POS システムは、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせて、ビジネス所在地での販売取引を円滑に行えるようにするもので、顧客はここで、商品やサービスの代金を支払います。POS システムの機能はさまざまですが、一般的には、販売取引を処理して決済を受け付ける機能が含まれます。在庫を追跡し、顧客データを管理できる機能もあります。オーストラリアの POS の市場規模は、2023 年の時点で 5 億 1,500 万 USD 以上と評価されており、2028 年まで、12.5% 近くの複合年間成長率で成長すると予測されています。
以下では、オーストラリアの POS システムに関して企業が知っておくべきこと、つまり、POS システムの構成要素と、それが連携して取引を促進する方法、POS システムのリスクとメリット、ビジネスに適した POS システムの選び方についてご紹介します。
この記事の内容
- POS システムの構成要素
- POS システムの仕組み
- POS システムを使用するメリット
- POS システムの課題
- POS システムの選び方
POS システムの構成要素
POS システムはハードウェアとソフトウェアで構成され、それが連携して決済を受け付けます。ここでは、各構成要素について詳しく説明します。
ハードウェア
POS 端末 (コンピューターまたはタブレット): 従来のコンピューター、オールインワンのタッチパネル装置、または多目的タブレットの場合があります。POS ソフトウェアが動作するシステムの中央ハブであり、オーストラリアで一般的なのは、EFTPOS (Electronic Funds Transfer at Point of Sale) 機です。
モニターまたはディスプレイ: レジ係が商品リスト、価格、取引の詳細を見ることができる POS インターフェイスです。顧客向けディスプレイを別に設置することで、エンゲージメントを向上させることができます。
バーコードスキャナー: 商品のバーコードをスキャンし、その商品を売上に追加します。
キャッシュドロア: 現金、小切手、領収書を安全に保管します。領収書プリンターに接続されていることが多く、取引完了後に自動的に開きます。
領収書プリンター: 取引の記録が記載された、顧客向けの明細付き領収書を印刷します。
クレジットカードリーダー: チップ付き (EMV) カード、スワイプカード、Apple Pay や Google Pay などの非接触型近距離無線通信 (NFC) 決済などの支払い方法を処理します。
ソフトウェア
POS オペレーティングシステム: システムの基盤であり、ハードウェアとソフトウェアの相互作用を管理します。通常は、Windows、Android、iOS、または特殊な POS オペレーティングシステムです。
POS アプリケーション: 以下の機能のインターフェイスが用意されたコアソフトウェアです。
- 商品データベース: 価格、説明、在庫レベルなどの商品情報が保存されています。
- 売上処理: 合計と税金を計算し、割引とプロモーションを処理します。
- 在庫管理: リアルタイムで在庫レベルを追跡し、再注文を自動化できます。
- 顧客関係管理 (CRM): 顧客エンゲージメントやロイヤルティプログラムのために顧客プロファイルと購入履歴を管理します。
- レポート機能と分析: 売上レポートを生成し、傾向を特定します。
- 商品データベース: 価格、説明、在庫レベルなどの商品情報が保存されています。
POS システムの構成要素としては他にも、食料品店やデリで青果物やバルク品を計量するためのはかり、レストランで注文を直接厨房に送るキッチンディスプレイシステム (KDS)、バーコードラベルや値札を印刷するラベルプリンター、スタッフの勤務時間や勤怠を追跡する従業員のタイムレコーダーなどがあります。
POS システムの仕組み
POS システムの機能は、システムによってそれぞれ異なりますが、一般的には、次の手順で取引を処理します。
スキャン: バーコードスキャナーを使って商品がスキャンされます。これにより商品情報が POS ソフトウェアに送信されます。
商品情報の取得: POS ソフトウェアにより、価格などの商品の詳細がデータベースから取得され、購入商品の合計金額が計算されます。
支払い完了: 顧客は希望する支払い方法 (現金、クレジットカード、デビットカードなど) で支払います。POS はペイメントゲートウェイや銀行と通信して取引を承認することによって、支払いを処理します。
領収書の作成: 支払いが処理された後、領収書が作成され、印刷されるか、メールやショートメッセージで送信されます。
在庫レベルの更新: 販売完了に伴い、在庫レベルは、正確性を維持するためにリアルタイムで更新され、注文のスケジュールに反映されます。
レポート作成: レポートや分析は、販売ごとに収集されたデータから POS ソフトウェアで作成できます。小売業者は、この情報を利用して、販売傾向の把握、売れ筋商品の追跡、従業員の業績の管理、情報に基づくビジネス上の意思決定を行うことができます。
POS システムを使用するメリット
POS システムにより、あらゆる規模のビジネスの決済処理が簡素化されます。ここでは、その主なメリットについて説明します。
取引の迅速化: POS システムでは商品のスキャンと集計が効率的に行われ、決済フローが高速化するため、顧客の待ち時間が短くなります。
タスクの自動化: POS システムにより、消費税の計算、割引の適用、在庫の更新などの定型業務が自動化され、スタッフは顧客サービスにさらに専念できます。
ヒューマンエラーの最小化: 商品のスキャンから合計と税金の計算まで、販売プロセスのさまざまなポイントで行われるデータ入力を POS システムで自動化し、手作業による入力ミスを最小限に抑えます。
一貫した販売体験: オンラインとオフラインの両方でビジネスを展開する企業は、POS システムを使って販売チャネルを統一し、すべてのプラットフォームで一貫した顧客体験と価格設定を提供できます。
リアルタイムの在庫追跡: POS システムでは在庫がリアルタイムで更新されるため、在庫過多や在庫切れを防ぐことができます。
