研究開発税制とは?

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  1. はじめに
  2. 研究開発税制の対象となる研究とは?
  3. 控除の対象となる試験研究費・研究開発費とは?
    1. 共同・委託試験研究 (オープンイノベーション型)
  4. 試験研究費の控除率・控除上限
    1. 税額控除限度額と控除上限の算出方法
    2. 一般型
    3. 中小企業技術基盤強化税制
    4. オープンイノベーション型
  5. 今後起こり得る税制縮小の可能性

研究開発税制は、研究開発を行う企業の試験研究費すなわち開発投資額の一定割合を法人税額から控除できる優遇措置です。対象となるのは青色申告法人で、各事業年度において損金に算入される試験研究費の研究項目ごとに異なる税率が定められています。また、民間企業の研究開発費の維持と増加、革新的な研究開発の促進、そして日本の成長力と国際競争力の強化を目標としています。

この制度には大きく分けて一般型 (旧総額型。正式名称は一般試験研究費の額に係る税額控除制度)、中小企業技術基盤強化税制オープンイノベーション型 (特別試験研究費の額に係る税額控除制度) があります。

特に、大学やスタートアップ企業等との共同研究等で発生する費用において、法人税額の一部を控除できるオープンイノベーション型については、外部組織との連携による研究開発の活発化と、自社単独では成し得ない新たな価値や競争力の創出が期待できることから、近年注目を集めています。これにより、経済産業省による令和 5 年 (2023 年) の税制改正においても、スタートアップ企業の対象がより幅広くなった他、一般型よりも高い控除率で控除できる仕組みが制定されました。

この記事では、オープンイノベーション型に重点を置きながら、研究開発税制を適用するための要件や税額控除の上限等について説明します。

目次

  • 研究開発税制の対象となる研究とは?
  • 控除の対象となる試験研究費・研究開発費とは?
  • 試験研究費の控除率・控除上限
  • 今後起こり得る税制縮小の可能性

研究開発税制の対象となる研究とは?

税額控除の対象は、一言で言うと試験研究費になりますが、試験研究費の対象となる研究項目は、細かく分類されています。例えば、オープンイノベーション型の要件に当てはまる研究内容 (類型) については、以下のとおりです。

オープンイノベーション型に該当する研究:

  • 特別研究機関、大学等との共同・委託試験研究 (30%)
  • スタートアップ企業等との共同・委託試験研究 (25%)
  • その他の民間企業等との共同・委託試験研究 (20%)
  • 中小企業者の知的財産を使用して行う試験研究 (20%)
  • 技術研究組合の組合員が協同して行う試験研究 (20%)
  • 高度研究人材の活用に関する試験研究 (20%)
  • 希少疾病用医薬品・特定用途医薬品等に関する試験研究 (20%)

( ) は控除率です。また上記、「特別研究機関、大学等との共同・委託試験研究」と「スタートアップ等との共同・委託試験研究」に関しては、本記事の後半部『共同・委託試験研究 (オープンイノベーション型)』にて要件等について詳細を紹介します。

控除の対象となる試験研究費・研究開発費とは?

税額控除の対象となる試験研究費の範囲は、大きく分けると製品と技術になります。(注: 試験研究と研究開発の定義は概して同等)

経済産業省による『研究開発税制の概要』では、試験研究費とは「自然科学に関する『研究開発』活動に要する費用」としています。

これに伴い、税制を適用するには、試験研究費が以下の要件を満たしている必要があります。

  • 試験研究費が各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される費用
  • 試験研究費が各事業年度の所得の金額の計算上、研究開発費として損金経理され、ソフトウェア等の取得価額に算入される費用

試験研究費に当てはまる要件:

  • 製品の製造
  • 技術の改良、考案もしくは発明
  • 対価を得て提供する新たなサービスの開発

試験研究費に含まれるもの:

試験研究・研究開発に要する費用のうち、以下の項目が税額控除の対象となる試験研究費に含まれます。

  • 原材料費、人件費、経費
  • 委託試験研究費 (試験研究の目的で発生する外部への支払い)
  • 技術研究組合の賦課金

共同・委託試験研究 (オープンイノベーション型)

スタートアップ企業 (特定新事業開拓事業者) や特別研究機関・大学等との共同試験研究、委託試験研究を行う際に税制を利用するには、これらの相手方スタートアップ企業、または高度研究人材 (博士号取得者や外部で一定の研究者としてのキャリアを積んだ人材) が、オープンイノベーション型の要件を満たしている必要があります。

相手方スタートアップ企業の要件 (税額控除率: 試験研究費の額の 25%)

