請求書とは、商品やサービスを提供した売り手側の事業者が、買い手側の事業者に対価を請求することを目的として作成する書類です。日本でビジネスを展開している事業者の方であれば、この「請求書」と記された書類について幾度となく取り扱った経験があるのではないでしょうか。
日本において B2B や B2C のあらゆるビジネスシーンで幅広く用いられている請求書は、取引相手からの入金が適切に行われるために、なくてはならないものです。
本記事では、請求書の役割、要件や記載項目、注意点など、日本の事業者が知っておくべき基礎知識について解説します。
目次
- 請求書とは
- 請求書の要件・記載項目
- 請求書に追加で記載しておくとよい項目
- 請求書の要件における注意点
- 要件や項目が適切に記載された請求書を発行するために
請求書とは
冒頭で解説したように、請求書とは、売り手側の事業者が提供した商品やサービスの代金について、納品先の取引相手に請求するために発行および提示する書類となります。請求書の発行そのものに対しては、法律上で義務付けられているわけではありませんが、取引先とのトラブルを回避するためには、業務上において必ずといっていいほど請求書を発行するケースが一般的となっています。
請求書の役割
請求書は、領収書や納品書などと同様、取引があったという事実を証明する証憑 (しょうひょう) として有効な書類となります。そのため、上述したように請求書発行そのものへの義務はないものの、請求書がないと取引の事実を証明できず、後々問題が発生する可能性があります。
税務上における役割
たとえば、税務上においては、所轄の税務署から税務調査の一環として証憑書類の提出を求められる場合があります。その際、取引の詳細を証明できる会計上の書類がないと、会計処理を正しく行うことができないだけでなく、税務署が求める情報を明確に提示できなかったとして、追加で課税される可能性があります。
また、請求書がないことで、本来適用されるはずの控除が受けられなくなってしまうケースもあります。一例としては、インボイス制度のもとで適用される仕入税額控除の観点からも、請求書は重要な書類として位置付けられています。
リスクヘッジとしての役割
あらゆる取引において請求書が必要とされるもう 1 つの理由がリスクヘッジです。請求したという事実や取引事実に関する証拠書類となる請求書は、事業者間で円滑なコミュニケーションを取るためにとても重要です。つまり、事業者同士、あるいは事業者・顧客間で請求書を適切に取り交わすことで、書面上の取引内容について把握し、合意ができていれば、誤解が生じることなくスムーズに支払いが行われることにもつながります。
たとえば、買い手側の取引先が請求金額をいつまでたっても入金せず、代金については「一度も請求されたことがない」と主張しようとする悪質なケースでも、売り手側がきちんと請求書を送付していれば、こうした偽りの主張はできなくなるでしょう。さらに、万が一買い手側が支払いを拒む場合は、代金の回収権の証明として用いることも可能です。
このように、取引の事実があったことの公的な証明として、また、売り手側と買い手側の双方における信頼関係の維持を目的として、請求書を発行することは当たり前といってよいほど常識的な習慣となっているのです。
請求書の要件・必須項目
請求書は、売り手側が買い手側に対し、請求金額をはじめとする請求内容を適切に提示するために発行されます。したがって、書面上に取引先に伝える必要性のある項目が記載されていれば、請求書の書き方に関する法的なルールはなく、書式は自由となっています。
ただし、請求書としての機能を果たすためには、記載が必須となる項目がいくつかあるため、注意が必要です。また、請求書の書き方は、フォーマットを気にせず自由な書式で作成しても問題はないものの、正しい請求内容を取引先に知らせるには、記載項目が明確でわかりやすく表示されていることがとても大切です。そのため、以下の請求書へ記載項目については、はっきり正しく記載するようにしましょう。
請求先となる相手側 (買い手) の宛名
宛名の欄には、請求書受け取り側の法人名 (個人事業主の場合は屋号または氏名) を記載します。また、宛名は、法人名なら「株式会社」や「有限会社」、「合同会社」についても括弧で省略せず、登記されている正式名称を、氏名ならフルネームで記載することが大切です。法人名や屋号のみを記載する場合は「御中」を、氏名の記載が必要な場合は「様」を必ず付けましょう。
