ペイメントゲートウェイ市場で、E コマースビジネスとオンライン取引が世界的に増加しているのは明らかです。2023 年の 320 億ドルから 2024 年には 370 億ドル以上に拡大することが予測され、その年平均成長率は 17% です。世界のペイメントゲートウェイ市場は、企業にとってますます重要になっているのです。カスタムペイメントゲートウェイを構築すると、サードパーティーのゲートウェイを使用するよりも、決済プロセスと顧客体験がコントロールしやすくなります。しかし、それには多額の先行投資が必要です。
以下では、ペイメントゲートウェイの構築にかかる費用、自社開発や委託開発のメリット、セキュリティや法令遵守に関する重要な考慮事項をご紹介します。
この記事の内容
- ペイメントゲートウェイとは
- ペイメントゲートウェイプロセスの概要
- ペイメントゲートウェイの主要コンポーネントと機能
- ペイメントゲートウェイの構築に関連するコスト
- ペイメントゲートウェイの自社開発と委託開発の違い
- ペイメントゲートウェイ開発におけるセキュリティと法令遵守
- 長期メンテナンスとサポートのコスト
ペイメントゲートウェイとは
ペイメントゲートウェイは、デビットカードやクレジットカードでの決済を受け付ける企業向けテクノロジーで、企業のウェブサイトとそのアクワイアラーの仲介役として機能し、支払い情報を安全かつ容易に転送できるようにします。顧客がウェブサイトに支払いの詳細を入力すると、ペイメントゲートウェイはそのデータを暗号化し、決済代行業者に連絡します。決済代行業者はカードネットワークやカード発行会社と連携し、顧客の利用可能資金や口座状況に基づいて取引を承認または拒否します。最後に、ペイメントゲートウェイは取引ステータスを企業のウェブサイトに送り返して、決済プロセスを完了します。
ペイメントゲートウェイプロセスの概要
ここでは、ペイメントゲートウェイプロセスが支払い情報をどのように送信するかについて概要を示します。
取引の開始: 顧客は取引を開始します。多くの場合、ショッピングカートに商品を追加し、購入に進みます。
オンライン決済: 支払いの準備ができた顧客は、企業のウェブサイトの決済インターフェイスに支払いの詳細を入力します。
リクエストの転送: ペイメントゲートウェイは、企業のウェブサイトと、決済代行業者または銀行の間の仲介役として、支払いを承認し処理します。その後、この支払い情報を暗号化し、決済代行業者またはアクワイアリング銀行に転送します。
支払いのオーソリ: 決済代行業者は、顧客のクレジットカードまたはデビットカードに関連付けられているカードネットワーク (Visa や Mastercard など) に支払いリクエストを転送します。リクエストを受け取ったネットワークは、その取引を承認できるかどうかをカード発行会社に確認します。承認の可否は、利用可能資金、口座状況、カードの有効性に基づいて判断されます。
支払い結果: カード発行会社は、回答 (承認または拒否) を、カードネットワークを通じて決済処理業者に送信し、その後、ペイメントゲートウェイに送信します。
企業に通知: 回答を受け取ったペイメントゲートウェイは、その回答を企業のウェブサイトに送信します。取引が承認された場合、企業はサービスを完了するか、商品を発送します。
売上処理: 取引承認後、売上はカード発行会社から企業の銀行口座に送金されます。このプロセスは売上処理と呼ばれます。これは通常、数日以内に行われます。
このインフラストラクチャーにより、決済データの送信が迅速かつ正確に行われ、企業と顧客にスムーズな取引体験が提供されます。このプロセスは通常、わずか数秒で完了します。
ペイメントゲートウェイの主要コンポーネントと機能
セキュリティ機能
暗号化: 暗号化は、買い手、企業、銀行間のデータ転送を保護し、クレジットカード番号などの機密情報を不正アクセスから守ります。
トークン化: トークン化とは、機密データを一意の識別記号 (トークン) に置き換えることで、セキュリティを損なうことなく必要なすべての情報を保持することです。これにより、データ侵害のリスクを軽減できます。
