カード発行 API 入門: 企業向け詳細ガイド

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Stripe Issuing は、画期的なスタートアップ、革新的なソフトウェアプラットフォーム、進化を続ける大企業から選ばれているカード発行インフラプロバイダーであり、カード発行枚数は 2 億 7,500 万枚を超えます。

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  1. はじめに
  2. カード発行 API とは
  3. カード発行 API の仕組み
  4. 発行可能なカードの種類
  5. カード発行 API の構成要素
  6. カード発行 API の用途
  7. カード発行 API のメリット
  8. カード発行 API の課題と制約
  9. 規制とセキュリティ上の考慮事項
    1. 規制に関する検討事項
    2. セキュリティ上の考慮事項
  10. カード発行 API プロバイダーの選び方
    1. ニーズを定義する
    2. 統合ツールを評価する
    3. コンプライアンスを確認する
    4. サポートについて確認する
    5. 価格を比較する
  11. カード発行 API の始め方
  12. Stripe Issuing でできること

カード発行 API は、より優れた制御と柔軟性を備えた決済ソリューションの統合を希望する事業者にとって重要なツールです。事業者はカード発行 API を利用して実物カードおよびバーチャルカードを直接自社システムから発行することができ、第三者サービスに頼る必要がなくなります。このレベルの直接制御により、事業者はカードを自社ブランドや、企業の支出アカウント用か顧客のロイヤルティプログラム用かといった特別なユースケースに適したデザインにする新たな機会を得ることができます。

アジア、ヨーロッパ、中東、アフリカでは、コマーシャルカード API の需要が最も大きいのですが、北アメリカでの需要も引き続き伸び続けると予想されます。

ここでは、カード発行 API のアーキテクチャ、機能、戦略的利点、および法令・規制遵守に関する検討事項とこのテクノロジーに伴う潜在的な課題についてご説明します。

目次

  • カード発行 API とは
  • カード発行 API の仕組み
  • 発行可能なカードの種類
  • カード発行 API の構成要素
  • カード発行 API の用途
  • カード発行 API のメリット
  • カード発行 API の課題と制約
  • 規制とセキュリティ上の考慮事項
  • カード発行 API プロバイダーの選び方
  • カード発行 API の始め方
  • Stripe Issuing でできること

カード発行 API とは

カード発行 API は、金融機関やフィンテック専門サービスへのプログラムによるアクセスを可能にするインターフェイスで、事業者は支払い用カードを発行、管理、制御することができます。こうした API は、カードの作成、有効化、利用停止、取引のモニタリング、残高照会など、様々なカード管理業務を行うためのパイプラインとして機能します。それにより、こうした機能を企業独自のソフトウェア環境に統合することができます。さらに、カード発行 API は高い柔軟性と設定可能性を備えており、事業者は自社の運用ニーズや規制要件にあわせてシステムをカスタマイズすることができます。

カード発行 API の仕組み

ここでは、カード発行 API の仕組みを詳しく見てみましょう。

1. API コールを実行する
プロセスの最初のステップでは、企業のアプリケーションがカード発行プラットフォームに対して API コールを実行します。このコールに含まれるのは、カード所有者の識別情報、デビットカードまたはクレジットカード の区別、支出カテゴリなどの特定カード機能といった必要なパラメータです。このAPI コールは、企業の要望をカード発行プラットフォームに正確に伝えるカスタマイズされた指令書の役割を果たします。

2. データの検証とコンプライアンスチェック
API コールを受けたら、発行プラットフォームは有効性とコンプライアンスに関する一連のチェックを行います。発行プラットフォームは、API コールのデータを検証し、それが事前に定義された形式や要件に適合していることを確認します。また、発行プラットフォームはコンプライアンスチェックを実施して、発行プロセスが本人確認 (KYC) やマネーロンダリング防止 (AML) に関する法律などの金融関連の規制に準拠していることを確認します。

