自動カード更新機能 (CAU) とはビジネスで知っておくべきこと

  1. はじめに
  2. 自動カード更新機能の仕組み
  3. 自動カード更新機能を使用するメリット
  4. 自動カード更新機能を使用する場合の課題
  5. 自動カード更新機能の選択および実装方法

自動カード更新機能 (CAU) は、クレジットカード会社やペイメントゲートウェイが提供するサービスで、ビジネスで最新のクレジットカードおよびデビットカード情報を保持するのに役立ちます。カードの有効期限切れや交換によって利用者の支払い情報が変更されると、CAU でビジネスのシステム内のカード詳細を自動的に更新します。CAU は、古くなったカード情報による支払いの中断を減らすのに役立つため、継続支払いサブスクリプションを扱うビジネスにとって有益です。

以下では、このサービスを使用するうえでビジネスで知っておくべきこととして、CAU の仕組み、考えられる課題、決済システム全体に適合させる方法について説明します。

この記事の内容

  • 自動カード更新機能の仕組み
  • 自動カード更新機能を使用するメリット
  • 自動カード更新機能を使用する場合の課題
  • 自動カード更新機能の選択および実装方法

自動カード更新機能の仕組み

CAU は、カードの有効期限切れ、カードの再発行、アカウントの閉鎖、カードのアップグレードなどの理由で利用者のカード情報が古くなっていることがわかったときに使用されます。CAU サービスの主な特徴は、新しいカード詳細の取得に利用者とビジネスが関与することはほとんどなく、代わりにクレジットカードネットワーク決済代行業者カード発行会社を活用することです。このサービスでは機密性の高い財務情報が送信されることを前提に、プロセスを PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) などの厳格なセキュリティおよび法令遵守プロトコルで管理します。このようなプロトコルはカード保有者のデータを保護するために必要です。

CAU は、あらゆる大手クレジットカード会社が提供しています。すべて似たような方法で機能しますが、各会社のサービスに固有のシステムや手順があります。たとえば、Visa の Account Updater CAU と Mastercard の Automatic Billing Updater CAU は、異なる方法でカード情報を更新します。Mastercard はプッシュ / プルモデルを使用し、Visa は加盟しているアクワイアラーを通じて直接更新します。

CAU の動作の一般的なプロセスを以下で概説します。

  • ビジネスからのリクエスト: ビジネスが、利用者のクレジットカード情報の更新が必要になったことを把握したら、まずは決済代行業者にリクエストして、利用者の既存のカード詳細を通知します。決済代行業者はリクエストを受け取ると、仲介役となってこのリクエストを適切なクレジットカードネットワーク (例: Visa、Mastercard、American Express) に転送します。このようなリクエストに含める必要がある具体的な詳細は、ネットワークによって異なります。決済代行業者は、転送するリクエストの形式が適切で、必要な情報がすべて含まれていることを確認する責任を負います。

  • クレジットカードネットワークからのリクエスト: クレジットカードネットワークは、決済代行業者からリクエストを受け取ると、利用者のクレジットカードを発行した金融機関 (カード発行会社とも呼ばれる) に連絡します。カード発行会社でリクエストを確認し、レコードをチェックして、口座番号や有効期限などの最新のカード詳細を収集します。その後、こうした情報をクレジットカードネットワークに安全に送り返します。

  • 安全なデータ送信: カード発行会社から新しいカード情報を取得した後、クレジットカードネットワークは利用者の機密性の高い財務データを保護する安全なチャネルを通じて、このデータを決済代行業者に送信します。

  • ビジネスレコードの更新: 更新されたカード情報を受け取ったら、決済代行業者はそれに応じてビジネスのレコードを更新し、ビジネスで利用者の最新かつ正確なカード詳細を使用して今後の取引を処理できるようにします。ビジネスのレコードの即座更新をトリガーする自動更新メカニズムを用意している決済代行業者もあります。新しいカード詳細が追加されるとビジネスに通知され、更新された利用者のカードや更新の理由を要約したレポートが届くこともあります。

  • データベースの更新: クレジットカードネットワークと決済代行業者は、利用者のクレジットカード情報を格納したデータベースも維持します。カード発行会社から新しいカード詳細が届くと、これらのデータベースが更新されます。

自動カード更新機能を使用するメリット

自動カード更新機能は、特にサブスクリプションベースのサービスや分割払いプランなどの継続支払いに依存しているビジネスにとって重要です。CAU の主な特徴として、古くなったカード情報が原因の取引の失敗を防ぎ、安定した収益源をビジネスに提供し、ビジネスの利用者に中断されることのないサービスを提供することが挙げられます。クレジットカードには、有効期限切れ、紛失や盗難による再発行、アカウントの閉鎖、アップグレードなどのライフサイクルイベントが絶えず発生します。長期にわたって正確なカード情報にアクセスする必要があるビジネスには、このようなイベントに対応するための CAU のようなシステムが必要です。

