支払い API: 概要と種類、および事業者にとってのメリット

  1. はじめに
  2. API とは
  3. 支払い API とは
  4. 支払い API の種類
  5. 支払い API の仕組み
  6. 支払い API の利用から得られるメリット
    1. Stripe の 支払い API

支払い API を使用することで、事業者はこれまでと異なる方法で顧客取引を管理できるようになりました。支払い API を導入した事業者は、取引スピードが大幅に向上し、決済処理のミスが減少したと報告しています。最近実施された McKinsey の調査によれば、支払い API を導入した事業者の 3 分の 1 が、10% の売上増加を見込んでいます。

業務をオンラインに移行する事業者が増えるにつれ、機密性の高い財務データの保護が大きな懸念事項となっています。支払い API は堅牢なセキュリティ機能を提供するため、事業者は必要な法令遵守基準を維持し、データ漏洩のリスクを低減できるようになります。さらに、これらの API が提供する豊富な機能環境を活用することで、決済プロセスを柔軟に制御して、多様な決済手段の提供と複雑な決済シナリオへの対応が可能となります。

そのため、事業者が数多くのメリットをもたらす、支払い API に注目するのは当然と言えます。この記事では、支払い API の主な機能、動作方法、これらのツールを最大限に活用して取引処理能力を強化するための方法をご説明します。

この記事の内容

  • API とは
  • 支払い API とは
  • 支払い API の種類
  • 支払い API の仕組み
  • 支払い API の利用から得られるメリット

API とは

「API」とは「アプリケーション・プログラミング・インターフェイス」の略で、ソフトウェアアプリケーションを構築して相互作用するための一連のルールとプロトコルを指します。API は現代のソフトウェア開発に不可欠であり、分散システムやウェブサービス、クラウドコンピューティングで広く活用されています。

API は、ソフトウェアコンポーネント間の相互通信に使用されるメソッドとデータフォーマットを定義します。異なるソフトウェアコンポーネント間で一種の契約として機能し、これらのコンポーネントがどのように相互作用するかを規定します。API は、異なるソフトウェアシステム間の通信を許可するだけでなく、プログラマーが API を使用して他のソフトウェアコンポーネントの機能にアクセスすることも可能にします。たとえば、ある天気予報アプリケーションには、現在の気象データを得るために、天気予報サービスプロバイダーの API が使われているかもしれません。

API には、ウェブ API、オペレーティングシステム API、ライブラリベース API など、さまざまな種類があります。API について語られる場合、その API は Web API を指していることが一般的です。Web API は HTTP を中心に構築され、JSON や XML などの形式でデータを返すことができます。Web API は、異なるウェブサービスとアプリケーション間のインターフェイスを提供し、インターネットを介して相互に通信できるようにします。

支払い API とは

支払い API とは、ソフトウェアアプリケーションで決済を処理することを可能にする API の種類です。この API は、アプリケーションが決済処理サービスと通信するための安全で信頼性の高い方法を提供し、以下のようなアクションを可能にします。

  • 支払いの処理
    アプリケーションは 支払い API を使用して、クレジットカード情報や取引金額などの支払い情報を、ペイメントゲートウェイやクレジットカード処理サービスに送信できます。

  • 支払い情報の保管
    支払い API によっては、将来の取引のためにアプリケーションが決済情報を保管できるようにするものもあります。この機能は、Amazon や Netflix などのサービスで、ユーザーのクレジットカード情報を記憶し、ワンクリックで支払いができるようにするために採用されています。

  • 取引の返金
    顧客が返金を希望した場合、アプリは 支払い API を使用して対象の取引を取り消すことができます。

  • サブスクリプションと継続支払いの処理
    支払い API を使用して、サブスクリプションなどのサービスでの継続支払いを設定、管理できます。

  • 支払いの確認
    取引が正常に完了したかどうかを 支払い API で確認できます。

支払い API の設計には、通常、クレジットカード番号のような機密性の高いデータを保護するための強力なセキュリティ対策が施されています。たとえば、機密データを、外的ないし悪用可能な意味や価値を持たないトークンと呼ばれる非機密データに置き換えるトークン化などの技術を採用できます。

支払い API の種類

支払い API にはさまざまな種類があり、多くの場合、それぞれが持つ具体的な機能に基づいて分類されます。ここではその例をいくつかご紹介します。

  • Transaction API
    支払い取引の実行に使用されます。支払いの開始、返金、キャンセルなどの各機能に対応しています。

  • Subscription API
    サブスクリプションにおいて重要である継続支払いの処理に使用されます。この API を使用することで、利用者に対して定期的に自動で請求できます。

