支払い条件とは、商品やサービスの支払いをいつ、どのように行うかについて、購入者と売り手の間で合意される条件です。これらの条件で、両当事者への期待事項が規定され、タイミングや決済手段、早期支払いの割引の可能性、支払い延滞の罰則などの詳細が決められます。未払いの請求書は、世界中の企業にとって悩みの種です。たとえば、イギリスの中小企業は、支払い延滞により 2023 年に推定 16 億ポンドの損失を被っています。支払い条件を厳しくすると、請求書の未払いを防ぐのに役立ちます。
以下では、標準的な支払い条件の内容、クライアントの支払い条件を選びカスタマイズする方法、クライアントと支払い条件について話し合う方法について説明します。
この記事の内容
- よくある支払い条件とその意味
- 貴社とクライアントの都合に合う支払い条件を選ぶ方法
- クライアントやプロジェクトごとに支払い条件をカスタマイズすべきか
- クライアントと支払い条件を話し合う方法と合意できない場合の対処法
よくある支払い条件とその意味
一般的な支払い条件とそれぞれの意味は次のとおりです。
NET 30、NET 45、NET 60: 請求書の日付から起算して、指定の日数後が支払い期日となります。たとえば、「NET 30」は、顧客が請求書を受け取ってから 30 日以内に支払う必要があることを意味します。
2/10 NET 30: 請求書を受け取ってから 30 日以内に支払います。10 日以内に支払うと、2% の割引が適用されます。
即時払い: 請求書を受け取り次第、支払います。
代金引換 (COD): 支払いは、商品またはサービスの納品時に行います。これは、多くの場合、サービスではなく物理的な商品に適用されます。
月末 (EOM): 支払い期日は、請求書の日付に関係なく、請求書が発行された月の月末です。
15 MFI (請求書の翌月): 支払い期日は、請求書発行月の翌月 15 日です。たとえば、4 月 20 日付けの請求書の期日は 5 月 15 日になります。
前払いまた前渡し金: 支払いの一部または全部が前払いです。これは、特にカスタムアイテムや高額アイテムの場合、サービスや注文の開始前に求められることがよくあります。
50% 前払い、50% 納品時: 支払いは段階的に分割され、50% は作業開始前、50% は納品時に支払われます。これは、大型または複雑なプロジェクトでよく使用されます。
NET 月次アカウント: 支払い期限は請求書発行日の翌月末です。たとえば、3 月 23 日付けの請求書の期日は 4 月 30 日になります。
与信枠決済: 支払いは、事前に取り決められた与信契約書に従って行われ、合意された条件の下で請求書を長期間にわたり支払うことができます。
貴社とクライアントの都合に合う支払い条件を選ぶ方法
適切な支払い条件を選択するには、ビジネスのニーズとクライアントの支払い体験のバランスを取る必要があります。双方にとって都合が良い条件を設定します。
キャッシュフローのニーズから始める: 貴社事業を円滑に進めるには、いつまでに入金が必要であるかを把握します。キャッシュフローが逼迫している場合は、NET 15 などの短めの条件が理想的です。しかし、より余裕がある場合は、特にクライアントのスケジュールに合わせるならば、NET 30 または NET 60 にするのがよいかもしれません。
クライアントの支払いリズムを知る: 大企業は請求サイクルが決まっていることが多く、NET 60 や NET 90 など、長めの条件を好む場合があります。一方、小規模事業者は、短めの条件の方がうまくいく可能性がありますが、資金が限られている場合は柔軟さも必要になるかもしれません。
早期支払い割引を提供する: 2/10 NET 30 (10 日以内に支払った場合は 2% 割引) などの早期支払いの割引を提供すると、迅速に支払ってもらえます。導入する前に、早期支払いにより十分な利益がもたらされ価値があることを確認してください。
大型プロジェクトを分割払いにする: 大型プロジェクトの場合は、分割払いにします (たとえば、「50% を前払い、25% を途中払い、25% 納品時」など)。これにより、プロジェクト全体でキャッシュフローが維持され、最終的に多額の未払い請求書が発生するリスクを最小限に抑えられます。
クライアントと話し合い、柔軟に対応する: 最終決定する前に、条件について率直に話し合います。クライアントのサイクルに合わせて条件を調整することで、関係を強化し、ロイヤルティを構築することができます。クライアントが NET 60 を希望し、あなたが NET 30 を好む場合は、NET 45 が妥当な中間点であろうと検討します。
念のため延滞料を設定する: 延滞料 (例: 月額 1 %〜 2 %) を設定すると、タイムリーな支払いが促されます。延滞料は、クライアントを驚かせないように、必ず前もって伝えてください。
業界標準を考慮する: 各業界に独自の基準があります。たとえば、建設業では長めの条件が多くみられます。一方、小売業は短めの条件で、代金引換が行われる場合もあります。業界標準に合わせることで、クライアント側で調整してもらいやすくなります。