不正利用の検知と防止: ペイメントゲートウェイでは、不正行為を検知・防止するためのさまざまなツールや技術、たとえば、異常な取引パターンの監視、顧客の身元確認、CAPTCHA や 2 段階認証といったセキュリティ対策などが採用されています。
承認: ゲートウェイは、各取引についてカード発行会社またはカードネットワークに確認し、顧客に十分な資金があり、支払い情報が正しいことを確かめます。このステップによって、取引を続行すべきかどうかが決まります。
PCI DSS 準拠: ペイメントゲートウェイは、カード保有者情報の取り扱いの安全性を確保するために、PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) に準拠する必要があります。
機能性
API 組み込み: ペイメントゲートウェイには、さまざまな E コマースプラットフォームと容易に連携できるようにアプリケーションプログラミングインターフェイス (API) が用意されているため、企業は自社のウェブサイトのデザインやユーザー体験に合わせて決済プロセスをカスタマイズすることができます。
複数の支払い方法: ペイメントゲートウェイは通常、クレジットカード、デビットカード、銀行振込、デジタルウォレットなど、さまざまな支払い方法に対応しています。
レポート機能と分析: 高度なレポート機能と分析機能により、企業による取引の追跡、支払いパターンの把握、情報に基づくビジネス上の意思決定が可能になります。
顧客サポート: 信頼できる顧客サポートは、企業や顧客が決済プロセス中に直面する可能性のあるあらゆる問題に対処できるように支援します。
ペイメントゲートウェイの構築に関連するコスト
企業向けペイメントゲートウェイを構築するときに発生するコストは、必要な機能に応じて異なります。ペイメントゲートウェイの実用最小限の製品を開発するには、通常 15 万ドルから 25 万ドルがかかります。このコストは、開発チームの規模や専門知識、選択したテクノロジースタック、セキュリティや法令遵守対策、カスタマイズ、メンテナンス、サポートに対するビジネスニーズなどに左右されます。ここでは、ペイメントゲートウェイの開発に関連する主なフェーズと機能について詳しく説明します。
研究開発: 初期の研究開発により、企業は決済処理における市場の要件、規制基準、最新テクノロジーを把握することができます。このフェーズには、市場分析、実現可能性の調査、技術調査に関連するコストが含まれます。
法令遵守とセキュリティ: PCI DSS などの業界標準に準拠するには厳格な評価、監査、認定が必要であり、大きなコストが生じる場合があります。暗号化、トークン化、不正検知システムなどの高度なセキュリティ対策を導入する場合も、多額の投資が必要です。
ソフトウェア開発: ペイメントゲートウェイの中核となる開発では、ソフトウェアの設計、コーディング、テストを行う必要があるほか、連携用 API や、企業と顧客両方のユーザーインターフェイスも作成しなければなりません。このプロセスでは、熟練した開発者チームを雇用する必要があります。
ハードウェアとインフラストラクチャー: ペイメントゲートウェイを構築するには、取引を処理するためのサーバー、データセンター、安全なネットワークなど、信頼性が高く拡張可能な IT インフラストラクチャーが必要です。インフラストラクチャーは、ピーク時の負荷を管理し、稼働時間を確保するために拡張できなければなりません。
銀行や決済ネットワークとの連携: ペイメントゲートウェイは、銀行、クレジットカードネットワーク、その他の金融機関と連結できる必要があります。それには交渉、パートナーシップ契約、技術的な連携が必要で、コストも時間もかかります。
テストと品質保証: ペイメントゲートウェイの信頼性、安全性、効率性は、厳格なテストによって保証されます。これには機能テスト、セキュリティテスト、パフォーマンステストなどが含まれ、そのすべてにコストがかかります。
マーケティングと営業: ビジネスクライアントを惹きつけるには、宣伝材料、営業チーム、決済環境におけるパートナーシップや提携など、効果的なマーケティングおよび営業戦略が必要です。
顧客サポート: ペイメントゲートウェイは、24 時間 365 日の顧客サポートを提供し、企業や顧客が直面する可能性のあるあらゆる問題に対処する必要があります。そのためには、サポートチームを作り、トレーニングを行い、カスタマーサービスツールやテクノロジーを導入する必要があります。
