サブスクリプションベースのビジネスモデルは、メディアやエンターテインメントからソフトウェアやサービスまで、さまざまな業界で導入が増加しています。Zuora 社の調査と「サブスクリプションエコノミーインデックス」から、サブスクリプションビジネスの売上が、2012 年から 2022 年にかけて S&P 500 社の約 5 倍の速さで成長したことが明らかになっています。サブスクリプションモデルは、安定した予測可能な収益源を生み出し、顧客との長期的関係を育むので、多くの事業者にとって魅力的です。
しかし、サブスクリプションモデルへの移行には課題が伴います。大部分は、決済処理に関連する課題です。継続請求サイクル、さまざまな段階制料金、アップグレード、ダウングレード、キャンセル、返金、複数の決済手段にうまく対応するといった曲芸は、すぐに事業者の重荷となるはずです。また、サブスクリプションベースのビジネスは、国際的な金融規制を遵守し、機密性の高い顧客データを保護する必要があるため、さらに複雑になります。
サブスクリプション決済モデルでは、より予測可能な売上を生み出し、顧客エンゲージメントを維持し、顧客生涯価値を高めることができます。しかし、こうしたメリットを効果的に手に入れるには、まず効率的なサブスクリプション決済処理システムを理解し、導入する必要があります。この記事では、事業者がまず初めに知っておくべきことについてご説明します。
この記事の内容
- サブスクリプション決済処理とは
- サブスクリプション決済モデルの種類
- サブスクリプション決済処理の仕組み
- サブスクリプション決済の処理方法
- Stripe が提供するサブスクリプション決済処理サポート
サブスクリプション決済処理とは
サブスクリプション決済処理とは、サブスクリプションベースのサービスの継続支払いを管理するシステムと方法を指します。これには、ストリーミングプラットフォーム、ニュースウェブサイト、SaaS プロバイダーなどのビジネスが含まれます。
サブスクリプション決済モデルの種類
サブスクリプション決済の運用モデルには、1 つの決まったモデルしかないわけではありません。製品やサービス、顧客、最も効率的な運用方法に応じて、事業者が利用できるさまざまなサブスクリプション決済モデルがあります。サブスクリプションモデルには次の種類があります。
固定サブスクリプション
固定サブスクリプションは、サブスクリプション登録者が一定の間隔で一定の金額を支払って製品やサービスを利用する最も単純なモデルです。月ごと、四半期ごと、1 年ごとといった間隔で支払います。例としては、Netflix の月単位のサブスクリプションや新聞の年間購読などがあります。従量課金ベースまたは都度払い
このモデルでは、サブスクリプション登録者は自分が使用した分のみを支払います。このモデルは、電気やガスのような公益事業サービスでよく見られるものですが、AWS (Amazon Web Services) のようなデジタルサービスでも人気が高まっており、登録者は使用した分だけサーバーリソースの料金を支払います。段階制
このモデルは、価格帯ごとに異なるレベルのサービスを提供するものです。利用できる機能群が段階ごとに異なるので、顧客は自分のニーズと予算に最も適したレベルを選択することができます。多くの SaaS 企業がこのモデルを採用しています。フリーミアム
フリーミアムモデルは、製品やサービスの基本機能は無料で提供する一方で、高度な機能やサービスに料金を設定したものです。このモデルは、LinkedIn、Spotify、多くのモバイルゲームなど、さまざまなオンラインサービスやアプリで使用されています。ユーザー単位の料金体系
これは B2B の SaaS 企業で使用されることが多く、ユーザー数に応じてサブスクリプション料金が上昇します。1 ユーザーあたりの料金が固定されている場合もあれば、ユーザー数が増えると割引が適用される場合もあります。ハイブリッド
一部の企業では、顧客に柔軟性を提供するために、上記のモデルが組み合わせて使用されています。たとえば、フリーミアムモデルでありながら、固定の段階制料金体系とユーザー単位の段階制料金体系の両方が用意された SaaS 製品などがあります。
サブスクリプション決済処理の仕組み
次は、サブスクリプション決済処理の仕組みと、サブスクリプション決済処理が事業者の取引管理の簡易化に役立つ理由について詳しくご説明します。
顧客の登録
