日本の適格請求書とは?記載要件やメリットを解説

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  1. はじめに
  2. 適格請求書 (インボイス) とは
    1. 区分記載請求書との違い
    2. 適格簡易請求書 (簡易インボイス) との違い
    3. 適格返還請求書との違い
  3. 適格請求書は標準税率 10% のみでも必要
  4. 領収書も適格請求書として扱える
  5. 適格請求書は適格請求書発行事業者のみ発行可能
  6. 適格請求書の記載要件
  7. 適格請求書を導入するメリット
    1. 取引の仕入元として選ばれやすい
    2. 電子データ化した適格請求書に切り替えるベストタイミング
  8. 適格請求書を導入するデメリット
    1. 適格請求書に対応することで消費税の納税義務が発生する
    2. インボイス制度に準じたシステムの導入が必要になる
  9. 適格請求書の注意点
    1. 適格請求書発行事業者の登録を忘れない
    2. 適格請求書には一定期間における保存が義務付けられている
    3. 適格請求書が正しく記載されていないと買い手側の損益につながる
    4. インボイス制度の経過措置について理解する
  10. インボイス制度のもとで B2B 取引を円滑に行うために

2023 年 10 月、日本でインボイス制度 が開始されました。またこれにともない、同制度に準拠した適格請求書への対応が事業者に求められるようになりました。適格請求書は、事業者が仕入税額控除 を受けるために必要となる書類です。また、適格請求書の発行に際してはさまざまな要件が定められているため、事業者はインボイス制度への理解を深めるとともに、適格請求書の記載要件、書き方などについて注意しなければなりません。

本記事では、適格請求書の基礎知識として、日本の事業者が知っておくべき記載要件やメリット・デメリット、注意点などについて解説します。

目次

  • 適格請求書 (インボイス) とは
  • 適格請求書は標準税率 10% のみでも必要
  • 領収書も適格請求書として扱える
  • 適格請求書は適格請求書発行事業者のみ発行可能
  • 適格請求書の記載要件
  • 適格請求書を導入するメリット
  • 適格請求書を導入するデメリット
  • 適格請求書の注意点
  • インボイス制度のもとで B2B 取引を円滑に行うために

適格請求書 (インボイス) とは

冒頭でも解説したように適格請求書とは、現行のインボイス制度に基づいて発行される証憑書類です。適格請求書は通称「インボイス」と呼ばれることもありますが、カタカナでインボイスと表記すると、場合によって適格請求書とは別の目的を持つインボイス (貿易関連書類など) の意味にもなるため、状況を考慮しながら用いることが大切です。

適格請求書は仕入税額控除に関わる大変重要な書類です。売り手側は買い手側に対し、インボイス制度で定められている一定の要件を満たした適格請求書を交付することで、買い手側は仕入税額控除を適用することができます。つまり、適格請求書がないと、買い手側は仕入税額控除を受けられません。

区分記載請求書との違い

区分記載請求書 とは、インボイス制度の開始以前に施行されていた区分記載請求書保存方式に準拠した書類です。しかし現在では、この区分記載請求書保存方式に代わって導入されたインボイス制度のもと、適格請求書に対応する必要があります。

適格請求書では、従来の区分記載請求書よりもより細かな必須記載事項が設けられています。たとえば、インボイス制度の登録番号 も、区分記載請求書にはない適格請求書の必須記載事項の 1 つです。

したがって、区分記載請求書を取引先に交付しても、インボイス制度で定められている仕入税額控除の適用条件を満たすことができないため注意しましょう。

適格簡易請求書 (簡易インボイス) との違い

適格簡易請求書 (簡易インボイス) は、適格請求書と同じくインボイス制度に準拠した書類です。適格請求書との違いは、適格簡易請求書の方が記載項目が簡略化されている点、また、一部の業種のみに発行が認められているという点です。たとえば、小売業や飲食業、タクシー業のように、不特定多数の顧客が対象となる事業の場合、事業の性質上適格請求書の発行が困難なケースがあります。そこで、これらの特定の業種に限り、適格簡易請求書の発行が認められているのです。