関係性に基づいて条件を調整する: 条件を寛大にしておくと、支払い歴が良好なクライアントのロイヤルティを得られるでしょう。リスクの高いクライアントに対しては、信頼関係を築くまでは、部分的な前払いや期限の短縮など、条件を厳しくするのが良いと思われます。
クライアントやプロジェクトごとに支払い条件をカスタマイズすべきか
条件をカスタマイズすると、クライアント側で支払いを管理しやすくなり、期限内に支払いを受け取れる可能性が高くなるため、ビジネス状況が複雑になりすぎないのであれば、検討に値します。ここでは、最適なタイミングと、シンプルに保つ方法をご紹介します。
クライアントの決済手段に条件を一致させる: 大企業は請求スケジュールが決まっていて、60 日や 90 日など長めの条件を好むかもしれませんが、中小企業は 15 日や 30 日など短めの条件を好むことがよくあります。クライアントの決済習慣に合った条件を設定すると、予測しやすくなるため、期日どおりに支払ってもらいやすくなります。
プロジェクトの範囲を考慮する: 大型プロジェクトの場合に、段階的な分割払いにすると、作業中に現金が入ってくるため、最後に一括払いを待つ必要がなくなります。
柔軟性と一貫性のバランスを取る: 可能な限り柔軟に対応しますが、システムはシンプルにしましょう。クライアントが定期的に期限を延ばしたがる場合は、双方に合ったカスタムプランを作成しても良いでしょう。バリエーションが多すぎると煩雑になりますので、大半のケースをカバーするオプションにしておくと分かりやすいです。
新規顧客向けにセーフティネットを構築する: 初めて取引する顧客には、短めの条件にするか、前払いをお願いすると良いかもしれません。信頼関係を築けたら、相手のニーズに合わせて条件の調整を検討しましょう。
断るタイミングを知る: 条件をカスタマイズしても、事業に負担がかかり過ぎる場合は、価値がないともいえます。標準的な条件のままにしても良いですし、顧客の要求にリスクを感じたら交渉しても問題はありません。
クライアントと支払い条件を話し合う方法と合意できない場合の対処法
支払い条件についての話し合いを上手く運ぶには、率直であること、そしてアプローチに自信を持つことです。ほとんどのクライアントは、予測が立つことを高く評価しますし、反発を受けたら、貴社の都合に合う範囲で、柔軟な姿勢を見せたり妥協点を提案したりすると良いでしょう。
ここでは、支払い条件を自然に提示し、反発に対処する方法をご紹介します。
謝罪ではなく、明確さから始める
支払い条件を持ち出すときは、謝罪したり、交渉可能であるかのように振る舞ったりするのではなく、率直に述べてください。これらの条件が適正であり予期される内容であると、クライアントに認識してもらえます。
- 例: 「念のため申し上げますと、当社の標準条件は NET 30 です。つまり、支払い期日は請求書の日付から 30 日後です。」
条件の背景にある「理由」を説明する
クライアントから条件に疑問を持たれた場合は、シンプルに答えます。ほとんどのクライアントは、迅速な支払いがプロジェクトの進行とコストの抑制に役立つことを理解しています。
- 例: 「キャッシュフローを安定させ、優れたサービスの提供に集中できるようにするため、これらの条件を採用しています。」
オプションをオファーする
クライアントが柔軟性を求めていると感じた場合は、それをデフォルトにはせずに、先にオプションを述べます。彼らと協力することに前向きな姿勢を見せながらも、無理はしないことです。
- 例: 「大型プロジェクトでは、支払いを段階に分けており、前払いで 50%、最後に 50% など、すべてがスムーズに流れるようにしています。」
反発には自信を持って対処する
クライアントが反発してきたら、自由回答形式の質問をして、その理由を理解しましょう。彼らの答えから、少し調整すれば上手くいくのか、対応できない (またはすべきではない) 条件を求めているのかを、知るのに役立ちます。
- 例: 「貴社の普段の支払いプロセスについて詳しく教えてください」
妥協点を見つけるが自身のことは自分で守る
条件を長くするよう求められた場合は、部分的な前金など、妥協案に落としどころがあるかどうかを検討しましょう。彼らの提案にある程度合わせても良いが、すべてのリスクは負うつもりはない、という姿勢を示すことです。
- 例: 「タイムラインを 45 日間に延長できますが、始めるには 20% の前払いが必要です。」
固守すべきタイミングを見極める
要求が適切でないと感じた場合、特に新規クライアントやより高額な請求書の場合は、ノーと言っても問題ありません。
- 例: 「すべてを順調に進めるためには、これらの条件を守る必要があります。一緒に見直して、取りまとめられるかどうか見てみましょう」
すべてを文章にする
契約書上または請求書上で、合意した内容をすべて文書化してください。後の混乱を回避できますし、貴社とクライアントが参照できる拠り所になります。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。