サブスクリプション決済処理は、サービスに登録することを顧客が決めたときから始まります。顧客はフォームに入力し、名前、住所、決済情報などの必要な情報を提供します。これには、クレジットカードの詳細、銀行口座情報、Shopify などの既存の決済プラットフォームに保存された決済方法へのアクセスなどが含まれます。顧客は、希望するサブスクリプションプランと請求頻度 (毎月、毎四半期、毎年) も選択します。決済情報の安全な保管
次に、機密性の高い決済情報が、今後の取引のために安全に保管されます。通常、これはトークン化を使用して行われます。トークン化により、セキュリティを損なうことなく、重要な情報をすべて保持した固有の識別記号、つまり「トークン」へと機密データが置き換えられます。このデータを安全に保管して PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) への準拠を維持するために、ペイメントゲートウェイとして知られるサードパーティーサービスを事業者が利用することがよくあります。サブスクリプション管理システム
選択されたプラン、請求頻度、トークン化された決済情報などのサブスクリプションの詳細は、サブスクリプション管理システムに保管されます。このシステムが請求サイクルを自動化し、選択されたスケジュールとプランに従って顧客への請求を実行します。ペイメントゲートウェイと代行業者
決済が必要になると、サブスクリプション管理システムが支払いリクエストをトリガーします。このリクエスト (金額と、トークン化された決済情報が含まれています) は、ペイメントゲートウェイに送信されます。ゲートウェイが決済代行業者と通信し、次に決済代行業者が顧客の銀行またはカード会社と通信して取引を承認します。取引のオーソリ
顧客の銀行またはカード会社が、取引の詳細を確認し、支払いを承認または拒否します。そして、承認または拒否されたことが、決済代行業者とペイメントゲートウェイを中継してサブスクリプション管理システムに返されます。支払いステータスの通知
サブスクリプション管理システムが、この取引と取引ステータスを記録します。成功した場合、サービスは中断なく継続されます。(残高不足やクレジットカードの有効期限切れなどの理由で) 取引が失敗した場合は、システムから顧客に通知が送信され、支払い情報が更新されます。指定された期間の後に支払いが再試行される場合もあります。継続支払い
請求サイクルが始まるたびにこのプロセスが繰り返され、選択されたサブスクリプションに対する顧客への請求が正確に実行されます。プロセス全体が自動化されているので、事業者や顧客の介入は最小限で済みます。サブスクリプションの変更またはキャンセル
サブスクリプション決済処理では、プランのアップグレード、ダウングレード、キャンセルなどのサブスクリプションの変更も処理されます。プランの変更の場合は、システムが日割り計算を実行して請求額を調整します。キャンセルの場合は、それ以降請求することがないようにします。
サブスクリプション決済処理により、継続支払いを効果的かつ安全に管理し、合理化することができます。これは単なる取引のためのメカニズムではなく、顧客体験を改善し、サービスの継続性を維持し、さらにはビジネスの持続可能性を促進するものです。
サブスクリプション決済の処理方法
事業者がサブスクリプションの支払いを処理するための方法はいくつかあります。どれを選択するかは、通常、事業規模、技術的能力、取引量、顧客のニーズによって決まります。次に、一般的な方法をいくつかご紹介します。
自社処理
豊富なリソースと技術的な専門知識を持つ事業者であれば、サブスクリプション決済を処理するための社内システムを構築できる場合があります。この場合は、決済処理プロトコルを十分に理解し、PCI DSS などのセキュリティ基準を厳格に遵守し、継続請求サイクルを包括的に管理する必要があります。この方法では、高度なコントロールとカスタマイズが可能ですが、複雑で非常に多くのリソースが必要になることがよくあります。ペイメントゲートウェイ
ペイメントゲートウェイは、事業者と顧客の間の安全な仲介者として機能し、関連する銀行やカードネットワークに安全な方法で決済情報を送信します。こうしたゲートウェイは、クレジットカード、デビットカード、デジタルウォレット、銀行振込など、さまざまな決済手段をサポートしています。加盟店アカウントの機能を事業者にも提供している Stripe のような決済処理プロバイダーをご利用の事業者は、独自の加盟店アカウントを取得する必要がありません。サブスクリプション管理ソフトウェア
