サブスクリプションボックス・ビジネスモデルでは、ビジネスがサブスクリプション登録者に定期的かつ継続的に製品を届けます。利用者はボックスの料金を前払いで支払います。ボックスには製品が詰め合わされており、通常は特定のテーマや興味に沿ったものとなっています。このタイプのサブスクリプションの需要は高く、世界のサブスクリプションボックス市場の価値は 2023 年に 310 億ドル以上に達し、2032 年までに 1,450 億ドルを超えると予想されています。
さまざまなサブスクリプションボックスモデルがあります。それぞれに強みがあり、多様な利用者のニーズに対応しています。適切なサブスクリプションモデルを選ぶには、ビジネス目標と顧客基盤を注意深く分析する必要があります。
ビジネスは、これらのモデルからデータを収集して利用者の行動、好み、消費率を把握できます。把握した情報は、在庫の決定、マーケティング戦略、製品開発の指針となります。安定した収益源を得られることも魅力であり、より良いプランニングや予算編成が可能になります。さらに、モデルの顧客直販という性質が顧客エンゲージメントを高めます。ここでは、サブスクリプションボックスモデルを最大限に活用するために知っておくべきことをご紹介します。
この記事の内容
- サブスクリプションボックスとは
- サブスクリプションボックス・ビジネスモデルの仕組み
- サブスクリプションボックス・ビジネスモデルの種類
- 各サブスクリプションボックス・ビジネスモデルのメリットとデメリット
- サブスクリプションボックス・ビジネスモデルを使用するメリット
- 適切なサブスクリプションボックス・ビジネスモデルの選び方
サブスクリプションボックスとは
サブスクリプションボックスは、利用者が料金を支払って定期的に製品を受け取るサービスです。ボックスは、美容、食品、趣味などのさまざまな関心事をテーマにして構成され、多くの場合、サプライズアイテムが含まれています。新製品を発見したり、好きなことを楽しんだりするには便利な方法です。
このコンセプトは、定期的にサブスクリプション登録者が請求を受ける経常収益モデルで機能します。ボックスの内容は、大抵の場合、専門家によってキュレートされるか、利用者の好みに合わせてパーソナライズされます。また、サブスクリプション登録者の玄関先まで配達されます。
サブスクリプションボックスの人気が高まるにつれ、多種多様なボックスを利用できるようになっています。スナック菓子、化粧品、犬のおもちゃなどのボックスがあります。新製品やブランドを利用者に紹介するキュレーション型のサービスもあれば、サブスクリプション登録者が自分の好みに合わせてアイテムを選ぶサービスもあります。
このようなボックスにより、ビジネスは熱心な顧客基盤を構築し、好みに関するデータを収集し、ときには在庫を一掃することができます。利用者は、自分で製品を探さなくても興味に合った新製品を受け取ることができます。
サブスクリプションボックス・ビジネスモデルの仕組み
サブスクリプションビジネスモデルでは、ビジネスは通常、月単位または年単位で継続的に製品またはサービスを提供します。ここでは、利用者とビジネスの観点から、このようなモデルがどのように機能するのかについて説明します。
顧客体験
登録: 利用者はサブスクリプションサービスに登録します。多くの場合、デジタルプラットフォームを通じて登録し、ここで個人情報と支払い情報を入力します。
カスタマイズ: サービスによっては、利用者がプロファイルやアンケートを記入し、好みに合わせてサブスクリプションをカスタマイズできます。
定期的な配達: 定期的に製品やサービスが届きます。利用者は毎回注文する必要はありません。
顧客サービス: 継続的な顧客サポートで、支払いの失敗、製品の問題、サブスクリプションの変更などの問題に対処できます。
更新とキャンセル: サブスクリプションは自動的に更新されますが、通常は利用者がアカウント設定からいつでもキャンセルできます。
業務関連
在庫管理: ビジネスはサブスクリプションデータに基づいて在庫を予測・管理し、継続的な注文に確実に対応できるようにします。
サプライヤーとの関係: 定期注文はサプライヤーとの交渉で有利にはたらき、コストの削減につながることがあります。
フルフィルメント: ビジネスは、サブスクリプションボックスの定期的な梱包と出荷に対応できるようロジスティクスを設定します。
返品と交換: ビジネスは、利用者からの返品・交換に対応するプロセスを導入する必要があります。定期出荷を行っている場合は、プロセスが複雑になる可能性があります。
技術
