GmbH の売却プロセスは時間を要し、難航する場合があります。この記事では、企業の売却を成功に導く方法を紹介します。また、GmbH 全体ではなく、株式のみを売却する場合に適用される規定についても説明します。最後に、支払い不能会社または負債のある会社を売却する場合の選択肢について検討します。
この記事の内容
- GmbH の売却方法
- GmbH の株式売却時に適用される詳細
- 支払い能力がない GmbH 売却の可否
- 負債のある GmbH 売却の可否
GmbH の売却方法
有限責任会社 (GmbH) を売却するには、十分な準備と計画が必要です。法律面および税金面から遵守すべき事項は多数ありますが、入念に下準備することで売却価格を高めることができます。GmbH の売却ステップは次のとおりです。
- 販売戦略
- GmbH 売却の準備
- 企業監査
- 買収契約
- GmbH 売却に伴う課税
販売戦略
GmbH の売却に先立ち、株主はそれぞれの売却戦略を練るために、基本的な点をいくつか確認する必要があります。中でも重要なことは、販売額を最大化したいのか、あるいは金銭的損失を伴ったとしても最速で売却したいのかという点です。一般に、時間的な制約はないに越したことはありません。しかし、GmbH の売却には数年かかることもあるため、場合によってはプロセスのスピードアップを望んだり、その必要に迫られたりするケースもあるでしょう。
売却プロセスにおいては、潜在的な買い手と、その関心事を常に考慮する必要があります。財務的投資と戦略的投資には、明確な違いがあります。一般に財務的投資家は短期のリターンを求めるため、GmbH を転売して最大限の利益を得ようとします。対する戦略的投資家は通常、長期的な関与を目標とし、シナジー効果、さらには特許やライセンス、流通チャネルなどの貴重な資産を活用しようとします。
GmbH の売り手が交渉から最良の結果を得るには、こうした買い手の動機を把握することが重要になります。最終的に財務的投資家と戦略的投資家のどちらを選ぶかは、売り手の目的によって決まります。自社が「信頼できる人物」によって真剣かつ長期的に継続されることを望むのであれば、戦略的投資を選択すべきです。逆に財務的リターンを優先するのであれば、今後 GmbH が発展するかどうかは別として、より好条件の提案に応じるべきです。
GmbH の売却準備
購入希望者にはまず、匿名でGmbHの簡単なプロフィールを提供します。関心を示した購入希望者は、交渉を進めるうえで守秘義務を厳守する必要があります。売り手は売却プロセスにおいて、最終的な買収先とならない利害関係者にも、詳細な企業情報を開示することになります。したがって、接触者が取引や企業に関する機密事項を守り、不適切に使用しないようにしなければなりません。そのために売り手は機密保持契約書 (NDA) を作成し、交渉開始時に相手方に署名を求めます。
次のステップでは、当事者に企業に関する定量的および定性的な重要データを含む詳細報告書が渡されます。売り手は、この文書を作成する際も細心の注意を払う必要があります。プロモーションパンフレットとしても機能することが望ましいため、内容の正確性はもちろん、魅力的なデザインについても配慮しなければなりません。
買い手候補がさらに興味を示した場合は、より詳しい内容を話し合います。こうした話し合いを経て作成される 3 番目の文書が、仮合意書 (LOI) です。この買収の仮同意書には、買収予定価格をはじめとする経済的および法的に重要な事項が記載されます。ただし両当事者が LOI に署名したとしても、まだ法的拘束力はありません。
企業監査
次にデューデリジェンスとして、買い手による広範な企業監査またはリスク監査が行われます。その際に売り手は、法務面、税務面、財務面の基本情報をデジタルデータ空間ですべて提供します。この企業監査では技術面や環境面も監査対象になります。監査は買い手候補に代わって法律事務所や税理士、監査人が実施します。
特に重視されるのが、GmbH の設立が適正に行われたかや、増資および構造的方策の推進に問題がなかったか、差し迫った債務リスクがないかという点です。株主リストも詳しくチェックされ、また、会社法や民法上、取引に支障をきたす要素がないかも確認されます。基本的に売り手に対しては、問題点に関しても最大限の透明性をもって開示することが推奨されます。
デューデリジェンス期間は、完了日も含め、事前に正確に定めておく必要があります。一般的に監査は、結果の要点をまとめた報告書の作成をもって終了し、その内容は買い手候補が意思決定する際の重要な根拠となります。
買収契約
