EC 市場が急速に成長する近年、消費者の購買行動はますます多様化しています。こうした中、企業と顧客の接点である「販売チャネル」は、集客の強化と販売機会の増加に不可欠な要素です。販売チャネルが少ないと、販売機会の損失につながり、本来得られたはずの利益を逃してしまいます。
本記事では、販売チャネルの基礎知識として、具体的な種類を紹介し、複数のチャネルを運用する際のポイントや、最新の戦略トレンドについても詳しく解説します。
この記事でわかること
- 販売機会の拡大を目指すには、複数の販売チャネルを設けて消費者との接点を増やすことが大切
- ネットショップと実店舗を連携すれば、顧客への快適なショッピング体験の提供が実現可能
- 各販売チャネルを円滑に運用するには、いくつかの点に注意しなければならない
- 販売チャネルが多数存在する中で注目されている主な戦略には、オムニチャネルの進化系ともいえるユニファイドコマースの実装などが挙げられる
- Stripe Terminal なら、対面決済とオンライン決済の一元化と、複数の販売チャネルの統合管理によるユニファイドコマースの実現が可能
販売チャネルとは
販売チャネルとは、企業からユーザーに「価値 (商品・サービス)」を届けるための経路や接点、媒体を意味します。主な種類は以下の通りです。
- 実店舗
- EC サイト (自社 EC サイト・EC モール・アプリなど)
- SNS
- メールマガジン
- DM
- カタログ・雑誌・新聞
- テレビ CM
- 紙媒体の広告
現代の小売市場では、単に商品を並べるだけでは売上拡大は望めません。事業を成功に導くには、ターゲット層を見極め、自社の価値を最適な経路で確実に届けることが販売チャネル戦略において極めて重要です。
販売チャネル戦略が必要な理由
販売チャネル戦略が必要な背景には、検索・比較・購入といった一連の消費者行動が、かつてないほど複雑化・多様化していることが挙げられます。
今日では、実店舗で商品を手に取って詳細を確認してからネットで購入したり、SNS のレビューを読んでから実店舗で購入したりするなど、複数の接点を横断する購買行動が一般化しています。
事業者がこうした変化に対応せず、単一の販売チャネルに限定すると、顧客が購入したいタイミングで商品を提供する機会が失われ、競合に顧客が流れてしまう可能性があります。
一方、複数の販売チャネルを用いて適切な戦略を実行すれば、最適なタイミングと最適な場所・媒体で商品を提供でき、以下の効果が期待できます。
- 販売機会の最大化による売上拡大: 複数の販売チャネルを設けることで販売機会が増えれば、売上の拡大につながります。また、より多くのリピーターを獲得するチャンスも広がります。
- 利便性向上と顧客満足度の向上: どの販売チャネルからでも一貫性のある購買体験を提供できれば、サービス全体の質が良くなり、顧客満足度の向上につながります。
たとえば、EC サイトと実店舗で在庫データを共有し相互に補完を行うなど、オンラインとオフラインの垣根を越えた顧客対応ができれば、顧客満足度が向上し、結果として売上拡大やリピーターの獲得が期待できます。
このように販売チャネル戦略では、ネットショップと実店舗の連携によって、顧客が複数の販売チャネルを快適に行き来できる導線設計を目指しています。
販売チャネルの分類
販売チャネル戦略を立てる際は、全体的な流通構造も視野に入れておく必要があります。販売チャネルは、チャネルの「長さ」によって「直販チャネル」と「多段階チャネル」に大きく分類されます。つまり、ここでの「長さ」とは、顧客に商品が届くまでに小売りや卸売といった流通業者がどのくらい介在しているかという段階数を指します。
直販チャネル
メーカーが自社 EC サイトなどで消費者に直接商品を販売する形態で、「0 段階チャネル」とも呼ばれます。
直販チャネルであれば、メーカー自らが販売することでブランドイメージを確立・維持しやすく、顧客の意見にもダイレクトに対応できるメリットがあります。
一方で、自社ですべてをコントロールしなければならない点や、商品を広範囲に流通させにくい点がデメリットとして挙げられます。
多段階チャネル
メーカーから小売店や卸売業者を経由する形態で、中間業者の数により 1 段階から 3 段階チャネルに分類されます。