3. 金融機関やカードネットワークとの通信
検証とコンプライアンスが確認されたら、API は関連する金融機関、または カードネットワーク (VisaMastercard など) に連絡します。多くの場合、このプロセスの部分では、2 段階目の、より厳格な検証およびコンプライアンスチェックが含まれます。これは、金融機関やカードネットワーク独自の規定や手順に沿ったものであることを反映しています。

4. 新しいカードを設定する
金融機関やカードネットワークによる確認が済んだら、API で新しいカードのバックエンド設定ができます。これには、最初の API コールのパラメーターに基づくアカウント番号の作成、取引限度額の設定、カードの使用ルール作成などが含まれます。

5. データを確認して返す
最後のステップでは、API は業務アプリケーションに戻り、カードが正常に発行されたことを確認します。また API はこの確認と併せて、カード番号や有効期限といったパラメーターなど、関連データのペイロードを送り返します。業務アプリケーションはこのデータを、顧客への通知や経費管理システムとの連携など、その後のタスクに使用します。

このプロセスの各ステップには、高度なカスタマイズが含まれます。カード発行 API を使用することで、事業者は特殊な運用ニーズとコンプライアンス要件を満たすよう、決済システムを微調整することができます。

発行可能なカードの種類

企業が API を使って発行できるカードの種類をいくつかご紹介します。

  • 実物デビットカード
    これは普通預金口座と連動した有形のカードで、ATM でも POS 取引にも利用することができます。カード発行 API では支払い制限や引き出し限度額の設定、支出の分類などができます。高度な機能として、地域別ロック機能-ある特定の地域でのみカードが機能するように設定すること-、セキュリティ強化のために定期的に変更される動的 CVV などが含まれています。

  • バーチャルデビットカード
    これはデジタルのみのカードで、実物カードと同じように利用することができますが、実物カードはありません。その代わり、デジタルウォレットに保存されます。仮想デビットカードは オンライン取引 に特に便利で、必要に応じて手動で作成・無効化できます。カード発行 API は、安全なオンライン取引のための 1 回限りカードや、定期支払い用カード の発行をサポートできます。

  • 実物クレジットカード
    実物カードには信用調査や様々な金利といった何重にも重なった複雑な層があります。カード発行 API は、こうしたクレジット評価、リスク評価、支出行動の分析を行う追加のモジュールと連携しています。一部の API はクレジットカードに付随する特典やポイントシステムを管理しています。

  • バーチャルクレジットカード
    実物カードに替わるデジタル版のクレジットカードは主に オンラインショッピング に利用されます。バーチャルクレジットカードは実物カードと同じ信用ベースの支出ができますが、デジタル取引向けに追加のセキュリティ層があります。バーチャルカードは実物カードよりも素早く容易に発行することができます。また、カード発行 API には短期的な利用限度額を設定したり 1 回の利用で自動的に失効するカードを作成したりする機能が備わっている場合があります。

  • プリペイドカード
    プリペイドカードにはあらかじめ残高が登録されており、銀行口座がなくても利用できます。カード発行 API は、ギフトや支払いに便利なプリペイドカードの一括発行を扱うことが多く、有効期限や加盟店カテゴリーの承認など、固有の制限を設定できます。

  • コーポレートカード
    コーポレートカードは、企業による利用に特化しており、部署別の利用限度額や高度な取引分析などの機能を備えています。カード発行 API の中には、事業者経費管理ソフトウェアと連携して、多通貨取引や国際的な利用を促進できるものもあります。

  • 共同ブランドカードとホワイトラベルカード
    カード発行 API を使用することで、事業者は金融機関と提携し、両者のブランド名を冠したカードを発行することができます。多くの場合、このようなカードには特別な特典プログラムが付属しており、API にはこれらの提携や特典配信を管理するためのモジュールが用意されています。

事業者は、これらのカードの種類ごとに、実物 (またはバーチャル) カードの外観と機能的属性をカスタマイズできます。この高度なカスタマイズにより、事業者は特殊な運用ニーズやコンプライアンス要件を満たすことができます。

