サブスクリプション料金体系モデル: 事業者向けガイド

  1. はじめに
  2. サブスクリプション料金体系モデルの種類
    1. 段階制料金体系モデル
    2. 従量課金の料金体系モデル
    3. フリーミアムモデル
    4. 定額制モデル
    5. 企業にとってのメリット
    6. ユーザー単位の料金体系
  3. サブスクリプション料金体系の仕組み
  4. サブスクリプション料金体系モデルが事業者にもたらすメリット
  5. サブスクリプション料金体系を採用する際の課題
  6. サブスクリプション料金体系のベストプラクティス

サブスクリプション料金体系を使用すると、利用者が事業者に定期的に (通常は毎月または毎年) 料金を支払うことにより製品やサービスを使用する権利を得るという仕組みを構築することができます。確実な収入源を得られるため、事業者にとって好ましい仕組みであり、定期的に一定の収入を見込むことができます。このため、より安定した財務計画と財務予測につながります。また、製品やサービスを継続的に使用する忠実な顧客基盤を築くのにも役立ちます。C+R Research が 2022 年に実施したアンケートによると、各種のサブスクリプションへのアメリカの消費者の平均月額支出は 219 ドルとなっています。

利用者側から見ると、このモデルは、コストを長期間に分散できるため、サービスや製品を手軽に利用できるというメリットがあります。特に、一括購入では手に届かない価格の場合はなおさらです。多額を前払いしなくても、より少額の都合しやすい金額で支払いの予算を立てることができます。新しいサービスを試してみる場合にも、初期費用を最小限に抑えることができるため、導入の障壁が低くなります。

このガイドでは、この料金体系が事業者にもたらすメリットと、これを導入する際の課題について紹介します。

この記事の内容

  • サブスクリプション料金体系モデルの種類
  • サブスクリプション料金体系の仕組み
  • サブスクリプション料金体系モデルが事業者にもたらすメリット
  • サブスクリプション料金体系を採用する際の課題
  • サブスクリプション料金体系のベストプラクティス

サブスクリプション料金体系モデルの種類

すべてのサブスクリプションモデルが同じ仕組みで機能しているわけではありません。以下に、主なサブスクリプション料金体系モデルの要点を簡単にご紹介します。

段階制料金体系モデル

段階制料金体系モデルでは、価格と価値が段階的に上がる、数種類のパッケージが選択肢として利用者に提供されます。レストランのセットメニューのように、価格が上がると、選択肢や量が増えていきます。

仕組み

段階制料金体系では、企業は自社の製品やサービスをさまざまな「段階」に分け、それぞれの段階に機能のセットと価格を対応付けます。各段階は、特定の市場セグメントのニーズを満たすように設計されています。一般に、基本的な段階には最低限の機能が含まれ、段階が上がるごとに機能、サービス、あるいは容量が追加されていきます。

一般的なユースケース

  • サービスとしてのソフトウェア (SaaS): 多くの SaaS 企業は、段階制料金を採用して、さまざまな利用者のニーズに対応しています。基本的な機能だけを必要とする中小企業から、全機能に加えてカスタマイズも必要な大企業まで、あらゆる利用者を対象とすることができます。たとえば、プロジェクト管理サービスの価格帯としては、プロジェクトとユーザーの数が制限される「スターター」、統合機能が加わった「スタンダード」、高度な分析機能が加わり、プロジェクト数無制限の「プレミアム」が考えられます。

  • コンテンツサービス: ストリーミングサービスとオンライン出版では、段階制サブスクリプションがよく利用されます。たとえば、標準的なコンテンツを利用できる「基本」プラン、高精細で独占的なコンテンツが加わった「プレミアム」プラン、家族用アカウントやオフラインアクセスも追加される「オールインクルーシブ」プランを提供している場合があります。

  • 会員制組織: ジムやクラブでは、段階制の会員制度がよく利用されます。このような施設の基本プランに加入すると主要な設備を利用できる一方で、より上位の価格帯では、パーソナルトレーニングを受けることや、プレミアムエリアの利用が可能になります。

