事業者は新規顧客の獲得に多大な時間とリソースを費やしていますが、その顧客を確実に定着させることも同じく重要です。顧客がどれだけ満足しているか、そしてなぜ顧客が離れていく傾向にあるのかを評価するために、事業者が追跡および監視する主要な指標がいくつかあります。最も重要な指標の 1 つは解約率です。
以下では、解約率とは何か、企業はさまざまな解約率をどのように使い分けているのか、そして解約率を改善するにはどうすればよいのかということについて説明します。カスタマージャーニーにおける弱点を特定するためであれ、特定の顧客層が離れていく理由を知るためであれ、解約率を調査することは顧客維持活動を強化するための重要なステップです。
この記事の内容
- 解約率の概要
- 解約の種類
- 解約率が示していること
- 解約率を下げるには
解約率の概要
解約率は、一定期間内にサービスを中止した顧客、ユーザー、登録者の数を測定することで得られます。この指標は、顧客減少の指標です。通常パーセンテージで表され、電気通信から SaaS (Software-as-a-Service) まで、業界を問わず使用されています。
解約率は、特定の期間にサービスを解約した顧客数を、その期間の開始時点の総顧客数で割ることによって計算されます。次に、結果に 100 を乗じて百分率を求めます。
計算式は次のとおりです。
解約率 = (解約した顧客数 ÷ 開始時点の総顧客数) x 100
たとえば、あるサブスクリプションサービスの月初めの登録者数が 1,000 人で、月末までに 50 人の登録者が減った場合、解約率は次のようになります。
(50 ÷ 1,000) × 100 = 5% (解約率)
これは、その事業者がその月に顧客基盤の 5% を失ったことを意味します。
Recurly Research が 2021 年 1 月から 2022 年 7 月に実施した調査によると、ソフトウェア会社の月間解約率の中央値は 4.75% です。これに比べ、消費財および小売業の月間解約率の中央値は 7.55% と高くなっています。
解約の種類
事業者が調査可能な解約にはさまざまなタイプがあります。それぞれが異なるユースケースを表しており、独自のインサイトを提供します。一般的な解約のタイプをいくつか示します。
顧客の解約: これは最も単純なタイプの解約であり、特定の期間内に事業者との取引をやめた顧客の割合を表します。ストリーミングプラットフォームや SaaS 企業などのサブスクリプションベースのサービスは、多くの場合、顧客の解約に注目しています。
売上解約: これは、プランのダウングレードまたは契約の終了による既存顧客からの売上の損失を測定します。段階制料金体系を採用している企業は、多くの場合、売上解約に注意を払います。
総解約率と純解約率
- 総解約率: この指標は、失った顧客または売上のみを表し、既存顧客からの売上は無視されます。
- 純解約率: これは、既存の顧客によるアップセルまたは追加購入を考慮し、全体の損失からこれらの利益を差し引いたものです。顧客の行動をより包括的に理解したい事業者は、しばしば純解約率を利用します。
- 総解約率: この指標は、失った顧客または売上のみを表し、既存顧客からの売上は無視されます。
自発的な解約と意図しない解約
- 自発的な解約: 自発的な解約とは、顧客がサービスとの関係を終わらせることを決め、意図的にサブスクリプションをキャンセルすることです。
- 意図しない解約: 意図しない解約は、顧客によって解約が開始されたわけではなく、支払いの失敗などの要因が原因です。E コマースプラットフォームやサブスクリプションサービスでは、多くの場合、自発的な解約と意図しない解約を区別しています。
- 自発的な解約: 自発的な解約とは、顧客がサービスとの関係を終わらせることを決め、意図的にサブスクリプションをキャンセルすることです。
能動的な解約と受動的な解約
- 能動的な解約: これは自発的な解約とも呼ばれ、通常は顧客がサブスクリプションをキャンセルすることで、サービスを離脱するアクションを起こすことを指します。
- 受動的な解約: これは意図しない解約とも呼ばれ、利用していない、または支払い情報の更新に失敗したことが原因で、顧客のアカウントが無効になったことを指します。
- 能動的な解約: これは自発的な解約とも呼ばれ、通常は顧客がサブスクリプションをキャンセルすることで、サービスを離脱するアクションを起こすことを指します。
ユーザーの解約: アプリベースのビジネスやフリーミアムモデルでは、有料顧客であったかどうかに関わらず、アプリやサービスの利用を停止したユーザー数に注目するため、多くの場合、ユーザーの解約を測定します。