決済処理: 自動化されたシステムが、サブスクリプションの支払い、拒否、更新を処理します。このシステムは、ペイメントゲートウェイや加盟店アカウントと連携します。
データセキュリティ: ビジネスは、PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) などの基準に従って支払いと利用者のデータを保護し、侵害から守る必要があります。
顧客関係管理 (CRM) システム: CRM は利用者とのやり取り、好み、サービス履歴を追跡して、高水準のサービスを維持します。
分析と報告: データ分析によって、利用者の行動、解約率、サブスクリプションのパフォーマンスに関する情報を得ることができます。
アカウント管理: 利用者は、自分のサブスクリプション設定、支払い方法、個人情報をオンラインで管理できます。
取引
初回取引: 登録後、初回取引が処理され、今後の請求サイクルのために支払いの詳細が (安全にトークン化されて) 保存されます。
継続請求: ビジネスは、事前に決められたサイクルで利用者に自動的に請求します。請求システムでは、支払いの失敗の処理、アラートの送信、必要な場合は支払いの再試行を行う必要があります。
アップグレードまたは変更: 通常、利用者はサブスクリプションをアップグレード、ダウングレード、または変更できます。変更すると、日割り計算またはクレジットの処理が行われます。
顧客関係
継続的なエンゲージメント: 定期的なニュースレター、更新情報、限定特典を提供して良好な関係を維持します。
フィードバックループ: 利用者からフィードバックを収集して対処することが、サービスの改善や顧客維持の鍵となります。
ロイヤルティプログラム: 長期間利用しているサブスクリプション登録者に特典を与えるシステムで、顧客維持率と顧客生涯価値を高めることができます。
サブスクリプションビジネスには、複雑な継続支払いや顧客管理を処理するための強力かつ俊敏で信頼性の高いシステムが必要です。信頼性の高いソフトウェア / ハードウェアインフラストラクチャに投資し、高水準のデータセキュリティを維持し、定期注文に対応できる物流能力を確保する必要があります。
サブスクリプションボックス・ビジネスモデルの種類
サブスクリプションボックスモデルは、利用者の行動や好みに合わせて進化・多様化しています。ここでは、4 つのサブスクリプションボックスモデルについて詳しく見ていきます。
キュレートされたコレクションのサブスクリプション: このモデルは主に、製品をボックスから取り出す体験で利用者の心をつかみます。ビジネスは、ウェルネス、グルメ、テクノロジー機器などのテーマに焦点を当て、さまざまなサプライヤーから商品を集めます。サブスクリプション登録者は何が届くか正確には知りませんが、ビジネスの選択を信頼し、サプライズ要素にも魅力を感じます。ブランドは、インフルエンサーや専門家とコラボしてボックスをキュレートし、説得力や特別感を加えることがよくあります。
パーソナライズされたサブスクリプション: パーソナライズされたサブスクリプションでは、個人の好みに合わせて内容がカスタマイズされます。ビジネスは、アンケートやサブスクリプション登録者からのフィードバックを通じて、配達のたびに微調整を加えることができます。美容ボックスは特定の肌質や色の好みに的を絞ることができ、食品ボックスは食事制限や味の好みに対応できます。このような個人に合わせた対応でロイヤルティを構築できます。
補充サブスクリプション: このサブスクリプションでは、日用品やパーソナルケア用品など、利用者が定期的に使用する製品を自動的に送付します。利用者の生活必需品が不足しないように、サブスクリプションのスケジュールを設定する必要があります。補充サブスクリプションを提供するビジネスは、配達スケジュールに注意を払い、利用パターンに合わせて在庫過剰や在庫不足を防ぎ、利用者の利便性を低下させないようにする必要があります。
アクセスサブスクリプション: メンバーシップまたはクラブサブスクリプションとも呼ばれるこのサブスクリプションでは、仲間になったかのような感覚を提供します。製品の購入に加えて、サブスクリプション登録者はクラブ会員の特権に対して支払います。クラブ会員には、割引、新製品の早期利用、限定コンテンツなどが提供されます。このモデルは、選ばれたグループの一員であるという知覚価値に依存するものであり、プレミアムサービスや排他的なブランドコミュニティでよく見られます。
