会計は、ビジネスを運営する上で最もエキサイティングな部門ではないかもしれませんが、最も重要な部門の 1 つです。長年にわたり、企業は手作業による元帳、デスクトップソフトウェア、スプレッドシートなど、従来の会計方法に依存してきました。しかし、帳簿を管理する最新の方法であるクラウド会計は、企業の財務に対する考え方を一変させ得るものです。クラウド会計の普及に伴い、世界のクラウド会計ソフトウェア市場は、2023 年の 35 億ドルから 2032 年には 70 億ドルに増大すると予想されています。
以下では、クラウド会計とは何か、その仕組み、そして企業がクラウド会計に切り替える理由について説明します。
この記事の内容
- クラウド会計とは
- クラウド会計の仕組み
- クラウド会計が企業にもたらすメリット
- クラウド会計から恩恵を受けやすい企業
- クラウド会計での財務データ保存の安全性
- クラウド会計ソリューションに求められる機能
クラウド会計とは
クラウド会計とは、コンピューターやサーバーではなく、オンライン (「クラウド」) でホストされているソフトウェアを使用して、ビジネスの財務を管理する手法です。これは、オフィスのコンピューターから安全なウェブベースのプラットフォームに、帳簿を移動するようなものだと考えてください。クラウド会計では、データは 1 つのデバイスに縛られることはありません。インターネットにアクセスできる場所ならどこでも利用できます。また、クラウドベースのプラットフォームでは、面倒な作業が自動化され、リアルタイムでデータが同期されるため、スプレッドシートを手動で更新したり、ローカルにインストールされたソフトウェアを使用したりする必要がなくなります。
クラウド会計の仕組み
クラウド会計を使用すると、オンライン環境でビジネスの収入、経費、全体的な財務の健全性を追跡できます。しかしクラウド会計は、データをコンピューターやローカルサーバー (または書類の山) に保存するのではなく、リモートサーバーに保存しますので、インターネット接続があればどこからでもデータにアクセスできます。
ほとんどのクラウド会計システムは、Stripe などの決済代行業者、Shopify などの E コマースプラットフォーム、顧客関係管理 (CRM) ソフトウェアなど、ビジネスの運営に使用する他のテクノロジーと連携するように設計されています。そのため、システム間でリアルタイムの更新が行われ、このプラットフォームが一元化された会計業務の場となります。
たとえば、顧客がウェブサイトから商品を購入すると、Stripe を使用して支払うことができます。会計プラットフォームは自動的に支払いを記録し、売上と照合して、収益レポートに反映させます。ビジネス銀行口座をクラウドベースのプラットフォームと連携させると、プラットフォームは支払い、預金、経費など、すべての新しい取引を記録し、すぐに分類します。
これらの機能により、クラウド会計プラットフォームでは、以下のような人為的ミスが発生しやすい反復的で時間のかかるタスクを自動化できます。
銀行勘定調整: クラウド会計システムは、入金を対応する請求書と照合できるため、手動での追跡が不要になります。
継続請求書: クラウド会計プラットフォームは、事前に設定されたスケジュールで請求書を自動的に送信できるため、サブスクリプションベースまたはリテイナーモデルを使用する企業に適しています。
経費の分類: 多くのクラウド会計ソリューションは、ユーザーの習慣から「学習」します。特定の仕入先から購入した事務用品を特定のカテゴリの一部として定期的に分類する場合、システムは自動的に分類を開始するようになります。
クラウド会計が企業にもたらすメリット
クラウド会計は、財務をより管理しやすくし、適応性を高め、最新のワークフローに適合させてくれます。頼れるシステムである理由は以下のとおりです。
アクセシビリティ: クラウド会計では、会議中に携帯電話からキャッシュフローを確認したり、出張中に請求書を送信したり、同じ部屋にいなくても会計士と財務データを共有したりできます。
更新がリアルタイム: クラウド会計は、財務の概要をリアルタイムで提供します。クライアントが請求書を支払うと、すぐに数字に反映されます。購入を行うと、ソリューションによりログに遅滞なく記録されます。このリアルタイム連携により、入ってくるもの、出ていくもの、次に来るものを管理することができます。
タスクを自動化: クラウド会計は、支払いの照合、経費の分類、期日を過ぎた請求書のリマインダー送信、といった反復的なタスクを処理します。そのため、事業のより重要な仕事に集中できます。
拡張性: 個人経営の店舗でも、新しい市場への進出でも、クラウド会計はニーズに合わせて適応します。基本から始めて、準備ができたら、給与計算、在庫追跡、多通貨サポートなどの機能を追加できます。事業が拡大しても、金融システムを再構築する必要がありません。
