成長のベンチマークは SaaS ビジネスの存続期間の全体にわたって変化しますが、その成長を促すために使用する戦術や検討事項もまた同様です。何かが目立った変化をもたらす時期は 1 年後かもしれませんし、数カ月後かもしれません。
業界や設立の方法を問わず、どのビジネスも、収益の向上が困難に思える状況に直面することがあります。そのことを念頭に置いて、ここでは、SaaS ビジネスで月間経常収益を伸ばせる 9 つの方法を紹介します。以下を読み進めて、自社の具体的なビジネスニーズやビジネスチャンスの領域に最適な方法を見つけましょう。
この記事の内容
- 月間経常収益 (MRR) の概要
- MRR の計算方法
- MRR を把握してビジネスに役立てる方法
- MRR を伸ばす方法
- 料金体系および請求モデルを最適化して更新する。
- 望ましい料金プランおよび段階への移行を容易化して促進する。
- 督促の管理を改善する。
- 製品およびサブスクリプションカタログを更新する。
- 割引を提供して宣伝する。
- カスタムのランディングページを作成する。
- ハイエンドな市場を拡大する。
- 無料プランのユーザーのアップセルを実施する。
- 詳細なレポート作成でパフォーマンスを追跡し、アナリティクスから得た知見を基にアクションを実行する。
- 料金体系および請求モデルを最適化して更新する。
月間経常収益 (MRR) の概要
月間経常収益 (MRR) は、ビジネスで各月に生み出されることが想定される収益の総額です。MRR は、サブスクリプションやメンバーシップを販売するビジネスにとって重要な指標です。
MRR の計算方法
MRR とは、厳密に言えば、多くの場合サブスクリプションやメンバーシップに関連した利用者との契約から、ビジネスに定期的にもたらされることが予測される収益のことです。MRR を計算するには、まず、自社のアカウントあたりの平均収益 (ARPA) を把握する必要があります。これは、さまざまな段階のあるメンバーシップや、レベルによって使用またはアクセスできる機能が異なるサブスクリプションを販売しているビジネスにとって、特に重要です。
ARPA は次のようにして算出されます。
ARPA = 収益の総額 ÷ 利用者の合計数
MRR は次のようにして算出されます。
MRR = アカウントあたりの平均収益 × 月あたりの合計利用者数
たとえば、ビジネスでソフトウェアのサブスクリプションを販売していて、それぞれ月あたり $60 を支払う利用者が 1,000 人いる場合、MRR は $60,000 になります。
MRR を把握してビジネスに役立てる方法
MRR は会計マネージャーや営業担当者向けの指標であるため、MRR を注視することは経営幹部にとって有益です。MRR は、成長率、維持率、解約率といった他の指標とともに、ビジネスの全体的な健全性とパフォーマンスを可視化します。
MRR を把握することは、次を含む多くの重要な面で有益になり得ます。
- 売上目標の見積もり
- 製品開発から販売やマーケティングまでにわたる、さまざまなイニシアチブのパフォーマンスの追跡
- 一定の期間におけるキャッシュフローの予測
- ビジネスにおける季節性の把握
- 顧客セグメント間でのパフォーマンスの変動の分析
- 予算編成と財務計画
MRR を伸ばす方法
すべての MRR を伸ばす方法があらゆる SaaS ビジネスに大きな変化をもたらすとは限りませんが、ほとんどの場合、大半のサブスクリプションモデルに次の 9 つのシンプルな戦術を適用できます。
料金体系および請求モデルを最適化して更新する。
