消費税の仕入税額控除とは?適用要件とインボイス制度の特例・経過措置

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  1. はじめに
  2. 仕入税額控除とは?
    1. 仕入税額控除の対象
    2. 輸入消費税も仕入税額控除の対象となる
  3. 仕入税額控除を適用しなかった場合どうなる?
    1. 免税事業者との取引における経過措置
  4. 仕入税額控除は 3 万円未満でも適用可能?
    1. 取引額 3 万円未満の場合における交付義務の免除
    2. 少額特例
  5. Stripe のインボイス制度への対応

仕入税額控除は、課税事業者が消費税を納税する際、仕入れにかかった消費税について控除の適用ができる仕組みのことです。本記事では、仕入税額控除の基礎知識や、現在日本で施行されているインボイス制度による特例や経過措置、インボイス制度開始後の仕入税額控除の適用要件について分かりやすく解説します。

目次

  • 仕入税額控除とは?
  • 仕入税額控除を適用しなかった場合どうなる?
  • 仕入税額控除は 3 万円未満でも適用可能?
  • Stripeのインボイス制度への対応

仕入税額控除とは?

仕入税額控除とは消費税の二重課税を防ぐことを目的とし、課税売上高に係る消費税から課税仕入額に係る消費税を差し引いた消費税額を申告・納税する制度です。

消費税は、事業者同士、または事業者と消費者間のように 2 度発生します。

  • 課税仕入額に係る消費税
    販売店を経営する事業者が、商品の製造にあたり売り手から材料を仕入れて購入する際、その販売店は材料の売り手業者に材料価格に基づく消費税を支払う必要があります。
    (例: パン屋が仕入れる卵や小麦粉)

  • 課税売上高に係る消費税
    仕入れ材料によって完成した商品についても、商品の販売時に消費税が発生します。よって、消費者は販売店から商品を購入する際、その商品価格に基づく消費税を販売店側に支払います。
    (例: 仕入れた卵や小麦粉からできあがった販売用のパン)

このように、事業者が売り手から材料を仕入れた時と、消費者が事業者から商品・サービスを購入した時で、消費税が二重に課税されていることが分かります。この二重課税を避けるため、仕入税額控除では、消費者から受け取った消費税から材料の仕入時に支払った消費税を差し引くことができます。

以下の価格を例として仕入税額控除を分かりやすく計算してみます。

商品の販売価格: 4,400 円 (商品 4,000 円、消費税 400 円)

仕入材料の価格: 1,100 円 (材料 1,000 円、消費税 100 円)

上記の価格をもとに算出される仕入税額控除適用後の消費税の納税額は次のようになります。

400 円 (売上時に受け取った消費税) − 100 円 (仕入時に支払った消費税) = 300 円 (納税する消費税額)

なお、インボイス制度の導入後の現在では、買い手側事業者による仕入税額控除適用の要件として、売り手側が発行する適格請求書 (通称: インボイス) の交付・保存が求められます。さらに、売り手側がこの適格請求書を発行するにあたっては、適格請求書発行事業者として事前登録をした課税事業者であることが要件となります。よって、インボイス制度に登録済みの事業者は、適格請求書発行事業者であることを示す登録番号を記載した請求書を買い手側に交付します。

仕入税額控除の対象

仕入税額控除における「仕入れ」の定義としては、原材料、商品など、売上に直接関わるものになりますが、仕入税額控除の対象となるカテゴリーは多種多様です。

「仕入れ」という言葉が含まれているため、混乱しやすい点ではありますが、仕入税額控除の「仕入れ」とは、仕入れた原材料や物品のみが対象という訳ではありません。以下のように、業務上で商品の販売に要した経費についても、課税対象であれば仕入税額控除の対象となります。

  • 商品を販売するために係る宣伝・広告費、通信費、水道光熱費、消耗品など

詳しくは、国税庁の「仕入税額控除の対象となるもの」をご参照ください。このように、仕入税額控除は外部の仕入れ先との取引における課税仕入れのみに適用されます。

輸入消費税も仕入税額控除の対象となる

海外から日本国内に輸入した課税貨物についても、仕入税額控除の対象となります。通常、海外で商品を仕入れ、日本国内での用途を目的とするものが輸出される場合、免税取引として区分されるため消費税はかかりませんが、輸入後、日本国内の保税地域にて商品を引き取る際に、税関での消費税の納付義務が発生します。なお、この場合の仕入税額控除については、適格請求書ではなく、輸入許可書が必要となります。詳しくは、国税庁ホームページの (5) 輸入許可書等をご参照ください。

仕入税額控除を適用しなかった場合どうなる?