サービスの新鮮さや関連性を維持すること、物流を効果的に管理すること、利用者の期待に応えて解約率を下げることなどが、サブスクリプションボックスモデルを導入しているビジネスの課題です。このモデルに優れているビジネスは、利用者の声に耳を傾け、フィードバックに速やかに対処し、各ボックスで一貫した価値を提供しています。
各サブスクリプションボックス・ビジネスモデルのメリットとデメリット
モデルごとに異なる方法で利用者に関わることができます。ビジネス目標、製品タイプ、顧客基盤によって最善の選択は変わります。メリットとコストや課題のバランスを取り、持続可能な成長志向のサブスクリプションサービスを作り出すことが重要です。ここでは、各モデルのメリットとデメリットの概要について説明します。
キュレートされたコレクションのサブスクリプション
メリット
サプライズ要素が利用者を楽しませ、配達のたびに関心やワクワク感を持たせることができます。
インフルエンサーや専門家とのコラボでボックスの魅力を高め、フォロワーを引き付けることができます。
このようなサブスクリプションは、何が欲しいか明確ではないものの探検したい人にアピールできるため、幅広くリーチできます。
デメリット
利用者が好みではないアイテムや必要のないアイテムを受け取った場合は不満につながるため、サプライズ要素はマイナスにはたらくこともあります。
幅広い対象者にアピールするボックスをキュレートする作業は難しく、リソースが必要になる可能性があります。
製品が利用者の期待にそぐわない場合、返品率が高くなるリスクがあります。
パーソナライズされたサブスクリプション
メリット
パーソナライズされた製品により、利用者の満足度と定着率を高めることができます。
パーソナライズされたデータから、個々の利用者の好みに関する詳細なインサイトを得られます。
パーソナライゼーションによって知覚価値が高まるため、価格を上げることができます。
デメリット
このモデルでは、ボックスを正確にパーソナライズするために精密なデータ収集と分析が必要であり、高度な技術が必要になることがあります。
サブスクリプション登録者ごとに個別化された在庫を管理するため、物流の複雑さが増します。
パーソナライゼーションプロセスが原因で、業務コストが増える可能性があります。
補充サブスクリプション
メリット
利用者にとって利便性が高ければ、長期的なロイヤルティにつながる可能性があります。
このモデルでは、製品は必要不可欠で定期的に使用されるため、需要を予測できます。
製品は一般的に標準化されており、一貫して消費されるため、在庫計画がよりシンプルになります。
デメリット
補充に重点が置かれているため、新製品を導入する機会が限られます。
小さな範囲の製品に依存すると、利用者の習慣が変わった場合にリスクが生じる恐れがあります。
同様のサービスを提供する大規模な小売業者や製造業者との厳しい競争に直面する可能性があります。
アクセスサブスクリプション
メリット
ブランドの排他的なコミュニティを作り、利用者のロイヤルティを高めることができます。
会費により、製品の売上以外の収益源が追加されます。
購入時の割引などの会員特典により、利益率が高くなる可能性があります。
デメリット
会費に見合った価値を継続的に提供する必要があります。提供できなければ、利用者が解約する可能性があります。
サブスクリプション以外のオプションと差別化するために、強力なバリュープロポジションが必要です。
あまりにも簡単に会員になることができると、特別感が低下する可能性があります。
サブスクリプションボックス・ビジネスモデルを使用するメリット
サブスクリプションボックスモデルでは、利用者のデータを利用してマーケティング活動や製品開発をパーソナライズすることにより、顧客エンゲージメントを高めます。この戦略では、利便性とパーソナライゼーションに対する顧客の要望に焦点を当てつつ、ビジネスが利用者と永続的な関係を構築できるようにします。ここでは、サブスクリプションボックスモデルのメリットをご紹介します。
利用者データへのアクセス: サブスクリプションボックスモデルでは、利用者の好みや行動に関する豊富なデータを収集できます。購入パターン、フィードバック、エンゲージメントを分析することで、利用者のニーズに合わせて在庫をカスタマイズできます。これにより、より効果的な在庫管理と過剰生産の抑制が可能となり、無駄をなくして保管コストを下げることができます。
より緻密で的確なマーケティング: このモデルでは、マーケティング戦略をより深く考えることができます。利用者のデータを利用して、より共感を得やすい的確なキャンペーンを策定できます。また、トレンドや好みをいち早く察知し、需要を満たす製品を開発できます。
