屋号とは?個人事業主の屋号の決め方・注意点

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  1. はじめに
  2. 屋号とは何か?
    1. 屋号の必要性
    2. 屋号のメリット・デメリット
  3. 屋号の決め方・ネーミング例
    1. ネーミング例
  4. 屋号で使えない言葉・法的な注意点
    1. 既存の屋号・類似する屋号
  5. 屋号の登録方法
  6. よくある質問 (Q&A)
  7. 屋号を上手く活用するために

屋号とは、フリーランスを含む個人事業主がビジネスをする際に用いる名称のことです。確定申告書や開業届の提出時にも屋号を記入する欄があります。個人事業主の屋号は、会社の商号と似たものとして知られていますが、商号とは異なり、登記の法的義務はありません。
また、屋号を持つかどうかは個人事業主の任意となりますが、屋号を用いることで事業内容をアピールできるなどのメリットがあり、さまざまなビジネスシーンで幅広く活用することができます。この記事では、屋号について理解を深めるために、屋号の決め方や注意点、登録方法などについて解説します。

目次

  • 屋号とは何か?
  • 屋号の決め方・ネーミング例
  • 屋号で使えない言葉・法的な注意点
  • 屋号の登録方法
  • よくある質問 (Q&A)
  • 屋号を上手く活用するために

屋号とは何か?

冒頭で述べたとおり、屋号は個人事業主のためのもので、国税庁のサイトでは、屋号について「個人事業者の方が使用する商業上の名のことです」と記されています。なお、屋号は法務局にて登記する必要がないことから、屋号がなくても問題なくビジネスを展開することができ、開業後でも希望すれば屋号を付けられる他、屋号の変更も可能です。

屋号の定義の背景としては江戸時代に遡り、当時、武士以外の身分に苗字が許されず、商売を営む商人や農家にとって不都合が生じたため、それぞれの家に名称を付けるようになったという謂れがあります。その後、商人にならって、芸能の場で活躍する歌舞伎役者が屋号を取り入れるようになるなど、屋号は日本で古くから使われてきました。

今日においても同様に、個人事業主が事業拡大を実現するに際し、本名で活動するより屋号を用いることで有利となる場合があります。ビジネスシーンにおいて看板とも言える屋号を上手く活用するためには、まず最初に、屋号の必要性について理解しておく必要があります。

屋号の必要性

屋号については、そもそも持たないという選択も可能で、特にフリーランスの場合、業務上で屋号を必要とせず、登録しない人も見受けられます。一方で、たとえフリーランスだとしても、会社の社名のように幅広く用いて一般的に周知されることで、ビジネスチャンスが広がるなどの対外的効果を得たい場合には、屋号を持つことは有利と言えます。

例えば、屋号があれば、契約書や見積書を含む以下のシーンで屋号を用いることができます。

  • 屋号付きの名義による銀行口座開設
  • 名刺
  • 契約書・見積書・請求書・領収書
  • サービスや商品のロゴデザイン
  • 看板、チラシ、ポスターなどの宣伝
  • ブログやホームページ、SNS

このように、屋号を名乗ってビジネスを進めることで、事業内容の周知に繋がる他、銀行などの金融機関で屋号付き名義での口座開設ができ、経理業務の簡素化と効率化を図ることができます。

屋号のメリット・デメリット

メリット

前述のとおり、屋号には、会計管理がしやすくなる、事業内容の直接的アピールや社会的信用度・認知度のアップに繋がるなどのプラス面がある他にも、以下のようなメリットがあります。

  • 仕事のモチベーションアップ
    屋号によって、銀行口座の公私の使い分けが可能になるなど、ビジネスとプライベートが区別されることで、プロとしての意識をより高く持つことができます。

  • 安全性
    本名以外の屋号を用いることで、私用の SNS などを含む個人情報及び私生活の安全を守ることができます。

  • 法人化
    ビジネスを法人化する際、屋号をそのまま商号として使用可能なことから、法人化する以前の実績を新たな取引先にも証明しやすくなります (商号には使用可能な記号が決まっているなど、屋号よりも細かなルールがありますが、ルールに準拠していれば屋号をそのまま使うことができます)。