カード発行 API の構成要素

カード発行 API は、新しい決済用カードを作るだけではありません。ここでは知っておくべき主なコンポーネントをご紹介します。

  • カードの作成および管理用モジュール
    このモジュールでは、実物カードとバーチャルカード双方の発行とガバナンスを把握します。発行者が設定したルールや条件に基づき、即時発行や段階的配布のオプションを利用できます。事業者はこれらのモジュールを使用して、利用限度額の変更、カードの有効・失効ステータスの切り替え、特定の種類の取引に対する利用制限など、カード発行後の属性を調整することができます。

  • オーソリと取引の処理
    このコンポーネントはゲートキーパーの役割を果たし、各カード取引を許可するか拒否するかを評価するものです。取引データをリアルタイムで処理し、それを事前に設定されたルールや制限と比較します。例えば、あるカードに制限対象である特定の加盟店カテゴリーコード (MCC) ブロックが含まれている場合、そのカテゴリーからの取引を拒否します。

  • 不正検知とリスク評価
    このコンポーネントは機械学習アルゴリズムを使用して取引パターンを分析し、不正取引 の可能性があるものに警告を発します。また、信用調査機関や第三者の 不正検知 サービスが持つより大きなデータセットと接続させることもできます。この API の該当部分は、評価プロセスが特に綿密であり、取引の速度、地理的パターン、既知の不正取引データベースなど、複数の要素を組み合わせて分析を行います。

  • アカウント管理と法令・規制遵守
    この API の該当部分は、発行されたすべてのカードが地域、連邦の法律や規制、および国際法規制に準拠していることを確認するものです。たとえば、PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS)、マネーロンダリング防止 (AML) 規則、本人確認 (KYC) 要件への準拠をチェックします。また、内部監査や外部監査用のレポートを作成することもできます。

  • レポート機能と分析
    これらのコンポーネントは支出パターン、承認率などの詳細な分析結果を提供してくれます。それにより事業者はデータに基づく決定を行うことができます。またリアルタイムレポートを生成し、既存のビジネスインテリジェンスシステムと統合してカード業務の状況を一元的に把握できるようにします。

  • 売上処理と照合
    このモジュールは完了した取引の処理とそれをカード発行者の記録と照合するためのものです。このプロセスでは、インターチェンジフィー、カードネットワーク手数料、その他の金融上の詳細項目を算出するための計算が行われます。また、不審請求の申し立てや チャージバック を解決するための仕組みも確立します。

  • 特典とロイヤルティプログラムの管理
    このコンポーネントでは、カード発行者がカードの利用状況に応じてポイントやキャッシュバックを決定、割り当て、管理することができます。このコンポーネントの上級版では、段階的な特典システム、季節ごとの販促、外部のロイヤルティプログラムとの提携などをサポートすることができます。

カード発行 API は、このように多様でありながら相互に連携するコンポーネントを提供します。そのため、企業は相当な深さと詳細さを持つ複雑なカードプログラムを発行および管理できます。企業は、非常に特殊な業務要件、リスクプロファイル、事業目標に合わせてカードプログラムをカスタマイズすることができます。

カード発行 API の用途

カード発行 API を利用することで、事業者は特定のニーズに応えられる金融商品を作成できるようになります。

  • 経費管理ソリューション
    事業者は API を使用して、支出ポリシーを自動で適用できる特殊なコーポレートカードを従業員に対して作成することができます。このようなカードは、特定の種類の支出に対して利用限度額をあらかじめ設定したり、利用時間を制限したりすることができます。たとえば、特定の出張時にのみカードが有効になるように設定すれば、交通手段と食事にのみ利用できるように制限できます。

  • オンデマンド・サービスプラットフォーム
    ギグワークやその他のオンデマンドサービス向けのプラットフォームを運営する企業は、これらの API を使用して従業員向けの入金カードを発行できます。これにより、口座振込のためにさまざまな銀行システムと統合するという障壁がなくなります。また、このようなカードでは、従業員が自分の収入をすぐに利用できるため、従業員の満足度と意欲が向上します。