企業にとってのメリット

段階制モデルは用途が広く、さまざまな顧客セグメントの個々のニーズに合わせて調整できるため、顧客基盤を最大限に広げることができる可能性があります。また、利用者は自分のニーズと予算に基づいて適切な価格帯を自ら選ぶよう促されるため、購入内容を自分で管理していると感じることができ、顧客満足度の向上につながります。

企業にとっては、段階制モデルは販売プロセスがシンプルになるというメリットがあります。パッケージ間の違いが明確なので、営業チームは価値提案がしやすく、利用者に最も適したパッケージを見つける手助けをするのも簡単です。段階制料金体系には、アップグレードプランも用意されているため、利用者はリソースやニーズが増えたときは、上位の価格帯に移行できます。

段階制モデルを構築する際には、慎重に検討する必要があります。段階ごとに価格が上昇しますが、価格差を納得してもらえるように知覚価値も上がる必要があります。各価格帯で提供される内容を明確にして、利用者の混乱や不満が生じるのを避ける必要があります。価格帯が多すぎても、利用者が選択に迷うことになるため、大抵は 3 ~ 4 種類の明確に差別化された選択肢を提供することになります。

従量課金の料金体系モデル

従量課金の料金体系モデルでは、サービスや商品の消費量と支払いが対になっていて、実際に使った通話時間やデータ通信量に応じて支払う方式の電話プランと似ています。固定月額料金を支払う方式とは違います。

仕組み

従量課金の料金体系では、利用者への請求はサービスの利用量に正比例します。事業者は通常、データ量、帯域幅の量、実際の利用時間などの測定基準で使用量を追跡し、これらの測定基準に対して料金を設定します。多くの場合、使用量の増量に応じて割引を適用するなどのインセンティブを通じて、より多くの消費を促します。

一般的なユースケース

  • クラウドサービス: アマゾンウェブサービス (AWS) や Google Cloud Platform などのプロバイダーは、企業が消費するコンピューティング能力、ストレージその他のサービスの量に応じて請求しています。このモデルは、季節的な需要やプロジェクトベースのワークロードによって需要が変動する企業に最適です。

  • 公共事業: 電気や水道といった伝統的な部門では、このモデルをずっと使用してきました。メーターで使用量を計測し、請求するシステムです。

  • 電気通信: 携帯電話会社やインターネットプロバイダーの多くがこのプランを利用し、データ使用量、通話時間、送信したショートメッセージ数に応じて請求しています。

  • SaaS: 一部の SaaS 製品、特にデータサービスやウェブインフラストラクチャー製品に関連するものは、使用量に基づいて請求されます。たとえば、データベースサービスでは、クエリの件数や処理したデータの量に基づいて請求します。

企業にとってのメリット

このモデルは事業者にとって、小さな費用で始めて、成長するにつれて費用を増やすことができるという魅力があります。利用者にとっても、請求と使用量が直接相関していてわかりやすい料金体系となっています。事業者の売上は、利用者の使用率に基づいて伸びるため、予測しやすくなります。

ただし、このモデルを実装するには、システムの綿密な追跡とわかりやすい請求プラットフォームが必要です。利用者から使用量と費用についての詳細な情報を求められることになるためです。また、利用者は自分が思っている以上にサービスを利用することがあり、予想外の高額な請求を見てびっくりすることがあります。そのための対策として、使用量に関する警告や予算編成ツールを用意して、利用者が自分で使用量をチェックし、管理できるようにするとよいでしょう。

フリーミアムモデル

このモデルは 2 段階制で、無料の基本サービスと高度な機能を利用できるプレミアムサービスがあります。Spotify はこの原則で運営していて、無料の音楽ストリーミングを広告付きで提供する一方で、プレミアム価格帯は広告なしで追加機能を利用できます。これは、初期費用なしでユーザーを引き付けて、そのうちの一部が有料アカウントにアップグレードすることを期待するという戦略です。

仕組み

フリーミアムモデルでは、基幹製品が無料で提供され、ユーザーはこれを無料で無制限に使用できます。企業は、高度な機能や拡張機能を有料で販売することで、収益化します。無料サービスでユーザーを引き付けて製品を試してもらい、最大限に活用できるように製品版を購入するよう促します。