1 段階チャネルは、メーカーから小売店に直接商品を卸す仕組みです。
一方、2 段階や 3 段階では、小売業者のほかに卸売業者が介在し、段階を経て最終的に小売店に商品が納品されます。なお、二次卸売業者が入る 3 段階チャネルは、流通経路の簡素化により、近年減少傾向にあります。
一般的に「0 段階よりも 1 段階」、「1 段階よりも 2 段階」と、段階が多い方が商品を広範囲に流通させやすくなります。しかし、中間業者へのマージンが発生し、段階が増えるほどにコストがかさむことから、利益確保のためには販売単価の調整が必要になるケースもあります。
EC に特化した代表的な販売チャネル
ここでは、EC で利用できる代表的な 6 つの販売チャネルを紹介します。実店舗を運営する事業者の場合、これらのチャネルとの相乗効果を活かした OMO 戦略を実施することで、顧客により良いショッピング体験を提供できるでしょう。
自社 EC サイト
独自のドメインでネットショップを運営する自社 EC サイトの場合、ブランドイメージの一貫性を維持できる点が大きなメリットです。また、中間マージンがなく利益率を確保しやすいほか、顧客データを直接取得してサービスの改善に活かせることも強みです。特に、長期的視点でのブランディングと直接的な顧客との関係構築を目指す事業者にとっては、欠かせない販売チャネルといえます。
一方、集客やサイト運営にかかるコスト負担が懸念されるため、資金繰りには十分注意し、費用対効果を視野に入れたうえで、社内のマーケティングチームやエンジニアチーム、外部の協力会社との強固な連携体制を敷いておく必要があります。
EC モール
楽天市場や Yahoo!ショッピングなど、圧倒的な認知度を誇る大手の EC モールに出店する場合、モール側が既に持っているトラフィックを活用できるため集客が比較的容易で、短期間で売上が見込める点がメリットです。
ただし、EC モールへの出店には出店料や手数料が発生するため、利益率は自社 EC サイトより低下します。また、EC モール側のフォーマットに従う必要があることから、独自のブランディングにも限界があります。
なお、EC モールへの手数料、出店条件や規制などについては、それぞれに異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
ソーシャルコマース
Instagram や TikTok などの SNS を活用して商品やサービスを宣伝・販売するソーシャルコマースも、オンライン、オフラインに関わらず重要な販売チャネルの 1 つです。
近年では、これらの SNS プラットフォーム上でもショップ機能が搭載されています。ソーシャルコマースであれば、日常的に SNS を利用する数多くのユーザーをターゲット層として取り込めるだけでなく、自然な流れで購買行動へと誘導することが可能です。
ただし、SNS 上で自社商品やサービスが認知されるまでには、ある程度の時間がかかります。したがって、ソーシャルコマースでは、継続的な投稿やライブ配信などが欠かせないほか、常に人々の関心を惹きつけるコンテンツを用意し続ける運用力が求められます。
モバイルアプリ
モバイルアプリは、自社の公式アプリ内で商品の検索や閲覧、購入を完結できる販売チャネルです。モバイルアプリなら、ユーザーは時間や場所に関係なく簡単な操作だけでショッピングを楽しめます。特に利便性を重視するユーザーから重宝されているため、リピート率の向上とカスタマーエンゲージメントの強化を図ることができます。
ただし、アプリの開発・維持には、テクニカルリソースなどのコストがかかります。また、定期的なシステムアップデートや整備を行うためには、アプリの管理体制を万全にしておくことも重要です。
ライブコマース
ライブコマースとは、ライブ配信と EC を融合させた新たな販売チャネルで、動画のライブ配信によって、リアルタイムで商品やサービスを紹介・宣伝する手法です。
視聴者は動画を観ながらコメント欄に質問できるなど、配信者とその場でコミュニケーションが取れる点や、ライブ動画上で簡単に購入手続きを進められる点が、多くのユーザーから支持されています。
エンターテイメント性の高いライブコマースは、対面接客のような臨場感や安心感を求める顧客との関係構築に有効な販売チャネルといえます。ただし、配信者の話術、即興力、演出力といったスキルや商品の理解度が成果を大きく左右するため、適切な人材の確保と育成が非常に重要です。
