決済活動とは、個人、事業者、組織間の送金を推進するシステム、プロセス、サービスのことです。世界の決済活動の規模は巨大で、デジタル決済市場は 2024 年に総取引額 11 兆 5,000 億ドルに達し、2028 年までの年間成長率は 9.5% になると予測されています。
このガイドでは、決済活動とは何であるか、ビジネスで重要とされる理由、その歴史、予測についてご紹介します。また、事業者がニーズに応じて決済プロセスを自動化する方法もご紹介します。
この記事の内容
- 決済活動とは
- 決済活動がビジネスで重要とされる理由
- 決済活動の進化
- 決済活動の未来
- 支払いプロセスを自動化する方法
- 決済活動管理のベストプラクティス
決済活動とは
決済活動には、支払い受付の開始から終了までのあらゆる側面が含まれます。各構成要素の概要は次のとおりです。
決済処理: 取引の受け付け、検証、処理。これには、クレジットカード、デビットカード、銀行振込による支払いの処理、支払いの承認、売上のキャプチャー、支払いネットワークや金融機関との通信が含まれます。
不正検知とリスク管理: 潜在的な不正を特定して軽減するシステムとプロセス。これには、取引パターン分析、ユーザー ID の検証、および疑わしい行為の検出と防止が含まれます。
規制順守: マネーロンダリング防止 (AML) 法、本人確認 (KYC) 規制、および支払いカード情報を保護する PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) などのデータ保護基準をはじめとする法令遵守および規制要件の順守。
売上処理および消し込み: 売上を送金し、銀行口座への入金や引き落としを正確に行い、取引記録と銀行取引明細書を照合して、すべての取引の会計および処理が正しく行われるようにします。
ペイメントゲートウェイとインフラストラクチャー: ITインフラストラクチャーとペイメントゲートウェイは、事業者、顧客、金融機関をつなぐものです。
顧客サポートと不審請求の申請の解決: 決済関連の問い合わせや不審請求の申請に対する支援を提供します。これには、チャージバックの処理や、取引の失敗や誤りから生じる問題の解決などが含まれます。
テクノロジーとイノベーション: 決済のスピード、セキュリティ、利便性を向上させる新しいテクノロジー (ブロックチェーン、非接触型決済、デジタルウォレットなど)への継続的な投資。
国際取引: 外貨取引、通貨換算プロセス、および国際的な貿易規制の順守を管理します。
決済活動がビジネスで重要とされる理由
決済活動は、事業者が資金を回収する方法を決定することから、事業運営の基本的な部分を構成します。効率的な決済活動が重要とされる理由は次のとおりです。
売上: 売上の回収には決済活動が不可欠です。決済活動によって顧客から適時に正確な資金移動が円滑に行われ、キャッシュフローが改善されます。
顧客体験: 決済システムがシンプルで信頼性が高ければ、決済時の摩擦が最小限に抑えられ、顧客満足度と顧客維持率が向上します。
不正利用による損失: 高度な不正利用検出テクノロジーとプロトコルにより、潜在的な経済的損失を最小限に抑え、顧客の信頼を守ります。
処罰のおそれ:事業者は、金融規制とデータ保護基準を順守して、違反に対する処罰を回避し、顧客データを保護する必要があります。
市場拡張: 決済システムを適切に運用することによって、事業者はグローバル展開、複数の通貨による取引処理、世界で利用ざれるさまざまな決済手段への対応が可能になります。
業務の効率: 取引処理を自動化すると、管理コストの削減、エラーの最小化、リソース割り当ての最適化を実現できます。
競争上の優位性 新しい決済テクノロジーを使用することで事業者は、より幅広い顧客層を引き付け、市場で差別化を図ることができます。
決済活動の進化
決済活動の進化は、技術の進歩、顧客の期待の変化、商取引のグローバル化の進展を反映しています。決済活動は、基本的な取引方法から、スピード、安全性、グローバルへの対応機能に優れたデジタルシステムへと移行しています。ここでは、決済活動がどのように進化してきたかについて、かいつまんでご紹介します。
物々交換から貨幣の登場まで: 最も初期の交易形態は、物々交換でした。時が経つにつれて、社会は貨幣制度を導入し、価値を標準化し、取引のシンプル化と規模の拡大を可能にする進歩を遂げました。
紙幣と銀行: 紙幣は、銀行が生まれた中世に導入されました。この変化により、より大規模で複雑な取引、貿易ネットワークの拡大、および経済成長が促進されました。
電子決済: 電子決済は 20 世紀半ばに登場しました。現金自動預け払い機 (ATM) や国際銀行間通信協会 (SWIFT) などの電子送金システムは、お金の保管と移動の方法に革命をもたらし、現金の必要性を減らし、金融をより身近なものにしました。
クレジットカードとデビットカード 1950年代にクレジットカードが導入され、その後の世界的な普及により、消費者にクレジットカードが普及しました。その後、デビットカードが登場し、銀行口座への直接アクセスが可能になり、銀行サービスを日常的な商取引とより緊密に統合できるようになりました。
