対面支払いは、タッチ決済やその他の非接触型決済手段といった新たなオプションを含めて進化し続ける一方で、オンラインのみで事業を展開している事業者も数多く存在します。数十年にわたって対面決済を受け付けてきた従来のブランドさえ、オンライン決済も受け付けるようになっています。
2021 年、小売業の EC ストアの売上は約 5 兆 2,000 億ドル (世界合計) にのぼり、2026 年までに 56% 増の 8 兆 1,000 億ドルに伸びると予測されています。事業者の側で重要になるのは、堅牢なオンライン決済処理システムを導入することです。
ここでは、オンライン決済を受け付けることのメリット、利用できる各種の決済手段、オンラインペイメントプロバイダーの選び方、オンライン決済処理を設定する方法を取り上げます。このガイドは、中小企業経営者であれ、大企業の意思決定者であれ、オンライン決済をスピーディかつ安全、効率的に受け付け、事業の成長に合わせてそのプロセスを拡大するために必要な情報を提供します。
この記事の内容
- オンライン決済手段の種類
- オンライン決済処理を構成する要素
- オンライン決済を受け付けるメリット
- オンライン決済を受け付ける方法
- オンラインペイメントプロバイダーの選び方
オンライン決済手段の種類
事業者が選択できるオンライン決済手段は多種多様であり、それぞれに固有のメリットとデメリットがあります。ターゲットとなる顧客層の好み、自社の主要な販売チャネルの機能、各決済手段がコストとセキュリティに及ぼす影響を検討することが重要です。オンラインの顧客は各種のオプションが用意されていることを期待しているため、提供する決済手段は複数になる可能性があります。
以下は、広く普及しているオンライン決済手段の一部です。
クレジットカードとデビットカード
クレジットカードとデビットカードによる決済は 2021 年、世界のオンライン取引の 34% を占めています。利便性、スピード、セキュリティに優れ、ほとんどのオンライン事業者が受け付けている決済手段です。デジタルウォレット
電子ウォレットとも呼ばれるデジタルウォレットは、支払い情報を保存・管理するためのオンラインアカウントです。広く普及しているデジタルウォレットとしては、PayPal、Apple Pay、Google ウォレットがあります。2021 年、デジタルウォレットはクレジットカードおよびデビットカードを上回り、世界で最も広く利用されている EC ストアの決済手段となり、すべての取引の半数近くを占めるに至っています。銀行振込
銀行振込では、購入者の銀行口座から事業者の銀行口座へ売上が直接振り込まれます。他の決済手段と比較して時間がかかり、利便性に欠けるものの、クレジットカードまたはデビットカードを所有していない購入者や、クレジットカード手数料の負担を避けたい購入者が利用を希望することも少なくありません。仮想通貨
仮想通貨は今なお比較的新しい決済手段ですが、仮想通貨による決済を受け付けると、競争上の優位性を確保し、この決済手段の利用を希望している購入者を誘引できます。Statista のレポートによれば、仮想通貨による購入者の決済額は、世界合計で 2024 年までに 1 兆 4,000 億ドルに達すると予測されています。2020 年の推計 5,900 億ドルからは大幅増となりますが、仮想通貨による決済はまだ利用者に浸透していないため、オンライン決済市場全体に占める割合はごく低い水準にとどまります。モバイル決済
購入者は、商品やサービスの代金をモバイルデバイスで支払うことができます。通常はモバイルアプリやデジタルウォレットを利用します。モバイル決済はスピーディーで利便性に優れており、オンラインショッピングにスマートフォンを利用する購入者が増えていることから、普及が拡大しています。
オンライン決済処理を構成する要素
オンライン決済処理では、いくつかの構成要素が連携して取引を安全に処理し、オーソリします。処理に関与している構成要素は以下のとおりです。
ペイメントゲートウェイ
ペイメントゲートウェイは、事業者のウェブサイトまたはモバイルアプリを決済代行業者に接続する安全なオンラインポータルです。購入者の支払い情報を取得して暗号化し、オーソリのために決済代行業者に送信します。決済代行業者
決済代行業者は購入者の支払い情報を確認し、取引をオーソリします。ペイメントゲートウェイと購入者の銀行またはカード発行会社とデータをやり取りして、取引が有効であり、オーソリされていることを確認します。加盟店アカウント