継続的なメンテナンスと更新: 監視、更新、メンテナンスを継続的に実施することで、ゲートウェイの安全性と法令遵守を維持し、進化する業界標準と顧客の期待に沿うようにします。
法務と管理業務: 契約、法令遵守への対応、事業運営の管理など、ゲートウェイ開発に必要なすべてのステップにコストがかかります。
ペイメントゲートウェイの構築は、多額の資金投資、技術的な専門知識、戦略的プランニングを必要とする大仕事です。そのコストを回避するために、既存のペイメントゲートウェイと連携することを選ぶ企業は少なくありません。
ペイメントゲートウェイの自社開発と委託開発の違い
ペイメントゲートウェイの自社開発と委託開発を比較する場合、考慮すべき要素がいくつかあります。企業のビジネス戦略の中核をなすプロジェクトや、長期的なサポートが必要なプロジェクトの場合は、自社開発を選択する方がよいでしょう。一方、短期的なプロジェクトや、専門的なスキルを必要とするビジネスの場合は、通常、委託開発の方が適しています。
自社開発と委託開発に関する主な考慮事項を以下にまとめます。
自社開発
プロジェクトのコントロール: 自社開発では、プロジェクトを完全にコントロールできます。これにより、企業文化に沿った最終製品が仕上がり、企業データは確実に保護されます。
長期的なサポート: 委託したプロジェクトの長期サポートのレベルはさまざまです。このため、継続的なメンテナンスを必要とする、あるいは機密情報を扱うプロジェクトには自社開発が適しています。
高コスト: 自社開発は、専任チームの雇用、トレーニング、維持に費用がかかり、コストが高額になります。
拡張性の課題: プロジェクトのニーズに応じてチームを迅速に拡大することは現実的ではありません。このため、自社開発には拡張性に関する課題がつきものです。
従業員の離職率: 従業員の離職率が高いと、自社開発に支障をきたし、追加コストが発生する可能性があります。
委託開発
プロジェクトのコントロール: コミュニケーションに問題が生じたり、開発プロセスを直接コントロールできなくなったりする可能性があります。
コスト効率: 一般的に、人件費の低い地域で競争力のある価格を設定することで、コストを低く抑えることができます。
グローバルな人材プール: 多様なスキルと経歴を持つプロフェッショナルな人材に幅広くアクセスできます。
柔軟性と拡張性: プロジェクトの要件に応じてチームを容易に拡大、縮小できます。
プロジェクト完了までの時間短縮: 委託先のチームはすでに経験豊富なメンバーで構成されているため、プロジェクトの完了が早まる可能性があります。
ペイメントゲートウェイ開発におけるセキュリティと法令遵守
データの暗号化: ペイメントゲートウェイでは、送信中のデータを保護するために、セキュアソケットレイヤー (SSL) やトランスポート層セキュリティ (TLS) などの強力な暗号化プロトコルを採用する必要があります。暗号化されていれば、データが傍受されたとしても、固有の復号化キーがなければ解読できません。
トークン化: このプロセスでは、機密性の高いデータが、悪用されるおそれのないトークンと呼ばれる同等の非機密データに置き換えられます。取引プロセス中にカード情報が保存されたり送信されたりしないため、トークン化によってデータ侵害のリスクを最小限に抑えることができます。
不正利用の検知と防止: 不正利用の検知と防止システムでは、取引における疑わしいパターンの監視、ユーザー ID の検証、高度な分析などにより、不正利用の可能性を事前に特定し、軽減します。
定期的な監査と監視: ペイメントゲートウェイインフラストラクチャーのセキュリティを定期的に監査し、継続的に監視することで、脆弱性を迅速に特定し、対処することができます。たとえば、ソフトウェアの更新、既知の脆弱性へのパッチ適用、新たな脅威に関する最新情報の入手などの対策を講じます。