コラボレーションが簡単: すべてがオンラインであるため、会計士、簿記係、チームはログインして、皆に表示される同じデータにアクセスできます。ファイルをやり取りしたり、古いバージョンを処理したりは不要です。クラウドに用意されるワークスペースを共有するため、全員の認識が一致します。
自動更新: クラウドベースのプラットフォームは、更新を自動的に処理します。新しい税額表のインストールやバグへのパッチ適用について心配する必要はなく、これらの更新はバックグラウンドで行われます。常に最新バージョンのソフトウェアを使用でき、最新の機能とコンプライアンス基準にアクセスすることが可能です。
クラウド会計から恩恵を受けやすい企業
ほぼすべての企業がクラウド会計から恩恵を得られますが、その影響は、柔軟性、自動化、および拡張性を重視する企業にとって特に顕著です。スタートアップを運営している場合でも、中小企業を経営している場合でも、大企業を率いている場合でも、クラウド会計はニーズに適応し、お客様とともに成長します。ここでは、さまざまなタイプの企業がクラウド会計からどのようなメリットを得られるかを説明します。
スタートアップ
多くはリーン組織であるスタートアップ企業の場合、クラウド会計ソリューションで以下を行えます。
時間を節約する: これらのプラットフォームにより、銀行口座の照合や定期的な請求書の送信などの、面倒なタスクが自動化されます。
柔軟性を保つ: これらのシステムを利用するスタートアップは、経費を早期追跡したり、従業員増員時の給与計算や高度レポートの統合したりと、事業拡大に合わせて会計ニーズを拡張できます。
可視性を得る: これらのプラットフォームでは、キャッシュフローに関するリアルタイムのインサイトを得られますので、1 ドルでも大切だという場合に特に重要です。
たとえば、技術系スタートアップは、Stripe をクラウド会計プラットフォームに連携して、サブスクリプションの収益を追跡し、投資家向けの財務レポートをすばやく作成できます。
中小企業 (SMB)
通常、時間が限られており、スタッフも少ない中小企業にとって、クラウド会計ソリューションには以下のようなメリットがあります。
システムを連携: クラウド会計プラットフォームは、請求書発行、経費追跡、給与計算、レポート作成を 1 つのプラットフォームに統合し、複数の未連携システムを使わなければならない状況を減らせます。
リモートワークが可能に: これらのプラットフォームにより、SMB のオーナーとそのチームは、オフィス、自宅、または外出先で作業できます。
納税がシンプルに: プラットフォームに組み込まれている税金追跡およびコンプライアンスツールにより、納税シーズンが楽になります。
たとえば、小規模小売業者は、クラウド会計を使用して、E コマースプラットフォームからの販売データを同期でき、在庫コストを追跡できます。さらには、余分な手作業なしで財務諸表を作成することもできます。
フリーランサー・個人事業主
営業や簿記など、ビジネスのあらゆる役割を担うことが多い独立ワーカーにとって、クラウド会計には以下のようなメリットがあります。
コストを削減する: 多くのクラウド会計プラットフォームには、フリーランサー向けにカスタマイズされたプランがあるため、無駄な機能や高いコストなしで、請求書発行、経費追跡、基本的なレポートをカバーできます。
専門知識の必要性を減らす: ユーザーフレンドリーに設計されているプラットフォームのおかげで、スタッフを雇用しなくても帳簿を管理できる可能性があります。
納税準備のサポートを得る: クラウド会計プラットフォームは、控除可能な費用を自動的に追跡し、レポートを作成してくれるため、スムーズに納税申告を行えます。
たとえば、フリーランスのグラフィックデザイナーは、クラウド 会計を使用して、プロフェッショナルな請求書の送信、ソフトウェアのサブスクリプションなどのビジネス経費の記録、納税のための収入の追跡を行うことができます。
成長中の企業
大企業の財務業務は、成長するにつれてますます複雑になります。これらの企業がクラウド会計を利用すると、以下のメリットがあります。
柔軟な機能: 多通貨のサポートから高度なレポートまで、クラウドベースのプラットフォームで、グローバルな運用や大量取引といった需要を処理できます。
チームコラボレーション: 企業では、多くの場合、複数の担当者が財務を管理しています。クラウドベースのプラットフォームにより、会計士、監査人、部門長が安全にアクセスでき、全員が同じデータから作業できるようになります。
他のシステムとの連携: クラウド会計は、大企業でよく使用されるエンタープライズリソースプランニング (ERP)、CRM、および支払いシステムと連携されます。
たとえば、製造業では、クラウド会計を使用して、生産コストを追跡したり、在庫ソフトウェアと同期したりできます。また、各事業部門のカスタム財務レポートを生成できます。
非営利団体
