スペインは POS 端末の普及途上にあります。Bank of Spain の統計によると、端末台数は 2023 年上半期末に 420 万台に達し、2022 年 7 月から 9.7% 増加しました。
事業者の商取引で対面支払いを受け付ける必要があり、POS の選定において最善の判断を望むのであれば、この記事の情報は判断の基準に値するはずです。
この記事の内容
- POS の概要
- POS の用途
- POS の仕組み
- スペインで使用されている POS 端末のタイプ
- スペインで POS を選ぶ際に考慮すべき事項
- スペインの POS に関するよくあるご質問
POS の概要
POS とは「Point of Sale」(販売時点管理) を略した語で、事業者が商業活動を行うために使用する支払い回収ソリューションです。スペインでは、「TPV」(スペイン語で「POS」に対応する用語) という用語が「端末」や「カードリーダー」と同様の意味でよく使用されていますが、POS システムにはその他の要素も含まれていることを理解しておくことが重要です。POS システムは次の基本的なコンポーネントで構成されています。
- カードリーダー: カード支払いやデジタルウォレットを使った支払いを処理するデバイスです。スペインの 34 行の銀行が共同で設立した決済サービスプロバイダー Bizum は、2025 年末に固有のウォレットとして Bizum Pay の提供を開始する予定です。
- ソフトウェア: コンピュータープログラムで売上をはじめ、税、在庫、財務レポートなど、ビジネスに関連するさまざまな面を管理します。
- コードリーダー: バーコードや QR コードなどのコンテンツを読み取るデバイスです。
- プリンター: 請求書や領収書をメールやショートメッセージサービス (SMS) で顧客に送付する事業者が増えていますが、一般に POS システムには少なくとも領収書印刷用のサーマルプリンターが搭載されています。
- キャッシュレジスター: 現在でも POS の基本的な機能を搭載した従来型のレジを利用している事業者も存在しますが、デジタル化を進めている事業者の大半はコンピューターやタブレットから POS システムを利用しており、現金支払いに対応するための小型のレジを用意することになります。
POS の用途
POS システムはさまざまなツールの役割を果たし、主に次の 3 つの用途で使用されます。
- 顧客が希望する決済手段で顧客に正しい金額を請求する: 最新の POS システムでは、売上金額と適用される付加価値税 (VAT) を自動計算できる機能があり、現金やカードのほかにも多様な決済手段 (デジタルウォレットなど) に対応しています。
- 事業者の売上を管理する: POS システムは事業者の他のシステム (顧客関係管理 [CRM] システムなど) と連携して、在庫の自動更新、ロイヤルティプログラムの構築、顧客への販売請求書の送信といった機能を果たす必要があります。
- 会計レポートを生成する: 最もシンプルな POS システムであっても、特定の期間の販売リストを生成できるため、会計作業が効率化されます。しかし、最近の事業者が採用しているソリューションでは、そのデータを使って事業者がカスタマイズ可能なレポートを生成し、利益率や新しいオファーの提供の開始に最適なタイミングなどを分析できる必要があります。
POS の仕組み
POS システムのタイプによって運用や操作が若干異なるものの、いずれもおおむね同じプロセスに沿っています。
- 商品登録: 顧客が購入する商品を選んだら、(コードリーダーを使用するなどして) POS システムにそれを登録します。必要に応じて、システムは在庫を自動更新します。
- 金額の計算と回収: POS ソフトウェアが、対応する VAT 込みの最終的な金額を計算し、顧客に支払いを求める金額を提示します。顧客はカード端末を使ってカードで支払うか、デバイスで対応可能な他の決済手段を使用して支払います。
- 取引のオーソリ: ペイメントゲートウェイが顧客のカード発行会社と通信して、利用可能な金額が十分にあるかを確認します。カードに利用可能な金額があり、カードの不正利用の疑いがない場合は、発行会社が取引をオーソリして事業者の口座に売上を送金します。
- 領収書の発行: POS システムが販売の領収書を生成します。この領収書はその場で印刷するか、顧客にデジタルで送信できます。その実行後、POS システムはその販売を「完了」として記録します。

スペインで使用されている POS 端末のタイプ
スペインの事業者によく選択される POS 端末は、次の 5 つのカテゴリーに分類できます。
従来型の POS
従来型の POS システムは、売上データを入力して現金支払いを管理するためのキャッシュレジスター (不正防止法 の要件を満たすソフトウェアを搭載) を備えています。また、銀行から提供され、事業者がカードやデジタルウォレットでの支払いの処理に使用する端末も含まれています。領収書や請求書プリンターなどのデバイスが含まれている場合もあります。
バンクレス POS
バンクレス POS システムは、従来の POS システムと構成が同じであることもありますが、事業者が使用する端末は銀行と関連付けられていません。銀行事業者と契約する必要がないため、事業者が POS システムや使用するデバイスの種類を細かく管理できます。
たとえば、Stripe Terminal では、デジタルウォレットやカードでの支払いに対応した最先端のカードリーダーを利用できます。さらに、Terminal は Stripe の決済スタック全体とシームレスに連携するので、オンライン支払いと対面支払いを統合して、より正確な販売レポートを作成することが可能です。
仮想 POS