規制遵守: ペイメントゲートウェイは、支払いカード情報の保管、データ保護などに関する規制や基準に準拠する必要があります。たとえば、クレジットカード情報を扱う企業が義務付けられている安全な環境の確保について定めた PCI DSS、ヨーロッパにおけるデータ保護とプライバシーを規定する一般データ保護規則 (GDPR)、欧州連合内の決済サービスと決済サービスプロバイダーを規制する改訂版決済サービス指令 (PSD2) に準拠しなければなりません。
安全な認証と承認: 安全な認証メカニズム (多要素認証など) を導入することにより、ペイメントゲートウェイシステムへのアクセスが厳密にコントロール、監視されます。承認メカニズムにより、ユーザーは自分の役割に関連するデータと機能にしかアクセスできなくなります。
ネットワークのセキュリティ対策: ファイアウォール、侵入検知システム、その他のネットワークセキュリティ対策により不正アクセスを防止します。データの完全性と機密性も確保されます。
エンドツーエンドのセキュリティ: 企業のウェブサイト、ペイメントゲートウェイ、および取引の処理に使用される通信チャネルを保護することで、顧客のデバイスから銀行のシステムまで、取引全体を保護します。
顧客データの保護: 顧客データは、必要な期間のみ、安全に保存する必要があります。このデータへのアクセスは、権限を持つ担当者だけに制限する必要があります。また、データが不要になったときのために、適切なデータ破棄ポリシーを設定する必要があります。
サードパーティーのペイメントゲートウェイを利用することで、企業はこのようなセキュリティに関する考慮事項の多くから解放されます。Stripe では、データ暗号化、トークン化、不正利用の検知、PCI DSS 準拠など、セキュリティと法令遵守に関する主な問題に対応する、包括的なペイメントゲートウェイソリューションをご用意しています。このようなオプションにより、企業は、信頼性が高く、連携しやすい決済処理ソリューションを活用しながら、ビジネスの中心となる活動に注力することができます。
長期メンテナンスとサポートのコスト
社内でペイメントゲートウェイを構築するには、長期メンテナンスとサポートに大きなコストがかかります。ここでは、そのコストに影響する機能について簡単に説明します。
定期的な法令遵守の更新: PCI DSS などの進化する基準に準拠し続けるには、継続的な取り組みと投資が求められます。最新のセキュリティプロトコルや規制に従うために、システムを定期的に更新する必要があります。
インフラストラクチャーの維持: 高可用性、拡張性、セキュリティを確保するためにサーバーインフラストラクチャーを維持、アップグレードするには、多額のコストがかかります。
不正防止: 不正利用の検知メカニズムは、新たな不正利用パターンに対応するために更新・改良しなければなりません。
技術サポート: 技術サポート、問題への対処、機能強化の導入および連携のための専任チームが必要です。
スタッフのトレーニング: スタッフは最新の決済セキュリティの慣行とテクノロジーについて常に新しい情報を把握しておくために、トレーニングを継続的に受ける必要があります。
Stripe のペイメントゲートウェイを使用すれば、以下の領域における負担が大幅に軽減されます。
法令遵守と更新: Stripe は、決済業界の標準と規制への準拠に対応します。
インフラストラクチャーの管理: Stripe は、ペイメントゲートウェイのインフラストラクチャー、たとえばメンテナンス、アップグレード、セキュリティを管理します。
不正利用の検知: Stripe には、高度な不正利用の検知機能があります。
サポート: Stripe がサポートとトラブルシューティングを提供するため、社内に大規模なサポートチームを置く必要がなくなります。
拡張性: Stripe のインフラストラクチャーは、ビジネスの成長に合わせて拡大できるように設計されています。企業が自身でこの拡大を管理する必要はありません。
社内でペイメントゲートウェイを構築し維持する場合、それは継続的な取り組みとなり、技術、スタッフ、法令遵守に投資し続けなければなりません。Stripe のペイメントゲートウェイのようなソリューションを使用すれば、コスト効果と拡張性が高まり、メンテナンスに手間がかからなくなるため、ビジネスの中核的な業務に注力できます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。