なお、適格簡易請求書の場合、適格請求書よりも記載項目が簡略化されていたとしても、適格請求書と同等の効力があります。よって、買い手側の事業者は、適格簡易請求書を用いて問題なく仕入税額控除を適用することができます。

適格返還請求書との違い

適格請求書は、売り手が買い手に対し、正確な消費税の適用税率や消費税額等を伝えることを目的に発行されるものであると同時に、商品やサービスの提供および売り買いの事実があったことを証明する書類です。一方、適格返還請求書 は、商品が返品または値引きされたときに発行される書類です。適格返還請求書は「返還インボイス」と呼ばれることもあります。

なお、適格返還請求書も適格請求書と同様、仕入税額控除に関わる重要な文書となります。そのため、事業者はこの適格返還請求書の詳細についても、しっかりと把握しておくことが大切です。

適格請求書は標準税率 10% のみでも必要

現在の日本の消費税は、10% の標準税率8% の軽減税率 に分けられます。インボイス制度は、これら複数の消費税率に対応した仕入税額控除の方式として、区分記載請求書等保存方式に代わって始まりました。もともとは、それぞれの税率を正しく把握するために導入された適格請求書ですが、記載する消費税が 10% のみの場合でも、原則として適格請求書の発行が求められます。理由としては、買い手が仕入税額控除を受けるためには、適格請求書が必要となるためです。したがって、10% の標準税率のみの取引だからといって、インボイス制度の要件を満たさない請求書や領収書を発行すると、買い手から適格請求書の作成を改めて要求される確率が高くなるでしょう。

領収書も適格請求書として扱える

インボイス制度では領収書 も適格請求書として扱うことができます。そもそも適格請求書とは、インボイス制度のもとで仕入税額控除を受けるために必要とされる書類の総称です。つまり、領収書 以外に、レシートや納品書、仕入明細書でもインボイス制度で定められている記載要件を満たしていれば、適格請求書として用いることができるのです。

なお、先ほど解説したように、発行が認められている業種は限られてはいますが、多くの場合において領収書やレシートの場合、適格簡易請求書での対応が可能です。

適格請求書は適格請求書発行事業者のみ発行可能

適格請求書が発行できるのは、事前に 適格請求書発行事業者 として登録済みの課税事業者 に限られています。適格請求書事業者になると、インボイス制度の登録番号が付与され、発行者がインボイス制度に登録済みであることを証明できます。

なお、適格請求書発行事業者は法人だけでなく、インボイス制度への登録申請が認可されれば、個人事業主でも適格請求書発行事業者になることが可能です。ただし、個人事業主がインボイス制度に対応するために適格請求書発行事業者になると、たとえその個人事業主が免税事業者であったとしても、インボイス制度への登録後は自動的に免税事業者から課税事業者になります。したがって、適格請求書発行事業者となった 個人事業主には以後、消費税の納税義務が発生します。

適格請求書の記載要件

適格請求書のフォーマット および書き方については、手書き、電子を問わず必須記載事項が正確に記載されていれば、書式やテンプレートに関する法的な決まりはありません。

適格請求書の発行において何より大切なのは、インボイス制度で制定された記載要件を満たしているかということです。国税庁で定められている適格請求書の必須記載事項については、以下のとおりです。

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称
  • 取引年月日
  • 取引内容 (注意点: 軽減税率の対象品目である場合、※などを用いて軽減税率の対象品目である旨がわかるよう明記が必要)
  • 交付先 (買い手側) の氏名または名称
  • 適格請求書発行事業者としての登録番号
  • 税抜価額または税込価額を税率 (8%・10%) ごとに区分した合計額と適用税率
  • 税率ごとに区分してそれぞれ合計した消費税額等

適格請求書を導入するメリット

インボイス制度に登録し、適格請求書発行事業者になることは義務ではなく、あくまで任意です。したがって、適格請求書を導入するかしないかは、事業者側の判断に委ねられます。ただし、適格請求書がないと、事業者間の取引上でさまざまな問題が生じる可能性があるため、適格請求書にはできる限り対応することが事実上の最善策といえます。