サブスクリプション管理プラットフォームは、サブスクリプション決済を管理して処理するためのエンドツーエンドのソリューションを提供します。これらのプラットフォームは、継続請求の処理、顧客の決済情報の安全な保管、サブスクリプション階層の管理、変更やキャンセルへの対応を実行します。Stripe を含め、こうしたプラットフォームは、通常、ペイメントゲートウェイ機能を備えているか、さまざまなペイメントゲートウェイと連携して決済を処理します。口座引き落としシステム
口座引き落としシステムでは、事業者が顧客の銀行口座から直接支払いを回収することができます。これは、クレジットカードを処理する必要がなく、クレジットカードの有効期限切れが理由で決済が失敗するリスクが減るので、長期のサブスクリプションや高額の取引に最適なソリューションとなることがあります。複数のツールの組み合わせ
事業者は、それぞれの具体的なニーズに応じて、上記のツールを組み合わせて使用することもできます。たとえば、継続請求の処理にはサブスクリプション管理プラットフォームを使用し、クレジットカード取引を安全に処理するためにペイメントゲートウェイと連携し、特定の顧客や高額なサブスクリプションには口座引き落としのオプションを提供してもよいでしょう。
何であれ、顧客の好みとビジネスニーズに合った方法を選択する必要があります。ビジネスの効率性と拡張性を確保しながら、シンプルで安全かつ便利な決済体験を顧客に提供することを常に目標とするべきです。
Stripe が提供するサブスクリプション決済処理サポート
Stripe は、サブスクリプション決済処理のサポートを含む幅広いソリューションを提供しています。以下に、事業者向けに Stripe が提供しているサブスクリプション決済の支援機能についてご説明します。
Stripe Billing
Stripe Billing は、継続支払いの処理に特化して設計された一連のツールです。これは、事業者がサブスクリプションを管理し、請求サイクルを設定し、継続請求を処理できるように支援します。また、定額制、ユーザー単位、段階制、従量課金など、さまざまな料金体系モデルに対応しています。決済情報の安全な保管
Stripe では、機密性の高いすべてのデータを最適な方法で保護するために、トークン化を使用して顧客の決済情報を安全に保管しています。さらに、Stripe は PCI DSS の最高の評価を取得しています。つまり、Stripe は最も厳しいセキュリティ基準を遵守していることになります。決済手段
Stripe は、すべての主要なクレジットカードとデビットカード、Alipay や SEPA ダイレクトデビットのような特定の国に固有の多くの決済手段、Apple Pay や Google Pay のようなデジタルウォレットなど、さまざまな決済手段をサポートしています。このため、事業者は顧客の好みに合った決済手段を提供できます。Smart Retries と督促管理
失敗した決済を処理するために、Stripe は、成功する可能性が最も高い時間帯をターゲットとして自動的にカード請求を試行するスマートな再試行ロジックを実装しています。Stripe には、組み込みの督促管理機能もあります。この機能は、決済が失敗した場合に顧客にメール (カスタマイズ可能) を送信し、決済情報を更新するように顧客に促します。柔軟な請求期間と日割り計算
Stripe では、任意の請求サイクル (毎月、毎年など) のサブスクリプションを設定できます。また、顧客がサイクルの途中でサブスクリプションをアップグレードまたはダウングレードした場合には、自動的に日割り計算が実行されます。レポート機能と分析
Stripe では、事業者がビジネスをより的確に把握して、データに基づく意思決定を行えるように、サブスクリプションと売上に関する詳細なレポートと分析情報を提供しています。API ファーストのアプローチ
Stripe は API ファーストのアプローチで設計されているので、事実上あらゆるアプリケーションやプラットフォームに統合できます。このため、事業者はサブスクリプション設定やユーザー体験を必要に応じてカスタマイズできます。Stripe Checkout
Stripe Checkout は、事前構築された安全な決済ページを求めている事業者のために、サブスクリプション決済をサポートする、高速でカスタマイズ可能な決済プロセスを提供します。
これらの機能と、Stripe の決済ソリューションで構成される幅広いエコシステムにより、Stripe は、包括的で回復性のあるサブスクリプション決済処理プラットフォームを提供し、事業者がシンプルな顧客体験を柔軟に構築できるようにします。さらに詳しい情報を確認して利用を開始するには、こちらからお問い合わせください。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。