支払い条件は契約書や請求書に記載されており、買い手に期待される購入代金の支払い期日が定められています。「30 日支払い条件」では、買い手は請求書の日付から 30 日以内に売り手に支払う必要があります。契約によっては、これらの条件は「NET 30」と表現される場合もあれば、「商品の受領から 30 日」や「月末から 30 日後」などのバリエーションが含まれる場合もあります。
以下では、30 日支払い条件がキャッシュフローに与える影響、これらの条件を適用する方法、およびクライアントに請求書を発行する際に考慮すべき代替案について説明します。
この記事の内容
- 30 日支払い条件が一般的である理由
- 30 日支払い条件がキャッシュフローに与える影響
- 30 日支払い条件をオファーすべきケース
- 30 日支払い条件を適用する方法
- 30 日支払い条件以外の代替案
30 日支払い条件が一般的である理由
昨今、30 日支払い条件が多くの業界で標準になっています。部門が異なっても期待事項に一貫性が生まれ、商取引における買い手と売り手の金融ニーズのバランスが保たれる、という特徴があります。30 日支払い条件が人気である理由は、以下のとおりです。
支払いを行う前に、収益を生み出したり、自社のキャッシュインフローを管理したりする猶予ができます。
誠意を示し、長期的な関係を築くことができます。
買い手は納品時にすぐに支払う必要がないため安心し、リピーターとなる可能性が高まります。
会計システムや (多くの場合、月次サイクルで設計されている) 規格とよく一致します。
短めの条件 (7 日条件、15 日条件など) よりもストレスが少なく、支払いが遅れる可能性が低くなります。
長めの条件 (60 日条件、90日条件など) よりもリスクが低くなります。
30 日支払い条件がキャッシュフローに与える影響
買い手と売り手にとって、30 日支払い条件はキャッシュフローにさまざまな形で影響します。
売り手にとって、30 日条件は関係を構築し、売上を伸ばすのに適していますが、支払いを待つ間の費用をカバーするため、計画は慎重に立てるべきです。製品やサービスを購入してもらいやすくなりますが、支払いが遅れることもあります。つまり売り手は、その額で請求書を支払ったり、消耗品を購入したり、事業に再投資したりするのを待たなければなりません。入金より前に現金が必要となったら、資金を借り入れなければならないかもしれず、その場合は余分なコスト (利息など) がかさみます。また、顧客が期日までに支払いを行わない可能性は常にあり、売り手側の計画に影響が出るかもしれません。
買い手にとって、30 日条件は現金を管理するのに役立つクッションとなりますが、使いすぎを避けるために予算を注意深く監視する必要があります。時間と柔軟性に余裕があるため、支払い条件がより短いかもしれない他の経費を、スムーズに管理し返済することができます。しかし買い手が、実際よりも手元に資金があると錯覚してしまう可能性があります。ほぼ同時に多くの支払い期日が重なると、30 日条件によりストレスが引き起こされ、買い手の手元資金が枯渇する可能性があります。
30 日支払い条件をオファーすべきケース
30 日支払い条件は、業務、財務、顧客関係の側面において、理にかなっている場合にオファーすべきです。顧客をよく知らない場合や、顧客の信用力が疑わしい場合、30 日条件は高リスクかもしれません。同様に、自社宛ての請求書の支払いに苦労している場合は、どうしても必要でない限り、支払い条件を延ばしたくはないでしょう。
ここでは、30 日支払い条件が適している状況をいくつか紹介します。
クライアントと関係を構築する: クライアントや顧客と継続的な関係を築いており、期限内に支払いをしてくれると信頼できる場合は、30 日条件でそのパートナーシップを強化できます。
競争力を維持する: 卸売業、製造業、企業間 (B2B) サービス、といった多くの業種は 30 日支払いサイクルで運営されています。競合他社が 30 日条件を提示している場合、それよりも早く支払いを要求すると、取引機会を失う可能性があります。
大口クライアントをつかむ: 大口クライアントは、標準の購入契約の一部として 30 日支払い条件を求める可能性があり、取引を確保するには同条件が必須となる場合があります。
新規事業や小口客に柔軟に対応する: 中小企業や新興企業は、多くの場合、予算を管理するのに時間を要しています。30 日条件を提示すると、取引しやすい会社だと思ってもらえます。