非営利団体は、多くの場合、寄付を追跡し、限りある資金を管理し、寄付者と理事会に透明性のあるレポートを提供しなければなりません。非営利団体の場合、クラウド会計で以下のことができます。
寄付金を追跡する: これらのプラットフォームでは、収入源にタグを付けて、一般寄付と助成金を分けることができます。
カスタムレポートを作成する: クラウドベースのプラットフォームでは、非営利団体の会計基準に沿ったレポートを作成し、資金がどのように使用されているかを正確に示すことができます。
コラボレーションを促す: これらのプラットフォームで、理事会メンバーや助成金作成者と財務データを共有できます。長い電子メールスレッドや直接の会議は必要ありません。
たとえば、地域密着型の非営利団体がクラウド会計を使用すると、キャッシュフローを監視したり、特定のプロジェクトの経費を追跡したり、寄付者向けの年次財務レポートを作成したりできます。
リモートまたは分散チームを持つ企業
リモートチームや分散チームは、クラウドベースのシステムに依存して接続を維持しています。この種のチームを持つ企業の場合、クラウド会計で以下のメリットがあります。
場所にしばられずにアクセス: クラウドベースのプラットフォームを使用すると、チームメンバーはどこからでもログインして、レポートの確認、経費の提出、給与の管理を行うことができます。
ロールベースで権限を付与: クラウドベースのプラットフォームでは、機密性の高い財務データの管理を維持しながら、さまざまなチームメンバーにアクセス権を付与できます。
コラボレーションが簡単: これらのプラットフォームにより、会計士や簿記係は、場所に関係なく、リアルタイムで更新されるデータを操作できます。
たとえば、複数の国に従業員を抱えるデジタルマーケティング代理店は、クラウド会計を使用して、多通貨の請求を処理し、チーム全体の経費を追跡し、財務の正確さを徹底できます。
クラウド会計での財務データ保存の安全性
適切に管理されれば、クラウド会計は、多くの場合、従来のローカルに保存されたソリューションよりも安全です。プロバイダーが投資しているセキュリティ対策とインフラは、大半の企業が自前で実装できるレベルを超えているからです。ここでは、クラウド会計のセキュリティの仕組みをご紹介します。
暗号化
暗号化は、クラウド会計におけるデータセキュリティの中枢を担います。データを、権限のない第三者には読み取れないコードに変換します。データがデバイスとクラウドの間を移動するときは、傍受を防ぐために暗号化されます。プロバイダーのサーバーに保存されているデータも暗号化されます。そのため、誰かがサーバーにアクセスしたとしても、暗号化キーがなければ情報を使用することはできません。
多要素認証 (MFA)
MFA は、ログイン時にパスワード以上のものを要求して、セキュリティの層を厚くしています。パスワードが漏洩したとしても、権限のないユーザーがアクセスするには、電話に送信されるコードやアプリベースの確認など第 2 の要素が求められます。
定期的なデータバックアップ
クラウド会計プロバイダーは、定期的なデータバックアップを実行します。ハードウェア障害、サイバー攻撃、自然災害が発生した場合でも、情報は安全に保たれます。何か問題が発生した場合でも、大きな中断なしにデータを迅速に復元できます。
セキュリティ標準への準拠
一流クラウド会計ソリューションは、データセキュリティとプライバシーに関する業界標準と規制に準拠しています。これらには以下が含まれます。
システムおよび組織統制 (SOC) 2: 機密情報を管理およびセキュリティで保護するためのフレームワークです。
一般データ保護規則 (GDPR): 顧客の個人データを保護し、欧州連合 (EU) で事業を行うまたは EU と取引するビジネスに適用される規制です。
PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS): 会計ソフトウェアがカード支払いからのデータを処理する場合のデータ保護基準です。
ユーザー権限とロールベースのアクセス
ほとんどのクラウドベースのプラットフォームで、誰に何を表示するかを制御できます。たとえば、会計士には帳簿へのフルアクセス権を付与し、従業員のアクセス権は経費精算書の提出に制限できます。これにより、内部での誤用や偶発的な変更のリスクを軽減できます。
監視と脅威検出
クラウド会計プロバイダーは、高度な脅威検出システムに投資しています。異常なログイン試行やマルウェアなどの不審なアクティビティを積極的に監視し、先を見越した対策を講じて、侵害される前に脅威をブロックします。
クラウド会計ソリューションに求められる機能
クラウド会計システムを選択するにあたり、適切なプラットフォームはビジネスのニーズによって異なっています。フリーランサーにとっては請求書発行と経費追跡が優先事項かもしれませんし、中小企業には税務コンプライアンスに役立ち給与計算機能と連携することが大事かもしれません。成長中の企業は拡張性と高度なレポートを重視するかもしれません。
