マーチャントオブレコードとセラーオブレコード: 主な相違点と類似点

  1. はじめに
  2. マーチャントオブレコードとは
  3. セラーオブレコードとは
  4. マーチャントオブレコードとセラーオブレコードの比較
    1. シナリオ 1: マーチャントオブレコードとセラーオブレコードが異なる事業者である場合
    2. シナリオ 2: マーチャントオブレコードとセラーオブレコードが同一の事業者である場合
  5. マーチャントオブレコードとセラーオブレコードのどちらと連携すべきか

Forrester は、EC ストアが牽引する小売業の売上高は、2027 年までに 3.8 兆ドルに成長すると予測しています。大企業も中小企業も、オンラインプラットフォームでの商品やサービスの販売に力を入れ続けています。そのため、オンライン取引における主要な役割を理解することが重要です。「マーチャントオブレコード」と「セラーオブレコード」という 2 つの用語を知っておく必要があります。これらは同じ意味で使われることもありますが、両者は異なる責任や潜在的義務を有しており、事業運営やリスクに大きな影響を与える可能性があります。

マーチャントオブレコードとセラーオブレコードは、顧客体験、納税義務、規制遵守、さらにはビジネスの収益性にまで影響を及ぼす可能性があります。このような役割は、企業固有のビジネスモデルと販売構造によって形成されるものです。両者の特徴を認識することで、企業は深い業務知識を獲得できるだけでなく、オンライン販売戦略を改善するための、十分な情報に基づいた意思決定を行うことができるようになります。

以下に、マーチャントオブレコードとセラーオブレコードの役割と責任について説明します。その後、企業がマーチャントオブレコードまたはセラーオブレコードのどちらか一方、あるいはその両方となる可能性があるシナリオについて説明します。また、さまざまなビジネスモデルにおける両者の役割の影響を説明し、EC ストア事業を立ち上げる企業のための指針を示します。

本記事の内容

  • マーチャントオブレコードとは
  • セラーオブレコードとは
  • マーチャントオブレコードとセラーオブレコードの比較
  • マーチャントオブレコードとセラーオブレコードのどちらと連携すべきか

マーチャントオブレコードとは

「マーチャントオブレコード」(MoR) とは、決済代行業者が商品やサービスの売り手として認める事業者のことです。このような事業者は、利用者の購入プロセス全体と、以下のような関連する義務について、全体的な責任を負います。

  • 支払いの回収
    MoR は、利用者の支払いの処理について責任を負います。取引後、利用者のクレジットカードや銀行の利用明細書には、この事業者の名前が記載されます。

  • 消費税
    MoR は、適用される消費税または付加価値税 (VAT) の計算、徴収、報告、納付について責任を負います。これらの職務を適切に遂行するには、関連するすべての税務管轄区域で登録されている必要があります。

  • 法令遵守
    MoR は、すべての取引について、現地の法令や国際的な法令が確実に遵守されるように対応する必要があります。遵守する対象には、消費者保護法、データプライバシー法、不正防止規制、カードネットワーク規則が含まれますが、これらに限定されません。

  • カスタマーサービスと紛争解決
    一般的に、MoR は利用者からの問い合わせ、苦情、返品、返金への対応など、取引に関するカスタマーサービスの管理に責任を負います。また、チャージバックなど、取引に起因する紛争を解決する責任も負います。

  • 不正防止
    MoR は、不正取引から保護するために、不正防止策を実装し、管理します。

EC ストアの文脈では、マーチャントオブレコードは、マーケットプレイスやプラットフォームそのものである場合があります。また、マーケットプレイスの特定の設定やポリシーによっては、個々の売り手である場合もあります。MoR は大きなリスクと責任を負いますが、その見返りとして、顧客体験と、取引による潜在的収益を管理することができます。

セラーオブレコードとは

セラーオブレコード (SoR) とは、商品またはサービスを利用者に販売する事業者のことです。そのため、法的および財務的な観点で取引に対して責任を負います。以下のような義務があります。

  • 支払いの回収
    MoR と同様に、SoR も利用者からの支払いを処理する責任を負う場合があります。また、SoR はクレジットカードの明細書に表示される事業者です。両方の事業者の特徴を以下でさらに詳しく説明しますが、簡単に言うと、どちらも取引の処理について責任を負う可能性があるということです。

  • 消費税
    SoR は、適用される消費税を徴収し、納付する責任を負います。適切な税務登録が必要であり、適切な額の消費税を計算、徴収し、適切な税務当局に報告、納付する必要があります。

  • 法令遵守
    SoR は、売上について、適用されるすべての法令が確実に遵守されるように対応する必要があります。これには消費者保護法、データプライバシー規制、貿易コンプライアンスなどが含まれます。

  • カスタマーサービスと配送
    一般的に SoR は、利用者への商品やサービスの配送と、カスタマーサービスの問題、返品、返金の対応について責任を負います。

MoR と同様に、SoR はマーケットプレイスやプラットフォームそのものである場合もあれば、マーケットプレイスのポリシーや構造によっては個々のベンダーである場合もあります。

マーチャントオブレコードとセラーオブレコードの比較

「マーチャントオブレコード」と「セラーオブレコード」は、どちらも取引において一定の責任を負う事業者です。文脈によっては、両者は同じ意味で使用されることもあります。しかし、ビジネスモデルと特定の販売構造によっては、異なる役割を担う場合があります。たとえば、大規模な EC ストアプラットフォームを通して販売する場合と、専用ウェブサイトで販売する場合では役割が異なります。