CAU を利用するビジネスでは、次のような業務上のメリットを得られる場合があります。

  • 取引拒否の低減: ほとんどのクレジットカードは 3 ~ 5 年ごとに有効期限が切れるため、利用者がカード詳細の更新を忘れるとビジネスの売上が失われます。CAU では、最新のカード詳細を維持することで、取引の成功率を高め、売上の流出を防ぎ、堅実な収入とキャッシュフローをサポートします。また、全体的な財務健全性が高められ、ビジネスでより正確な予測と財務計画を実現できます。たとえば、Postmates では売上が CAU によって 1.72% 増加し、1 年で 6,000 万ドルになりました。

  • 継続的なサービス提供: サブスクリプションモデルまたは分割払いプランで運営されているビジネスにとって、サービスの継続性は重要です。CAU では、古いクレジットカード情報によってサービスが中断されないようにすることで、サービスの継続性を維持できるように支援します。

  • 管理負担の軽減: クレジットカード情報を手作業で追跡および更新すると、非常に多くのリソースが必要になります。更新機能を活用することで、こうした手作業をなくし、収入を生み出す活動に貴重なリソースを費やすことができます。また、管理コストや、データの手動入力、カスタマーサポートへの問い合わせ、チャージバック手数料にかかるコストも削減できます。

  • 顧客維持率の向上: スムーズな請求プロセスは、サブスクリプションモデルや継続支払いモデルで利用者を維持するために重要な要素であり、支払いの問題が頻発すると利用者の不満のほか、最終的には解約につながる可能性があります。サブスクリプション解約の半数は、有効期限切れクレジットカードなどの回避可能な支払いの失敗が原因です。更新機能では、有効なサブスクリプションを維持し、継続的な収入源を安定させることによって解約を低減できます。また、CAU では、支払い関連の混乱を最小限に抑え、利用者に連絡を取らずにアカウントの更新を処理することで、顧客体験を改善することもできます。利用者への連絡は、煩わしくて迷惑だと受け取られる場合があります。

  • データセキュリティの強化: 手作業でカードの保存や更新を行うと、ビジネスでデータ侵害にさらされるリスクが高くなります。更新機能では、機密情報を安全に処理し、攻撃を減らして、PCI DSS 規則に確実に準拠できます。また、不審な行動を事前に特定し、不正利用による損失を最小限に抑えることもできます。さらに、不正利用されやすい古くなったカードのアカウントの詳細を速やかに差し替えることで、ビジネスを保護します。

  • 拡張性の向上: ビジネスの成長に伴い、管理する取引や顧客データの量も増えます。CAU はビジネスに合わせて拡張できるため、手作業での処理を増やさずに効率良く取引の増加に対応できます。

  • マーケティング機会の向上: カードの更新の傾向に関して更新機能が得たインサイトから、ビジネスで利用者セグメント、解約パターン、支出傾向に関する有益な情報を取得し、マーケティングキャンペーンをパーソナライズして顧客エンゲージメントを高めることができます。

自動カード更新機能を使用する場合の課題

CAU には多くのメリットがあると同時に課題もあります。ここでは、CAU で課題が生じる可能性がある主な領域について説明します。

  • 実装: 既存の決済システムへの CAU の実装は、特に堅牢な IT インフラストラクチャを持たないビジネスにとって、技術的に複雑な場合があります。選択した CAU がさまざまな決済処理プラットフォームや会計システムと互換性があるかどうか確認するには、幅広い技術的専門知識とリソースが必要です。

  • コスト: CAU サービスの実装では、サブスクリプション、実装、メンテナンスのコスト、潜在的な取引手数料などの追加コストが生じる可能性があります。一部のビジネス、特に中小企業にとって、このようなコストは重要な検討事項になり得ます。

  • セキュリティ: 機密性の高い利用者の支払い情報を処理する場合、CAU サービスがデータセキュリティ標準やプライバシー標準に準拠しているかどうかをビジネスで評価する必要があります。このようなセキュリティ要件の管理は、特にセキュリティの専門知識を持たないビジネスにとって困難な場合があります。

  • 信頼性: サードパーティの CAU サービスを利用すると、依存関係が生じる可能性があります。サービスプロバイダーでダウンタイム、技術的な問題、または利用規約の変更が生じると、ビジネスの決済処理機能に影響が及ぶ可能性があります。

  • 柔軟性: 特定の業務ニーズがあるビジネスでは、適切な CAU を見つけることが困難な場合があります。CAU によっては、対象となる取引のタイプ、サポートされているカードネットワーク、レコード更新の頻度などの機能に関するカスタマイズオプションが制限されていることがあります。

  • 技術的なエラー: あらゆる技術ソリューションと同様に、CAU は技術的な不具合やシステムエラーと無縁ではありません。不具合やエラーによって誤った更新や更新漏れが発生し、取引の拒否や利用者の不満につながることがあります。