予測可能な収入: サブスクリプションは安定した収入をもたらすため、財務計画や予算配分の信頼性が高まります。財務の健全性を注意深く監視する必要がある中小企業やスタートアップにとって、これは特に大きなメリットとなります。
顧客関係の向上: サブスクリプションボックスの顧客直販という性質は、ビジネスと利用者の関係を深めます。POS でやり取りが終わる従来の小売とは違い、サブスクリプションモデルでは継続的な対話が生まれます。定期配達によってブランドが利用者の心に残り、次回のボックスへの期待がワクワク感やロイヤルティを生み出します。
フィードバックを促進すること、カスタマイズを提供すること、サブスクリプション登録者がコミュニティの一員であるかのように感じさせることにより、利用者とのやり取りから利益を得ることができます。利用者の中でブランドへの信頼が生まれてくると、定着率を向上させることができます。
適切なサブスクリプションボックス・ビジネスモデルの選び方
説明した 4 種類のサブスクリプションボックスモデルについて考えてみましょう。ここでは、ビジネスに最適なモデルを決定する方法について説明します。
対象者の把握: ターゲット市場の利用者に関するデータを収集することから始めます。対象者、好み、ニーズ、要望を調べます。市場調査を実施して、できるだけ多くの情報を集めます。この情報は、ボックスに含める製品のタイプに影響します。また、この情報から、利用者を引き付ける可能性が最も高いサブスクリプションの種類を判断できます。
製品の分析: 製品を分析し、利用者に届ける最適な方法を判断します。パーソナライゼーションが効果的なアイテムなのか、補充モデルが適した必要不可欠な商品なのか、キュレーション型の体験に適した製品なのかなどを判断します。製品とその使い方は適切なモデルの決定に大きく影響します。
サプライチェーンの能力の評価: サプライチェーンがパーソナライゼーションや定期出荷に対応できるか確認します。モデルを決定する前に、製品の調達、在庫の維持、配送ロジスティクスの管理能力を評価します。
技術要件の評価: サブスクリプションモデルごとに、必要な技術サポートのレベルは異なります。パーソナライズされたサブスクリプションでは、高度なアルゴリズムとデータ分析機能が必要ですが、補充モデルでは、使用状況を追跡して再注文のタイミングを予測するシステムが必要です。
財務モデリング: 可能性があるサブスクリプションの種類ごとに財務モデルを構築して、どれが最も経済的に有利なのかを確認します。スタートアップコスト、運用コスト、利益率、拡張の実現可能性を検討します。安定した予測可能な収入は魅力的かもしれませんが、商品の販売原価や顧客獲得コストを比較検討する必要があります。
競合他社の分析: 競合他社を調査して、使用しているモデルとその理由を確認します。市場に入り込める隙間はあるか、利用者が引き寄せられているモデルがあるかどうかを判断します。
リスク評価: モデルごとにそれぞれのリスクがあります。キュレートされたコレクションでは製品を常に新鮮で興味を引くものにする必要があり、パーソナライゼーションには正確なデータが必要です。補充モデルは平凡になるリスクがあり、アクセスモデルでは継続的に価値を証明する必要があります。ビジネスに照らし合わせて、これらのリスクを評価します。
パイロットテスト: 完全にコミットする前に、パイロットプログラムを実行して検討中のサブスクリプションモデルをテストします。このテストにより、全面展開するリスクを負わずに業務上の問題や顧客体験に関する貴重なインサイトを得られます。
フィードバックの収集と改善: パイロットテストで得た利用者からのフィードバックを使用して、サブスクリプションモデルを改良します。利用者の行動や好みに基づいてモデルを継続的に改善することで、サブスクリプションサービスと対象者の適合性を高めることができます。
立ち上げとモニタリング: モデルを選び、テストを通して改良した後に、サブスクリプションサービスを立ち上げします。立ち上げは、サービスを効果的にするために必要な作業の始まりにすぎません。段階的に改善していくためには、利用者の行動、解約率、フィードバックを継続的にモニタリングして分析することが重要です。
各ステップで、利用者が望むこと、ビジネスが業務で対処できること、長期的に最も利益をもたらすことを注意深く検討する必要があります。ビジネスに適したモデルは、ブランドの価値を体現し、利用者のニーズを満たします。また、適切なモデルを選ぶことで、大規模かつ安定的に製品を提供できます。
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