経常収益モデルの解説: 事業者が知っておくべきこと

  1. はじめに
  2. 経常収益モデルとは
  3. 経常収益モデルの種類
  4. 経常収益モデルを利用するメリット
  5. 経常収益モデルを利用する際の課題
  6. Stripe がどのように経常収益モデルをサポートするか

経常収益モデルは、顧客が商品やサービスを利用する対価として定期的に請求されるモデルであり、かつてはニッチ分野向けでした。しかし最近では、多くの企業が経常収益モデルを導入し、収益を生み出す方法や顧客との持続する関係を構築する方法を根本的に再検討しています。経常収益モデルに移行すると、顧客生涯価値が上がり、より持続的な成長を実現できます。

経常収益モデルを導入するには、入念な計画が必要です。この記事では、経常収益の各種モデルと、そのメリットおよび課題について説明します。さらにビジネス戦略においてこの移行を検討する際、意思決定プロセスに役立つインサイトも提供します。現行の経常収益モデルに着手し始めたばかりでも、現行の経営収益モデルを改善する場合でも、事業者が知っておくべきことをご紹介します。

この記事の内容

  • 経常収益モデルとは
  • 経常収益モデルの種類
  • 経常収益モデルを利用するメリット
  • 経常収益モデルを利用する際の課題
  • Stripe が経常収益モデルをサポートする方法

経常収益モデルとは

経常収益モデルは、商品やサービスの料金を顧客に定期的かつ継続的に請求することによって、安定した予測可能な収益源を生み出すビジネスモデルです。このモデルを採用している企業は、1 回限りの取引に集中するのではなく、継続的な価値を提供することによって、持続可能な収益を継続的に生み出します。顧客は、多くの場合、サブスクリプションまたはメンバーシップを通して、定期的に支払いを行います。

ここでは、経常収益モデルの重要な側面の一部を紹介します。

  • 一貫性と予測可能性
    経常収益モデルは、企業の予測可能で安定した収入源の創出を目的とするものです。企業は定期的に (月ごと、四半期ごと、年ごとなど) 顧客に請求するため、散発的な販売や 1 回限りの販売で収益を予測するよりも高い確度で収益を予測できます。

  • 定期的な支払い
    経常収益モデルでは、商品やサービスを継続的に利用する対価として、顧客に定期的な支払いを求めます。企業は、この利用に対してさまざまな方法で請求できます。たとえば、無制限の使用量や定義済みの使用量に対する固定サブスクリプション、使用状況のメトリクスに基づく変動型の支払い (従量課金制モデルとも呼ばれます) があります。

  • 継続的な価値の実現
    モデルでは、顧客に継続支払いを納得させるために、継続的に価値を提供する必要があります。これには、ソフトウェア (サービスとしてのソフトウェア、SaaS)、デジタルコンテンツ (ニュース、音楽、映画)、物理品 (商品のサブスクリプションボックス)、あるいはサービス (ジムの会員やメンテナンス契約) の利用などがあります。

  • 顧客維持
    経常収益モデルでは、本質的に顧客獲得よりも顧客維持に重点が置かれます。収益創出は顧客との継続的な関係によって決まるため、経常収益型のビジネスは顧客の満足度の維持、解約率を低く抑え、顧客生涯価値 (CLV) を高めることに重点を置きます。

  • 自動更新
    通常、経常収益の支払いはデフォルトで自動更新されます。ただし多くの場合、顧客にはいつでもサブスクリプションをキャンセル、一時停止、変更するオプションがあります。自動更新によって支払いプロセスがシンプルになり、企業の予測可能性が高まります。

経常収益モデルの種類

経常収益モデルは、世界各国の企業で顧客との持続可能で長期的な関係の構築に利用されてきました。これらのモデルは形態も機能も多様ですが、顧客のさまざまなニーズと消費習慣に対応できると同時に、企業には予測可能性の高い収益源をを提供します。ここでは、経常収益モデルの最も一般的な種類の一部を紹介します。

  • サブスクリプションモデル
    このモデルでは、顧客が継続料金を定期的に支払い、商品やサービスを利用します。通常、この料金は固定されており、毎月、毎年など、定期的に請求されます。このモデルの例として挙げられるのは、Netflix と Adobe Creative Cloud です。Netflix では、月額料金を支払って、さまざまなショーや映画を見ることができます。Adobe Creative Cloud では、一連のクリエイティブソフトウェアツールを利用するための料金を支払います。