加盟店アカウントは、事業者がクレジットカードとデビットカードによる決済を受け付けて処理する場合に必要となる固有の銀行口座です。取引の売上を保留する目的でのみ使用されます。その後、売上は事業者の主要なビジネス用銀行口座に入金され、事業者がアクセスして使用できるようになります。通例、加盟店アカウントは決済代行業者またはアクワイアリング銀行が設定します。アクワイアリング銀行
アクワイアリング銀行は、取引の売上を事業者の銀行口座に送金する銀行であり、多くの場合は加盟店アカウントを提供しています。手数料とチャージバックを含めて、取引の金銭面の管理を担います。セキュリティ対策
事業者と購入者の両方を不正利用や不正な取引から保護するため、オンライン決済処理システムにはいくつかのセキュリティ対策が導入されています。対策の例としては、SSL 暗号化、トークン化、2 段階認証などがあります。
オンライン決済を受け付けるメリット
オンライン決済を受け付けることは、競争力を維持し、良好な顧客体験を実現するうえで多くの事業者にとって不可欠です。利便性に優れた安全な支払いオプションを提供すると、新たな市場へのリーチ、新規顧客の獲得、売上拡大、業務の効率化を実現できます。
オンライン決済を受け付けると、以下を含む数多くのメリットを得られます。
顧客の利便性の向上
オンライン決済を受け付けると、商品やサービスの代金をより簡単に支払える手段を提供できます。顧客は場所や時間に関係なく決済できるようになり、実店舗を訪れたり、小切手を郵送したりする必要がなくなります。決済機能がこのように柔軟であれば、顧客体験で生じるストレスが軽減され、事業者は売上の拡大、顧客満足度とロイヤルティの引き上げ、顧客生涯価値の向上によるメリットを得られます。売上と収益の拡大
オンライン決済を受け付けると、購入時のハードルが解消され、顧客基盤の拡大、成長に伴う新たな市場への進出、売上の拡大を促すことができます。利用できる支払いオプションが増えることによって、顧客が取引を完了する可能性が高まり、事業者には購入完了率の向上や売上の拡大がもたらされます。不正利用やチャージバックのリスク低減
オンライン決済処理システムは、不正利用やチャージバックのリスクを低減するセキュリティ機能を備えた設計となっています。安全なペイメントゲートウェイおよび決済代行業者を利用すると、不正取引や不正行為から自社と顧客を保護できます。たとえば、Stripe Radar では、数百万社のグローバル企業から取得したデータでトレーニングされた機械学習を活用して、対面支払いとオンライン決済の両方について不正利用を検出し、ブロックします。会計処理とレポート作成のプロセスの効率化
オンライン決済処理では、会計処理とレポート作成のプロセスが簡潔になり、取引に関する記録とレポートが自動化されるため、業務時間の大幅な節減につながる可能性があります。Stripe などのオンライン決済処理プロバイダーを導入すると、社内の作業負担が軽減されるほか、決済と顧客に関する指標を実用的な方法で収集、統合、報告します。
オンライン決済を受け付ける方法
EC ストアやデジタル決済をまだ導入していない事業者にとって、オンライン決済の受け付けは煩雑であるように思われるかもしれませんが、適切なツールと戦略を採用すれば驚くほどシンプルになります。
ここでは、オンライン決済の受け付けを開始するための手順をご説明します。
1.決済代行業者を選ぶ
最初に行うのは、自社のニーズを満たす決済代行業者を選ぶことです。決済代行業者を選ぶ際は、料金体系、機能、セキュリティ、カスタマーサポートなどの要素を考慮する必要があります。
Stripeのようなプロバイダーは、単なる決済処理という枠組みを超えて、決済、請求、オムニチャネルコマースからなる統一的なエコシステムの構築を包括的なアプローチでサポートします。断片的な決済インフラからの脱却を目指す事業者にとって、このアプローチは一般的になりつつあります。断片的なインフラは、統一的なアプローチと比較して複雑であり、効率の低下やセキュリティリスクに陥りやすいばかりか、時間とリソースも浪費しがちです。
2. 加盟店アカウントを設定する
導入した決済処理プロバイダーが Stripe と同様に加盟店アカウントの機能も提供している場合は、加盟店アカウントを自社で開設せずにオンライン決済処理を開始できます。
機能が提供されていない場合は、決済代行業者またはアクワイアリング銀行で使用する加盟店アカウントを設定する必要があります。このアカウントを使用すると、取引の売上を受領し、資金を管理できます。通常、申請のプロセスでは自社の情報と銀行情報を提供するほかに、信用調査も受けます。
3. ペイメントゲートウェイを導入する