優先順位に応じて、探すことができる機能は以下のとおりです。
請求と支払い処理
請求と支払いのニーズについては、以下のことができるクラウド会計プラットフォームを探してください。
ブランドイメージに合わせてカスタマイズ可能なプロフェッショナルな外観の請求書を作成する
サブスクリプションベースまたはリテイナーモデル向けに継続請求書を自動化する
Stripe などの決済代行業者との連携により、請求書を通じてオンライン決済を受け付ける
これらの機能により、顧客の支払いを簡単に受け付け、記録を自動的に更新し、回収作業に費やす時間を節約できます。
経費の追跡
多くの経費を追跡する場合は、以下のことができるプラットフォームを探しましょう。
写真を撮りモバイルアプリから領収書をアップロードする
連携された銀行口座やクレジットカードから経費を自動的にインポートして分類する
納税シーズン中に控除の対象となる可能性のある事業関連費用にフラグを立てる
ユーザーの習慣を学習するプラットフォーム (特定のベンダーからの取引を一貫して分類するなど) では、これらのプロセスが効率化されます。
銀行勘定調整
銀行勘定調整 (会計ソフトウェアでの取引と銀行取引明細書の照合など) については、以下のようなプラットフォームを探してください。
銀行取引を自動的にインポートし、請求書や経費との照合を提案する
不一致にフラグを立てて、迅速に調査できるようにする
これらのプラットフォームを使うと、何時間もの手作業を必要とせずに、財務記録を正確かつ最新の状態に保つことができます。
レポートと財務インサイト
レポートと財務インサイトを優先する場合は、以下のようなプラットフォームを検討してください。
損益計算書、キャッシュフロー概要、貸借対照表などのレポート作成機能が搭載されている
レポートを、プロジェクト、部門、期間ごとのパフォーマンス追跡など、ニーズに合わせてカスタマイズできる
リアルタイムのダッシュボードで収益、経費、未払いの請求書などの主要な指標を表示する
詳細なレポートは、意思決定、傾向の特定、および納税申告の準備に特に役立ちます。
税務コンプライアンス
税務コンプライアンスについては、以下を提供できるクラウド会計システムを探してください。
お住まいの地域と取引タイプに基づく売上税または付加価値税 (VAT) の自動計算
年間を通じて控除可能な費用と納税額を追跡するための構築済みツール
税務申告ソフトウェアとの統合、または会計士向けの税務準備レポートを作成する機能
これらの機能により、膨大な準備時間を節約し、申告におけるエラーのリスクを軽減できます。
給与計算の連携
給与管理については、以下のことができるプラットフォームを見つけてください。
税金や福利厚生を含む給与計算を自動化する
給与経費を財務諸表と同期して、帳簿を整理する
拡張性とアドオン
柔軟なソリューションをお探しの場合は、以下のような機能を確認してください。
国際取引のための多通貨サポート
商品ベースのビジネス向けの在庫管理
プロジェクトごとにコストと収益性を監視するプロジェクト追跡機能
CRM や ERP システムなどの他のツールと連携させるためのアプリケーションプログラミングインターフェイス (API) アクセス
拡張性があるため、業務が拡大しても会計ソフトウェアが役不足になることはありません。
コラボレーションとユーザー権限
貴社で複数の人が財務管理に関与している場合は、以下のような機能を探してください。
どのユーザーに特定のデータを閲覧・編集できるかを制御できる、ロールベース権限によるマルチユーザーアクセス
会計士とチームが同じ場所にいなくても一緒に作業できる、リアルタイムのコラボレーション
情報を安全に共有し、誤解を避けるといったことが容易になります。
他のテクノロジーとの連携
すでに他のテクノロジーを使用してビジネスを運営している場合は、それらと連携できるプラットフォームを検討してください。これらの他のテクノロジには、以下のものが含まれます。
自動取引追跡のための Stripe などの決済代行業者
販売データを同期するための Shopify や WooCommerce などの E コマースプラットフォーム
時間単位でクライアントに請求する場合のタイムトラッキングツール
在庫レベルとコストを追跡するための在庫システム
使いやすさとカスタマーサポート
選択したプラットフォームが直感的に使用でき、必要なときにサポートが提供されるかを確認しておきましょう、以下のようなプラットフォームを探します。
使用するのに高度な会計知識が不要
オンボーディングサポート、チュートリアル、またはナレッジベースが付属しており、すぐに使い始められる
問題のトラブルシューティングにサポートが必要な場合に、迅速にカスタマーサポートにつながる
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。