  • マーケットプレイスと E コマース・プラットフォーム
    マルチベンダープラットフォームでは、カード発行 API を使用することで、メインの事業用口座に紐付けられた「サブ口座」を容易に作成できます。このサブ口座では、売上や返金、その他の特定条件に応じてリアルタイムで資金を補充することができます。このプロセスにより、ベンダーは収益をすぐに利用できるようになり、プラットフォームとの財務関係がより透明化されます。

  • 医療・福祉プログラム
    事業者の中にはカード発行 API を使って医療費専用口座を作成するところがあります。こうした口座の用途は医療費に限られており、多くの場合医療用貯蓄口座 (HSA) やフレキシブル支出口座 (FSA) の規制に準拠しています。高度な設定によりさらに用途を絞り込み、特定の医療提供者やサービスに限定することもできます。それにより、コンプライアンスを確保しつつ、管理コストを減らすことができます。

  • ロイヤルティと特典プログラム
    従来のロイヤルティプログラムはポイントやデジタルクレジットに依存していました。しかし、API で発行されたカードはブランドの特典用カードとして機能します。事業者は、キャッシュバック特典をこれらのカードに直接読み込んだり、販売時点で割引を提供するように設定したりすることができます。これにより、リピーターを増やし、顧客エンゲージメントを向上させることができるのです。

  • 旅行・観光業者
    この分野の企業は API を活用して、複数の通貨に対応した旅行者専用カードを発行できます。それにより、旅行者は海外にいてもお金を便利に管理できるようになります。このようなカードには、セキュリティ強化のために旅行保険機能や緊急連絡先を設定することもできます。

  • B2B 決済ソリューション
    カード発行 API を通じて、事業者はパートナーやベンダー向けカードを簡単に発行して簡単に 請求 したり決済したりすることができます。小切手を切ったり 電信送金 を行ったりしなくても正確な金額をこれらのカードに即座に入金すれば支払いができるので、時間を節約し、エラーも減らすことができます。B2B 決済市場の取引総額 は世界全体で 2032 年には 213.28 兆ドルに達すると予測されています。これは決済処理を単純化することが事業者に大きな影響を与えうるということです。

カード発行 API は企業にとって用途の広いツールで、幅広い業界で財務を自動化し改善する革新的な方法となり得ます。

カード発行 API のメリット

カード発行 API を採用することは、いくつかの点で企業にメリットをもたらします。さらに詳しく見てみましょう。

  • 機動的な業務運営
    カード発行 API を利用することで、事業者は新たな金融サービスや製品を取り入れることができます。また、規制遵守、パートナーシップ、開発にかつては長いリードタイムが必要でしたが、それを回避することもできます。例えば小売業者が顧客向けロイヤルティプログラムを取り入れる場合、API を利用すれば財務構造を一から構築する必要はありません。小売業者は API を利用することで時間のかかるプロセスを飛び越して、特典が組み込まれたブランドカードを迅速に展開することができるのです。

  • 財務状況の可視性
    カード発行 API は詳細なレポート機能を備えているため、事業者は自社の支出行動、リソースの割り当てなどに関する詳細な洞察を得ることができます。事業者はダッシュボードからこうしたデータにすぐにアクセスできるため、事業予算や支出ポリシーをリアルタイムで調整できます。

  • 規制遵守とリスク管理
    金融規制への対応は、専門知識と多額のリソース配分を必要とする作業です。カード発行 API には、多くの場合、KYC 要件、マネーロンダリング防止ルール、その他の地域または業種固有の規制を管理する規制遵守機能が組み込まれています。これらの機能により、事業者は金融法を遵守するために専門の法務チームを持つ必要がなくなります。

  • カスタマイズと制御
    カード発行 API の主なメリットの 1 つは、パラメーターでカードの動作を微調整できることです。つまり、事業者は支出限度額、地域制限、許可される取引の種類を管理することができるのです。これらのオプションは経費管理において特に効果があります。人為的ミスを減らし、より簡単にポリシーを適用することができるからです。