一般的なユースケース

  • デジタルメディア: Spotify のような音楽ストリーミングサービスは、機能を制限し、曲と曲との間に広告を流すことで、無料で利用できるようにしています。ユーザーは、サブスクリプション料金を支払うことで、広告の削除、オフライン視聴や無制限スキップなどの追加機能を利用できるようになります。

  • モバイルアプリ: 多くのモバイルアプリケーションは無料でダウンロードして使用できますが、アプリ内購入として追加機能や機能性、仮想商品を提供しています。たとえば、ゲームでは、プレーヤーが仮想通貨やアイテムを購入することが一般的です。

  • ソフトウェアツール: 生産性ツールやソフトウェアプラットフォームでは、フリーミアムモデルがよく使用されます。たとえば、ある写真編集ソフトウェアの場合、基本機能は無料で使用できますが、高度な編集ツールを利用するには、1 回限りの購入またはサブスクリプションが必要になります。

  • プロフェッショナルネットワーク: LinkedIn などのネットワーキングウェブサイトでは、無料の基本サービスを提供していますが、プレミアムサービスのサブスクリプションに登録すると、職探し、求人活動、人脈作りのための高度なツールを利用することができます。

企業にとってのメリット

フリーミアムモデルは、ユーザーの参入障壁を低くするというメリットがあります。無料オプションを提供することで、幅広いユーザー基盤をスピーディーに構築できます。事業者は、この無料ユーザーの一部が製品に価値を見出して有料ユーザーに転換することを期待します。

このモデルは、ユーザーの行動に関する貴重なデータを事業者に提供するという側面もあります。無料ユーザーが製品とどのように関わっているかを分析することで、どのプレミアム機能を開発すべきか、どのようなマーケティングが効果的かについて、十分な情報を得た上で意思決定を行うことができます。

このモデルの課題としては、無料版の魅力はユーザーを引き付けるのに十分でなければならないが、有料版の需要を奪うほどであってはならないということがあります。無料サービスは、有用でありながらも、ユーザーがさらに多くの機能を求める余地を残すようにする必要があります。また、通常は有料版に切り替える利用者はごく一部なので、このモデルが機能するためには、大規模なユーザー基盤も必要となります。多数のユーザーに働きかけるためには、製品とマーケティングにかなりの初期投資が必要になる傾向があります。

定額制モデル

定額料金モデルは単純明快で、利用者は、製品やサービスの使用量や消費量に関係なく、単一の低額料金を支払います。一定の料金を払えば、提供されているものすべてを味わうことができるバイキング形式の食事と似ています。

仕組み

このモデルでは、単一の定額料金で全サービスまたは全製品ラインを利用できます。使用量、機能へのアクセス権、段階制の価値提案に基づく違いはありません。定額制モデルの特徴は単純明快だということです。利用者側からは、サービスをどれだけ利用したか、どの機能を利用したかを考える必要がなく、請求金額を正確に把握できるという点が高く評価されます。

一般的なユースケース

  • サブスクリプションサービス: Netflix などのメディアストリーミングサービスの多くは定額料金モデルを採用し、単一の月額料金でサブスクリプション登録者がすべてのコンテンツを利用できるようにしています。

  • ソフトウェアライセンス: ソフトウェアプロバイダーによっては、継続的なサブスクリプションではなく、1 回限りの購入価格で製品をずっと使えるようにしている場合があります。この場合、ユーザーにはソフトウェアの機能と更新へのフルアクセスが提供されます。

  • サービスプロバイダー: インターネットサービスプロバイダーや携帯電話会社などの各種のサービス業者は、月額定額料金でサービスの無制限アクセス権を販売していることがあります。

企業にとってのメリット

このモデルはわかりやすく、予測可能な請求を好む利用者にとっては非常に魅力的です。使用量を追跡したり、複雑な請求サイクルを管理したりする必要がないため、プロバイダーと利用者のどちらにとっても、会計が簡単になります。

