スタートアップの創業者にとって、ベンチャーキャピタリスト (VC) に向けたピッチを成功させることは、事業成長には必要不可欠でしょう。ほとんどの業界や業種において、ベンチャーキャピタルはスタートアップの成長を支える重要な資金調達先です。
2021 年には、17,000 件以上に及ぶ案件で過去最高となる 3,296 億ドルもの投資が行われました。これは前年の約 2 倍であり、スタートアップのエコシステムにおいて VC の出資額が大幅に増加していることを示しています。VC の資金調達額は 2021 年 11 月に 700 億ドルのピークに達しましたが、2022 年は前月比で減少傾向にあります。経済の各局面と同様に、VC 界隈の状況も常に変化しており、ベンチャーキャピタルを取り巻くトレンドは無数の不確定要素に左右されます。
事業の運営と拡大に必要な資金を VC から調達できるかどうかは、ピッチミーティングの成否に大きくかかっています。ご自身と自社ビジネスがいかに最適な投資対象であるかを、投資家に納得させることが、創業者に与えられた課題です。
ここでは、VC とのピッチミーティングに臨むための 13 のベストプラクティスをご紹介します。
最初の 5 分間でビジネスチャンスを説明する
重要な部分を後回しにしてはいけません。ピッチの最初の数分で、投資家に対して、どのようなビジネスチャンスがあるのか、そのチャンスをどう生かしていきたいのかを、明確に伝えましょう。詳細は、ピッチの残りの時間を使って説明できます。なぜ資金が必要なのか、その資金を何に使うのか、なぜあなたを信頼して投資額を増やすべきなのか、といったことを投資家に伝えられないのであれば、ピッチの準備にもっと時間をかけるべきです。
双方向型のピッチにする
ピッチ中に自然なタイミングで一呼吸置き、「ここまでよろしいでしょうか?」または「ここまでで何かご質問はありませんか?」と、問いかけます。たとえミーティングの最後に質疑応答ができるようになっていたとしても、ピッチの展開に合わせて投資家が質問できるような機会を設けましょう。
資料の読み上げは避ける
提案資料はピッチを視覚的に補助するものであり、ピッチそのものではありません。投資家は、あなたがご自身のビジネスとターゲット市場を熟知しているのかどうかを知りたいと思っています。意外に思えるかもしれませんが、用意してきたすばらしい提案資料を投資家が見る必要はありません。ですから、スライドに安易に頼るのは避けましょう。効果的な提案資料の作り方については、このトピックに関するガイドをご確認ください。
ミーティングでは互いを評価する
「創業者とはどのような関係を保ちたいですか?」または「今年の最大の投資目標は何ですか?」といった質問を投げかけましょう。あなたが投資家に対して資金提供者として以上の関心を抱いていることをはっきり示します。あなたのビジネスに心から賛同し、ビジョンを共有しながら協力してくれる投資家を探しましょう。
自社のチームをアピールする
VC が関心を持っているのは創業者自身やビジネスアイデア、市場だけではありません。創業者の率いるチームにビジョンを実行できる能力があるかどうか知りたいと思っています。チームメンバーのことを大いに宣伝しましょう。その場にいる VC に、チームメンバーに対するあなたと同じくらいの期待を抱かせるのです。しっかりとしたチームを作り、維持していく能力があることは、創業者として投資家にアピールできる最も重要なスキルだといっても過言ではありません。
大きく、大胆に意欲的な未来像を示す
現実的な意思決定に邪魔されない、地に足のついた大胆なビジョンを描いてこそ、創業者といえるものです。創業者として何に取り組んでいるのか、どのように目標を達成するつもりなのかなど、VC は色々と細かな部分を聞いてくるはずです。全体像については尋ねてこないかもしれません。そこで、積極的に、実行可能な計画に基づいた将来のビジョンを提示しましょう。
潜在市場について具体的に話す
大きなビジョンを持っていたとしても、市場機会に関しては詳細かつ具体的に理解していなければなりません。VC とのミーティングで特に避けるべきフレーズは、「みんながこれを買うようになります」と「PC を持つすべての人をターゲットにしています」の 2 つです。「すべての人がターゲット」という発言は、まだ具体的な計画がないという意味です。VC もそのことに気づくでしょう。重要なのは、市場のどのセグメントが自社に最適かを熟考していること、そのセグメントを獲得する計画があることを伝えることです。
競合他社を知り、差別化を図る
競合分析はどのピッチにおいても重要な要素です。競合他社のことをよく知らなければ、有効な対抗策を講じることもできないでしょう。VC に対しては、競合他社について十分な情報を入手したうえで話すようにしましょう。
分からないことを認める
質問に対して、「もっともなご指摘です。考える時間をください。のちほど回答します」と伝えても問題はありません。VC はすべての質問に答えられるとは思っていません。思考プロセスを見せてもよいのです。準備の有無にかかわらず、その場ですべての質問に答えようとするよりも、分からないと認めたほうが信用につながります。
練習を重ねる
投資家にピッチをしたことがあり、かつピッチを受けたこともある人に見てもらいながら練習をするのが理想的です。ただ、ルームメイトやパートナー、親族、友人の前でも効果は十分です。重要なことは、投資家とのミーティングを開始する前に、十分な時間をかけ、はっきりとした声で何度もピッチを練習することです。
調達したい金額について明確に話す
どの程度の金額を調達したいのか、その資金を何に使うのか、その資金が事業にどう役立つのかについて正確に把握しておく必要があります。併せて、事業の財務状況も明確に理解しておかなければなりません。金額についてはストレートに話しましょう。必要な資金について話すことをためらったり、はっきりしない態度を取ったりする創業者ほど、VC の心証を悪くする存在はありません。
提案資料は短くシンプルに
コピーライターやデザイナーたちと何カ月もかけて膨大なスライドの提案資料を作るようなことは避けるべきです。提案資料は短くシンプルにします。プレゼンテーション後に提案資料を見直すときに、投資家の手元に残しておきたいと思う重要な情報だけを盛り込みます。15 スライドを超えるようなら、提案資料に情報を盛り込みすぎているかもしれません。
資金以外の要望を伝える
投資家が提供できるものは資金だけではありません。ピッチ対象の投資家個人についてよく調べ、資金以外であなたにとって何か価値があるものがないかを見定めます。たとえば、次のようなものです。投資家のポートフォリオから、自社ビジネスにとってプラスになりそうな他の企業を紹介してもらうことはできないか。投資家の人脈に、自分のメンターになってくれそうな人はいないか。自分が常に話したいと思っている人の知人ではないか。自分が参加できそうな年次カンファレンスの主催者ではないか。
ただし、要望を書いたリストを持って、ピッチミーティングに挑むのは避けましょう。1 回限りの取引ではなく、今後も継続的に続く関係作りの一部だと考えて、ピッチミーティングに取り組みしましょう。予定していた資金調達ラウンドへの参加を断った VC からでも、有意義で貴重な何かを得ることができるかもしれません。
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