職場のデジタル化には、データ分析やサイバーセキュリティ対策などのデジタル技術を採用すること、そしてビジネスの運営方法を改善することが含まれます。National Observatory of Technology and Society (ONTSI) の 2023 年の 中小企業 (SME) のデジタル化に関するレポートによると、企業のデジタル化の主なメリットには、作業負荷の軽減、コストの最適化、生産性の向上などがあります。
スペインで活動する全企業の 98.99% を占める中小企業を支援するために、デジタルトランスフォーメーション・公共サービス省は 2021 年に中小企業デジタル化計画を導入しました。また、スペイン政府では、本稿で紹介するデジタルトランスフォーメションの支援プログラムである Acelera pyme や デジタルキットなど、さまざまな取り組みを紹介しています。
この記事の内容
- デジタルキットとは
- 中小企業や自営業者がデジタルキットから得られるメリット
- デジタルキットで利用できる支援額
- デジタルキット申請の要件
- デジタルキットの申請方法
- デジタルキット助成金の利用方法
- デジタルキットの利用期限
- デジタルキットに関するよくあるご質問
デジタルキットとは
デジタルキットは、2021年11月に導入された中小企業・自営業者向けのデジタルトランスフォーメーションプログラムで、復旧・変革・強靭化計画の一環として実施されています。デジタルアジェンダロードマップの実装を任務としており、デジタルトランスフォーメーション・公共サービス省下の公的機関 (EPE) である Red.es が、スペイン政府に代わりこのイニシアチブを管理しています。
デジタルキットにより、スペインの中小企業や自営業者は、特定の技術ソリューションを採用するための助成金を受け取り、ビジネスのデジタル化を進めることができます。これらの助成金に割り当てられている資金は、欧州連合 (EU) の NextGenerationEU プログラムから調達されており、その総額は 8,069 億ユーロです。公式の政府データによると、2024 年 9 月 21 日現在、46 万を超える中小企業と自営業者がこのプログラムから 19 億ユーロ以上の助成金を受け取っています。
政府は、スペインの企業のデジタルトランスフォーメーションを推進し、中小企業の生産性を向上させるためにデジタルキットを作成しました。この目標を達成するために、「デジタル化エージェント」と呼ばれる参加企業が、デジタルキットを活用する中小企業や自営業者向けの技術的ソリューションの実装やマーケティング戦略の策定を担当しています。
中小企業や自営業者がデジタルキットから得られるメリット
中小企業や自営業者は、デジタルキットを利用して以下を行えます。
- 電子請求システムを導入する。 TicketBAI などのシステムや、不正防止法の要件に準拠したソフトウェアの導入を検討できます。
- サイバーセキュリティ対策を導入する。 例としては、E コマースの不正使用を検出し防止する機能や、双方向の通信を暗号化するツールなどがあります。
- ソーシャルメディアのプロフィールを作成・管理する。 コンテンツ制作とポストインパクト分析が含まれます。
- Amazon などのマーケットプレイスで中小企業の商品を販売する。
- ウェブサイトを作成する。
- 既存の企業ウェブサイトのデザインや機能を改善する。
- ウェブサイトのオーガニックランキング (SEO) を最適化する。 サイトの SEO を改善する目的は、検索エンジンが示す最初の結果の上位に表示されることです (Red.es は、これらの取り組みを「高度なインターネットプレゼンス」と呼んでいます)。
- バーチャルオフィスを作成する。 バーチャルオフィスにより、従業員間のコミュニケーションを円滑にすることができます。
- ビジネスインテリジェンス (BI) と分析ツールを活用する。
- 管理タスクと顧客コミュニケーションタスクをシンプルにする。 決済プラットフォームとの連携をサポートする顧客関係管理 (CRM) ソフトウェアが役立つ場合があります。たとえば Stripe Payments は、ウェブサイトや CRM システムと簡単に連携できるため、数分以内に支払いの受け付けを開始できます。また、ユーザーが好む各種決済手段に対応し、すべての収益を 1 つのプラットフォームに連携させます。さらには、中小企業での不正使用を減らしコストを削減するといった、デジタル化イニシアチブの目的に寄与します。
デジタルキットで利用できる助成額
企業が受け取れるデジタルキットの助成金の額は、中小企業や自営業者が導入を計画しているデジタルソリューションの種類と、事業が属する「セグメント」という 2 つの要因によって異なります。政府は、事業の従業員数に基づいてセグメントを設定しています。
セグメントに応じて、企業が 2024 年に取得できるデジタルキットの助成金の上限額は、以下のとおりです。
- セグメント I: 従業員数 10 人~ 49 人の小規模企業 - 12,000 ユーロ
- セグメントII: 従業員 3 人~ 9 人の小規模企業またはマイクロビジネス - 6,000 ユーロ
- セグメントIII: 従業員数 0 人~ 2 人の小規模企業またはマイクロビジネス - 3,000 ユーロ
- セグメントIV: 従業員数 50 人~ 99 人の中規模企業 - 25,000 ユーロ
- セグメント V: 従業員数 100 人~ 249 人の中規模企業 - 29,000 ユーロ
一部の技術ツールは、特定のセグメントでのみ利用できることに注意してください。たとえば、デジタルキットでは、セグメント I、II、III の企業のみを対象に、ウェブサイトの改善や検索エンジン最適化のための助成金が支給されます。これらの制限と助成金の上限額については、Acelera Pyme のウェブサイトで確認できます。
デジタルキット申請の要件
デジタルキットは、業種を問わず、自営業者と 3 種類の中小企業 (マイクロビジネス、小規模企業、中規模企業) のからの応募を受け付けています。助成金を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
- セグメントの所得制限以下である。 これらの制限は、従業員数に基づくビジネス規模に対応しています。
- セグメント I: 収益 10,000,000 ユーロ以下
- セグメント II および III: 収益 2,000,000 ユーロ以下
- セグメント IV および V: 収益 50,000,000 ユーロ以下
