B2B 決済は、事業者間の資金のやり取りだけではありません。B2B 決済には、法令遵守、セキュリティ、通貨換算、請求処理といった多くの要素が関連し、すべてが順調に進むこともあれば、複雑で非効率になることもあります。現在、世界展開を進める事業者が増えるにつれて、取引は複雑化し、リスクも高まっています。事業者の多くは手動プロセスでは対処しきれません。手動プロセスに代えて、自動化、精度、細部の監視を導入する必要に迫られています。現在の B2B 事業者は、Stripe のようなプロバイダーを活用することで、一連の複雑な手順を簡単にし、大部分を自動化することができます。
B2B 業界は 2023 年の市場価値が約 1 兆 5,900 億ドルに達すると予測されており、決済プロセスの効率が重要となります。決済に関する問題への対処に費やしていた時間を主要業務に充てることができます。決済システムを最適化することで、ミスの削減、スピードアップ、顧客体験の向上が実現し、収支状況に好影響をもたらします。以下では、B2B 決済の重要事項をひと通り確認した後、Stripe のカスタマイズソリューションをどのように活用できるかをご紹介します。
この記事の内容
- B2B 決済とは
- B2B 決済の種類
- B2B 決済処理の仕組み
- B2B 決済処理のベストプラクティス
- B2B 決済処理における Stripe の活用方法
B2B 決済とは
B2B 決済とは、事業者間における商品、サービス、情報などの取引を指します。小規模で高頻度な取引が多い顧客取引とは異なり、B2B 決済では、多くの場合、金額が高く、支払い期間が長くなります。事業者間取引では通常、複雑な契約が伴い、複数の利害関係者が関与します。そのため、承認が多段階にわたり、決済プロセスに時間がかかる可能性があります。B2B 決済では法令遵守やセキュリティの確保が複雑化するため、支払いの送り手と受け手が行わなければならない業務が複雑になります。
B2B 決済の種類
電信送金
電信送金とは、銀行口座間で直接実行される即時取引のことです。大規模で時間的制約のある取引では即時取引が多く使用されます。電信送金は高速で信頼性が高い方法ですが、他の多くの B2B 決済手段よりもコストがかかります。取引あたりの手数料は 15 ~ 45 ドルであり、送金時には、送り手と受け手の双方が機密性の高い金融情報を共有する必要があります。
ACH 送金
Automated Clearing House (ACH) 決済は、中小規模の取引での利用が大きく拡大している電子送金です。ACH 送金は安全性の高い一元的なシステムで運用されており、特に継続支払いに適しています。ACH ネットワークの管理組織である Nacha によると、2020 年には、ACH を用いた B2B 決済の件数が前年比で 8% 増加しました。ACH 送金は電信送金よりも手数料が安価ですが、処理時間が長く、通常 2 ~ 3 営業日かかります。
SEPA 送金
単一ユーロ決済圏 (SEPA) 決済は、SEPA 圏内の 36 カ国でのスピーディーなクロスボーダー決済に対応しているため、ヨーロッパで人気があります。SEPA の標準化されたシステムにより、ユーロを保有する地域内の銀行口座からの直接引き落としが可能です。SEPA 送金は通常 1 営業日以内に決済処理され、SEPA インスタントクレジットトランスファーは 10 秒以内に決済処理されます。
小切手
このデジタル時代では時代遅れと感じるかもしれませんが、小切手は今も B2B 取引で一般的な決済手段です。Association for Financial Professionals (AFP) が 2020 年に実施した電子決済調査では、回答した事業者の 68% が B2B 決済の大部分で小切手を使用していると回答しています。小切手は証跡となる物理的文書ですが、本質的に不渡りなどのリスクが伴います。また、手動での処理など、作業や操作に余分な時間がかかるため、遅延が生じる可能性があります。
クレジットカード
クレジットカードは即時取引を行える便利な決済手段ですが、通常は中小規模の支払いに限定されます。利便性が高い一方でコストがかかり、多くの場合、事業者が手数料を支払うことになります。発行会社が信用限度額を設けている上、多くの場合、クレジットカード支払いの受け入れには取引総額に対して一定割合の手数料がかかるため、大規模な取引にクレジットカードが使われることはあまりありません。
ピアツーピアプラットフォーム