自動カード更新機能の選択および実装方法

Visa、Mastercard、American Express、Discover のそれぞれに、独自の自動カード更新機能サービスがあります。American Express と Discover では CAU サービスに直接登録する傾向にありますが、Visa と Mastercard ではサービスとのシステム互換性を確認するためにアクワイアラー、カード発行会社、または決済代行業者を介して登録する必要があります。

決済代行業者を通して CAU サービスに登録すると、多数のメリットがあります。Stripe などのペイメントゲートウェイには、多くの場合、決済処理ソリューションの一環として構築済みのアカウント更新機能サービスが含まれており、実装や保守の技術的な側面に対処してくれます。これは、技術的な専門知識やリソースを持たないビジネスにおいて、社内でアカウント更新プロセスを管理するうえで明確なメリットとなります。このようなペイメントゲートウェイは一般的に、複数のクレジットカードネットワークにまたがる更新もサポートしており、幅広い顧客基盤に対応する包括的なソリューションを提供します。

今後の流れの一例として、Stripe を通じて CAU サービスに登録するプロセスを以下で概説します。

  • Stripe への連絡: Stripe を通じての CAU サービスの利用にご関心がおありでしたら、Stripe に直接ご連絡ください。Stripe はアカウント更新機能サービスに関する詳細情報と登録方法を提供し、具体的なビジネスニーズと Stripe の CAU サービスによってどのようにニーズを満たせるかを説明します。たとえば、ビジネスでは Stripe のアカウント更新機能サービスでデータを更新する頻度について尋ね、より頻繁な更新が必要かどうかを評価する必要があります。また、Stripe の CAU サービスが、自社のサービス内容に最適な取引タイプ (例: 継続的なサブスクリプション、1 回限りの支払い) に対応していることを確認する必要もあります。

  • セキュリティプロトコルの確認: 更新プロセス中に機密性の高い利用者データを保護するために実施されるすべてのセキュリティ対策について話し合う必要があります。たとえば、Stripe のサービスは PCI DSS に準拠していますが、ビジネスでこれを確認し、自社の法令遵守要件との整合性を把握したうえで話を進める必要があります。

  • Stripe の実装: 通常、Stripe は、アプリケーションプログラミングインターフェイス (API) ベースでサービスに実装されます。ビジネスでは、自社の決済システムに Stripe の API を実装する必要があります。この際に、決済システムと Stripe のアカウント更新機能サービスの接続を確立するプログラミング作業が発生することがあります。場合によっては、Stripe はファイルベースのデータ交換にも対応します。この場合は、Stripe のシステムで処理されるクレジットカード情報を含むデータファイルを送受信する必要があります。

  • 機能のテスト: 実装後、入念なテストを実施して、構築済みのシステムが正しく機能していることを確認する必要があります。カードの有効期限、カードの再発行、アカウント変更などのさまざまなシナリオをテストして、更新機能サービスによって情報が効果的に更新されていることを確認します。

  • チームのトレーニング: Stripe の CAU の仕組みや関連する利用者からの問い合わせへの対応方法について、関係するチームメンバー全員をトレーニングする必要があります。CAU がビジネスプロセスに及ぼす影響や日常業務に CAU のメリットを活かす方法について、チームに伝えましょう。

  • パフォーマンスの追跡: 自社システムにおける Stripe の CAU サービスのパフォーマンスを定期的にモニタリングして、取引拒否の減少、支払いのオーソリの成功率向上などの指標を確認する必要があります。Stripe の CAU サービスがビジネスの期待や要件を満たしていない場合は、必要に応じて調整したり、さらにカスタマイズしたりすることができます。

「カード情報自動更新」と呼ばれる Stripe の CAU サービスの詳細について、以下で概説します。

  • リアルタイムの自動更新: Stripe を使用しているビジネスでカード詳細を保存している利用者は、新しいカードを取得した際に詳細を再入力しなくても、自動的に情報が更新されます。Stripe で最近展開したリアルタイム更新は、Visa の場合はイギリスとヨーロッパで、Mastercard の場合は世界中で利用できます。また、その他の国での American Express の更新にまで拡大される予定です。この機能は、取引の瞬間にカード詳細が変更されるような状況で特に役に立ちます。

  • さまざまなカードネットワークのサポート: このサービスは、American Express、Visa、Mastercard、Discover などの大手ネットワークからアメリカで発行されたほとんどのカードに対応しています。カード情報自動更新の国際的なサポートは、国やカード発行会社がネットワークに加盟しているかどうかによって異なります。

  • 請求およびサブスクリプション管理: Stripe の CAU は、請求およびサブスクリプション管理サービスと連携しており、定期的かつ継続的な決済プロセスを必要とするビジネスにとって包括的なソリューションとなります。

  • サービスコスト: Stripe は、2023 年 10 月に自動カード更新機能サービスの料金体系を改訂しました。Stripe の料金体系ポリシーには、カスタムサービスを使用しているビジネスでのカード更新 1 件あたり 25 セントの料金が含まれています。

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