  • Tokenization API
    支払い情報の安全な保管を可能にします。クレジットカード番号など決済に関する機密データを、トークンと呼ばれる非機密データに置き換えます。

  • Payout API
    個々の口座への売上の送金に使用されます。マーケットプレイスやプラットフォームでは、販売者やサービスプロバイダーへの支払いの送金にこの API を使用するケースが多くなっています。

  • Preauthorization API
    顧客のカードの売上を一時的に保留できるようにします。この機能は、製品やサービスを提供する前に、顧客の支払い能力を確認する必要がある場合に役立ちます。

  • Data API と Reporting API
    支払い取引に関する詳細なデータとアナリティクスにアクセスできるようにします。動向の把握、パフォーマンスの監視、十分な情報に基づくビジネス上の意思決定に役立ちます。

さまざまな決済サービスプロバイダーが異なる API 一式を提供しており、具体的な機能がそれぞれ異なることがあります。たとえば、Stripe では、開発者が自社のアプリケーションに導入できる API を提供し、支払い取引を処理できるようにしています。Stripe の API 機能については後ほどご説明します。

支払い API の仕組み

支払い API はビジネスアプリケーションとペイメントゲートウェイ間の橋渡し役を担い、事業者がさまざまな決済業務を効率的かつ安全に管理できるようにします。支払い API の具体的な機能は、果たすべき役割によって異なります。ここでは、API の仕組みをおおまかにご説明します。

  • 取引の開始: 顧客が購入を決定するとプロセスが開始します。顧客はクレジットカード情報などの支払い情報をアプリケーションに入力します。ここでいうアプリケーションとは、たとえばウェブサイト、モバイルアプリ、あるいはその他のプラットフォームです。この情報が事業者のサーバーに安全に送信されます。

  • API リクエスト: 支払い API と連携された事業者のサーバーは、安全な HTTPS POST リクエストをペイメントゲートウェイの API に送信します。このリクエストには、決済手段、カード詳細、取引金額など、必要な取引情報が含まれます。

  • 決済処理: リクエストを受信次第、ペイメントゲートウェイがこれを処理します。この処理には、取引情報の確認や不正利用の可能性がないかを検証してから取引を実行できるようにするために、カードネットワークやカード発行会社を含む、さまざまな機関とのやり取りが必要です。この複雑なやり取りを処理した後、ペイメントゲートウェイからシンプルな応答が事業者のサーバーに送信されます。

  • API 応答: 事業者のサーバーに対する支払い API の応答には、取引が承認されたか拒否されたかについてのほか、取引 ID やその他の関連情報についての詳細が含まれます。支払いが正常に完了した場合、ペイメントゲートウェイは、取引金額が顧客の銀行から事業者の加盟店口座へと確実に送金されるようにするための処理も行います。

  • 取引の確認: ペイメントゲートウェイからの応答を受信次第、事業者のサーバーはその応答を処理します。取引が正常に完了している場合、アプリケーションは通常、レコードを更新して購入内容を反映するとともに、確認が取れたことを顧客に伝えます。

個々の取引を支援する以外に、支払い API は他に以下のようないくつもの機能を備えています。

  • トークン化
    セキュリティの強化のため、多くの 支払い API はトークン化機能を備え、決済に関する機密データ (クレジットカード番号など) を一意の識別子、すなわちトークンに置き換えます。これを利用することで、顧客の機密データの保管に伴うリスクが大幅に低減されます。

  • サブスクリプションと継続支払い
    継続支払いモデルを採用している事業者の場合、支払い API でそのプロセスを自動化できます。顧客の支払い情報を安全に保管し、設定した間隔で請求を処理します。

  • 返金と不審請求の申請
    支払い API を活用すると、返金処理と不審請求の申請に対する管理を効率的に行うことができ、手作業での入力が最小限に抑えられます。

  • レポート機能とアナリティクス
    支払い API は取引のデータとアナリティクスを提供し、事業者が販売動向、成功した取引と失敗した取引、不審請求の申請率についてインサイトを得られるようにします。

  • 入金
    マーケットプレイスやプラットフォームを運営する事業者が 支払い API を利用すると、他のユーザーの銀行口座に売上を送金できるようになります。

支払い API の利用から得られるメリット

支払い API は業務の効率化、セキュリティ対策の強化、柔軟性の向上を実現できるため、オンライン取引を行う事業者にとって特に重要なツールです。こうしたメリットをさらに詳しく見ていきましょう。

  • セキュリティと法令遵守
    支払い API は取引のセキュリティを強化します。安全な暗号化方式によってデータを保護し、PCI DSS (Payment Card Industry Data Security Standards) への準拠を維持することで、データ漏洩や不正利用の潜在的リスクを低減できます。API によっては、トークン化を提供し、クレジットカード番号などの機密データを一意の識別子やトークンに置き換え、データ漏洩があった場合のリスクを低減します。