PayPal や Venmo for Business のような仲介プラットフォームを利用することで、国内外の決済を簡単に行うことができます。このプラットフォームを利用すると、顧客と事業者が銀行口座情報を伝えることなく簡単に取引を行うことができます。手数料は、通貨や送金国などの複数の要素に応じて異なる場合があります。これらのプラットフォームの多くは、在庫追跡やインボイス発行機能など、中小企業にとって魅力的な機能も備えています。
B2B 決済処理の仕組み
請求時: 売り手は、商品・サービスの提供後、コスト、数量、支払い条件を明記した請求書を発行します。依然として紙ベースの請求プロセスが一般的ですが、多くの事業者が電子請求システムへの移行を進めています。電子請求システムは顧客の会計管理ソフトウェアと連携し、支払いの追跡やスピードアップを簡単に実現できます。
承認プロセス: B2B の決済では承認が多段階にわたることが多く、財務部門と調達部門といった複数部門が承認を行うのが一般的です。自動決済プラットフォームを利用すると、承認ワークフローをスピードアップできるだけではなく、組織の内部規則の順守を確保できます。
決済手段の選択: 複数の決済手段を利用できます。小切手や銀行振込などの従来の決済手段から、デジタルウォレットなどの新しいプラットフォームまで、多様な方法が用意されています。高額の決済では ACH や電信送金の利用が一般的です。これらの決済手段は手数料が安く、セキュリティ対策が強化されているためです。複数の通貨が関係する取引の場合は、SWIFT などの国際送金手段が最適です。
データ保護: 決済プロセスでは、金融データと取引データを保護することが重要です。暗号化や 2 段階認証などの標準的な安全管理措置を実施することで、データ侵害や不正行為のリスクを軽減できます。
消し込み: 決済の承認後、支払いの送り手と受け手はそれぞれの財務記録で取引を確認する必要があります。自動システムを利用すると、取引とインボイスを照合し、ほぼ即座に会計記録を更新することができます。
規制順守: 法令と業界規制は、必ず守らなければなりません。これに関する例外はありません。マネーロンダリング防止 (AML) 規制から顧客確認 (KYC) プロトコルまで、どの事業者も法的な影響を避けるためにこれらの規則を把握して順守しなければなりません。
B2B の決済プロセスは複数の段階で構成されており、各段階には固有の複雑さと考慮事項があります。それらのプロセスをシンプルにするため、自動化とテクノロジーの果たす役割が高まっています。
B2B 決済処理のベストプラクティス
理想的な B2B 決済プロセスは、単なる送金以上のものをビジネスにもたらします。B2B 決済プロセスは業務、プラットフォーム、パートナーシップが複雑に絡み合っており、正しく実行することで、収支状況にプラスの影響をもたらします。ここでは、B2B 事業者が決済戦略の策定時に考慮すべきベストプラクティスについて概要をご説明します。
請求書をデジタル化する: デジタル請求書への切り替えには、いくつかの利点があります。たとえば、最新の会計システムでは、他のビジネス領域から必要なデータフィールドを取得して請求書を生成できます。これにより、手動での入力ミスを最小限に抑え、請求処理のスピードを上げ、請求書の正確性と最新性が保証されます。さらに、デジタル化によって請求処理を大規模な自動ワークフローに簡単に組み込めるようになります。支払い遅延の通知、フォローアップの開始が可能になり、在庫管理システムと連携させると、納入不能の商品が顧客やクライアントに請求されないようにすることができます。
承認ワークフローの透明性を確保する: 複雑な B2B 取引では、多くの場合、組織内とクライアント側で必要な承認段階が増加します。役割ベースの自動化プラットフォームを利用することで、各種の承認責任を従業員個人に割り当てられます。全員が承認プロセスにおける自身の役割を認識していることで、取引がよりスムーズに進みます。そのように透明性を確保することで、ボトルネックを速やかに識別でき、取引を停滞させている原因を簡単に特定できます。このデータを用いるとプロセスの改善が容易になり、取引のそれぞれを改善に活用することができます。
複数の支払い方法に柔軟に対応する: 多様な決済手段を利用できるようにすることで、財務を強化しながら顧客サービスを向上させることができます。どの支払い方法にもそれぞれメリットがあり、デメリットが潜んでいます。たとえば、電信送金は信頼性の高さから大規模な取引で使われることが多いものの、手数料がかかるのみならず、他の決済手段よりも処理に時間がかかります。クレジットカードは、処理手数料がかかる (さらに、不正利用のリスクがある) というデメリットはありますが、取引は即座に処理されます。デジタルウォレットは取引がスピーディーに処理され、手数料が比較的安価であるものの、クレジットカード取引ほど普及していません。多様な支払い方法を利用できるようにすることで、顧客のニーズを満たすことができます。