事業者にとっては、定額料金モデルを採用すると、安定的で予測可能な収入源が簡単に得られます。各利用者から毎月あるいは毎年いくら支払われるのか把握できるため、利益が予測しやすくなります。この安定性が、投資家にとって魅力であり、長期計画も立てやすくなります。

定額料金モデルでは、利用者のニーズや使用量の多様性は考慮されません。利用者によっては、このモデルに大きな価値を見出す人もいますが、中には、必要以上に支払っていると考える人もいるかもしれません。また、非常に使用量の多い利用者の場合、段階制料金モデルや従量課金制モデルであればもっと多く支払う意思があるのに、定額料金モデルであるためにそのような利用者からの売上を制限してしまうというリスクもあります。

この問題に対処するには、企業は、提供している価値が定額手数料に見合うものであるかを確認する必要があります。また、定額料金モデルで売上を維持、増大させるには、常に新たな利用者を呼び込む必要があるため、顧客獲得能力を高めてサブスクリプション登録者基盤を維持、拡大していかなければなりません。

ユーザー単位の料金体系

ユーザー単位の料金体系モデルでは、サービスや製品を利用しているユーザー数に基づいて請求します。団体割引チケットの仕組みと似ていて、イベントやサービスにアクセスするために各自が自分の分を支払います。

仕組み

ユーザー単位のモデルは、ユーザー数ベースのライセンスとも呼ばれ、サービスの個々の利用者に対して料金を設定します。ある会社の従業員 10 名がソフトウェアにアクセスする必要がある場合、10 ユーザー分を支払います。料金体系は変動させることができ、ユーザー数が増えるとユーザー 1 人当たりのコストが下がることもあります。こうすると、大規模な組織でユーザー数を増やしやすくなります。

一般的なユースケース

  • SaaS: プロジェクト管理ツールや顧客関係管理 (CRM) ソフトウェアをはじめ、多くの SaaS 製品は、ユーザー単位の価格設定となっています。たとえば、Salesforce はプラットフォームにアクセスするユーザー数に基づいて組織に請求しています。

  • ビジネスサービス: 法務または財務のサブスクリプションベースサービスは、ユーザー単位で運用し、社内の個々の利用者単位でリソースや専門コンサルティングへのアクセスを提供することができます。

  • オンラインプラットフォーム: 教育プラットフォームやオンラインコースのサブスクリプションでは、多くの場合、ユーザー単位のモデルを採用し、教材やツールにアクセスする学生または講師ごとに請求しています。

企業にとってのメリット

この料金体系モデルは利用者の規模とともに線形に拡大するため、プロバイダーにとっては特にメリットがあります。顧客の規模が拡大すると、それに応じてその顧客からの売上も増加します。ある程度のパーソナライゼーションと個別ユーザーの追跡が可能なため、個人レベルでのサポートの提供やユーザーエンゲージメントの把握に役立ちます。

ユーザー単位のモデルは、新たな従業員を採用する際の関連コストを把握できるため、企業の予算編成が明確かつ簡単になります。各ユーザーにツールのアクセス権が付与され、ユーザー自身が利用価値を認識するようになるため、組織内でのツールの採用が促進されるという効果もあります。

このモデルの課題は、企業が拡大していったときにユーザー単位のコストの妥当性に変化がないかを見極める必要があるということです。価格が高すぎる場合、規模の大きな組織は、一括契約またはエンタープライズ契約を提供している代替ソリューションを探そうとする可能性があります。ユーザー単位のモデルを採用している企業は、資格情報の不正な共有を防ぐ必要もあります。これは収益の損失につながる可能性があるからです。

このモデルを効果的に活用しようとする企業が、ある組織内のできるだけ多くのユーザーにとって自社の製品が不可欠なものとなるようにするために、機能開発に投資することがよくあります。また、多数の潜在的なユーザーを持つ大規模企業を対象に、価格を理由に採用を見送られることがないように、取引量に応じた割引を提供する価格体系を策定する必要が生じることもあります。

サブスクリプション料金体系の仕組み

サブスクリプションにどの価格体系モデルを採用する場合でも、以下は共通する基本的な仕組みです。

  • 登録と有効化: 利用者が自身のニーズに合ったサブスクリプションプランを選び、登録します。多くの場合、支払いの詳細を最初に提供します。これにより、サブスクリプションが開始され、通常は最初の請求サイクル分が即座に請求されます。