卸売・リセラー (販売代理店)
卸売やリセラー (販売代理店) 経由で、自社商品が消費者の手元に届けられる形態です。日本では EC 以前から存在する販売チャネルですが、現在の EC 事業でも、この卸売取引が一定割合を占めています。
事業者は、消費者に自社商品を直接販売するのではなく、卸売業者やリセラーにまとめて商品を販売します。大口取引となるため、一度で大量の在庫をさばける点や、納品先のパートナー業者に販売を代行してもらえる点が大きなメリットです。そのため、単独では進出しにくい地域や市場に適しているといえます。
ただし、エンド顧客との接点が直接的でないため、消費者ニーズの把握が難しいほか、中間マージンが利益を圧迫する可能性もあります。よって、直販チャネルで顧客データを直接収集しながら、一方で卸売やリセラー経由で販路の拡大を目指すといったように、他の販売チャネルと組み合わせるのが望ましいでしょう。
販売チャネルの運用ポイントと注意点
販売チャネルの運用を円滑に行うためには、以下の点に注意が必要です。特に、実店舗とオンラインの双方で事業を展開する場合、各販売チャネル同士のバランスを考慮した戦略的な運用が求められます。
販売チャネル間のカニバリゼーションに注意する
複数の販売チャネルの間で売上を競い合うカニバリゼーションが生じてしまい、結果として期待していたほどの売上獲得につながらず、利益率の低いチャネルのサービスを終了せざるを得ないケースがあります。
典型的な例としては、実店舗のショールーム化 (ショールーミング) が挙げられます。これは、実店舗で商品を手に取ってサイズや色合い、手触りなどを確認して、その場では購入せずに後でネットショップから注文をすることを指します。実店舗で詳細を確認してから最安値で購入できるネットショップを利用することは、消費者にとって自然な流れといえるかもしれません。しかし、実店舗側としては売上につながらず、コストだけがかかってしまいます。
カニバリゼーションを防ぐためには、各販売チャネルの役割と価値を明確化・差別化することが大切です。たとえば、実店舗でしか得られない付加価値として、商品の即時提供や対面接客が挙げられます。事業者は、これらの付加価値に加え、実店舗だからこそできることを実践するための、持続可能な価値創造を目指す必要があります。
STP 分析を行う
マーケティング施策を立てる際の重要要素となるのが STP 分析です。この分析を基に、各販売チャネルで効果的な販促活動を実施します。
- Segmentation (セグメンテーション): 市場全体を細分化することで、グループに分類する
- Targeting (ターゲティング): 細分化したグループから、対象とする顧客を見極める
- Positioning (ポジショニング): 他社との差別化を図ることで、自社ブランドや商品の独自性をターゲット層に認識してもらい、自社の立ち位置を明確化する
4P の要素を十分に考慮する
STP 分析のほか、以下の 4P 要素すべてを適切に組み合わせて販売チャネル戦略に活かすことも大切です。
製品・サービス (Product): どのような商品・サービスを販売するのか、品質やデザイン、機能、ブランド名など、顧客ニーズに見合う製品・サービスの定義
価格 (Price): いくらで販売するのか (定価・割引価格)、市場価格や競合分析に基づく価格戦略
流通 (Place): どこで販売するのか、消費者に製品を届ける経路 (実店舗・EC サイト、販売代理店など) の選定
プロモーション (Promotion): 製品・サービスをどのように伝え、知ってもらうのか、SNS での宣伝・キャンペーン告知などの販促活動
古いシステムでは複数の販売チャネルへの対応が困難
販売チャネルが増えると、在庫管理・受注・決済・出荷・カスタマーサービスなど、バックエンドの処理業務が複雑化し、従来の古いシステムでは各業務を円滑に遂行することが困難になります。そのため、必要に応じて、最新システムへのリプレースを検討することが大切です。
在庫・顧客・注文・売上データをすべて一元化すれば、問い合わせ対応、在庫管理、マーケティング施策がスムーズに実行できるようになるだけでなく、ブランドイメージの一貫性を保つことにもつながります。