売上を伸ばす: 30 日間の支払い猶予を与えることで、買い手はより安心して大口注文を行う可能性があります。
新規顧客を獲得する: 支払いオプションが柔軟であると、特に新規顧客を獲得しようとしている場合には、セールスポイントになる可能性があります。30 日条件は、新製品の発売や新規市場への進出など、戦略的に使用可能です。
30 日支払い条件を適用する方法
30 日支払い条件を適用するには、顧客データを使用し、明確なコミュニケーションとリマインダーを組み込み、クライアントに対して説明責任を果たす文化を構築する必要があります。ここでは、適用に関するヒントをいくつか紹介します。
支払い条件を前もって設定する
請求書を送付するよりも前に、支払い条件について話し合ってください。取引を成立させるとき、または契約に署名するときに、前もって期日を設定します。例外を設ける正当な理由がない限り、条件は交渉の余地がないものとして扱います。
迅速な支払いを奨励する
ルールに従った顧客には、割引、迅速な配送、サービスへの独占的なアクセスなどの特典を提供します。早期に支払うクライアントには、割引 (10 日以内に支払うと 2% オフなど) することを検討してください。これらのインセンティブはクライアントに合わせて特化し、高額の顧客や大量の注文に対しては、より大きな報酬を提供しましょう。
延滞させない方策をとる
クライアントが支払い遅れを繰り返す場合は、前払い、与信限度額の厳格化、延滞料など、条件がより厳しくなる可能性があることを伝えます。関係悪化は避けたいところですが、少額の手数料を設けると速く支払ってもらうことができます。また、クライアントが支払いを行うまで、出荷を一時停止したり、新規注文を差し控えたりするべきケースもあります。
戦略的にフォローアップを行う
ソフトウェアを使用して請求書を追跡します。次のような自動リマインダーを実装します。
請求書送付時のお礼
期日 1 週間前の友好的な念押し
丁寧、しかし率直な期日リマインダー
クライアントが期日に数日遅れた場合のより断固としたフォローアップ
これらのフォローアップをカスタマイズします。支払いを遅らせたことがない忠実な顧客には、穏やかなリマインダーが有効かもしれませんが、違反を繰り返す顧客には、より断固とした通知が必要になります。大口クライアントの場合は、最高財務責任者 (CFO) や営業リーダーといったシニアチームメンバーから、メールや電話で一言連絡してもらうと、フォローアップがスムーズなる可能性があります。
支払い条件をクライアントに合わせてカスタマイズする
30 日条件をオファーする前に、クライアントの履歴を確認し、信用調査を実行して、他のベンダーに期限内に支払っているかどうかを確認します。新規クライアントに対しては、短めの条件 (NET 15 など) または少額のクレジットの適用を検討します。信用度が証明されたら、条件を 30 日以上に延長します。
既存のクライアントの場合は、どのクライアントが常に遅れて支払うかに注意を払い、彼らとの取引方法を調整します。より厳しい条件や、より頻繁なリマインダーが必要になる場合があります。信頼度の低い重要クライアントがいる場合は、その慣習を回避する方法を考えてください。部分的な前払いを要求したり、大口注文の条件を短く設定したり、などです。関係を損なわずに自身を守ることを目指します。
支払いデータを追跡する
売掛金回収日数 (DSO) を監視します。これは、支払いを回収するのに平均してかかる日数です。この値が増加している場合は、プロセスの強化を検討してください。請求書に誤りがないか再確認し、理解しやすいものにしましょう。何かが誤記があったり、不足していたりすると (期日、品目別の料金、支払い指示など)、クライアントに支払い遅れの口実を与える可能性があります。タイミングを変えて上手くいくかどうか見てみます。一部のクライアントは、月初めまたは給料日の直前に請求書を受け取ると、より迅速に対応します。
積極的な強化を用いる
フォローアップの際には、提供した価値をそれとなく伝えます。たとえば、「ご注文の商品を予定前にお届けできて幸いです。タイムリーなお支払いのおかげで、引き続きより良いサービスを提供することができます」と伝える、などです。プロフェッショナルなトーンを維持しながら、支払い条件を守ることが重要である理由が強調されています。
バックアップ計画を立てる
