EC カードはほぼ 20 年前に廃止され、girocard に置き換えられているのですが、ドイツではまだ EC カードという呼び方が生きており、girocard はよく EC カードと呼ばれています。この記事では、EC カード支払いの概要、仕組み、企業が EC カード支払いに対応する際に必要になることをご紹介します。また、事業の所有者に発生しうる費用や手数料や、事業者に EC カード支払いへの対応が法的に義務付けられているかどうかについても説明します。
この記事の内容
- EC カード支払いの概要
- EC カード支払いの仕組み
- EC カード支払いへの対応に必要なもの
- EC カード支払いに付随する費用や手数料
- 小売店に EC カード支払いへの対応が法的に義務付けられているか
EC カード支払いの概要
EC カード支払いとは、カード保有者が店舗での支払いに使用できるキャッシュレスの決済手段です。ドイツの EC カードには長い伝統があります。もともと、EC とは「Eurocheque process」の略でした。70 年代初頭に、銀行の顧客が海外で現金を使用することなく、簡単に小切手で支払えるようにすることを目指して導入されました。紙の小切手が受け入れられないことが多かったため、EC カードにより、「Eurocheques」の安全な換金を保証手段が提供されました。
数年後、電子現金取引プロセスの導入により、紙の小切手に代わって磁気テープ付きのプラスチックカードの利用が普及しました。この新たなカードにより、電子決済端末 (EC 端末とも呼ばれる) での現金引き出しや、店舗での個人識別番号 (PIN) によるキャッシュレス決済が可能になりました。1980 年代後半には電子デビットカードが開発され、Mastercard の牽引により国際的な金融機関にも拡大されました。
従来の EC カードは 2007 年に廃止されましたが、これは、ドイツの銀行と電子マネーシステムを国内の現金自動預け払い機 (ATM) ネットワークとの統合に伴って行われました。その後、ドイツでの決済プロセスの標準化と EU 域内でのキャッシュレス決済の簡素化を目的として、girocard が導入されました。
現在、EC カードの後継カードである girocard は、ドイツで最も広く使用されている支払いカードです。2024 年には、79 億件の決済が girocard を使用して行われました。これは、ドイツの小売業にとって前年比 5.6% の増加に相当します。ドイツでは EC カードの利用が深く浸透し、girocard と同じように利用されているため、口語で girocard のことを「ECカード」と呼ぶことが一般的になりました。
EC カード支払いの仕組み
EC カード (すなわち girocard) での支払いは、カード保有者にとっても、事業者にとっても簡単です。次のようなプロセスが使用されます。
カードをリーダーに挿入
顧客は、カードをカード端末に挿入するか、カードリーダーにかざして非接触型決済を行います。カードが決済アプリにデジタル保存されている場合は、スマートフォンをリーダーにかざすこともできます。
オーソリの実行
支払いは、加盟店の決済サービスプロバイダーに応じて、カード保有者の PIN または署名を使用して確認されます。50 ユーロ未満の金額の非接触型決済を行う場合は通常、PIN も署名も要求されません。PIN は、セキュリティ上の必要に応じてときたましか要求されません。ほとんどの場合は、カードを端末にかざすだけで十分です。
端末から当座預金口座への接続
基本的に EC カードはデビットカードです。このため、カード保有者の当座預金口座に直接リンクされていることになります。ユーザーが POS で支払いを行うと、端末から銀行口座に接続し、その口座から直接請求金額が引き出されます。ただし、支払いがこのように処理されるのは、PIN を使用した確認が行われた場合に限られます。この場合は、端末から銀行に口座残高の確認を求めるリクエストが送信されます。口座に支払うべき金額に充当できるだけの十分な資金がある場合にのみ、支払いがオーソリされます。加盟店側から見ると、このプロセスには手数料が発生しますが、当該の金額が取り分けられ、安全に受領できることが保証されます。
支払いの確認に署名が使用された場合は、加盟店に負担費用は生じません。この場合、口座に必要な資金が保持されているかどうかの確認は行われません。顧客は署名することで、電子口座振替を承認しますが、口座振替を取り消すこともできます。
支払いを処理
専門のサービスプロバイダーに決済を外注できるため、通常、事業者自体は決済を処理しません。技術的通信事業会社 (TNO) が、銀行と事業者の決済システム間の安全な通信を実現し、取引が適正に処理されるように保証します。ただし、TNO は、大手スーパーマーケットチェーンや国際的な小売ブランドなど、大量の取引を処理する大企業と独占的に連携する傾向があります。
カフェ、ヘアサロン、小規模小売業者などの中小の事業者が TNO と直接的なパートナーシップを結ぶことは、たいていの場合、現実的とは言えません。代わりに、これらの事業者は、技術的なプロセスを TNO に外注すると同時に、決済処理の取引関連の領域の管理を法人向け通信事業者 (CNO) に依存しています。これにより、中小の事業者は、大手小売チェーンも使用している安全で信頼性の高い決済システムを利用できます。