  • 継続支払い: 利用者は、初回の支払い後に (毎月、3 カ月ごと、毎年その他の所定の間隔で) 定期的に請求されます。継続支払いを行うことによって、サービスや製品を継続的に利用できます。

  • サービス / 製品へのアクセス: サブスクリプション登録者は、サブスクリプションが有効な間は、製品やサービスにアクセスできます。多くの場合、このアクセス権は、サブスクリプション手数料を支払う限りは継続され、間断なく続きます。

  • 更新とキャンセル: サブスクリプションは、利用者がキャンセルすることを決めるまで、自動更新されて継続されます。利用者は通常、ユーザーポータルで自分のサブスクリプションの設定を管理できます。アップグレード、ダウングレード、あるいは完全にキャンセルするかを決めることができます。

  • 顧客エンゲージメントと顧客維持: サブスクリプションを継続してもらえるように、企業は更新、カスタマーサポート、継続的な価値を提供し続けます。多くの場合、利用者はいつでもキャンセルできるため、顧客維持戦略は重要です。

  • 請求管理: プロバイダーは、請求サイクルの管理、今後の請求についてのリマインダーや通知の送信、決済の処理失敗した取引や支払いの更新の処理を行います。

サブスクリプション料金体系モデルが事業者にもたらすメリット

サブスクリプション料金体系は、以下のように、さまざまな戦略的メリットを事業者にもたらします。

  • 予測可能な収益: サブスクリプションは安定した収益源となります。サブスクリプション手数料とサブスクリプション登録者の数がわかっているため、より正確に利益を予測できます。この予測可能性は、予算編成と財務計画に役立ちます。

  • 顧客維持: サブスクリプションは継続的な性質があるため、より長期の顧客関係が促進されます。サブスクリプション登録した利用者は、長期間にわたって関係を維持する可能性があるため、企業は価値提供とロイヤルティの構築の機会を継続的に持つことができます。

  • 前払いのキャッシュフロー: サブスクリプション手数料は対象期間の最初に支払われるため、キャッシュフローが即時に得られ、運営費用や成長のための投資に充てることができます。

  • 拡張性: サブスクリプションは、利用者のニーズに応じて拡張できます。顧客が成長してサービスや製品をもっと必要とするようになったときは、上位のプランに移行させることで、新たな利用者を獲得しなくても、売上を伸ばすことができます。

  • データとインサイト: 利用者との継続的なやり取りから、利用パターンや好みに関する貴重なデータが得られます。このデータは、製品を洗練させ、マーケティングの取り組みをパーソナライズし、進化するニーズを満たすような新機能を開発するのに役立ちます。

  • 顧客関係の強化: 利用者とプロバイダーの継続的なやり取りから、利用者のニーズをより深く把握できるようになり、よりパーソナライズされたサービスを提供し、問題を予測し即座に対応することが可能になります。

  • マーケティングコストの低減: 多くの場合、新規利用者の獲得には費用がかかります。サブスクリプションモデルは既存の利用者の維持を重視するため、1 回限りの販売を追い求めるよりも費用対効果が高くなる傾向があります。

  • クロスセルの機会: ロイヤルティの高い顧客層がいるため、追加のサービスや製品を顧客基盤であるサブスクリプション登録者に紹介することで、既存の関係を利用して新たな収益源を生み出すことができます。

  • コミュニティの構築: サブスクリプションのユーザー間でコミュニティ意識が生まれ、ブランドが強化される可能性があります。限定的な特典やメンバー専用コンテンツが加わると、この傾向が特に強まります。

  • 販売プロセスがシンプルになる: わかりやすいサブスクリプションプランの場合、営業チームが適切な顧客セグメントに対象を絞って各プランの価値を伝えることができます。この結果、営業サイクルの短縮にもつながる可能性があります。

