物品サービス税 (GST) とは、多くの国々で導入されている、商品とサービスに課せられる税金のことです。GST は付加価値税 (VAT) です。このため、サプライチェーンの各段階で適用され、商品またはサービスの最終コストに加算されて、最終的には購入者が支払うことになる税金です。たとえば、オーストラリアの、2021~2022 年度の GST の正味現金徴収額は合計 736 億オーストラリアドル(AUD)でした。
事業者は GST を顧客から徴収して政府に納付するのであり、自分たちで負担するわけではありません。とはいえ、事業者にとって考慮が必要になるものであることに、変わりはありません。たとえば、GST に対応すると同時に、顧客にとっては魅力的な価格となるように、料金戦略を練る必要があります。会計の観点からいえば、事業者はすべての取引をすみずみまで記録し、最終的に納付する GST を正確に計算しなくてはなりません。そのためには、取引を記帳できる信頼性の高いシステムが必要であり、加えて、多くの場合、GST の計算と申告に対応したソフトウェアやサービスへの投資も必要になります。
GST が適用されるかどうかは、商品、サービス、地域によって変わります。そのため、複数の管轄区域で営業している事業者の場合は手間が複雑になります。一部の商品やサービスは課税対象外ですが、それ以外の商品とサービスには、さまざまな税率で GST が課されます。GST は、法令遵守、料金戦略、会計業務の点でハードルになりますが、複数の間接税に置き換わるものであるため納税形態を簡素化するものでもあります。
GST の効果的な管理は事業活動に不可欠であり、そのためには、細部への目配り、税法の最新知識、そして、税の徴収と記録のための、信頼性が高く一貫性のあるシステムが必要になります。この記事では、GST について、その計算方法を含め事業者が知っておくべきことについて、また、Stripe が GST の管理の簡素化にどう役立つのかについて解説します。
この記事の内容
- 事業者における GST と他の税金の違い
- GST と事業活動報告書 (BAS) の関係
- 事業者の GST 額の決定方法
- GST の計算方法
- Stripe による税務管理のサポート
事業者における GST と他の税金の違い
GST は、事業者にとって注意が必要な唯一の税金というわけではありませんが、そのいくつかの特徴により、他の数ある税金の中でも突出した存在となっています。まずは、それらの特徴について説明します。
課税の性質
価値が付加されるアプローチ: 販売時点で課税される従来の売上税とは異なり、GST は、生産および流通プロセスの各段階で適用されます。GST は価値が付加された各時点で課税されることになります。
仕入れ税額控除: 事業者は仕入れ時に支払った GST の控除を請求できるため、GST は最終購入者が負担することになります。この点が、前段階までの税金を含む合計金額に対して課税される累積税と GST との大きな違いです。
範囲および対象
対象範囲が広い: GST は、一般に商品とサービスを幅広く包摂する、包括的な課税形態です。この幅広さは、特定の商品やサービスを対象とする物品税や奢侈税とは対照的です。
商品やサービスを横断する一様性: 例外や税率の違いがあることもありますが、GST は一般に、さまざまな商品やサービスに統一的に適用されます (カテゴリーごとに税率やルールが異なる他の税制とは対照的です)。
事業活動への影響
財務記録と法令遵守: 複数の段階で課税されるという性質上、事業者には GST の詳細な財務記録と報告が義務付けられています。この作業は 1 カ所で課税される他の税金に比べて複雑であり、そのため堅牢な会計システムが必要になります。
料金体系の構成と戦略: GST は、購入者が支払う料金に影響します。よって、事業者は料金の設定時にこの点を考慮しなければなりません。
税負担と透明性
最終顧客の税負担: GST の制度では、最終的な税負担が購入者に透過的に移行します。これは、利益を得る側が税を負担する法人税やその他の直接税と異なる点です。
税の可視性: GST は通常、料金に税金が含まれていることが購入者にはっきりとわかるように、請求書や領収書に明記されます。他の税では、このレベルの透明性はあまり一般的ではありません。
経済的な効率
税のカスケード効果の防止: GST の税額控除のメカニズムによって、税のカスケード効果 (税に税を累積する) を防ぐことができます。税のカスケード効果は、付加価値税以外の税金で起こりやすい問題の 1 つです。
税務コンプライアンスの促進: GST の構造では、事業者が控除を申請するために売上と仕入れを申告することが義務付けられており、それが自己制御型のシステムとして機能するため、税務コンプライアンスが促進されることになります。
事業者が考慮しなければならない税金の範囲を考えると、税金を単なるチェック項目としてとらえるより、全体像を把握しておいた方が有益です。それぞれの税金の詳細、共通点、影響を知ることで、より強力かつ包括的な判断を下せるようになります。そうしたさまざまな側面を理解することで、他の税金と比較しながら GST の役割や機能の理解を深め、情報に基づいた意思決定や法令遵守の戦略につなげることができます。
GST と事業活動報告書 (BAS) の関係
事業活動報告書 (Business Activity Statement、BAS) とは、事業者が GST を含む自らの納税義務を申告するために、オーストラリアの税務当局に提出する申告書です。事業者はこの申告書に、売上と購入費、それらの結果納付義務が発生した GST、または還付される GST を詳細に記入します。この申告書は基本的に、税務当局に最新情報を定期的に申告し、事業者の記録を最新状態に保つためのものです。
事業者が商品またはサービスを販売した場合、販売価格に GST が加算されます。この追加金額は事業者の手に入るのではなく、税務当局の代理として預かるだけです。一方、事業者が商品またはサービスを購入した場合、GST は事業者が支払います。ただし、その事業者が登録している場合、通常、事業者は購入価格に含まれる GST の控除を請求できます。