加盟店アカウントを設定した後は、ペイメントゲートウェイを自社のウェブサイトまたはモバイルアプリに導入する必要があります。これには、ペイメントゲートウェイを自社のプラットフォームに接続するためのコードスニペットまたはプラグインを追加する作業が含まれます。Stripe を含むほとんどの決済処理プロバイダーは、幅広いユースケースに応える柔軟な導入機能を提供しています。
4. テストして開始する
オンライン決済を開始する前に、決済処理システムを徹底的にテストし、すべての要素が適切に機能していることを確認します。具体的には、テスト取引を実施して、エラーの有無を確認し、売上が売上として処理され、適切な銀行口座に入金されていることを確認します。あらゆる要素が想定どおりに機能している場合は、オンライン決済を開始して取引の受け付けを開始できます。
5. 最適化して監視する
最後に、オンライン決済処理システムを継続的に監視してパフォーマンスを改善し、不正利用を防止する必要があります。具体的には、パフォーマンス分析情報を追跡し、データを活用して、最適化戦略と成長戦略の情報を取得します。また、追加のセキュリティ対策の導入、取引データの分析、決済プロセスの微調整によって、カゴ落ち率を低減することもできます。
オンラインペイメントプロバイダーの選び方
決済代行業者は、絶えず進化し、非常に複雑で競争が激しいオンライン決済という分野について、最新状況を常に把握している必要があります。自社の業態や規模に関係なく、固有のニーズを満たすペイメントプロバイダーを選ぶことが重要です。
創業初期のスタートアップ、新進のブランド、EC ストアの活動領域を新たに拡大しようとするブランドは、リソースの制約が足かせとなって、社内に決済処理環境を構築できないことがあります。大企業や既成の EC ストアプラットフォームはリソースに余裕がある場合もありますが、事業規模の大きさゆえに、エラーや非効率な運用が 1 つ生じるだけでコストが増大することもあれば、1 つの改善だけで売上が大幅に拡大する可能性もあります。
あまりにも多くのプロバイダーが市場に参入しているため、まず何に取り組むべきかの判断が難しいことがあります。以下に、選択肢を評価する際に検討すべき重要な要素をいくつか示します。
価値
通常、ペイメントプロバイダーは、取引 1 件ごとの定額手数料に加えて、取引ごとに一定のパーセンテージを請求します。事業者は、さまざまなプロバイダーの手数料を比較して、最大限の価値をもたらすプロバイダーを見極める必要があります。ただし、手数料が最も低いプロバイダーが最大限の価値をもたらすとは限りません。どの機能が自社に最も有益であるか、各プロバイダーがどのような機能を提供しているかを考慮しましょう。次に、全般的なメリットと総コストを照らし合わせて、より細かく計算します。セキュリティとモニタリング
決済処理では顧客の機密情報が取り扱われるため、セキュリティが最大の懸念事項になります。暗号化、取引モニタリング、不正防止、チャージバック保証など、強力なセキュリティ機能を提供しているペイメントプロバイダーを探す必要があります。プロバイダーは、絶えず変化する不正利用を検出して防止する方法や、疑わしい取引または顧客の行為にフラグを立てる方法も継続的に微調整する必要があります。カスタマーサポート
決済処理で問題が生じることは、時として避けられません。したがって、対応の早い効果的なカスタマーサポートを得られることは重要です。24 時間 365 日のサポートと複数の問い合わせ手段が提供されているペイメントプロバイダーを探す必要があります。連携機能と実装しやすさ
自社のウェブサイトまたはモバイルアプリと簡単に連携できるペイメントプロバイダーを選ぶ必要があります。この結果、顧客の決済プロセスがよりスムーズになり、エラーや技術上の問題が生じるリスクも低くなります。Stripe のように、最小限の作業で導入でき、多岐にわたる柔軟な決済ソリューションを提供してくれるプロバイダーを探しましょう。決済手段
ペイメントプロバイダーは、クレジットカード、デビットカード、デジタルウォレット、銀行振込を含む各種の決済手段を提供している場合があります。ターゲットの顧客層にどの決済手段が最も浸透しているかを考慮し、その決済手段に対応しているペイメントプロバイダーを選ぶ必要があります。評判
最後に、検討しているペイメントプロバイダーの評判を調査する必要があります。高度な方法でオンライン決済を実行し、信頼性の高いサービスの提供実績があり、顧客、特に自社とニーズが似ている同様の立場の同業他社から、肯定的な評価を得ているプロバイダーを探します。たとえば、EC ストアプラットフォームの場合、Stripe のお客様である Shopify がヒントになります。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。