オンライン決済と E コマース: インターネット時代が到来し、オンライン決済が始まりました。PayPal などの企業は、E コマースプラットフォームでの取引を推進し、商品やサービスの売買に対する地理的な障壁を打ち破りました。
モバイル決済とデジタルウォレット: スマートフォンの普及により、決済技術はモバイルプラットフォームへと移りました。モバイル決済や Apple Pay や Google Pay などのデジタルウォレットは、トークン化や生体認証などのテクノロジーを利用して、利便性、スピード、セキュリティを提供しています。
暗号通貨とブロックチェーン: ビットコインとそれに続く暗号通貨の導入は、支払いに関する新しい考え方を急進的に改革しています。ブロックチェーン技術は、分散型で安全な台帳を使用することで、新しい通貨形式と、中央機関を必要とせずに取引を処理および記録する新しい方法として期待を集めています。
規制と規制順守の進展: 決済技術の進歩につれて、それを管理する規制の枠組みも変化しています。欧州の改正決済サービス指令 (PSD2) やグローバルな PCI DSS 標準などの規制は、消費者保護、データセキュリティ、AML 対策に重点を置き、最新の決済システムに応じた規制となるように進化しています。
人工知能 (AI) と機械学習: AIと機械学習は、不正検出機能の機能強化、顧客体験のパーソナライズを推進し、ペイメントゲートウェイを改善しています。AI は、自動化を通じて顧客行動の予測、リスク管理、コスト削減に寄与します。
決済活動の未来
決済活動の未来は、技術の急速な進歩、顧客の期待の進化、規制要件の増加の影響を受けて決まってゆくと考えられます。
AI と機械学習: AI と機械学習は、予測分析と行動バイオメトリクスを通じて不正検出機能を改善し、取引処理を簡素化し、顧客体験をパーソナライズしています。AI モデルが高度化するにつれ、複雑な意思決定プロセスの自動化、エラーの削減、運用コストの削減がますます進むと見られます。
ブロックチェーンと分散型台帳技術(DLT): ブロックチェーンは一般に暗号通貨と最も深く関連していますが、決済活動に応用すれば、分散型台帳を介した透明性の向上、不正行為の削減、処理時間の短縮を可能にします。ブロックチェーンは、仲介者の数を減らし、コストを削減して決済時間を短縮することで、クロスボーダー取引を大幅に改善できると見込まれます。スマート契約は、契約と取引を自動化して、規制順守を円滑化し、不審請求の申請を減らすことができます。
非接触型決済とモバイル決済: 近距離無線通信 (NFC) や QR コードなどの非接触型決済の採用は、パンデミック発生時の衛生上の懸念の高まりによって拍車がかかり、今後も続くと見られます。デジタルウォレットや決済アプリは、他のサービスとの統合が進み、予算追跡、ロイヤルティプログラム、財務管理ツールなどの機能を提供し、取引にとどまらず付加価値を提供しています。
Payment-as-a-Service (PaaS) とプラットフォームモデル: 金融機関は、企業がクラウドベースのプラットフォームを介して決済活動をサードパーティにアウトソーシングし、俊敏性と費用対効果を高める PaaS モデルを採用する傾向が強まっています。
レグテック (規制に対応するテクノロジー): デジタル決済が成長するにつれて、規制も厳格化が進んでいます。レグテックソリューションは、企業が進化する規制を順守し、順守のチェック、リスク管理、レポート作成など、規制に対応するプロセスを管理できるように開発されています。
クロスボーダーイノベーション: クロスボーダーイノベーションは、コスト削減と取引の高速化に重点を置いています。Ripple や他のブロックチェーンベースのソリューションなどのテクノロジーは、従来の金融システムと比較してリアルタイムの国際取引をリアルタイムで進めることができます。
モノのインターネット (IoT) の統合: IoT 技術は、自動車から家電製品まで、スマートデバイスを介した取引を実現し、決済の領域を拡大しています。IoT デバイスの埋め込み型決済システムでは、動作やニーズに応じた取引を開始できます。たとえば、冷蔵庫の場合、庫内の食品が少なくなったときに食料品の注文と支払いを行うことができます。
生体認証: 決済分野では生体認証 (指紋、顔認識、声音 / 声調) の使用が増加しています。生体認証の開発では、取引中に本人を確認するために、安全性を向上し、侵入を難しくすることに重点が置かれます。
サステナビリティ: 金融サービスの業界では、持続可能性への関心が高まっています。将来の決済活動では、環境維持を意識した決済方法を推進し、持続可能な実務を後押しできるようにするなど、環境への影響が考慮されます (例: 紙の領収書への依存の低減、環境意識の高いテクノロジーへの投資)。
支払いプロセスを自動化する方法
支払いを自動化することで、従業員はより複雑な業務や顧客サービスに集中できます。また、支払いの自動化は、遅延や支払いの誤りの原因となる手動データ入力によるエラーを減らし、支払いスピードアップを推進することで顧客満足度を向上させます。