  • 使用量ベース (従量課金制) モデル
    このモデルでは、商品またはサービスの使用量に基づいて顧客に請求します。これはサービスをそれほど利用しない顧客に有益です。たとえアマゾンウェブサービス (AWS) などのクラウドコンピューティングサービスでは、顧客は、使用したコンピューティングリソースに基づいて請求されます。

  • フリーミアムモデル
    このモデルでは、商品またはサービスを無料で提供しますが、プレミアム機能や拡張機能には料金を請求します。要するに、無料の商品で大規模なユーザー基盤を獲得してから、そのユーザーの一部をお金を払ってくれる顧客に変えるという考えです。たとえば Spotify は、広告付きの音楽ストリーミングを無料で提供していますが、広告なしの、機能豊富なプレミアムサービスには課金しています。

  • 会員制モデル
    会員制モデルでは、サブスクリプションモデルと同様に、顧客は限定の特典、サービス、商品の利用の対価としてに、定期的に料金を支払う必要があります。会員制モデルは、会員制コミュニティの側面がある場合によく使用されます。一例としてコストコが挙げられます。コストコでは顧客が年間会費を支払うことで、会員制倉庫型大型店舗を利用できます。

  • リテーナーモデル
    このモデルでは、顧客は定期的に料金を支払い、サービスを継続的に利用します。このモデルは法務やコンサルティングサービスなどのプロフェッショナルサービスで一般的に利用されています。たとえば、ある企業は、継続的に法的アドバイスを受けるために法律事務所と契約し、一定のコンサルタント料を毎月支払います。

  • ライセンスモデル
    このモデルでは、顧客が定期的に料金を支払って商品やサービスのライセンス (使用許諾) を取得します。このモデルは特にソフトウェアで多く使用され、ソフトウェアを一定期間利用する権利に対して顧客が料金を支払います。たとえば多くの企業は、ユーザー単位、月単位で、Microsoft の生産性ソフトウェア一式のライセンスを取得します。

経常収益モデルを利用するメリット

経常収益モデルには、企業にとって多くのメリットがあります。顧客との持続可能な関係や予測可能な収益源が重要なデジタル経済では特にメリットがあります。これらのメリットを詳しく見てみましょう。

  • 収益の予測が可能
    企業は収益の予測精度が上がります。これにより財務計画と予算編成が改善され、成長計画を立てる際や市場の不確実性に対応する際に、貴重な安定感が生まれます。

  • 顧客維持
    経常収益モデルは、企業が顧客維持を実現し、1 回限りの取引の創出から長期的な関係構築へとその焦点を移す動機付けとなります。このように顧客維持を重要視すると、多くの場合、顧客生涯価値が上がります。

  • キャッシュフローの増加
    定期的な支払いによる収入があると、企業は安定したキャッシュフロー活かすことができます。これにより、企業の財務の健全性が向上し、再投資や成長に向けた取り組みのための資金を用意できます。

  • 拡張性
    経常収益モデルは、特にデジタルビジネスやサービスベースのビジネスで、高い拡張性を示すことがよくあります。顧客基盤が拡大すると、企業は必ずしもそのリソースとコストを比例的に増やさなくても、収益を上げることができます。

  • 顧客に対する柔軟性
    これらのモデル、特にサブスクリプションや会員制などのモデルでは、顧客に非常に大きな柔軟性と手頃な価格を提供することができます。顧客は、予測可能な料金によって、即金で購入すると法外な価格になり得る広範な商品やサービスの利用が可能になります。

  • アップセルとクロスセルの機会
    企業は、追加のプレミアムサービスや補完的な商品を提供する機会が増え、顧客一人あたりの収益を増やすことができます。

  • 企業価値の増加
    経常収益モデルを採用している企業は、多くの場合、取引による収益モデルを採用している企業よりも高く評価されます。予測可能な収益によって、投資家や購入者から見た企業の魅力がアップします。

これらのメリットは、経常収益モデルを採用する説得力のある理由になります。ただし、このモデルの成功は、企業が継続的に価値を実現できるかどうかにかかっていることは忘れないでください。