  • 導入スピード
    従来型の金融商品では、規制のハードルや技術的な問題によって発売が遅れる可能性があります。カード発行 API では、このプロセスを大幅に加速させることができます。API には通常、事前に構築およびテストされた機能が搭載されているため、事業者は短時間でコンセプトを市場に投入することができるのです。

  • コストパフォーマンス
    金融サービスの立ち上げには、インフラの整備、規制への対応、運営費など、様々なコストがかかります。通常、API を使用したソリューションは、部分的な代替ソリューションとは異なり、透明性の高い価格体系のパッケージサービスとして提供されます。つまり、企業は財務上のコミットメントをより明確に把握することができ、社内でシステムを構築する際に発生することがある多額の初期費用を回避することができます。

  • 拡張性
    事業が成長するにつれて、財務管理のニーズはますます複雑になる可能性があります。カード発行 API は、多くの場合、事業に適応できる拡張可能なソリューションを提供します。新しいカードを追加する場合でも、複数通貨サポートなどの追加サービスを統合する場合でも、API はシステム全体のオーバーホールを必要とせずに、事業とともに成長することができます。

カード発行 API は事業者に、金融取引とポリシーを管理する方法として、俊敏でデータ駆動型、なおかつ法令に則ってカスタマイズ可能な方法を提供します。それらはすべて時間を節約し、コストも削減することができます。

カード発行 API の課題と制約

カード発行 API には多くのメリットがありますが、課題や制限もあります。ここでは事業者が検討すべき課題をいくつか挙げます。

  • ベンダーロックイン
    金融取引を第三者 API に依存すると、その API プロバイダーに依存することになります。そのプロバイダーが価格やサービス条件を変更した場合、または API の提供を停止した場合、事業者は難しい立場に立たされることになります。こうしたロックインを克服し、新しいシステムに移行するには、ときに時間とリソースを相当費やす必要が生じることがあります。

  • データセキュリティに関する懸念
    金融データはサイバー攻撃の標的になることがあります。カード発行に外部 API を使用するということは、事業者はその第三者プロバイダーのセキュリティ対策を信用しなければならないということです。API プロバイダーが徹底したセキュリティプロトコルを備えているとしても、完全に侵害を防げるシステムはありません。セキュリティの不備は事業者に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。

  • カスタマイズオプションの制限
    カード発行 API にはさまざまな機能や特徴がありますが、事業者に固有のニーズをすべてカバーしているとは限りません。API の機能を超えてカスタマイズするのは難しく、手の込んだ回避策が必要になることもあります。このような制約は、特殊な要件、または急速に進化する要件がある事業者にとって、特に対応が難しくなります。

  • 規制への対応
    多くのカード発行 API は規制遵守を管理していると主張していますが、最終的な責任はサービスを利用する事業者側にあります。金融サービスに関連する法律は管轄区域によって大きく異なり、変更されることもあります。事業者は法改正をモニターし、それに対応する必要がありますが、これは API の助けを借りたとしてもかなりの作業量になります。

  • 複雑な初期設定
    カード発行 API を既存の業務システムに統合する場合、技術的な専門知識を必要とする複雑なプロセスになる可能性があります。API 自体は使いやすく設計されているかもしれませんが、初期設定にはデータ移行、システムテスト、担当者のトレーニングなど、複数のステップが必要になります。これらの作業には時間がかかり、他の業務のリソースが使用される可能性があります。

  • 遅延とダウンタイム
    どのような API でも、メンテナンスまたは予期せぬ問題のために停止することがあります。金融分野では、短時間のサービス停止でもビジネスに多大な影響を及ぼし、取引処理におけるわずかな遅延でも顧客体験に悪影響を及ぼす可能性があります。

  • コスト超過
    API サービスは透明性のある価格設定になっていることが多いものの、予期せぬ事態が発生した場合に、当初の見積もりを上回るコストが発生することもあります。たとえば、予想以上に取引量が急増した場合、コストが増加する可能性があります。企業にとって、このようなシナリオを想定して計画を立てておくことは、財務上の負担を回避するために重要です。