販売チャネル戦略のトレンド
事業戦略のトレンドは、IT 技術の進歩や新サービスの登場といった時代の流れとともに変化します。そのため、自社ビジネスを継続的に成長させるには、時代の移り変わりに柔軟に対応することが重要です。ここでは、多数の販売チャネルが存在する現代だからこそおさえておきたい戦略トレンドを 3 つ紹介します。
EC の展開
主要な販売チャネルの 1 つとして、EC 事業を展開することは、現代の小売業界において必須といっても過言ではありません。
経済産業省によると、2024 年の日本国内における B2C-EC (消費者向け電子商取引) の市場規模は 26.1 兆円で、前年の 24.8 兆円に比べると 5.1% 拡大しています。さらに、B2B-EC (企業間電子商取引) の市場規模は 514.4 兆円にものぼり、前年の 465.2 兆円よりも 10.6% と、さらに大きな規模で成長を続けています。
また、EC 化率 (すべての商取引金額に対する電子商取引市場規模の割合) は以下のとおりで、B2C-EC と B2B-EC のいずれにおいても EC 化が進んでいます。
- B2C-EC: 9.8% (前年比 0.4 ポイント増)
- B2B-EC: 43.1% (前年比 3.1 ポイント増)
このように、今日では EC の需要が着実に高まっており、今後も人々の購買行動のオンライン化が加速していくことが予想されます。
ユニファイドコマースの実装
ユニファイドコマース (Unified Commerce) とは、オムニチャネルをさらに進化させ、あらゆる販売チャネルをひとつのシステム上でリアルタイムに統合管理する仕組みを意味します。「Unified Commerce」は日本語で「統合された商取引」と訳されます。
ここまでの解説からもおわかりのとおり、販売チャネルには実店舗、EC サイト、SNS などのさまざまな種類があります。従来、顧客データの管理やマーケティング施策は、これらのチャネルごとに別々に行われていましたが、すべてのチャネルデータを一本化すれば、より正確な顧客ニーズの把握が可能になり、チャネルの横断による最適なマーケティング施策を実施できるようになります。それだけでなく、顧客はどの販売チャネルを利用しても、一貫したショッピング体験を得ることができます。
SNS を販売チャネルとして活用
拡散力が高く、投稿や閲覧も手軽にできる SNS を最大限に活用するのも、近年の販売チャネル戦略において見逃せない要素です。
SNS でできることは、有料広告の出稿、ライブコマースの実施、ユーザーとのコミュニケーションなど、その活用手段は多岐にわたります。SNS の販売チャネル化によって、ユーザーは商品やサービスに関する最新情報をいち早くキャッチできるようになるだけでなく、投稿内容に紐づく特設ページなどにスムーズに移動することも可能です。
Stripe Terminal でできること
Stripe Terminal はユニファイドコマースのためのソリューションです。対面チャネルとオンラインチャネルを統合し、収益拡大を実現させます。新しい支払い方法、シンプルなハードウェア、グローバルな対応、数百の POS とのコマース連携により、理想的な決済環境を構築できます。
Stripe は、Hertz、URBN、Lands’ End、Shopify、Lightspeed、Mindbody などのユニファイドコマースを強化しています。
Stripe Terminal の特徴
ユニファイドコマース: オンラインと対面での決済をグローバルプラットフォームで一元管理します。
グローバル展開: 1 つのシステムと一般的な決済手段で、24カ国への拡大が可能です。
自社に合った導入: 独自のカスタム POS アプリを開発するか、サードパーティの POS や EC システムを使って既存のテックスタックと連携できます。
シンプルなハードウェア: Stripe 対応のリーダーを注文、管理、監視できます。
Stripe Terminal について詳しくはこちらをご覧ください。今すぐ開始する場合はこちら。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。