製品の解約: 小売や消費財などの業界では、製品の解約は、顧客の喪失ではなく、顧客が特定の製品の使用を中止することを指します。
契約型解約と非契約型解約
- 契約型解約: 契約型解約とは、顧客と事業者が特定の期間の契約を結ぶ業界において、契約を更新しないことを選択した顧客を指します。
- 非契約型解約: 小売など契約のない業界において、一定期間内に購入しなかった顧客を指します。
- 契約型解約: 契約型解約とは、顧客と事業者が特定の期間の契約を結ぶ業界において、契約を更新しないことを選択した顧客を指します。
早期解約: 顧客アカウント登録プロセスに長時間を要する一部の事業者では、早期解約 (参加後すぐに離脱する顧客を表わす) に注意を払っています。これは、オンボーディングプロセスに問題を抱えている可能性があるためです。
解約率が示していること
解約率は、顧客維持を評価し、ビジネスの健全性を判断するための貴重な指標です。これは、既存顧客を維持する方が新規顧客を獲得するよりも、多くの場合、コストがかからないという原則に基づいています。事業者が解約率から得られる主要なインサイトを以下にまとめました。
財務の健全性と持続可能性
高い解約率は、企業の財務上の持続可能性に問題があることを示している可能性があります。顧客獲得単価 (CAC) として知られる新規顧客の獲得に関連するコストは、既存顧客の離脱率が高い場合、すぐに売上を上回る可能性があります。この均衡が取れていない状態は、長期的には事業の財務上の安定性を脅かす可能性があります。顧客満足度とロイヤルティ
解約率からは、顧客満足度に関するインサイトを得ることができます。この割合が低いということは、多くの場合、顧客がサービスや製品に価値を感じていることを示しており、顧客ロイヤルティの向上につながる可能性があります。逆に、解約率が高いということは、顧客が不満を持ち、代替品を探している可能性があります。製品またはサービスの品質
解約率は、製品やサービスの品質を反映することもあります。顧客が大量に離脱している場合、サービスが期待に応えられていないか、顧客体験に満足していないことを意味する可能性があります。解約のモニタリングは、潜在的な問題の早期警告システムとなり得ます。マーケットフィット
長期間にわたって継続的に減少する解約率は、製品やサービスが市場の需要にうまく合致していることを示唆している場合があります。このデータは、ビジネスが市場に適合していること、そして対象顧客層の共感を呼んでいることを示す強力な指標となる可能性があります。業務上の弱点
支払いの失敗によって引き起こされる意図しない解約など、さまざまなタイプの解約によって、業務上の非効率性が浮き彫りになることがあります。このような指標は、多くの場合、製品の品質や市場適合性に関する問題よりも修正が容易であり、早急な対応が求められます。競争上の位置付け
解約率の上昇は、競争上の不利を示す可能性もあります。解約率を業界のベンチマークと比較することで、競合他社と比較することができます。データに基づく意思決定
解約の指標を調べることで、マーケティング戦略の改善、顧客体験の最適化、リソースのより効果的な投入など、データに基づいたビジネス上の意思決定が可能になります。たとえば、解約率が高くリスクの高いセグメントに多額の投資を行うよりも、解約率が低い顧客セグメントに焦点を当てる方が有益な可能性があります。
解約率を下げるには
顧客をできるだけ長く維持したいという願望は、すべてのビジネスの中心です。ただし、ビジネスモデルによって詳細は異なります。自社のビジネスにとって顧客維持はどのようなものですか?顧客に特定の製品を使い続けてもらいたいと考えていますか、それとも、シンプルにブランド全体を使い続けてもらいたいと考えていますか?顧客はなぜ、そしていつ離脱しているのですか?どの指標が離脱を早めていますか?また、どのようなメカニズムが解約防止に最も効果的だと思いますか?これらは、解約率分析によく使われる主要な質問の一部です。
ビジネスが解約率を低下させ、顧客のエンゲージメントロイヤルティを維持するために使える戦略はさまざまです。以下に、一般的な戦術をいくつか示します。
顧客満足度向上に取り組む
- 定期的なアンケート: 顧客アンケートを頻繁に実施して顧客満足度を測定します。これは、SaaS およびサブスクリプションベースのビジネスに特に効果的です。フィードバックは、顧客体験を向上させる実用的なインサイトにつながる可能性があります。
- リターゲティングキャンペーン: 非契約型解約が発生している E コマース事業者の場合、顧客の購入履歴に基づいたリターゲティングキャンペーンを実施することで、ユーザーをリエンゲージすることができます。