適格請求書を導入するメリットには以下のようなものが挙げられます。

取引の仕入元として選ばれやすい

仕入元の売り手側が適格請求書に対応していないと、買い手側が売り手側に支払った消費税は、仕入税額控除の適用対象外になってしまいます。そのため、長年の取引相手だったとしても、顧客を失うリスクがあります。たとえば、売上 1,000 万円以下の免税事業者 のように、インボイス制度に未登録な個人事業者 の場合、買い手側から取引の打ち切りを提案されたり、取引価格の見直しを求められる可能性も考えられます。

しかし、売り手側がインボイス制度に準拠した適格請求書を発行できるようにしておけば、買い手側は仕入税額控除を適用できるため、引き続き安心して仕事を依頼することができるでしょう。また、新規の顧客からは、発注先として優先的に選ばれやすくなることも期待できます。

電子データ化した適格請求書に切り替えるベストタイミング

インボイス制度では適格請求書について、電子データによる発行や保管を認めています。これは多くの事業者にとって、ペーパーレス化への切り替えなどバックオフィスを見直すのに、またとない機会といえます。

電子データの取り扱いについては、電子帳簿保存法 にも対応する必要がありますが、適格請求書に関わる業務を電子化することで、適格請求書の発行や保存、事業者間のやり取りなど、あらゆる会計業務がより効率的に行えるようになります。

適格請求書を導入するデメリット

次に、適格請求書を導入するデメリットについて見ていきましょう。

適格請求書に対応することで消費税の納税義務が発生する

免税事業者がインボイス制度に登録せず、免税事業者のままでいると決めた場合、消費税を納める必要はありません。そのため、消費税による収益圧迫のリスクを回避できるでしょう。また、納税に関わる業務負担が増える心配もないため、これまで通りの事業運営を行うことができます。

一方、これまで消費税の納付が免除されていた事業者が適格請求書を導入すると、消費税の納税義務が発生するようになるため、導入後は消費税を納めなければなりません。また、これと同時に、確定申告にかかる時間や手間が増え、本業に専念することがこれまで以上に難しくなる可能性も考えられます。

インボイス制度に準じたシステムの導入が必要になる

適格請求書の発行に際しては、インボイス制度に準拠した書類の様式変更や、新たなシステムを導入しなければなりません。そのため、前述のデメリットと同じく、時間や手間がかかるほか、システムの導入にかかるコストについても考慮する必要があります。

ただし、先ほど解説したように、適格請求書については電子データによる発行や保存が可能なため、一旦システムを導入すれば、管理や保管は容易になるといえます。したがって、インボイス制度にはさまざまな事前準備が必要ではありますが、これを機に、業務の効率性や生産性を上げるツールや機能を上手く活用すれば、事業運営をプラスに導くことができるでしょう。

適格請求書の注意点

適格請求書発行事業者の登録を忘れない

従来の請求書の要件 では、誰でも必要に応じて請求書を発行できるようになっています。しかし、適格請求書については、発行が認められているのはインボイス制度への登録を済ませ、適格請求書発行事業者の登録番号が割り当てられた課税事業者のみとなります。そのため、取引先の買い手事業者から、適格請求書を依頼されたにもかかわらず、発行ができないということにならないよう、くれぐれも登録し忘れないように注意しましょう。

なお、インボイス制度に登録済みの適格請求書発行事業者は、取引先からの発行依頼があった場合、適格請求書を必ず発行しなければならないこともあわせて覚えておきましょう。

適格請求書には一定期間における保存が義務付けられている

インボイス制度では、適格請求書・簡易インボイスに関わらず、売り手側は買い手側に適格請求書を交付した後、写しを一定期間保存する必要があります。また同様に買い手側も、受け取った適格請求書の一定期間の保存が求められます。