- セグメント I: 収益 10,000,000 ユーロ以下
従業員数で特定のセグメントに分類される企業が、収入の面でそのセグメントの上限を超えている場合、当該カテゴリのデジタルキットを申請することはできません。ただし、所得水準に合致するセグメントに対応する助成金は、支給対象となります。たとえば、従業員数が 50 人未満でも年間売上高が 1,000 万ユーロを超える場合、EU 政府は所得基準に基づいて「中規模企業」として認定します。その結果、従業員数では下位セグメントにあたるその企業は、セグメント IV に分類されます。
De minimis サポートの資金限度額を超えていない。 De minimis サポートとは、EU 諸国が対象の企業に提供する資金援助です。規則 (EU) 2023/2831 に記載されているように、加盟国が対象企業に付与できる許容限度額は 3 年間で 300,000 ユーロまでで、2023 年の更新前の以前の上限である 200,000 ユーロから引き上げられています。
経営難事業の分類に該当しない。 たとえば、破産手続きを受けている設立 3 年未満の中小企業は対象外です。
すべての納税義務を果たしている。 たとえば、企業は四半期ごとの VAT 申告書を提出する義務があり、社会保障費を滞納していないことが必要です。
Agencia Tributaria に登録する。 各公募に示されている期間内に登録する必要があります。
法律 38/2003 号で規定の禁止事項に違反していない。 たとえば、将来の助成金の利用を制限する法的制裁を受けたり、必要な期間内に以前の助成金の返済を怠ったりすることはできません。
デジタルキットの申請方法
デジタルキットに申し込むには、Acelera Pyme のウェブサイトから登録し、以下の手順に従う必要があります。
![Steps to apply for the Digital Kit - This image outlines the steps for businesses seeking Digital Kit funding.](https://images.stripeassets.com/fzn2n1nzq965/3H9xQOqBJahVUKJPCFb0WI/0f832e503d53ed5da0dcbf3ec300e445/steps-to-apply-for-the-digital-kit.png?w=2160&q=80)
自己評価を行って、ビジネスのデジタル成熟度レベル (つまり、技術トレンドに適応する能力) を判断した後、申請を進めることができます。申請期間中に、ビジネスのセグメントに合った助成金を申請する必要があります。
対象の公募を選択したら、「手順にアクセスする」ボタンをクリックします。デジタル証明書または Cl@ve を使用して本人確認を行います。
デジタルキット助成金の利用方法
Red.es 申請が承認されると、助成金が支給されますので、その額を利用する必要があります。以下の手順に従います。
![Steps to use Digital Kit funding - This image outlines the steps that Digital Kit beneficiaries need to follow to use the subsidy.](https://images.stripeassets.com/fzn2n1nzq965/6cixhVovvHE0fm81NkGvoj/2476e23a72df34ba24406d29d6b1728c/steps-to-use-digital-kit-funding.png?w=2160&q=80)
助成金の使用と管理は、かなり直感的です。まずデジタル化エージェント一覧にアクセスして、自社に適した技術ソリューションを提供できると思われるエージェントを選択します。カタログは広範囲にわたるため、時間をかけて十分な情報に基づき意思決定をしてください。
次に、デジタル化担当者に直接連絡して、必要な製品またはサービスを決定します。デジタルキットからの支援があることを伝えます。最後に、処理ポータルにログインし、受益者エリアに移動すると、助成金の利用可能な残高の確認など、さまざまなアクションを実行できます。
デジタルキットの利用期間
デジタルキットは、特定の公募に応じて、以下の期間に利用可能となっています。
- 第 1 次公募: 2022 年 3 月 15 日午前 11:00 ~ 2024 年 12 月 31 日午前 11:00
- 第 2 次公募: 2022 年 9 月 2 日 午前11:00 ~ 2024 年 12 月 31 日午前 11:00
- 第 3 次公募: 2024 年 6 月 14 日午前 11:00 ~ 2025 年 10 月 31 日午前 11:00
- 第 4 次公募: 2023 年 9 月 12 日午前 11:00 ~ 2025 年 10 月 31 日午前 11:00
- 第 5 次公募: 2024 年 12 月 12 日午前 11:00 ~ 2025 年 6 月 30 日午前 11:00*
デジタルキットに関するよくあるご質問
デジタルキットで新しいウェブサイトに費やせる額はいくらですか?
ウェブサイト作成の助成金の上限は 2,000 ユーロです。デジタルキットの最低助成金は 3,000 ユーロですが、残りの 1,000 ユーロはコンピューター購入など、別の目的に割り当てる必要があります。
デジタルキットでソーシャルネットワークに費やせる額はいくらですか?
デジタルキットでは、ソーシャルネットワークに最大 5,000 ユーロを費やすことができます。各デジタル化機能の制限は、Acelera Pyme のウェブサイトで確認できます。
自営業者に対するデジタルキット助成金の上限
自営業者向けのデジタルキットの上限額は 3,000 ユーロで、これはセグメント III 企業 (従業員が 0 人~ 2 人の企業) に設定された制限です。
デジタルキット助成金の割り当て方法
情報に基づき意思決定するには、成熟度とサイバーセキュリティの評価を完了することが重要です。このステップは、助成金を受け取るために必須であるだけでなく、貴社のデジタルギャップを特定するのにも役立つため、デジタルキットの支援でそれらに対処できます。
期限内に上記要件を満たしている場合は、デジタルキットを申請できます。ご不明な点がございましたら、Red.es のよくあるご質問 (FAQ) を参照してください。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。