- 定期的なアンケート: 顧客アンケートを頻繁に実施して顧客満足度を測定します。これは、SaaS およびサブスクリプションベースのビジネスに特に効果的です。フィードバックは、顧客体験を向上させる実用的なインサイトにつながる可能性があります。
データを活用してリスクの高い顧客を特定する
アカウント登録プロセスを改善する
SaaS 分野の企業やフリーミアムモデルを採用しているビジネスなど、早期解約が見られる企業には、次のような戦術があります。- インタラクティブなチュートリアル: インタラクティブなアカウント登録チュートリアルは、新規顧客に製品を知ってもらうのに役立ち、顧客が不満を感じて離脱する可能性を減らします。
- アカウント登録メール: 有益なメールは、新規顧客にさまざまな機能を案内し、製品の定着率を向上させることができます。
- インタラクティブなチュートリアル: インタラクティブなアカウント登録チュートリアルは、新規顧客に製品を知ってもらうのに役立ち、顧客が不満を感じて離脱する可能性を減らします。
さまざまなタイプの解約に取り組む
- 自発的な解約と意図しない解約: 支払い情報を更新するための自動リマインダーメールを顧客に送信すると、支払いの失敗などの意図しない解約を減らすことができます。自発的な解約には、個別の対応など、より複雑な介入が必要になる場合があります。
- 売上解約: 事業者はダウングレード率を注意深くモニタリングする必要があります。多くの顧客がより安価なプランに移行している場合は、上位プランの価値提案を見直すか、新しい料金体系を導入することが有効な可能性があります。
- 自発的な解約と意図しない解約: 支払い情報を更新するための自動リマインダーメールを顧客に送信すると、支払いの失敗などの意図しない解約を減らすことができます。自発的な解約には、個別の対応など、より複雑な介入が必要になる場合があります。
顧客維持プログラムを実施する
- ロイヤルティプログラム: E コマースや小売業は、リピート購入に報いるロイヤルティプログラムの恩恵を受けることができます。
- 顧客の記念日: 長期サービスのプロバイダーにとって、顧客の記念日を祝うことは、コミュニティ意識と帰属意識を高め、解約を減らすことにつながります。
- ロイヤルティプログラム: E コマースや小売業は、リピート購入に報いるロイヤルティプログラムの恩恵を受けることができます。
顧客サービスを最適化する
- 即時サポート: 24 時間年中無休の顧客サポートを即時提供することは、特に国際的に事業を展開する企業の解約率を下げるのに役立ちます。
- 積極的なアウトリーチ: カスタマーサービスチームは、しばらくの間サービスを利用していない顧客に働きかけることができます。これは、ユーザーの解約が発生しているアプリベースのビジネスに特に有効です。
- 即時サポート: 24 時間年中無休の顧客サポートを即時提供することは、特に国際的に事業を展開する企業の解約率を下げるのに役立ちます。
出口インタビューを実施する
- フィードバックループ: サブスクリプションベースのビジネスも契約ベースのビジネスも、顧客が離脱する理由を把握するために出口インタビューを利用することができます。この情報は、社内チームが関連する改善を行うための指針となります。
- フィードバックループ: サブスクリプションベースのビジネスも契約ベースのビジネスも、顧客が離脱する理由を把握するために出口インタビューを利用することができます。この情報は、社内チームが関連する改善を行うための指針となります。
解約を減らすことは、決して画一的な取り組みでは実現できません。SaaS や E コマースから小売業やヘルスケアに至るまで、業界ごとに異なる顧客とのやり取りに関するパラダイム、収益モデル、および専門的なアプローチを必要とする製品ライフサイクルがあります。たとえば、SaaS 企業は顧客の減少を最小限に抑えるためにアカウント登録体験の強化と段階的なサブスクリプションモデルの提供に重点を置く一方、通信事業者はネットワークの信頼性と顧客サービスの応答性を優先するかもしれません。
医療サービスや金融サービスのように、顧客との関係が何年にも及び、高い信頼に基づいている業界では、解約削減の戦術は、長期的な価値の提供、コンサルティング、強固な関係の構築に重点を置くことができます。同じ業界であっても、市場リーダーと新規参入者は、それぞれのリソースや顧客基盤の特徴に基づいて、異なる戦略を採用する可能性があります。企業は、自社のビジネスモデルと顧客の期待を深く理解した上で、解約を防ぐための戦略を立てる必要があります。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。