自動処理を作成する場合は、顧客の支払い情報のすべてを安全に保存して暗号化し、関連する支払いカード業界 (PCI) のデータセキュリティ標準に従い、システム内で支払い情報と設定を管理するオプションを顧客に提供するようにします。
自動化が見込まれる決済
オンライン決済: オンライン取引を自動化して、顧客の決済体験のスピードアップを実現します。
継続支払い: 継続支払いを自動化して、事業者と顧客の支払いプロセスを簡素化します。これは、Automated Clearing House (ACH) 送金、登録クレジットカード、または銀行口座への関連付けを通じて行うことができます。
返金: 返品または支払いに関する不審請求の申請後の返金を自動化します。
自動化の導入
システム連携: 決済自動化ツールを企業資源計画 (ERP) システムと連携させることで、財務システム間のデータフローを利用できるため、手作業によるデータ入力が不要になります。
ペイメントゲートウェイ: ペイメントゲートウェイソリューションを使用して、オンライン取引を安全かつ効率的に自動化します。
不正利用の検出と防止: AI と機械学習を使用すると、企業は不正利用の検出と防止を自動化し、システムで大量の取引データを分析できるようになります。ペイメントゲートウェイの多くがこうした機能を備えていますが、事業者が自社でシステムを導入することもできます。
決済活動管理のベストプラクティス
決済活動の管理には、プロセスをより円滑に進めるためのベストプラクティスがあります。
決済手段の構成
顧客中心のアプローチ: 顧客層、地域、消費習慣を分析します。顧客の好みに合わせた支払いオプションを提供します。事業をグローバル展開している場合は、さまざまな国や地域で普及している現地固有の決済手段に対応します。
新興の技術: 後払い (BNPL)、QR コード決済、デジタルウォレットなど、決済の新たなイノベーションに関する最新情報に敏感でなくてはなりません。戦略的に評価して導入してください。
決済オーケストレーションとスマートな経路選定
決済オーケストレーションプラットフォーム: 集中管理できるプラットフォームを導入して、複数の決済サービスプロバイダー (PSP) を管理します。これにより、処理が簡素化され、コスト、成功率、その他の基準に従って取引がインテリジェントにルーティングされます。
スマートな経路選定ルール: オーケストレーションプラットフォーム内で動的ルール セットを構築します。PSP の実績、地域、取引額などのリアルタイムの要素を考慮します。
フェイルオーバーと冗長性: オーケストレーションエンジンに自動フェイルオーバー機能があり、PSP に障害が発生した場合に取引の経路を選定しなおせるようにして、支払いの中断を回避します。
不正防止
セキュリティ対策の多層化: 3D セキュア、住所確認システム (AVS)、CVV (カード検証値) チェック、速度チェック、デバイスフィンガープリンティングなどの不正防止ツールを組み合わせて使用します。
動的ルールエンジン: 新しい不正利用パターン、行動分析、履歴データに基づくリアルタイムの調整が可能な強力なルールエンジンを作成します。
専任の不正対策チーム:不審なアクティビティへの事前対処を可能にする調査を行う専任の不正防止チームを構成して配置します。
手数料の最適化と照合
手数料の交渉: 取引額に基づいて、PSP およびカードネットワークと処理料金を交渉します。ビジネスの成長に合わせて定期的に評価し、再交渉します。
多通貨処理: クロスボーダー決済を専門とし、競争力に優れた外国為替レートを設定している PSP を見つけましょう。
自動照合: 支払い取引を社内の会計システムと照合するプロセスを自動化します。
データに基づくインサイトとレポート作成
ダッシュボードの一元化: オーソリ率、拒否理由、チャージバック率、照合データなどの主要な指標を表示するユーザーフレンドリーなダッシュボードを作成します。
詳細なインサイト: データを分析して、決済手段、地域、またはビジネス別の傾向を特定し、この情報を使用して支払いの構成を微調整し、手数料交渉に利用します。
事前対処を可能にする監視: 異常なアクティビティやパフォーマンス指標の変化に対するアラートを設定して、敏速な対応とトラブルシューティングを可能にします。
顧客体験とサポート
支払いの透明性: 顧客が決済を行うときに、受け付ける決済手段、手数料、処理時間に関する情報を提供します。
支払いに関する問題の解決: 不審請求の申請、返金、チャージバックを処理するための明確なプロセスを定めます。
オムニチャネル対応: 電話、メール、ライブチャット、セルフサービスポータルなど、支払い関連の問い合わせを複数のチャネルで受けられるようにします。
法令遵守 / 規制順守と適応性
規制監視: 常に支払い関連の規制 (PCI DSS、PSD2 など) の改定に関する最新情報を入手できるようにします。システムとプロセスが規制に従っていることを確認してください。
新しい規制への対応: 先を見越してプロセスを調整し、新たな規制が施行されたときに順守できるようにして、ペナルティやサービスの中断を回避します。
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