  • 市場の変化に合わせて調整できる: サブスクリプションモデルは、市場のフィードバックや変化に合わせて素早く適応できるため、市場との関係性を保つことができます。

サブスクリプションモデルを採用している事業者は、質の高い製品と優れたカスタマーサービスを維持することで、顧客がサブスクリプションを終了して解約することがないようにする必要があります。単に売上を生み出すだけではなく、利用者との関係を獲得し続けることが重要です。

サブスクリプション料金体系を採用する際の課題

サブスクリプション料金体系モデルを採用する場合の課題とデメリットもあります。以下は、どの料金体系モデルを選ぶかに関係なく、共通して認識しておく必要がある課題です。

  • 利用者の解約: 最も大きな課題の 1 つは利用者の解約です。Recurly Research によると、サブスクリプションビジネスの平均年間解約率は 5 ~ 7% です。サブスクリプション登録者がキャンセルすることを決めると、事業者はその穴埋めのために新規利用者を常に獲得しなければなりません。これによって、顧客獲得戦略の強化と、カスタマーサービスの向上という圧力がかかる可能性があります。

  • 価値の正当化: サービスの価値を継続的に証明するのは、簡単ではありません。サブスクリプション登録者は、自分が支払った価値を得ていることを定期的に実感できなければ、支払うのをやめてしまいます。

  • サブスクリプション疲れ: サブスクリプションモデルに移行する企業が増えるにつれて、利用者は、自分が管理しているサブスクリプションの数が多すぎると感じ、継続的な費用を評価して減らそうとする可能性があります。実際、2022 年に行った調査報告によると、アメリカの消費者の 22% が、自分が支払っているサブスクリプションサービスの数が多すぎると感じていると答えています。

  • 価格感度: 適切なプライスポイントを見つけることが重要です。価格が高すぎると、潜在的な利用者を遠ざけてしまう恐れがあります。一方、価格が低すぎると、サービスの価値が下がったり、得られるはずの売上を逃したりしてしまう恐れがあります。

  • 請求の複雑さ: 継続請求は、特にさまざまなプランの価格帯やプロモーション割引がある場合、管理が複雑になります。請求サイクル、支払いの失敗、更新を処理するための信頼できるシステムとプロセスが必要です。

  • 競争: 競合が多い市場では、より優れた価値、より良いサービス、より低価格の提供に向けて競争しています。このような環境で突き出た存在となり、顧客を維持することは難題であり、イノベーションと俊敏性が求められます。

  • 収益認識: 会計上、サブスクリプションから得た売上は、支払いを受けたときではなく、そのサブスクリプション期間全体にわたって認識されるため、財務レポートや財務予測に影響を及ぼす可能性があります。

  • 法律および規制への準拠に関する問題: サブスクリプションは、消費者の権利やデータ保護に関連する法規制をはじめ、さまざまな法規制の対象となります。罰金や評判悪化を避けるために、法令遵守を維持する必要があります。

  • アップグレードとダウングレードの管理: 利用者は、より多くの機能を利用するためにアップグレードしたり、節約のためにダウングレードしたりして、サブスクリプションのレベルを変更する場合があります。このような変更に対応するには、柔軟性が求められます。また、変更によって売上への影響も生じます。

  • コンテンツと機能の更新: 特にテクノロジーとメディアの分野では、定期的に更新され、新機能が提供されることが期待されます。サービスが新鮮で魅力的なものであり続けるには、継続的な投資が必要です。

  • 文化の変化: 売上重視の文化から顧客維持を重視する文化に転換するのは難しいでしょうが、考え方と指標を切り替えて、短期的な売上達成よりも長期的な関係を重視することが必要になります。

  • カスタマーサービスの需要: サブスクリプション登録者は、質がよく、対応の早いカスタマーサービスを期待します。2022 年の Deloitte の報告書では、サブスクリプションに登録するかどうかを決定する上で影響が実質的に最も大きいのは、財務面でのインセンティブや利便性で、その次が、プレミアムな製品、サービス、カスタマーサービスを利用できることという調査結果が発表されています。これを実現するには、サポートチームの負担が増えるため、追加リソースが必要になります。