幅広い料金体系モデルに対応することで、ビジネスで成長に伴ってアジリティと柔軟性を維持できるようになります。Stripe の柔軟な請求ロジックを使用すると、新しいサービスや製品を迅速にリリースすることで新しい料金構造を試行し、収益を高めて、新たな収益源を作ることが容易になります。
料金体系のオプションには次が含まれます。
- 定額料金
- 段階別の料金体系
- ユーザー毎の料金体系
- 従量課金ベースの料金体系
- 段階制料金
- 複数の価格
- サブスクリプションに複数の製品を含める
サブスクリプションの導入の設計について、詳しくはこのガイドをお読みください。
料金体系モデルの更新では、次のような理由で商品やサービスの値上げが必要になる場合があります。
- 最後に料金体系を施行した時から素材のコストが増加した
- 人件費が上昇した (または人件費を上げる必要がある)
- 市場で競合する製品やサービスの価格が自社のものより高い
- ビジネス目標に合わせて特定のサブスクリプション段階、製品、サービスを目立たせるために料金体系モデルを再構築中である
必要に応じて料金体系を戦略的に調整することは、あらゆる成長戦略の一部です。定期的に大まかなビジネス目標を確認して、エネルギーやリソースを注力する領域を決定する際には、その過程の一部に、料金の確認と十分に考慮された調整の実施を含める必要があります。
望ましい料金プランおよび段階への移行を容易化して促進する。
より動的な料金体系および請求オプションを構築する際には、(特に、停止しようとしている段階からアップグレードまたは切り替えを行う場合に) 利用者が異なる段階間で容易に切り替えを行えるようにしましょう。Stripe では、カスタマーポータルを通じて利用者がこうした操作を行えるようにしています。カスタマーポータルでは、利用者が 1 か所で各自の決済の詳細、請求書、サブスクリプションを管理できます。また、アップセルやクロスセルのキャンペーンにカスタマーポータルへのリンクを含めて、自社で提供する新しい請求プランやサブスクリプションプランへのより直接的な変換を促すこともできます。
督促の管理を改善する。
督促では、利用者がアカウントを解約する前に、期日超過の残高を回収するためにどのようにして利用者とコミュニケーションをとるのかが重要です。ビジネスでのこのタスクに対するアプローチの巧拙さによって、解約率と MRR に大きな影響がもたらされる可能性があります。Stripe Billing を使用しているビジネスでは、督促ツールを利用できます。このツールによって、ビジネスで失敗した継続支払いの (平均) 38% を回収できるようになりました。督促ツールには、Smart Retries が含まれています。Smart Retries では一般的に、設定されたスケジュールで失敗した支払いを再試行する場合よりも、回収できる収益が 11% 以上高くなっています。
製品およびサブスクリプションカタログを更新する。
収益は、利用者がサブスクリプションオプションのカタログを移動および閲覧する方法から大きな影響を受けます。ユーザーを維持して購入を完了させるように戦略的に組み立てられた利用者の経路を活用し、デジタルストアフロントを明確かつ直感的にする必要があります。エンゲージメントの指標を吟味して、ユーザーがコンバージョンファネルから外れる傾向にある瞬間を正確に突き止めましょう。どこでユーザーが離れていくのでしょうか?また、得られた知見を基にして、購入完了率を高めるために自社のウェブサイトでどのような変更を行えるでしょうか?同様に、あまり人気のない製品やメンバーシップオプションがオンラインでどのように提示されているのかを批判的に見てみましょう。人気がないのは利用者に関心を持たれていないからでしょうか?また、これらの人気のない製品やメンバーシップオプションのポジショニングとマーケティングを再検討する必要があるでしょうか?