企業買収契約書は GmbH 売却の中核をなします。各契約は個別に交渉されますが、基本事項として、以下の内容が含まれます。
- 買収価格、支払い条件、価格調整条項
- 基本的に売り手が財務リスクを負う保証
- 売り手の利益に関する責任制限
- 業務移管のためのスタッフ手配
- 税務監査および企業監査に関する条項
- 独占禁止法に関する規約
- 制限期間に関する合意
- 売り手の競争制限
- 仲裁合意
買収契約書に問題があった場合、特に売り手にとって大きな痛手となり得るため、締結前に法的な観点から必ずチェックする必要があります。両当事者が署名した時点で GmbH の売却は成立しますが、まだ法的効力はありません。GmbH を完全に取得する場合は株式取引となるため、株式譲渡契約書の締結も必要です。その際に GmbHG (ドイツ GmbH 法) 第15条 (4) に則り、公証人よる認証を受ける必要があります。この過程を経て初めて売却が完了します。資産取引の場合は株式取引と異なり、譲渡対象は GmbH の株式ではなく、個別の資産または物品のみです。この場合、公証は必要ありません。
GmbH 売却に伴う課税
株式取引であれ資産取引であれ、売り手はキャピタルゲインに 対する税金を支払わなければなりません。後者の場合、GmbH が売り手となるため、キャピタルゲインに対して法人税と営業税が課されます。株式取引の場合は、売却株式が企業資産と私有資産のどちらとして保有されているかによって、課税内容が変わります。
株式が私有資産の一部である場合、1% 未満の少量保有と 1% 以上の大量保有に分けられます。少量保有株式のキャピタルゲインには 25% の譲渡税が課され、さらに連帯付加税および該当する場合は教会税が課されます。大量保有株式のキャピタルゲインは Partial income (分割課税) 方式に従って課税されるため、キャピタルゲインの 40% は非課税、60% は個人税率で課税されます。詳細は EstG (ドイツ所得税法) 第 17 条を参照。企業資産の一部である株式を売却する場合も、分割課税方式が適用されます。
GmbH の株式売却に関する詳細
GmbH は必ずしも企業全体を売却する必要はなく、株式の売却も可能です。基本定款の規定に反しない限り、所有者はいつでも GmbH の株式を売却できます (GmbHG 第 15 条参照)。第三者への売却も、他の株主への売却も可能です。他の株主は、基本定款の定めに従って優先権を有する場合もあります。
株式の売却時は、現実的な企業評価に基づいて GmbH 全体の価値を確定し、それを基準にして個々の株式の価値を算出します。過年度の損益を分析し、すべての資産を含めた GmbH の資本を審査することで、今後の潜在的利益を見通すことができます。一般的に企業価値の概略を掴むための評価手順やパラメーターは数多く存在します。しかし最終的には、算出された数値は目安に過ぎず、必ずしも実際の買収価格になるとは限りません。実際の価格は需要と供給の兼ね合いによって決まります。
GmbH 全体を売却する際は、企業報告書、機密保持契約書、仮合意書を作成します。その後、買い手候補による企業監査またはリスク監査を経て、最終的に買収契約書の作成、署名、公証を行います。また、株式売却のプロセスも、GmbH 全体の売却プロセスと変わりません。特に重要なことは、基本定款の内容と矛盾なく売却を実施することです。
支払い能力がない GmbH 売却の可否
支払い能力がない GmbH であっても売却は可能ですが、破産手続きをしておらず、社会保障機関への滞納がない場合に限ります。ドイツ社会法典第 4 編 (SGB IV) 第 1 セクション (1) の規定に従うと、法定健康保険 (SGB V)、公的介護保険 (SGB XI)、法定災害保険 (SGB VII)、年金保険 (SGB VI)、失業保険 (SGB III) が含まれます。
売却が GmbH の救済につながれば、元代理人の名声は保たれます。さらに、新しい業務執行取締役が任命されれば、売り主が損害賠償を請求されることはありません。GmbH 自体は新たな所有者により支払能力が維持され、利益が生じる可能性もあります。このような理想的な状況になれば、支払い不能を防ぐことができます。
負債のある GmbH 売却の可否
負債のある GmbHであっても、破産手続きが行われていなければ、売却は可能です。売却対象には全債務が含まれるため、業務執行取締役は債務に起因する一切の義務を負う必要がなくなり、生じ得る賠償責任リスクや損害賠償請求を回避することができます。
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