取引データ: POS システムにより、すべての取引に関するデータが収集されます。このデータは、売上、利益、顧客行動などの詳細なレポートの作成に使用できます。たとえば、企業はさまざまな商品の売れ行きに関する詳細なレポートを、仕入れの決定、人員配置の改善、販促イベントの計画、商品の調整に利用することができます。
やり取りのパーソナライズ: POS システムの中には顧客の購入履歴を保存できるものがあり、企業はこれに基づいて、サービスのパーソナライズや顧客に沿った提案を行うことができます。
会計システムとの連携: POS システムと会計ソフトウェアの連携により会計プロセスが簡素化され、財務レポートの正確性が確保されます。
セキュリティ機能: POS システムは、機密性の高い支払い情報を保護し、不正利用を防止するための高度なセキュリティ機能を備えています。
リモートアクセス: 最新の POS システムはクラウドベースであることが多く、どこからでもアクセスできるため、複数の場所を管理している企業や、リモートで運営を監督しなければならないオーナーやマネージャーを抱える企業の助けになります。
POS システムの課題
POS システムにはメリットのほか、システム固有の課題もあります。よくある問題を軽減するために、ベンダーの評判が良く、強力なセキュリティ機能と暗号化を備えた POS システムを優先的に選んでください。ソフトウェアアップデートとスタッフのトレーニングを定期的に実施し、システムのダウンタイムに備えて、バックアップシステム、たとえばオフライン決済処理オプションや手動プロセスを用意することを検討してください。一般的な POS システムの課題を以下に示します。
初期費用: POS システムには、ハードウェア、ソフトウェア、セットアップ費用など、多額の先行投資が必要で、システムによっては数千オーストラリアドルに達することもあります。また、サブスクリプションベースのモデルで運営されているものが多く、ライセンス料を継続的に支払う必要があります。
保守とアップグレード: ハードウェアの修理または交換、セキュリティパッチや新機能のためのソフトウェアアップデートが必要になることがあります。
ダウンタイム: POS システムに不具合があると業務に支障をきたし、それが売上損失や顧客の不満につながります。ダウンタイムは、ハードウェアの故障、ソフトウェアエラー、または接続性の問題 (POS システムのほとんどが、安定した電力供給とインターネット接続に依存) によって引き起こされる可能性があります。
学習曲線: システムによっては、スタッフがすべての機能を効果的に使いこなせるようになるための学習曲線が急な場合があります。新しいシステムを導入するには、包括的なスタッフトレーニングが必要で、導入当初はエラーや操作の遅れが生じる可能性があります。
規制要件: POS システムが PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) などの業界のセキュリティ規制に準拠していることを、企業側で確認する必要があります。法令遵守の要件は複雑で、コストがかかります。
ベンダーへの依存: テクニカルサポートやトラブルシューティングについては POS ベンダーに依存しているため、ベンダー停止の煽りを受けやすく、価格変更にも影響されやすいかもしれません。
限定的なカスタマイズ: POS システムによっては、ビジネス固有のニーズに基づく変更のオプションが限られます。
POS システムの選び方
ビジネスに適した POS システムを選ぶことは重要です。ここに示すロードマップでは、その選定プロセスについて説明します。
ビジネスニーズを特定する
業種: POS システムのニーズは、小売店、レストラン、サロン、サービス提供型ビジネスによって異なります。それぞれの業種に特化した機能 (たとえば、小売業の場合は在庫管理、レストランの場合はテーブル管理) を検討してください。
ビジネス規模: 拡張性は重要です。1 店舗でも複数店舗でも、ビジネスに合わせて拡張できるシステムを検討してください。
予算: 初期費用、継続的なライセンス料、ハードウェアアップグレードの可能性に対して予算を決めます。
機能: 在庫管理、CRM、レポートと分析、決済処理機能など、必要な機能をリストアップします。
POS システムのオプションを調査する
ソフトウェアのレビュー: さまざまな POS システムのレビューや比較情報を読み、それぞれの強み、弱み、ユーザー体験を把握します。
業界のリソース: 貴社のビジネスモデルに関連する POS システムの推奨事項やレビューが、業界団体や業界誌によって提供されていることがよくあります。
ベンダーのデモ: システムのインターフェイス、機能、使いやすさを直に感じることができるように、ベンダーを絞り込んでデモをスケジュールします。
システムを評価して比較する
機能性: 現在必要とする機能がシステムにあること、そして将来の潜在的なニーズに対応できることを確認します。
使いやすさ: 特にテクノロジーに詳しくないスタッフにとってのシステムの使いやすさを検討します。
ハードウェアの互換性: ソフトウェアが既存のハードウェアで動作するか、追加の機器が必要かを確認します。
拡張性: ビジネスに合わせて拡張できるシステムを選択します。端末の追加、複数の場所の管理、新しいアプリケーションとの統合などが必要になる場合でも対応できるシステムです。
セキュリティ: システムのセキュリティ機能と業界の規制への準拠状況を評価します。
コスト: ハードウェア、ソフトウェア、サブスクリプション料金、決済処理に関連する追加料金や加盟店手数料を含む総所有コストを比較します。恐れずに交渉してみましょう。POS ベンダーは、貴社固有のニーズと取り組みに基づいて価格交渉に応じてくれるかもしれませんし、追加機能を提供してくれる可能性もあります。
顧客サポート: ベンダーの顧客サポートの品質や利用しやすさを評価します。
トライアル体験: ベンダーの多くが提供している無料トライアルにより、システムをテストし、ビジネスに適しているかどうかを確認することができます。
長期的な使用: 初期費用は重要ですが、ビジネスに合わせて拡張し、進化するニーズに対応できるシステムを優先してください。
契約条件: 契約書やサービスレベル契約 (SLA) を注意深く確認し、提示されていない手数料や制限について理解します。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。