事業者は、各申告期間に、売上に対する GST (売上税) と購入に対する GST (仕入れ税) を計算します。双方の金額の差を、BAS を使って報告します。販売時に徴収した GST が購入時に支払った GST を上回った場合、その事業者は政府に支払うべき金額が存在することになります。反対に、購入時の GST が販売時の GST を上回った場合、事業者は還付を求めることができます。
この手続きは、事業者が納税申告を体系的かつ一貫した方法で管理できるよう、シンプルに設計されています。BAS は申告納税方式であり、正確な記録と誠実な申告を行う責任は事業者側にあります。
企業は、GST と BAS の義務を熟知しておく必要があります。それにより、税法を遵守できるだけでなく、自社の課税対象の活動を明確に知ることができます。これらは、データに基づく意思決定を行い、財務計画を立てる際に必要になるものです。GST を BAS の定期報告に含めることで、事業者は納税義務を安定的に管理でき、あわてて調整したり修正したりする必要がなくなります。
事業者の GST 額の決定方法
自社が負担する GST 額を計算するときは、正確性とデューデリジェンスが要求されます。以下、具体的で実用的なポイントに分けて説明します。
税率の評価: 自社に適用される GST の税率を確認します。税率は、商品やサービスによって異なる場合があります。正しい税率を定期的に確認し、正確性を維持するようにします。
取引の性質: 課税対象の売上と対象外の売上とを区別します。また、(GST を徴収する) 売上と、(GST の控除の請求が可能な) 購入も、区別します。
売上高: 合計売上高は、GST の計算に直接影響します。売上高が大きいと GST の徴収額も増えるため、購入金額に対して請求できる控除額が増える可能性があります。
事業の規模やモデル: 大規模に展開している場合であれ、小さな店舗を経営している場合であれ、ビジネスモデルは GST の申告と納税義務に影響します。GST に関しては、同じ商品を販売する場合でも、卸売業者と小売業者とでは対応が異なる可能性があります。
GST の控除: 仕入れ時に支払った GST を計算します。この金額は、販売時に徴収した GST から控除できる可能性があり、それにより支払うべき税額を抑えることができます。
供給場所の考慮事項: 商品またはサービスを国境を越えて供給している事業者は、供給場所のルールを理解しておく必要があります。取引の課税地はこのルールによって決まります。それに応じて適用される税率および申告先の税務当局が変わる可能性があります。
文書化と記録作成: すべての取引の詳細な記録を保管します。これは、GST を正確に計算し法令を遵守するために欠かせません。
法改正および変更: 税法は絶えず変化しています。自社の業務に影響しうる、GST 法令の最新の改正情報を常に把握しておくことが必要になります。
申告期間: 自社の事業活動に最も適した GST の申告期間 (毎月、毎四半期、毎年) を決定します。定期的に申告することが、予算策定や財務計画に有益です。
GST の計算方法
適用される税率を確認する: 販売している商品またはサービスに適用される GST 率を確認します。税率は税務当局が定めており、アイテムのカテゴリーに応じて異なります。
販売価格に加算する GST を計算する: 各商品またはサービスの販売価格に GST の税率を適用し、販売価格に追加すべき GST 額を決定します。この金額が、購入者から徴収する GST になります。
購入時に支払った GST を計算する: 事業関連の購入で支払った GST を記録します。この金額が、仕入れに対して事業者が支払った GST です。
正味 GST を計算する: 販売時に徴収した GST の合計 (売上税) から、購入時に支払った GST の合計 (仕入れ税) を差し引きます。徴収した GST が、支払った GST を上回った場合、その差額が、事業者が税務当局に支払うべき金額となります。支払った GST が徴収した GST を上回った場合、事業者は還付の対象になります。
記録管理: すべての売上と購入を、対応する GST 額と共に正確に記録します。申告および法令遵守の際にこれらの記録が重要になるためです。
定期的に更新する: 申告期間ごとに、税務当局からの要請に従って情報を更新します。それによりプロセスが透明化され、管理しやすくなり、事業者は自社が支払うべき GST を正確に管理できるようになります。
Stripe が税務管理に提供できるサポート
Stripe は、GST やその他の税務要件を管理するための包括的なソリューションを提供しています。次に、その内容を紹介します。
税務コンプライアンスの自動化: Stripe では、売上税、VAT、GST の計算を取引時に自動的に行うことができます。コード作成がわずかで済む、またはノーコードの連携機能を用意しています。
設定が簡単: 税金の設定は、Stripe のダッシュボードからほんの数ステップですぐに完了します。
税務コンプライアンスの管理: Stripe を使用すると、Stripe 以外で処理された取引も含め、取引の税額計算を自動化することにより、納税義務を監視し、税務コンプライアンスを管理することができます。
連携のオプション: Stripe Tax は、Payment Links、Checkout、サブスクリプション、Invoicing などのプロダクトと連携できます。こうした柔軟性の高さにより、税務コンプライアンス関連の機能を、決済プロセスのさまざまな段階に導入することができます。
決済フローのカスタマイズ: 自社固有の決済フローを利用している事業者は、税金の計算および徴収を、Stripe のアプリケーションプログラミングインターフェイス (API) を使用してカスタマイズすることができます。
Stripe を導入することで、事業者は税務コンプライアンスを効率化し、管理負担を軽減して、納税義務を正確に、かつ一貫性をもって果たしていることを確信しながら、会社の中核業務に専念することができます。Stripe Tax の詳細をご確認ください。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。