事業者が材料を仕入れる際に売り手側に支払う、仕入れに係る消費税は、後ほど消費者から受け取る売上高に係る消費税から差し引くことができるため、その分消費税の納税額が少なくなります。

一方、仕入税額控除をしなかった場合、消費税の納税額が増えてしまうため、経営の負担となる可能性があります。つまり、もし売り手側が適格請求書を交付できなかった場合、買い手側は仕入税額控除の適用ができなくなるため、売り手側にとっては、買い手側から取引を見直されるなどのリスクがあります。よって、免税事業者のように適格請求書の発行が認められていない事業者は、インボイス制度への対応としてメリット・デメリットを見極めながら慎重に判断することが大切と言えます。

なお、後ほど詳しく解説しますが、このような状況に直面する免税事業者については、インボイス制度の導入日より 6 年間 (令和 5 年 [2023 年] 10 月 1 日~ 令和 11 年 [2029 年] 9 月 30 日) の経過措置が設けられています。

免税事業者との取引における経過措置

インボイス制度の開始に伴い 2023 年 9 月 30 日で終了した区分記載請求書等保存方式では、免税事業者からの課税仕入れも仕入税額控除の対象でした。しかし、現行のインボイス制度では、免税事業者は仕入税額控除の要件を満たす適格請求書の発行が認められていないため、基本として仕入税額控除の対象外となります。

そこで、免税事業者には、特定の期間において経過措置が設けられ、該当期間中であれば免税事業者との取引に対して仕入税額控除を適用できるようになっています。

経過措置

前章にて説明したように、インボイス制度導入日から 6 年間有効の経過措置では、免税事業者からの課税仕入れについて、以下のように仕入に係る消費税相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除を適用することができます。

  • 2023 年 10 月 1 日 ~ 令和 8 年 (2026 年) 9 月 30 日まで: 仕入税額相当額の 80%
  • 2026 年 10 月 1 日 ~ 2029 年 9 月 30 日まで: 仕入税額相当額の 50%

このように、インボイス制度の導入によって、免税事業者との取引に関する仕入税額控除が完全に廃止されたという訳ではなく、上記のとおり 6 年の期間をかけて徐々に廃止されて行く方針となっています。なお、完全に廃止となるのは、経過措置終了後の 2029 年 10 月 1 日と定められています。

2 割特例 (免税事業者から課税事業者になった場合のみ有効)

もともと免税事業者だった事業者が、インボイス制度において適格請求書を発行するために課税事業者となった場合、消費税の納税額を売上税額の 20% とする 2 割特例を適用できます (対象期間: 2023 年 10 月 1 日 ~ 2026 年 9 月 30 日までに属する課税期間)。

仕入税額控除は 3 万円未満でも適用可能?

仕入税額控除については、サービス・商品の購入価格が 3 万円未満の場合でも適用が可能となります。ただし、この場合においても仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書の交付・保存が求められます。そのため、たとえ仕入れ額が数百円の単位でも、通常買い手側は適格請求書を受け取る必要があります。

一方、適用要件は限られますが、3 万円未満、あるいは 1 万円未満の取引における仕入税額控除の適用に際しては、以下のような適格請求書等の保存が免除される特例・経過措置を活用することができます。

取引額 3 万円未満の場合における交付義務の免除

例外として、以下のような 3 万円未満の少額取引については、そもそも領収書の受領が困難となる場合があるため、一部の特例が設けられています。

  • 3 万円未満の公共交通機関による旅客の運送 (バス、鉄道、船舶)
  • 3 万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
    (例: 飲食料品の購入、コインロッカー・コインランドリーなどのサービス、銀行などの ATM に関わるサービス) 

上記 2 点の 3 万円未満の取引については少額特例と同様に、適格請求書交付義務の免除につき、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで、仕入税額控除を適用することができます。ただし、自動販売機や自動サービスについては、特例の対象外となる取引もあるため事前に把握しておくことが大切です。詳しくは、国税庁の交付義務の免除にてご確認ください。

また、このように一定事項を記載した帳簿の保存だけで適格請求書を必要としないその他のケースについては、国税庁のホームページ『帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合』を、交付や保存の免除に関する特例の詳細については、国税庁の適格請求書等保存方式の概要をご参照ください。

少額特例

この他にも、中小企業など一定規模以下の事業者については、令和 5 年 (2023 年) 10 月 1 日 ~ 令和 11 年 (2029 年) 9 月 30 日の期間における「事業者に対する事務負担の軽減措置」として、課税仕入れが 1 万円未満の場合、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用が可能な少額特例を設けています。

少額特例の適用対象となる一定規模以下の事業者

  • 法人の場合:「基準期間」とする前々事業年度の課税売上が 1 億円以下、または「特定期間」とする前事業年度の上半期の課税売上が 5,000 万円以下
  • 個人事業主の場合:「基準期間」とする前々年の課税売上が 1 億円以下、または「特定期間」とする前年 1 月から 6 月までの期間の課税売上が 5,000 万円以下

帳簿に関する一定の記載事項内容

  • 課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び住所又は所在地
  • 課税仕入れを行った年月日
  • 課税仕入れにかかる資産又は役務の内容
  • 課税仕入れに係る支払対価の額
  • 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨

一定の記載事項内容に関する詳細は、国税庁のインボイス制度における帳簿の保存をご参照ください。

Stripe のインボイス制度への対応

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