  • 拡張性の制約
    カード発行 API は拡張できるように構築されていますが、需要の急激な変化に迅速に対応するには、通常は事実上の限界があります。事業が急激に成長した場合、API でパフォーマンスの問題が発生し、新しいニーズを満たすのに十分な速さで拡張できないということはあり得ます。

カード発行 API は事業者の金融取引の方法に革命をもたらしますが、事業者は慎重な計画とデューデリジェンスでこれらの課題や制限に効果的に対処する必要があります。

規制とセキュリティ上の考慮事項

カード発行 API を使用すると、規制と安全性に関する特殊な課題が生じます。企業はこれらを綿密に検討する必要があります。こうした課題には次のようなものがあります。

規制に関する検討事項

  • 現地法の遵守
    金融サービスには多くの規制が適用されていますが、それは管轄区域によって異なります。例えばヨーロッパには 一般データ保護規則 (GDPR)、アメリカには ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法 があります。企業には現地法および国際法を遵守することが義務付けられています。規制の変更を常に把握するには、綿密な把握と頻繁な更新が求められます。

  • 本人確認 (KYC) とマネーロンダリング防止 (AML) に関する規則
    多くの API プロバイダーは、サービスの一環としてある程度の KYC と AML のチェックを実施しますが、法令遵守を維持する責任は事業者にあります。事業者は顧客の身元を確認し、疑わしい行為がないか取引を把握する必要があります。

  • PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS)
    ほとんどのカード発行 API が PCI 準拠であると主張していますが、事業者側では、これを無条件の保証とみなすべきではありません。事業者は独自のデューデリジェンスを実施して、すべての取引データが PCI に準拠した方法で取り扱われていることを確認する必要があります。

セキュリティ上の考慮事項

  • データ暗号化
    送信されるすべてのデータ、特に財務情報は、強力で最新のアルゴリズムを使用して暗号化する必要があります。多くの API プロバイダーは、サービスの一環として 暗号化 を行います。しかし、事業者側もセキュリティを最大限に高めるために、独自の暗号化手段を採用する必要があります。

  • アクセス制御
    事業者は認証とオーソリを多層化して、不正アクセスのリスクを最小限に抑える必要があります。2 段階認証 (2FA) と強力なパスワードポリシーが基本ですが、事業環境によっては、生体認証などの追加措置が必要になる場合があります。

  • データの完全性と監査
    金融取引システムの一環として、頻繁な監査とデータの完全性チェックを行う必要があります。事業者は、データが完全で改ざんされていないことを確認するために、継続的にプロトコルを確立する必要があります。その中には、安全性ログの保持とチェックサムの実装が含まれます。

  • インシデント対応計画
    完全に安全なシステムはありません。セキュリティ侵害や障害が発生した場合に、包括的なインシデント対応計画があれば損害を軽減することができます。インシデント対応計画を効果的なものにするには、問題解決とサービス復旧のロードマップを示すだけでなく、影響を受けたシステムを隔離し、利害関係者に通知する手順を含める必要があります。

  • ベンダーのリスク評価
    API プロバイダーを選択する前に、事業者は徹底的なリスク評価を行い、プロバイダーのセキュリティプロトコルを評価する必要があります。これには、プロバイダーのセキュリティ認証の精査、セキュリティインシデント履歴の調査、第三者によるセキュリティ監査の実施などが含まれます。

事業者にとって、カード発行 API を利用するということは、単に新しい技術を統合するというだけではなく、一連の責任を負うということを意味します。このような規制やセキュリティに関する考慮事項を認識することで、事業者は潜在的なリスクを軽減し、将来に備えることができます。

カード発行 API プロバイダーの選び方

カード発行 API プロバイダーの選択は、特定の事業目標に沿って戦略的に行うものですが、どの事業者にも当てはまる検討事項がいくつかあります。順を追ってご紹介します。