経常収益モデルを利用する際の課題

経常収益モデルの採用には多くのメリットがありますが、潜在的な課題も認識しておく必要があります。

  • カスタマーサービスに対する要求の高さ
    顧客との関係が継続すると、継続的な顧客サポートへの要求が強まります。高品質で対応力のあるサービスを提供するには追加のリソースが必要になるかもしれませんが、顧客を維持し、解約率を減らすには、そうしたサービスが重要になります。

  • 顧客を維持するための取り組み
    顧客を長期にわたって維持するには、継続的な取り組みが必要です。企業はその価値を定期的に証明し、顧客離れを防ぐ必要があります。そのためには、商品の定期的な更新や、リエンゲージメント戦略の策定が必要になる場合があります。

  • 価格感応性
    通常料金を支払っている顧客は、価格変更に対する感応性が高くなりがちです。わずかでも価格が高くなると、適切に管理されていなければ、解約率がアップする可能性があります。

  • 規制の遵守
    セクターによっては、企業はサブスクリプションや継続支払いに関連する規制への準拠が必要になる場合があります。たとえば、顧客が簡単にサブスクリプションをキャンセルできるようにしたり、継続支払いに関する一定の開示文書の提供が必要になります。

  • 請求の複雑さ
    継続支払いの管理は複雑になることがあります。アップグレード、ダウングレード、比例配分 (日割り/秒割り計算)、返金、キャンセルに対応する場合は特に複雑になります。この複雑さに対処するには、堅牢な請求システムとプロセスが必要です。

  • 収益認識
    多くの経常収益モデルでは、収益を認識するタイミングが複雑になる可能性があります。前払いで支払いを受け、価値提供が長期にわたるサブスクリプションビジネスでは特に複雑になります。これは財務レポートや税務処理に影響を及ぼす可能性があります。

  • 初期の収益成長率の低下
    経常収益モデルは、1 回限りの取引モデルと比較すると、初期の収益成長率が鈍くなる場合があります。企業は、この段階的な成長に備え、状況に応じて財務計画を立てる必要があります。

これらの課題は非常に困難に見えるかもしれませんが、綿密な計画、適切なリソース、戦略的な意思決定があれば効果的に対処できます。これらの潜在的な課題を理解しておくことで、企業は、経常収益モデルへの移行や、現在の経常収益戦略の改善を進めることができます。

Stripe がどのように経常収益モデルをサポートするか

Stripe Billing は動的なプラットフォームであり、経常収益モデルに固有の要件を満たすことを目的とした総合的なツールを備えています。サブスクリプションや継続請求を確立し管理する際の多くの課題に対処できます。ここでは、Stripe Billing が経常収益モデルのさまざまな側面をどのように改善するかについて説明します。

  • 柔軟な請求期間
    Stripe を使用すると、請求サイクル、頻度、間隔をカスタマイズでき、企業とその顧客に特有のニーズに対応する料金体系が提供されます。

  • 従量課金
    Stripe は、使用量ベースまたは従量課金制モデルを採用している企業向けに、従量課金の機能を提供しています。従量課金では、製品やサービスの消費量に応じて顧客に請求することができます。

  • 請求書の自動作成
    Stripe では、プロセスを自動化することによって請求書の作成をシンプルにしています。請求書調整、比例配分 (日割り/秒割り計算)、および督促 (期限超過の支払いの回収) の管理が自動化されるため、管理業務の負担が軽減し、エラーが減少します。

  • サブスクリプションの変更
    アップグレード、ダウングレード、キャンセルなど、サイクル途中でサブスクリプションに変更が生じると、Stripe Billing は状況に応じて請求を自動的に調整します。

  • トライアル期間と割引
    Stripe を使用すると、企業は無料トライアル、割引クーポン、プロモーションオファーを提供して、新しい顧客をサブスクリプションモデルに惹きつけることができます。Stripe は、これらの割引の追跡や適用を行います。

  • 複数通貨と国際決済
    Stripe は135 以上の通貨をサポートし、さまざまな決済手段に対応して、国際取引のプロセスを効率化して、グローバル展開している企業にご利用いただいています。

  • 収益認識とレポート作成
    Stripe は、収益を認識し、財務レポートを作成する便利なツールを提供し、企業が会計基準に遵守できるようにサポートします。

  • 拡張性
    顧客基盤の大小に関わらず、Stripe Billing は、企業の成長に合わせて拡張・縮小できるように設計されています。

Stripe が企業の経常収益モデルをどのようにサポートするかについては、こちらで詳細をご覧ください。

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