売上の送金、および顧客側の確認の受領
支払いが承認されると、顧客の当座預金口座から加盟店の事業用口座への送金が行われます。この取引には数日かかる場合があります。POS では、顧客が通常領収書として支払いの確認をすぐに受け取ります。この領収書は取引の証明となり、返品や苦情の際に使用できます。後になって、取引をキャンセルする必要が生じた場合は、チャージバックを開始できます。
EC カード支払いへの対応に必要なもの
決済手段として EC カード支払いに対応しようとする事業者は、技術面および物流に関するさまざまな要素を考慮する必要があります。
カードリーダー
EC の支払いに対応するための基本的な技術要件として、EC カードを読み取れるカード端末が必要になります。この端末は、有線でも、モバイルでもかまいません。有線デバイスは固定された場所に配置され、コードを通じて電力が供給され、壁の差し込み口を通じてインターネットに接続できます。モバイルリーダーは持ち運びが可能なため、どこででも使用できます。Wi-Fi または Bluetooth 経由でベースステーションに接続し、充電することもできます。モバイルは、特に店舗内と屋外 (ファーマーズマーケットでの対面など) の両方で顧客への請求を行おうとする事業者に適しています。
Stripe を利用すると、カード支払いへの対応が簡単にできます。Stripe Terminal では、認証済みの S 700 などのカードリーダーや BBPOS WisePad 3 などのモバイルデバイスを利用できます。タッチ決済もモバイル機能のひとつで、デバイスを追加することなく、iPhone や Android で直接、非接触型決済に対応することができます。最新の POS システムは、これらの支払いオプションに対応しています。未対応の場合は、新しい POS システムへの更新が必要になります。
従業員のトレーニング
EC カード支払いの技術要件を満たした後に重要になることは、従業員をトレーニングして新しいデバイスの使用に習熟させることです。これにより、スムーズな処理を実現でき、カード端末を使用する際のエラーを防ぐことができます。また、事業者は、決済時にサインを表示するなどして、新しい支払いオプションを顧客に伝える必要があります。
EC カード支払いに付随する費用や手数料
デビットカード支払いに対応しようとする事業所有者は、コストについて検討する必要があります。というのは、選択するペイメントプロバイダーと事業者の売上額によってコストが大きく変わるためです。
POS 決済用のカードリーダーの購入にかかる 1 回限りのコストも考慮する必要があります。カードリーダーの価格は、モデルとメーカーによって異なりますが、通常は 50 ~ 500 ユーロの範囲に収まります。これ以外に、月額 20 ユーロ未満でカードリーダーをレンタルすることもできます。多くの場合、デバイスのセットアップには 100 ユーロ未満の 1 回限りの定額手数料も請求されます。
決済サービスの利用には、月額または年額の料金がかかる場合もあります。これらの基本料金はプロバイダーによって大きく異なるため、コストを慎重に比較するだけの価値があります。
さらに、EC カード支払いごとに取引手数料も発生します。カードプロバイダーは、カードの使用に対して手数料を請求します。金額は、カードの種類などによって異なりますが、通常は取引金額の 1 〜 3% です。
小売店に EC カード支払いへの対応が法的に義務付けられているか
ドイツでは、小売業者は一般に EC カード支払いへの対応を法的には義務付けられていないため、顧客に提供する支払い方法を自由に決定できます。そうではあっても、EC カード支払いには対応することをお勧めします。ここでは、この決済手段の主なメリットを簡単にご紹介します。
顧客満足度
EC カード支払いは、購入に対する支払いを便利に行う手段を顧客に提供します。デジタル化が進む世界では、顧客はスピーディーで安全なキャッシュレス決済の利便性に重きを置いています。現代の顧客は店舗でカード支払いができることをあてにしており、この決済手段に対応しない事業者は見込み顧客を失う可能性があると言えます。
売上の増加
現金での購入では、その場での手持ち金額までしか顧客は購入できません。カード決済ではこの限界がなくなり、顧客の購入可能額が増え、進んで購入できるようになります。これにより、事業者側では平均購買額が増え、増益につながる可能性があります。
セキュリティ
EC 決済などのキャッシュレス決済を提供することで、事業所に常備する紙幣や硬貨の量を減らすことができます。現金の用意が減るということは、現金を入れる引き出しや金庫などの安全な保管対策の必要性が減ることになります。また、事業拠点と銀行への移動時のいずれについても、盗難や紛失のリスクが軽減されます。
会計処理の効率化
EC カード支払いを導入すると、決済処理の効率化が可能になります。取引はリアルタイムで処理され、事業者の会計システムに自動的に記録されます。これにより、現金支払いの手動処理に伴う管理作業が減り、エラー発生率が減少します。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。