割引を提供して宣伝する。
プロモーション料金は売上を増やすのに最適な方法であり、多種多様な方法で組み立てることができます。1 年のさまざまな時期に売上がどのように増加または減少するのかを把握することは、割引を実施する時期を戦略的に決めるうえで役立ちます。1 年の特定の時期に市場のどのセグメントがさまざまな製品やサービスに関心を持つ可能性が高くなるのか、また、セグメントの一般的な好みを把握している場合は、ターゲットを絞ったプロモーションを作成して、売上のギャップを埋めたり、強みとなる既知の領域を強化したりすることが可能です。Stripe Billing を使用すると、提供しているサブスクリプションに割引を適用したり、クーポンを使用してプロモーションコードを作成し、利用者にシェアしたりすることができます。
カスタムのランディングページを作成する。
コンテンツマーケティングは、ほとんどのビジネスにとって有力な収益源です。他より高いパフォーマンスを発揮するコンテンツ形式は、業界や主なオーディエンスセグメントに応じて異なります。ほとんどのビジネスで長期にわたって高いパフォーマンスを発揮するコンテンツ形式の 1 つは、自社の商品やサービスのさまざまな価値提案を強調するカスタムのランディングページです。主なユースケースや機能を強調して、さまざまなトラフィックストリームを引き付ける独自のランディングページを作成することには、以下のメリットがあります。
- 自社のウェブサイトで何を取り上げるべきかについて悩む必要がなくなります。複数の独自のランディングページを使用すると、ウェブコピーでどの価値提案を優先すべきかについて難しい判断をせずに済みます。
- どの機能やメッセージングの方向性がさまざまオーディエンスの心に最も響くのかを知ることができます。カスタムのランディングページとそれらをサポートするマーケティングおよび宣伝用アセットによって、チームに明確なインサイトをもたらす測定可能なパフォーマンス指標が生成されます。それらのインサイトは、どのようなメッセージングと機能がオーディエンスにアクションを促すのか、または促さないのかを判断するうえで役立ちます。
ハイエンドな市場を拡大する。
ビジネスでスモールビジネスや個人の消費者をターゲットにしていて、MRR の向上を目指している場合は、大手顧客に提供する製品やサービスがどのようなものなのかを可視化するとよいでしょう。ハイエンド市場での明らかな存続能力を持たない製品やサービスにも、当初の想定より大きなポテンシャルが秘められている場合があります。たとえば、メインの製品が個人向けのメンタルウェルネスアプリの場合は、従業員の特典として提供する大手顧客向けのホワイトラベルバージョンについて検討するとよいでしょう。
無料プランのユーザーのアップセルを実施する。
無料のサブスクリプションプランは、新規の利用者を引き付けるうえで非常に効果的な方法になり得ます。無料のサブスクリプションやトライアルがどのように組み立てられていても、それは無料ユーザーを有料の利用者に変換するインセンティブとしてみなされるべきです。問題なく変換を実現できる場合、無料のプランやトライアルは継続する価値があるといえるでしょう。しかし、多数の無料のサブスクリプション登録者を変換できていないことがわかっている場合や、無料プランに対してあまりにも多くのリソースを使い果たしている場合には、完全に中断して別のアイデアを試す方が有益である可能性があります。
サブスクリプション段階の組み立て方は、アップセルに向けた戦略とまっすぐに一致している必要があります。それは具体的にどのようなものになるでしょうか?各段階の利用者が使用できる機能、特典、アクセス権は、ユーザーのレベルアップを促すように配分される必要があります。十分に考慮されたうえで階層化された機能以外に、アドオン、従量課金、ユーザー毎またはユーザー単位の請求を利用者に提供することで、利用者の使用量が増加するにつれて、収益を組織的に高めることができます。
詳細なレポート作成でパフォーマンスを追跡し、アナリティクスから得た知見を基にアクションを実行する。
最良のサブスクリプションモデルは、微妙な調整が可能で柔軟性があり、融通が利いて、市場のできる限り多くの部分に対して有益かつ適切なモデルです。しかし、よく練られたサブスクリプションモデルは非常に複雑になっていることがよくあります。そのため、機能している部分と改善が必要な部分に関する実用的なインサイトを得るには、詳細なパフォーマンス追跡とレポート作成が重要です。
MRR を伸ばすための特に有力な戦術の 1 つは、包括的な主要指標に応じたパフォーマンスのモニタリングや、レポートの定期的な確認、得られたインサイトを基にしたアクションの実行の実現を怠らないことです。Stripe Billing には、成長からサブスクリプションの登録者数、維持率、解約率まで、あらゆるものを追跡してレポートするアナリティクスが用意されており、すぐに使えるようになっています。Sigma を使用すると、Stripe ビジネスで決済、サブスクリプション、利用者、入金などに関する情報を用いて、完全にカスタマイズされたレポートを作成することができます。
その他のリソース
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。