このほか、より詳しい情報 (担当者氏名や部署など) については、取引先と確認して調整します。また、取引先の住所を併記する場合もあります。
請求書発行者 (売り手) の氏名または名称
請求書の発行者として、自社の法人名 (個人事業主の場合は上記同様に屋号または氏名) を記載します。通常は、請求書発行年月日や請求書番号の下に記載し、書式によっては任意で住所や電話番号、部署名、担当者氏名を記載することもよくあります (請求書発行年月日や請求書番号については、次章「請求書に追加で記載しておくとよい項目」にて紹介します)。
なお、住所などと同じく任意ではありますが、日本のビジネスにおいては、発行者氏名・名称と併せて社判や担当者印を押印することが習慣となっています。
取引金額 (税込の合計請求金額)
商品やサービスの代金すべてを合計した小計に消費税を加えた税込の合計金額を「ご請求金額」として大きめの文字サイズで記載します。また、合計金額は、税込であることがわかるように記載することも忘れないようにしましょう。
取引年月日
実際に取引が行われた年月日を記載します。商品の場合は納品日、サービスの場合はサービスが提供された日付となります。特に、ひと月の間に何度も取引があるケースでは、掛売り方式 (決まった期間内で発生した取引分をまとめて請求する方式) によって、月ごとにまとめて請求することが一般的です。そのため、それぞれの取引年月日については忘れないよう記録しておき、請求書に正しく記載するようにしましょう。
取引内容
商品やサービスにかかった上述の合計請求金額について、より細かい具体的な情報を記載します。まず、商品やサービスの品名 (品番があれば品番も記載)、単価、数量に分けて記載し、これに加えて、小計、消費税のみの合計金額、請求総額 (小計 + 消費税) を記載します。また、軽減税率が適用される商品の場合は「軽減税率の対象品目である旨」がわかるように明記します。
請求書に追加で記載しておくとよい項目
前章にて紹介した、請求書として必須となる記載項目だけでなく、以下のような追加で請求書に記載しておくのがのぞましい項目があります。これらの項目は、取引先からの入金をスムーズに実行してもらうという目的を果たすには、事実上欠かせないものとなります。
書類のタイトル:「請求書」
受け取った側がひと目見ただけで請求書であることがわかるように、書類のヘッダーとして「請求書」と大きく記載しましょう。
請求書番号
請求書番号を割り振っておくと、社内でのデータ管理や、領収書などとの照合がしやすくなります。
請求書発行年月日
発行年月日については請求書の右上箇所に記載されることが多く、請求書を発行する日付を記載します。ただし、重要ポイントとしては、取引先の締め日に合わせることが一般的となっているため、必ずしも請求書を実際に発行する日付を用いるとは限らないということを覚えておきましょう。そのため、初めて取引を行う際には、取引先にあらかじめ発行年月日について確認をとっておくことが大切です。
たとえば、取引先が「月末締めの翌月払い」の場合、発行年月日は納品月の末日に設定します。具体的に説明すると、8 月 1 日に納品された商品に対して請求書を発行する場合、請求書の作成および送付が 9 月 1 日でも、発行日は 9 月 1 日ではなく、月末の 8 月 31 日となります。
支払期限
支払期限については通常、契約を交わす時点で合意しているはずとなるため、合意内容にそって支払期限を記載します。
振込先の口座情報
振込先情報は、取引先から合計請求金額を振り込んでもらうためには、なくてはならない記載項目です。そのため、銀行名、支店名、預金種別、口座番号、口座名義 (カタカナ表記) に加え、銀行コードや支店コードなどについて記入漏れや書き損じのないように注意して記載しましょう。
振り込み手数料の取り扱い
振込手数料については、請求者か代金を支払う側のどちらが負担するのか、あらかじめ取り決めておくことが、ビジネス上の信頼関係を築くためにとても大切です。
また、振り込み手数料を買い手側に負担してもらう場合は、請求書書面上の備考欄などにその旨を追記するのが一般的です。たとえば、「誠に恐れ入りますが、振り込み手数料はお客様でご負担いただきますようお願い申し上げます」のように、丁寧な一文を添えるようにし、取引先への配慮を心がけるようにしましょう。