多くの場合、MoR と SoR にどの程度の相違点と類似点があるかは、企業が管理する必要がある販売プロセスの範囲と、販売業務の複雑さによって決まります。大規模プラットフォームでは、責任とリスクを分散するためにこれらの役割を分割することが多くなります。一方で、中小企業や直接販売する企業は、これらの役割を統一する傾向があります。その仕組みを詳しく説明します。

シナリオ 1: マーチャントオブレコードとセラーオブレコードが異なる事業者である場合

通常、大規模な EC ストアプラットフォームやマーケットプレイスでこのような分離が行われます。その場合、プラットフォームが MoR の役割を、個々のベンダーが SoR の役割を担います。

たとえば、Amazon マーケットプレイスの一部の構成では、Amazon が MoR の役割を担います。その場合、Amazon は支払い処理と財務上のコンプライアンスについて責任を負います。利用者が買い物をすると、銀行やクレジットカードの明細書に「Amazon」と表示されます。Amazon は決済代行業者と密接に連携しており、チャージバック対応、または支払いに関する異議申し立てについて責任を負います。

しかし、個々のベンダーが SoR であることに変わりはありません。それらのベンダーは在庫と配送について責任を負います。商品に問題があった場合や、利用者が返金を求めている場合は、ベンダーの責任になります。また、ベンダーは販売する商品について、地域や国の法令、または国際的な法令が確実に遵守されるように対応する責任があります。場合によっては SoR が消費税についても対応することがあります。ただし、これは状況によって異なります。

シナリオ 2: マーチャントオブレコードとセラーオブレコードが同一の事業者である場合

企業が自社のウェブサイトや小規模 EC ストアプラットフォームを通じて利用者に商品やサービスを直接販売する場合、その企業は通常、MoR と SoR の両方を兼ねています。

たとえば、自社のウェブサイトを通じて手作りの工芸品を販売する中小企業の経営者は、おそらく MoR と SoR の両方になるでしょう。商品の出品、利用者からの支払いの処理、商品の配送、販売後のカスタマーサービスや返品対応など、販売のあらゆる側面を担当することになります。

同様に、独自の SaaS (サービスとしてのソフトウェア)サブスクリプションを販売するソフトウェア会社は、MoR でも SoR でもあります。ソフトウェアの開発と販売、利用者からの支払いの処理、カスタマーサービス対応、関連法規の遵守などについて責任を負います。

どちらのシナリオでも、企業は、支払いの処理、消費税の徴収、商品の配送、カスタマーサービス、法令遵守など、取引に関するすべてについて責任を負います。

マーチャントオブレコードとセラーオブレコードのどちらと連携すべきか

自社が MoR と提携すべきか、自ら SoR として行動すべきかは、ビジネスの規模、能力、戦略的目標など、いくつかの要因によって決まります。以下に、この決定を下す際に企業が考慮すべき質問をいくつか挙げます。

  • 財務業務はどの程度複雑か?
    ビジネスが複数の税務管轄区域で運営されている場合や、大量の取引を扱っている場合は、消費税、付加価値税、支払い処理の管理が非常に複雑になる可能性があります。MoR と連携することで、これらの側面を MoR に処理してもらうことができるため、自社は自由に商品開発、マーケティング、カスタマーサービスに集中することができます。

  • リスク管理とコンプライアンスに関する能力はどの程度か?
    SoR となる場合、会社は、消費者保護法やデータプライバシー規制など、さまざまな法令を遵守する必要があります。このようなタスクを処理するリソースと専門性があれば、自社が自ら SoR として行動できるかもしれません。しかし、そうでない場合は、MoR と提携することで、コンプライアンスを確保し、リスクを軽減することができます。

  • 顧客体験をどの程度管理したいと考えているか?
    通常、自ら SoR として行動する場合は、購入から配送に至るまで顧客体験を幅広く管理できます。このような管理を継続することがブランドとカスタマーサービス戦略にとって重要である場合は、自ら SoR として行動することが最良の選択肢となる場合があります。しかし、商品やサービスそのものに重点を置き、販売プロセスにはあまり重点を置かない場合は、MoR との提携が有益である場合があります。

  • カスタマーサービスと紛争解決のためにどのようなリソースがあるか?
    一般的に、SoR は返品や返金を含むカスタマーサービスの問題の対応に責任を負います。これらの側面を効率的かつ効果的に管理するリソースがあれば、SoR として行動するのが正しい選択となる可能性があります。そうでない場合は、MoR がこれらの側面を処理してくれます。

  • 長期的な事業戦略はどのようなものか?
    新しい市場への進出や事業の大幅な拡大を計画している場合、MoR と提携することで、成長に必要なサポートやインフラを得られる可能性があります。しかし、より小規模で管理された運営を維持する計画であれば、SoR として行動する方が戦略に合致するかもしれません。

ビジネスにはそれぞれ特徴があり、自ら SoR として行動するか、MoR と提携するかを決めるには、自社のビジネス固有の状況を慎重に考慮する必要があります。マーチャントオブレコードの詳細と、マーチャントオブレコードと提携するメリットをご確認ください。

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