サブスクリプションサービスの運営を成功させるためには、上記のような考慮事項にうまく対応する必要があります。サブスクリプション登録者を獲得することは重要ですが、利用者にとって「なくてはならない価値」のあるサービスを築くことも大切です。

サブスクリプション料金体系のベストプラクティス

サブスクリプション料金体系においては、料金、価値、顧客満足度のバランスが取れる点を見つける必要があります。プライスポイントが高すぎると利用者を遠ざけてしまい、低すぎると収益を損なう可能性があります。価値を常に見極めて、サブスクリプション登録者が支払った金額に見合う価値を提供する必要があります。

サブスクリプション料金体系モデルを導入しようとする企業は、顧客満足度を維持しながら売上を最大化するためのベストプラクティスに従う必要があります。以下に、ベストプラクティスの一部を紹介します。

  • 明確な価値提案を行う: 利用者が、受け取る価値を明確に理解できるようにしましょう。サブスクリプションの各価格帯のメリットは、理解しやすく、魅力的で、継続的なコストに見合う価値があるものでなければなりません。

  • 選択肢をシンプルにする: 選択肢が多すぎると、潜在的なサブスクリプション登録者は、どれを選べばよいのかわからなくなります。通常は、適切に構成された少数のプランの方が、迷うほど種類の多い価格帯を用意するよりも効果的です。

  • わかりやすい料金体系を用意する: 見えない手数料は避けましょう。請求の方法と請求時期を含め、コストを率直に伝えるようにします。優れたコミュニケーションは信頼を築き、解約を減らします。

  • 柔軟な条件を提供する: さまざまなサブスクリプション期間と、簡単なキャンセルポリシーを提供しましょう。キャンセルするのが大変そうと受け取られなければ、利用者が登録する可能性が高まります。

  • エンゲージメントにより顧客を維持する: パーソナライズしたコミュニケーションと更新情報を通して、サブスクリプション登録者と定期的に連絡を取りましょう。多くの場合、現在の利用者を維持する方が、新たに利用者を獲得するよりも低コストでより効果的です。

  • 使用状況とフィードバックをチェックする: 利用者がサービスをどのように使用しているかを追跡し、フィードバックに耳を傾けましょう。このデータは、製品を改善し、顧客維持につながる機能を見極めるために非常に重要です。

  • アップグレードのインセンティブを用意する: 上位の価格帯に移行しやすい方法と魅力的なインセンティブを用意して、サブスクリプション登録者をアップグレードさせましょう。アップグレードの具体的なメリットを示すことも大切です。

  • 請求と更新を自動化する: サブスクリプション、更新、支払いを管理するための信頼できる請求システムに投資しましょう。自動化によって、エラーが減り、リソースが解放されます。

  • 定期的に更新を行う: 定期的に更新を行い、新しいコンテンツや機能を提供して、サービスの新鮮さと関係性を維持することで、サブスクリプション登録者に継続する動機を与え続けましょう。

  • 解約に事前対応的に対処する: 解約のリスクのある利用者を特定し、キャンセルされる前に連絡を取りましょう。解約を思いとどまらせる解決策やインセンティブを提供します。それでも解約してしまった場合は、そのような利用者のフィードバックから学びます。

  • トライアルやオンボーディングの期間を提供する: 無料トライアルやオンボーディングの期間があると、利用者がサービスの価値をじかに体験することができるため、有料プランに切り替えてもらえる可能性が高まります。

  • 法令遵守: サブスクリプションに関連する法規制について常に最新情報を把握し、法の抜け穴に陥らないようにして、利用者の権利を守りましょう。

  • カスタマーサポートに投資する: 優れたカスタマーサービスを提供しましょう。好ましいサポート体験によって、サブスクリプションが更新されるかキャンセルされるかの違いにつながる可能性があります。

  • パフォーマンスを測定する: 顧客生涯価値 (LTV)、月間経常収益 (MRR)、解約率などの主要指標を定期的にチェックしましょう。これらの指標から、意思決定と戦略の指針となる情報が得られます。

これらのベストプラクティスに従うことで、利用者を引き付け、維持しつつ、持続可能な成長のための確かな土台を築くサブスクリプションモデルを構築できます。

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