デメリット

  • 手間・時間がかかる
    屋号の考察や登録、または途中変更の手続きに時間がかかることが挙げられます。

  • 法的拘束力がない
    屋号には法的拘束力がないというデメリットがあります。そのため、非常に似通った屋号を他人が使用し、トラブルが発生したとしても、自身の屋号に関する権利を主張することができません (後ほど『屋号で使えない言葉・法的な注意点』で詳しく説明します)。もし屋号に自分のみ使える名前としての法的拘束力を持たせたい場合は、商号として登記する必要があります。

屋号の決め方・ネーミング例

屋号は基本的に自由に決めることができ、ひらがな、カタカナ、漢字、数字、アルファベットのいずれも使用可能です。一方、記号については「,」「.」「-」「&」「・」「’」の6種類に限られています。

屋号を決める際に最も大切なのは、わかりやすさ、シンプルさ、覚えやすさです。また、事業内容や職種が強調されるような言葉を含ませることで、一目見てどのようなサービスか分かるような名称が理想的と言えます。マーケティング重視の場合は、インターネットや SNS などで検索されやすいものを選び、且つ他の屋号と被らないような名称を検討してみてください。

一方、気をつけるべき点として、サービスや商品を求める側にとって覚えづらいものや、一般的に認知度の低い専門用語については、できるだけ避けることが大切です。同じく、カタカナやアルファベットについても、複雑な単語や、発音の分かりづらい・読みづらいものは、消費者にとって事業内容が分かりにくく敬遠される、あるいはインターネットで検索しても見つからないなどの不便が生じる可能性があります。こうした問題を避けるためには、その場の思いつきで屋号を決めず、屋号が自身のビジネスにとって、どのような役割と目的を果たすのか考察する必要があります。

ネーミング例

屋号の決め方の参考として、職種別のネーミング例を以下に紹介します。

  • エンジニア
    エンジニアの場合、革新的且つ最先端なイメージに繋がるような英単語、カタカナワードがよく使われる傾向にありますが、他の屋号との差別化を図るために漢字を取り入れて差別化するのも一つの方法です。
    例: 〇〇テック、〇〇ソリューションズ、〇〇システム、〇〇工房

  • デザイナー
    生産的、創造的なイメージをアピールできるワードが定番として選ばれています。
    例: 〇〇スタジオ、〇〇クリエイティブ、〇〇グラフィック

  • 店舗
    オンライン・実店舗に関わらず、消費者にとってサービスや事業内容が分かりやすい屋号を検討し、もし屋号だけではどのようなビジネスか分かりにくい場合は、「〜専門店」のように、屋号に従属させる表現を用いて消費者にアピールすることもできます。
    例: 〇〇堂、カフェ〇〇、〇〇食堂、〇〇ショップ

  • クリニック・事務所
    一つの専門分野に特化したサービスを提供するクリニックや事務所の場合、地域性や事業内容を違和感なく屋号に含ませることで、取引先や顧客にとって信頼性と専門性を一目で印象付けることができます。
    例: 地域名+専門分野+クリニック、地域名+〇〇設計事務所、〇〇会計事務所

その他、フリーランスとしてビジネスを始める際に屋号を付ける場合、個人名を屋号に使うことも可能ですが、個人名とは異なるものを屋号に用いた方が信用を得られる可能性があります。

ここまでで、屋号の決め方・ネーミング例について解説しましたが、個人事業主の屋号には、他にもいくつかの注意点があります。

屋号で使えない言葉・法的な注意点

自身のビジネスに適した屋号を決める際に、屋号には「使えない言葉」があることを知っておく必要があります。例えば、あくまで個人事業主のビジネスに用いる屋号に対し、法人と誤解される名称の使用は不可となります。

法人化しない限り使えないワード:

  • 株式会社、会社、法人、社団法人、コーポレーション、Co.Itd など

法律で定められた特定業種を連想させるとして使えないワード:

  • 銀行、信用金庫、証券 など

既存の屋号・類似する屋号

他人によって既に登録済みの名称または、類似の屋号を付けることは可能ですが、後々法的なトラブルとならないようできるだけ避けるようにし、既存のものとは差別化するなど注意してください。場合によって、ある程度似通ってしまうことは仕方ありませんが、他社と同じ会社や系列会社、関連団体だと誤認されることで、以下のような問題が生じる可能性があります。

  • インターネットで検索しても、検索結果が上位に表示されない
  • 同名の屋号あるいは会社が問題・事件を起こした場合に風評被害を受ける
  • 商標登録されている名称と同じ屋号を付けた場合、意図的ではなかったとしても商標権侵害などで訴えられ、損害賠償請求を受ける