クライアントがいつも延滞する場合は、ファクタリング会社に請求書を売却することを検討してください。請求額のほとんどを前払いで受け取り、ファクタリング会社が回収を処理します。より大きなリスクについては、クライアントが完全に債務不履行に陥った場合に身を守るため、取引信用保険を検討しても良いでしょう。
30 日支払い条件以外の代替案
30 日支払い条件が一般的ですが、貴社や顧客のニーズに合った手段は他にも多くあります。どの条件を選ぶのが適切であるかは、顧客の信頼度や業界の性質などの要因によって異なります。その他の標準的なオプションをいくつか紹介します。
領収書での支払い
請求書が発行され次第、または商品・サービスが納品され次第、支払ってもらいます。これは、新規顧客との小規模な 1 回限りの取引、または資金が限られていてすぐに資金が必要な場合に適したオプションです。しかし、柔軟性を期待する大口顧客には不快と受け取られるかもしれません。
前払いまた前渡し金
一部または全額の支払いを、業務開始前または商品納品前に行ってもらいます。低リスクなオプションであり、事業を始める前の運転資金を得られます。前もってコストが発生する高額プロジェクトやカスタムプロジェクト、または支払い延滞歴のあるクライアントと仕事をする場合に適しています。しかし、特に前払いが珍しい業界では、取引が頓挫する可能性があります。
NET 7 または NET 15
請求書の日付の 7 日後または 15 日後が支払い期日となります。これは、キャッシュフローが厳しい中小企業やスタートアップ、またはより迅速な支払いサイクルが標準である業界 (フリーランスの仕事、コンサルティングなど) に適したオプションです。しかし、長めの条件に慣れている顧客に対しては難しいかもしれません。
NET 45 または NET 60
請求書の日付の 45 日後または 60 日後が支払い期日となります。これは、長めの条件を必要とする大企業と取引する場場合に適したオプションです。また、短めの条件で一貫して支払いが遅れるクライアントにも適しています。より長いサイクルを形式化して、期待事項を一致させるのに役立つ可能性があるからです。大口クライアントに対応するには良い方法ですが、キャッシュフローに負担がかかるかもしれません。
マイルストーンベースの支払い
特定のプロジェクトのマイルストーンに関連付けられた分割払いで支払ってもらいます (例: 前払い 30%、中間点で 40%、完了時に 30%)。長期または高コストのプロジェクトで、最後に全額の支払いを待つのが現実的ではない場合や、支払いを進捗に結び付けることでリスクを軽減したい場合に適したオプションです。買い手と売り手のリスクのバランスを取るのに役立ちますが、請求と追跡の回数が増えます。
リテイナー契約
時間やサービスを予約するために、前もって一定額を支払ってもらいます。これは、コンサルティング、法務、クリエイティブな仕事などの継続的なサービスや、毎月予測可能な収入が必要な場合に適したオプションです。また、頻繁に請求しなくて済むようになります。
サブスクリプションモデルまたはプリペイドモデル
一定期間 (毎月、四半期ごと、毎年など) の商品またはサービスへのアクセスに対して、前払いしてもらいます。これは、サービスとしてのソフトウェア (SaaS)、メンテナンス、メンバーシップなどの定期的なサービスを提供するビジネスや、予測可能な収入が優先される場合に適したオプションです。予測可能な収益源となりますが、連絡や説明を明確に行い、継続的な請求に関する誤解を避けることが必要です。
従量課金制
支払いは、現金払いモデルと同様に、各取引の直前または直後に行われます。これは、小口購入、長めの条件を必要としないクライアント、またはマージンが薄く支払いを待つことができない場合に適したオプションです。支払い延滞のリスクがなくなり、資金に即座にアクセスできるようになりますが、顧客ベースが制限される可能性があります。
動的支払い条件
支払い条件を、クライアントの支払い歴や注文サイズによって変えます。たとえば、信頼できる顧客には NET 60 を適用し、新規または一貫性のない顧客には NET 15 を適用する、などです。これは、特定の顧客に報酬を与えたり、大口クライアントに柔軟に対応したりする場合に適したオプションです。このようなカスタマイズは、重要クライアントとの関係を強化することができますが、請求が複雑になり、慎重な管理が必要となります。
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