請求書を発行する際の注意点
スタンプや印鑑を使用するかどうかの判断
日本では、請求書が偽造されていないことを示すために、公式のスタンプや印鑑を押すのが一般的です。日本のクライアントに請求書を発行する場合、社印があることで文書の真正性が高まり、信頼感が生まれます。
企業は請求書に公式のスタンプや印鑑を含める義務はありません。印鑑が押されているかどうかにかかわらず、前述の要件を満たしている限り、請求書は有効な証憑として認められます。印鑑がないことによって取引内容が無効になることはありません。
COVID-19 を契機としたリモートワークの普及以来、日本では書類に社印を押す慣習が徐々に消えつつあります。その結果、以前は税務上印鑑が必要だった書類であっても、現在では不要になっています。今後、印鑑やスタンプはさらに一般的ではなくなる可能性があります。
必要なすべての情報の確認
請求書を作成した後は、正確かつ明確に記載されているか、内容を注意深く確認する必要があります。必須情報に加えて、銀行口座番号や支払い期日など、顧客が正しい金額を簡単に支払うために必要な詳細を含めることも重要です。
請求書を作成する際は、支払い条件が不明確なことによる顧客の支払い遅延や、口座番号の記載漏れによる銀行振込の失敗など、支払いに関する問題を防ぐために、これらの詳細に十分注意してください。
日本の適格請求書制度への準拠
前述のとおり、日本の請求書には特定の要件があります。ただし、仕入税額控除の対象となるには、企業は現在の請求書制度にも準拠する必要があります。つまり、請求書を発行する際には、通常の請求書に含まれる項目に加えて、適格請求書制度で義務付けられている詳細を含める必要があります。
日本の適格請求書制度は、企業が消費税の仕入税額控除を受けるために使用されます。この制度は 2023 年 10 月 1 日に施行されました。消費税の仕入税額控除を受けるには、適格請求書の交付と保存が企業に義務付けられます。適格請求書がなければ、企業は仕入税額控除を申請できません。
売り手が適格請求書を発行するには、まず管轄のインボイス登録センターで適格請求書発行事業者として登録する必要があります。
適格請求書には、通常の請求書よりも多くの詳細を含める必要があります。発行する企業が適格請求書発行事業者であることを証明する適格請求書発行事業者登録番号の記載が必要です。また、適格請求書には、税抜または税込の合計金額を税率ごとに分けて記載し、適用された税率 (10% (標準) または 8% (軽減)) も含める必要があります。この税額控除の適用を希望する企業は、この請求書制度について十分に理解し、準拠するための対策を講じる必要があります。
適格請求書制度の下では、請求書の保存も重要です。企業は適格請求書を通常の請求書とは別に保存し、適切に管理する必要があります。
要件や項目が適切に記載された請求書を発行するために
今回は請求書の要件について、役割、注意点を踏まえて解説しました。請求書は、取引先から代金を請求することを第一目的として発行する大切な書類です。また、請求書発行年月日や振り込み手数料を負担する側など、さまざまな項目についても取引先と事前に確認をとるなど、発行者側の配慮が求められる書類でもあります。
このように一見細かな作業が必要とも思われる請求書ですが、要件や注意点をおさえたうえで、適切に記載された請求書を取引先に交付することで、事業者同士において透明性の高い良好な信頼関係を築くことができるといえるでしょう。
なお、請求書を作成する際には、作業を最適化できるオンラインツールが便利です。そのため、消費税の自動計算機能や会計ソフトなどの導入についても検討するとよいでしょう。Stripe が提供する Stripe Invoicing は、インボイス制度で定められている要件に対応しており、自動生成機能による請求書の発行と保存を適切に行うことができます。また、売掛金の管理、支払いの回収、取引の照合の自動化など、請求業務に関わるあらゆる機能が備わっているため、よりスムーズで効率的なバックオフィスの改善を図ることができます。
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