このように、ビジネスを進めて行くなかで、自身の屋号が周知され始めた時に起こり得るトラブルを避けるためにも、以上の注意点について理解しておくことが大切です。特に上記の3つ目については、商標登録している名称と自身の屋号が被ったことで法的なトラブルとならないよう注意が必要です。なお、法人のような登記義務のない個人の屋号については、国税庁のホームページで確認することができないため、インターネットで同じ名称または類似の屋号が使われていないか、事前に検索・確認をしておいてください。

その他、法的リスクの回避における安全策として、国税庁の法人番号公表サイトや、法務省のオンライン登記情報検索サービスで既存の法人名の確認が可能です。商標の確認については、特許庁の特許情報プラットフォームなど、これら行政機関のサイトを活用することもできます。

屋号の登録方法

屋号のネーミング例や注意点を踏まえたうえで希望の屋号が決まると、残るステップは屋号の登録となります。

屋号の登録方法は商号登記 (※) と比べると、とてもシンプルで、開業届 (個人事業の開業・廃業等届出書) の中にある屋号の記載欄に屋号を記入し、税務署に提出すると登録が完了します。このように登録については、複雑な手続きや手数料は不要で、登録した屋号の審査もないため、提出した開業届が処理されるのを待つ必要はありません。また、開業届の提出以前から屋号を使うことも可能です。

個人事業主の開業届出については、国税庁のホームページにて、詳細を確認することができます。

(※) 商号登記の際には、登記料 3 万円分の収入印紙が必要となります。

よくある質問 (Q&A)

ここまで、屋号についてひと通り解説したところで、以下に屋号に関するよくある質問を、いくつか参考としてまとめました。

  • Q: 屋号を持つタイミングはいつですか?
    A: 前述のとおり、屋号は納税地を所轄する税務署に開業届を提出するタイミングで登録できますが、開業届を提出する際に屋号の記載欄は空欄のままでも開業届は受理されます。また、開業届の提出後に屋号を付けることも可能です。

  • Q: 屋号を変更したい場合、どのようにすればいいですか?
    A: 一度付けた屋号を変えたい場合は、毎年行う確定申告で、確定申告書や収支内訳書、または青色申告決算書に、屋号を改めて記載して提出します。開業届を税務署に再度提出することもできます。

  • Q: 屋号は何回でも変更できますか?
    A: 屋号はいつでも変更が可能で、回数に制限はありませんが、頻繁に屋号を変更すると、金融機関や取引先に不便をかけるなど、信用を落としてしまうリスクがあります。そのため、一度付けた屋号はできる限り保持して、変更する場合は迅速に手続きを進めることが大切です。

  • Q: 2 つ以上の屋号を登録することは可能ですか?
    A: 屋号は、同時に複数持つことができます。例えば、雑貨屋とカフェを別々に経営し、それぞれの店舗名が違う場合、各店舗名を屋号として用いて、事業内容別に異なる屋号を名乗ることができます。登録にあたっては税務署に別々の開業届を作成し、提出します。また、主な収入源となる事業だけ屋号を登録し、それ以外は届け出をせずに運営しても問題ありません。

  • Q: 確定申告の際、屋号の記載は必要ですか?
    A: 確定申告書に屋号の記載欄はありますが、屋号の記載は任意で、記入しなくても問題ありません。一方、これから屋号を登録したい場合は、確定申告書に屋号を記載することで登録ができます。

屋号を上手く活用するために

以上、本記事にて個人事業主の屋号について紹介しました。屋号は、法人の商号よりも自由度が高く、比較的簡単に登録することができます。記事の中でも説明したように、屋号にはさまざまなメリットがある一方でデメリットもあります。

屋号を登録し、ビジネスで幅広く活用すると、対外的な信頼度が高まるだけでなく、多くの人に事業内容が認知されやすくなり、よりビジネスの可能性が広がります。また、フリーランスを含む個人事業主としてこれからビジネスを始める方や、既に始めている方にとっても、目標達成を志すなかで、モチベーションアップにも繋がります。

一方、屋号のメリットを十分に活かすためには、デメリットについてもよく理解したうえで、注意点に気をつけることが大切です。どのような屋号が自身のビジネスに適しているかは人それぞれで、業種によっても異なります。そのため、屋号を決める際は、十分に検討してから屋号を付ける必要があると言えます。

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この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

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