国税庁の『適格請求書等保存方式 の概要 』によると、保存期間は、原則として適格請求書の交付日の属する課税期間の末日の翌日から、2 カ月を経過した日より 7 年間となります。たとえば、個人事業主の場合は、課税期間は 1 月 1 日から 12 月 31 日までとなります。この場合、課税期間の末日は 12 月 31 日となるため、もし適格請求書が 2024 年 12 月 1 日に発行・交付された場合、2025 年から 2 カ月が過ぎた 2025 年 3 月 1 日から 7 年間の保存が求められます。

適格請求書が正しく記載されていないと買い手側の損益につながる

繰り返しになりますが、買い手側が仕入税額控除を適用するには、適格請求書は必須です。もし、適格請求書が正しく記載されていなかった場合、その書類は適格請求書として認められません。この場合、買い手側は仕入税額控除を受けることができなくなり、結果的に買い手側の消費税の納税額が増えてしまうことになります。そのため、売り手側は適格請求書を作成する際、書き損じや記入漏れなどがないよう、十分注意して作成することがとても大切です。

一方、一部特例として、3 万円未満の公的公共交通機関による旅客の運送 (バス、鉄道、船舶) や、自動販売機・自動サービス機からの商品の購入など、適格請求書の交付が困難な取引については、交付義務が免除される特例が設けられています。したがって、これらの取引については適格請求書は必要ないため、適格請求書が発行されなかったとしても、仕入税額控除の適用対象になります。詳しくは、先ほどの国税庁の同資料について事前に確認しておくようにしましょう。

インボイス制度の経過措置について理解する

インボイス制度には以下の 2 つを目的とする段階的な経過措置 が設けられています。

  • 課税事業者: 消費税の負担軽減
  • 免税事業者: 事業運営に支障が生じることを回避

具体的には、経過措置で設けられている一定期間において、免税事業者からの課税仕入れにかかる消費税額のうちの一定割合を仕入税額とみなすことで、仕入税額控除の適用が可能となります。

経過措置の適用期間と、控除の割合については以下のとおりです。

  • 2023 年 10 月 1 日~ 2026 年 9 月 30 日 (3 年間): 免税事業者からの課税仕入れにつき、仕入税額相当額の 80% が控除可能
  • 2026 年 10 月 1 日~ 2029 年 9 月 30 日 (3 年間): 免税事業者からの課税仕入れにつき、仕入税額相当額の 50% が控除可能

インボイス制度開始後の免税事業者との取引 については、仕入税額控除を受けられないことが、買い手側にとってのボトルネックとして懸念されています。しかし、こうした経過措置を活用すれば、消費税の負担軽減が期待できるでしょう。

インボイス制度のもとで B2B 取引を円滑に行うために

今回は適格請求書について、インボイス制度開始前の区分記載請求書との違いや、適格請求書を導入するメリット、デメリット、注意点などについて解説しました。
現行のインボイス制度のもとで事業者が問題なく仕入税額控除を受けるには、売り手側・買い手側双方による適切な対応が求められます。特に、インボイス制度に準じた適格請求書を作成しなければならない売り手側については、書類の交付と保存がスムーズにできるよう、インボイス制度に対応可能な環境を整えておくことがとても大切です。

なお、適格請求書の作成には消費税の自動計算機能や会計ソフトのように、作業を最適化できるオンラインツールが大変便利なため、導入を検討してみることをおすすめします。Stripe が提供する Stripe Invoicing は、インボイス制度に対応し、自動生成機能による請求書の発行と保存を適切に行うことができます。また、売掛金の管理、支払いの回収、取引の照合の自動化など、請求業務に関わるあらゆる機能が備わっているため、よりスムーズで効率的なバックオフィスの改善を図ることができます。

適格請求書の発行に際してはさまざまな要件があり、適格請求書に対応した様式・システムの導入や、インボイス制度への登録手続きを行うなどの事前準備が必要ですが、一旦準備が完了すれば、以後、スムーズに会計業務が行えるようになります。

また、免税事業者の場合、インボイス制度に対応すべきかどうかについては判断が難しいかもしれません。そのため、適格請求書を導入するメリットやデメリットを十分理解し、売上が損失しないかや、取引先との信頼関係やニーズを見極めたうえ、慎重に検討するようにしましょう。

この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

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