ニーズを定義する

プロバイダーを探す前に、カード発行 API の利用計画を立てる必要があります。バーチャルカードを オンライン決済 用に発行するのか、実物カードを従業員向けに作るのか、顧客向けロイヤルティプログラムのためにカードを発行するのか、といったことを検討しましょう。ご自身のユースケースを理解したら、どの機能が必要か決めることができます。

統合ツールを評価する

詳細な文書と開発者向けツールがあれば、カード発行 API の統合がはるかに容易になります。ソフトウェア開発キット (SDK) またはクライアントライブラリ、テスト用サンドボックス環境、リアルタイム更新用 Webhook を提供してくれるプロバイダを探しましょう。

コンプライアンスを確認する

どのプロバイダーを選択する場合でも、PCI DSS や KYC 規制などの世界標準に準拠する必要があります。グローバルに事業を展開している場合は、プロバイダーが各地域の法的要件を満たしているかどうかを評価し、規制の変更を常に把握するようにしましょう。

サポートについて確認する

API で問題が発生した場合に、プロバイダーに簡単に連絡できることが重要です。カスタマーサポートに連絡する方法、平均してどのくらいの速さで対応してもらえるか、専任のサクセスマネージャーがいるかどうかを確認しておきましょう。

価格を比較する

各プロバイダーの料金体系を確認し、コストの内訳を理解する必要があります。カード発行手数料、月額維持費、取引手数料、プラットフォーム使用料などが一般的ですが、それ以外に手数料がないか確認しておきましょう。価格が公開されていない場合は、見積もりを依頼することも有効です。

カード発行 API の始め方

プロバイダーを選択したら、カード発行 API を開始するためにいくつかの手順を実行する必要があります。独自のカード発行プログラムを立ち上げるためのロードマップは次のとおりです。

  1. 登録して API アクセスを取得: プロバイダーでアカウントを作成し、API ドキュメントを確認します。
  2. API の統合: API を既存のシステムに接続します。通常は API キーを使用します。
  3. カードの管理設定: 支出管理と制限を設定し、該当する場合は顧客向けユーザーインターフェイス (UI) を構築します。
  4. テストの実施: ユーザーの登録、カードの作成、支出、エラーをシミュレートして、正常に動作することを確認します。
  5. 本番環境へ移行: すべてが機能していることを確認したら、発行プログラムを起動することができます。

本番環境へ移行後もカードの発行と使用状況を引き続きモニターし、必要に応じて改善します。

Stripe Issuing でできること

Stripe Issuing はカスタムカードを簡単に作成、配布、管理できるツールです。これは、新しい収益源の創出と顧客体験の向上を実現します。

Issuing でできることは以下の通りです。

  • 新しいカード製品の立ち上げ: 経費カード、特典カードなど、特定のビジネスニーズに合わせてカスタマイズされた実物カードやトークン化されたカードを迅速に作成することができます。
  • 業務効率の改善: Stripe の API を使用してカードの発行・管理を自動化します。それにより複数のカード発行会社との連携によって生じる複雑さが軽減されます。
  • 顧客体験の向上: 既存の製品やサービスとシームレスに統合できるブランドカード体験を顧客に提供します。
  • 可視性と管理機能: 詳細な取引データと管理機能にアクセスして、カード使用状況の確認、利用限度額の設定、カードの一時停止を必要に応じて行うことができます。
  • 収益の機会の拡大: カードプログラムを活用してインターチェンジフィーによる収益を得たり、付加価値サービスを提供したりして収益化を図れます。
  • Stripe の専門知識の活用: 大手企業のカードプログラムを支援してきた Stripe の堅牢なインフラと法令遵守サポートをご利用いただけます。

Stripe Issuing では、独自のカードプログラムを活用した事業成長を後押しします。詳しくは こちら をご覧ください。今すぐ始める場合はこちら

この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

今すぐ始めましょう

アカウントを作成し、支払いの受け付けを開始しましょう。契約や、銀行情報の提出などの手続きは不要です。貴社ビジネスに合わせたカスタムパッケージのご提案については、営業担当にお問い合わせください。
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