具合やエラーによって誤った更新や更新漏れが発生し、取引の拒否や利用者の不満につながることがあります。
自動カード更新機能の選び方と導入方法
Visa、Mastercard、アメリカン・エキスプレス、Discover は、自動カード更新機能サービスについてそれぞれ独自の見解を持っています。アメリカン・エキスプレスと Discover は、CAU サービスへの登録により直接的な経路を使用する傾向がありますが、Visa と Mastercard では、アクワイアラー、カード発行会社、または決済代行業者を通じて登録し、サービスとシステムの互換性を確認する必要があります。
決済代行業者を通じて CAU サービスに登録すると、いくつかのメリットを得られます。Stripe などのペイメントゲートウェイには多くの場合、決済処理ソリューションの一部として自動カード更新機能サービスが組み込まれており、統合と保守の技術的側面が処理されます。これは、これらの処理を社内で管理するための技術的な専門知識やリソースを持たない企業にとって、明確な利点になる可能性があります。これらのペイメントゲートウェイは通常、複数のクレジットカードネットワークにわたる更新もサポートしており、幅広い顧客基盤をカバーする包括的なソリューションを提供しています。
Stripe を通じて CAU サービスに登録するプロセスの例を以下に示します。
Stripe に問い合わせる: Stripe を通じた CAU サービスの利用に興味をお持ちの場合は、Stripe に直接お問い合わせください。Stripe は、自動カード更新機能サービスとその登録方法に関する詳細情報を提供し、特定のビジネスニーズと Stripe の CAU サービスがそれらを満たす方法についてご説明します。たとえば、企業は Stripe の自動カード更新機能サービスがデータを更新する頻度を確認し、より頻繁な更新が必要かどうかを評価する必要があります。また、Stripe の CAU サービスが、自社のサービスに最も関連性の高い取引の種類 (継続サブスクリプションや 1 回限りの支払いなど) をカバーしているかを確認する必要もあります。
セキュリティプロトコルを検証する: 企業は、更新機能の処理中に機密性の高い顧客データが保護されるように、すべてのセキュリティ対策が実施されているかを検討する必要があります。たとえば、Stripe のサービスは PCI DSS に準拠していますが、企業はこれを検証し、自社のコンプライアンス要件との整合性を確認してから先に進む必要があります。
Stripe を導入する: 通常、Stripe はアプリケーションプログラミングインターフェイス (API) ベースの導入をサービスに提供しています。企業は Stripe の API を決済システムに統合する必要があり、これには、自社のシステムと Stripe の自動カード更新機能サービス間の接続を確立するためのプログラミング作業が必要になる場合があります。場合によっては、Stripe は、Stripe のシステムで処理されるクレジットカード情報を含むデータファイルの送受信を伴うファイルベースのデータ交換もサポートすることがあります。
機能をテストする: 導入後、企業は徹底的なテストを実施して、導入が正しく機能していることを確認する必要があります。たとえば、カードの有効期限、カードの再発行、アカウントの変更など、さまざまなシナリオをテストして、自動カード更新サービスによってそれらの情報が効果的に更新されていることを確認する必要があります。
チームをトレーニングする: 企業は、Stripe の CAU の仕組みと、関連する顧客からの問い合わせの処理方法について、関連するすべてのチームメンバーにトレーニングを提供する必要があります。CAU がビジネスプロセスに与える影響と、その利点を日常業務で利用する方法についてチームを教育します。
パフォーマンスを追跡する: 企業はシステム内の Stripe の CAU サービスのパフォーマンスを定期的に監視し、拒否された取引の減少や成功した支払いオーソリの増加などの指標を探す必要があります。Stripe の CAU サービスがビジネスの期待と要件を満たさない場合は、必要に応じて調整やさらなるカスタマイズを実施できます。
「自動カード更新し機能」と呼ばれる Stripe の CAU サービスの詳細について、以下で説明します。
リアルタイムの自動更新: Stripe を使用してしている企業とカード情報を保存している顧客は、新しいカードを取得すると、情報を再入力しなくても自動的に情報が更新されます。Stripe は最近、Visa については英国とヨーロッパで利用でき、Mastercard については世界中で利用できるリアルタイムの更新を展開しており、アメリカン・エキスプレスの更新はさらに多くの国へと拡大する予定です。支払いが拒否された場合、リアルタイムの更新リクエストを送信し、利用可能な場合は更新された詳細で支払いを直ちに再試行することができます。この機能は、取引時にカードの詳細が変更される場合に特に便利です。
各種カードネットワークへの対応 このサービスは、アメリカン・エキスプレス、Visa、Mastercard、Discover など、主要なネットワークから米国で発行されたほとんどのカードをサポートしています。自動カード更新に対する国際的なサポートは、各国の状況や、カード発行会社のネットワークへの参加状況によって異なる可能性があります。
請求とサブスクリプションの管理: Stripe の CAU は、その請求およびサブスクリプション管理サービスと統合されており、定期的および継続的な支払いプロセスが必要な企業向けの包括的なソリューションになっています。
サービス費用: Stripe は、2023 年 10 月に自動カード更新機能の価格を更新しました。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。