仮想 POS とはソフトウェアであり、端末などのハードウェアを一切必要としない POS です。この仮想 POS はペイメントゲートウェイと連携して取引情報を銀行に送信し、銀行に決済の承認または支払い拒否の判断を仰ぎます。一般に、仮想 POS をカスタマイズして顧客に他の決済手段を提供することも、サードパーティーのハードウェアを利用する場合と比べるとはるかに簡単です。スペインでは、Bizum を利用した決済を受け付けるオプションも提供できます。
モバイル POS
モバイル POS システムは、スマートフォンやタブレットなどのデバイスで動作し、追加のハードウェアを用意しなくても決済を受け付けることができます。たとえば、タッチ決済を導入すると、Apple デバイスや Android デバイスの非接触型決済を受け付けることができます。
セルフサービス POS
セルフサービス POS システムでは、実店舗を訪れた顧客が企業の従業員の手を借りずに自分で商品をスキャンして支払うことができます。たとえば、2019 年に Decathlon がこの POS を 165 店舗に導入し、その 4 年後にはスペインの店舗での売上高が 10% 増加しました。
スペインで POS を選ぶ際に考慮すべき事項
POS システムを選ぶ際は、タイプ以外にも評価基準となる要素があります。スペインでは、次の特徴について考慮する必要があります。
- 決済手段: POS システムがスペインの顧客に好まれている決済手段に対応していることが重要です。スペインではまだ現金支払いもよく利用されていますが、35 歳未満のスペイン国民の半数以上は現金を好んで使おうとはしていません。約 10% の人は一番利用したいのはモバイルアプリだと答えています。
- ユニファイドコマース: オンライン支払いと対面支払いを統合する方法を検討します。BNP Paribas の調査部門である Cetelem Observatory によると、スペイン国民の 75% は依然として対面支払いを重視しており、ほとんどの人はその理由として返品への対応が難しいことを挙げています。すべてのチャネルの売上を同期させるには、POS システムでユニファイドコマースのオプションが利用できることが重要です。
- 決済に関する規制: POS システムは脱税などの税金詐欺の防止と撲滅の対策に関する法律を遵守する必要があります。これにより、POS システムが完全で追跡可能であり、スペイン税務庁 (AEAT) を欺く目的で会計や管理を操作することができない仕組みになっていなければなりません。
- セキュリティ: POS に決済データのトークン化の機能やその他のセキュリティ対策が備わっていることが重要です。スペイン国立サイバーセキュリティ研究所のデータによると、スペインでは 2023 年にサイバーセキュリティに関するインシデントが 83,517 件発生しているため、このことは特に重要になります。
- 料金: POS サービスプロバイダーの料金と手数料の詳細が明確に示されているか確認します。銀行事業者は透明性が高くても、関連サービスの契約を求めることが多いものです。そのような場合、銀行に依存しない無料の POS システムを利用する選択肢があることを覚えておいてください。
スペインの POS に関するよくあるご質問
端末と POS は同じものですか?
厳密に言えば同じではありませんが、スペインではよく混同されています。端末は POS システムのコンポーネントの 1 つに過ぎず、カードやデジタルウォレットを使った決済と回収を行うデバイスです。POS システムには、このデバイスのほかにもさまざまな要素が含まれており、その中には、ソフトウェアのように有形物ではないものも含まれます。
POS ではどのような税規制を守る必要がありますか?
不正防止法と創出と成長法です。不正防止法では、 POS システムで「簿外会計」や事業者の財務データの改ざんが許可されていないことを AEAT によって確認します。創出と成長法では、POS システムを法的に有効な電子請求システムと連携させることが義務付けられています。
スペインの POS 端末では分割払いは可能ですか?
ほとんどの場合、分割払いには対応していませんが、追加の POS サービスとして分割払いの契約が可能な銀行はあります。Banco Santander では手数料の発生しない Plazox などのソリューションを提供しています。Forbes によると、スペインで商品を購入する人の 33% は後払いを利用しているため、このようなタイプのサービスを利用すると新たな事業収益を獲得できます。
スペインの POS 端末ではチップを受け付けることができますか?
多くの場合は受け付けることができます。スペインのホスピタリティ企業連合会の事務総長の話によると、カードを利用したチップ支払いの件数が最近大幅に増えているそうです。
スペインの POS 端末ではデジタルキット助成金を受けることができますか?
はい。デジタルキットイニシアチブに準拠している事業者 (デジタル化エージェント) が提供する回収ソリューションであれば、助成金を受けることができます。各セグメントの最大金額は Acelera pyme のウェブサイトで確認することができます。
POS での支払いの入金にはどのくらいかかりますか?
一般的な目安としては、事業者の取引銀行が提供する端末を使用した従来型の POS の場合、売上は、決済が承認されてから遅くとも 3 ~ 4 日で事業者の口座に入金されます。BBVA など一部の銀行では、翌日に売上を入金することが可能ですが、通常は追加の条件が適用されます。無料の POS を利用する場合、Stripe Terminal では EU の事業者に対して 3 営業日での入金を保証しています。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。