相手方スタートアップ企業側が以下、全ての要件を満たしていることで税制の適用対象となります。

  • 設立 15 年未満で一定の要件を満たすもの
  • 未上場の株式会社
  • 特定の企業グループ等、会社の子会社に属さないもの
  • 要件を満たしたベンチャーファンドまたは研究開発法人の出資先であること
  • 売上高研究開発費率 10% 以上

また、スタートアップ企業が上記の要件を全て満たしていることについて、税制適用法人は税務申告の際に証明する必要があるため、相手方のスタートアップ企業側は、経済産業省から交付される証明書を取得し、その写しを適用法人に送付しておかなければなりません。

高度研究人材の要件 (税額控除率: 試験研究費に関わる人件費の額の 20%)

研究開発における質の向上という観点から、研究開発を担う「人」への投資を促すことは必須と言えます。高度研究人材を活用する場合にも、以下のように 2 つの要件があります。

  • 前年と比べて試験研究費の額のうち、人件費の額に占める高度研究人材に係る人件費の額の割合を増加させていること
  • 研究開発の内容を社内外で広く公募していること

相手方スタートアップ企業及び、高度研究人材の要件に関する詳細については、経済産業省の『研究開発税制の概要』を確認してください。

試験研究費の控除率・控除上限

研究開発税制によって法人税額から控除できる金額には上限があり、控除率 (試験研究費のうち何パーセントを税額控除できるか) についても、一般型、中小企業技術基盤強化税制、オープンイノベーション型によって異なります。

税額控除限度額と控除上限の算出方法

税額控除限度額の算出方法:

「試験研究費の額 × 控除率」

例えば、一般型の控除率は 1%〜14%で、税額控除限度額は以下になります:

「試験研究費の額 × 1%〜14%」

また、控除上限は以下のように算出されます:

「法人税額 × 各控除上限として定められている%」

控除上限が 25% の一般型なら以下のように算出されます:

「法人税額 × 25%」

なお、控除額については、上記の算出方法による税額控除限度額と控除上限を比較して、小さい金額が控除額となります。

一般型

先程の例のように、一般型の控除率は 1%〜14%、控除上限は法人税額の 25% で、25% 相当金額を超える場合、その 25% に相当する金額が税額控除の上限額となります。

中小企業技術基盤強化税制

資本金 1 億円以下等の中小企業に特化したこの制度では、控除率が 12%〜17% と、一般型よりも高い控除率の優遇措置をとっています。控除できる金額は一般型と同様、法人税額の 25% が上限となります。

なお、一般型と中小企業技術基盤強化税制については、令和 7 年度末 (2025 年) までの時限措置として、試験研究費割合 (※) が 10% を超える場合、通常 25% の控除上限に最大 10% が上乗せされ、試験研究費の増減率に応じて、税額控除の上限が変動する仕組みとなっています。時限措置に関する詳細は経済産業省の『研究開発税制の概要』をご参考ください。

(※) 試験研究費割合: 平均売上金額 (適用年及び過去 3 年以内の事業年度における売上金額の平均額) に占める試験研究費の割合のこと

オープンイノベーション型

オープンイノベーション型の控除率は、研究内容によって 20%、25% または 30% で、控除上限については、法人税額の最大 10% となります。

以上 3 つの控除率と控除上限に関しては、経済産業省の『研究開発税制の概要』で、控除額の算出例など、さらに細かな情報を確認することができます。

今後起こり得る税制縮小の可能性

現時点において、研究開発税制の縮小に関する日本政府からの公式発表は確認されていません。しかし今後、研究開発税制に似た制度の新設に伴う、試験研究費の減少を想定した場合に、日本政府による研究開発税制の段階的な縮小及び調整は起こり得るかもしれません。

とはいえ、冒頭で述べたように、研究開発投資の維持・拡大を目指す日本政府にとって、既存の研究開発税制は今後も重要な位置付けと考えられます。なかでもオープンイノベーション型は、スタートアップ企業や大学・国の研究機関等との共同研究及び委託研究等の連携について、特に大きなインセンティブを与えることで近年注目の制度であり、多くの企業の可能性を広げ、成長を後押ししています。

経済産業省のホームページでは、オープンイノベーション型について、制度概要報告書様式に加え、スタートアップ企業との共同研究に係る手続き等、より詳しく確認することができます。

今回の記事で紹介した研究開発税制は、さらに多くの企業が利用しやすくなるために、これまでも頻繁に控除率や控除上限の見直しや、要件・範囲の拡大等、優遇措置内容においてさまざまな税制改正が行われてきました。今後も、これらの改正内容については、日本政府の動向や、制度に関する最新情報を注視し、確認することが大切です。

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この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

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