  • 決済処理の簡略化
    事業者は 支払い API を利用することで、決済の受け付けと処理の方法を効率化できます。支払い API は、金融機関やカードネットワークとのやり取りや不正検知に伴う複雑な部分を処理します。

  • スピードと効率
    支払い API の導入によって自動化を実現し、導入前には手作業による多大な労力を必要としていたプロセスをスピードアップします。また、支払い API はリアルタイムでの支払いの円滑化や、複数の取引の一括処理、返金管理、サブスクリプションの更新処理を実行できるため、業務効率が向上します。

  • 複数通貨と国際決済
    国際的に事業を展開している場合、支払い API を活用して通貨換算と国際取引を管理し、グローバルビジネスの実施プロセスをシンプルにできます。

  • 多彩な支払い方法
    支払い API を利用すれば、幅広い決済手段を受け付けられます。クレジットカードとデビットカードデジタルウォレット銀行振込など、多くの決済手段に対応しているため、顧客が好みの決済手段を選ぶことができ、顧客体験が向上します。

  • キャッシュフロー管理の改善
    支払い API はリアルタイムで取引を可視化できるため、キャッシュフロー管理が簡単になります。また、支払いデータにただちにアクセスできるため、売上や返金、支払いの失敗を正確に追跡し、財務上の意思決定をより多くの情報に基づいて行えるようになります。

  • データからのインサイトとレポート機能
    多くの 支払い API はデータ機能と分析機能を備えており、事業者は売上動向、成功した取引と失敗した取引、不審請求の申請率などに関するインサイトを得ることができます。こうしたインサイトは、ビジネスの戦略と意思決定に不可欠なものとなり得ます。

  • 拡張性
    ビジネスの成長につれて取引量も増加します。大量の取引を処理できるように設計されている 支払い API を利用すれば、決済インフラについて心配することなくビジネスを拡大することができます。

  • 連携とカスタマイズ
    支払い API は、CRM、ERP、会計ソフトウェアなど、既存のビジネスシステムとの連携が可能です。また、支払い API を利用して購入体験をカスタマイズすることで、自社のブランドに合致したシームレスなユーザー体験を提供できます。

Stripe の 支払い API

Stripe では、多岐にわたる決済関連タスクの管理に使用できる包括的な API を提供しています。Stripe の API は、オンライン決済の受け付け・管理方法を効率化するように設計されているため、既存の事業運営とのシームレスな連携を可能にし、堅牢なセキュリティ対策を提供します。

Stripe の 支払い API がどのように機能するかをご説明します。

  • 決済処理
    Stripe の 支払い API を利用すると、クレジットカード、デビットカード、および Apple Pay やGoogle Pay といったデジタルウォレットなど、さまざまな決済手段による支払いを受け付けられるようになります。Stripe の API は、取引の開始から売上処理まで、決済プロセス全体を管理できます。

  • サブスクリプションと請求処理
    Stripe では、サブスクリプションと継続請求を処理するための API も提供しています。そのため、事業者はこれらの API を通じて直接、経常収益を管理して自動化することができます。これには、無料トライアル、アップグレード、ダウングレード、解約なども含まれます。

  • Connect プラットフォーム
    Stripe Connect はマーケットプレイスとプラットフォーム専用に設計された API で、決済の受け付けのほか、サービスプロバイダー、請負業者、ベンダーなどサードパーティーへの入金も可能にします。

  • 不正対策のための Radar
    Stripe Radar の API は、機械学習を使用して不正取引を特定、防止します。Stripe が持つグローバルなビジネスネットワークのすべての決済を評価し、パターンを検出して不正利用を特定します。

  • レポート機能とアナリティクス
    Stripe では、財務レポートとアナリティクスを作成するための API を提供しています。これを利用することで、財務データに関するリアルタイムのインサイトが得られるほか、取引データを会計ソフトウェアと同期することもできます。

  • 国際決済
    Stripe は 135 種類以上の通貨に対応しているため、事業者は世界中の顧客から決済を受け付けられます。このため、海外での事業拡大が簡単になります。

事業者は Stripe の API を導入することで、自社に固有のニーズに合わせたカスタムの決済プロセスを構築し、効率性と顧客体験を向上させながら不正利用リスクを低減できます。また、API ファーストのインフラを構築することで、新たに利用可能となった機能や決済手段を簡単に追加し、決済プロセスをビジネスの展開に合わせて確実に拡張、適応させることができます。詳細を確認し、導入を開始するには、こちらをご覧ください。

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