法令遵守を重視する: デジタル取引やデータ保護に関する規制をはじめ、規制は随時変化するため、最新の規制に対応し続けることには困難が伴います。法令遵守を面倒に感じることがあるかもしれませんが、法律面の問題を回避するには法令遵守が重要であり、法令遵守を確保することで事業の信頼性が高まります。ただし、最新の決済プラットフォームの多くは法令遵守機能を備えています。この機能は法改正に合わせて自動的に更新され、最小限の手間で法令遵守を確保できます。
高度な不正防止機能を導入する: デジタル取引では不正利用のリスクが常に付きまといます。また、取引のセキュリティを確保するには、基本的な認証手段だけでは不十分です。顧客が知っていること (パスワードなど)、所有物 (電話機など)、顧客を特定できること (指紋など) を用いる多要素認証を導入することで、情報への不正アクセス対策を強化することができます。また、高度な AI アルゴリズムを用いることでリアルタイムに取引を監視でき、異常なパターンや不審な行動を発見して識別し、取引承認前に確認を求めることが可能になります。
B2B 決済処理における Stripe の活用方法
Stripe を利用すれば、B2B 決済に伴う複雑さを解消できます。通常の請求から継続請求まで、Stripe を利用することで決済プロセスの数多くのステップを自動化できます。自動化によって手作業が減り、ミス発生のリスクが低下するため、複雑な B2B 取引への対応に時間を取られずに済み、重要性の高い業務に注力できるようになります。
柔軟なアプリケーションプログラミングインターフェイス (API): Stripe API は柔軟性が高く、これを利用することで、決済ソリューションをカスタマイズすることができます。適応能力に優れるため、決済に関する固有の要件が発生しても簡単に対応できます。
複数の決済手段: 事業者は Stripe を通じて多種多様な支払い方法を受け入れられるようになります。たとえば、クレジットカードや、Apple Pay や Google Pay などのデジタルウォレット、銀行振込などを選択できます。このように Stripe は多種多様な決済手段に対応しているため、B2B 決済の幅広いニーズを満たすことができます。
複数通貨への対応: Stripe は複数の通貨での取引に対応しているため、国際取引を簡単に行うことができます。通貨換算を別途行う必要がなくなります。
請求書作成業務の自動化: Stripe では請求書作成プロセスが自動化されています。継続請求の自動処理が可能なため、時間を節約し、管理業務を減らすことができます。これは長期契約を伴う取引で特に有効です。
セキュリティプロトコル: Stripe では暗号化などのテクノロジーを使用して取引中のデータを保護しています。これにより、オンライン決済に伴うリスクを最小化しています。
サブスクリプション請求: Stripe は、継続取引 を扱う事業者向けに、サブスクリプション請求サービスを提供しています。請求サイクルの処理を自動化できるため、B2B 関係の管理が楽になります。
決済用の URL リンク: 決済用の URL リンクが生成されるため、すばやく簡単に取引を実行できます。事業者がこのリンクをパートナーに送信すると、パートナーはリンクをクリックして支払うことができます。
Radar (不正利用対策ツール): Stripe の Radar は機械学習を用いて不審な行動を検出します。これにより、セキュリティ上の懸念に煩わされることなく自社の業務に注力できます。
会計処理の連携: Stripe は QuickBooks などの会計管理ソフトウェアと連携できるため、支払いの消し込みや財務記録の更新を簡単に処理できます。
レポート作成機能と分析: Stripe は詳細な取引レポートを提供しており、データ主導の意思決定を実現できます。
金融サービス: Stripe Capital は、大規模プロジェクトやその他の支出のために追加資本を必要としている事業者向けの融資オプションです。
Stripe が作成した B2B 決済システム向けにカスタマイズされた柔軟で簡単に導入できるソリューションの詳細については、こちら.をご覧ください。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。