合計契約金額 (TCV) とは?この重要指標に関するクイックガイド

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  1. はじめに
  2. サービスとしてのソフトウェア (SaaS) 指標の概要
  3. 合計契約金額の算定方法
    1. TCV 計算の対象となる要素:
    2. TCV の計算式:
  4. 合計契約金額が重要な理由
  5. 合計契約金額の限界
  6. 合計契約金額を高める方法

合計契約金額 (TCV) とは、契約期間を通して契約がもたらす合計収入額を示す指標です。TCV には、1 回限りの請求、継続的な手数料、契約に関連するその他の収入を生み出す活動などが含まれます。

この記事では、TCV の算定について企業が知っておくべきこと、その知識の活用方法、TCV を高める方法についてご説明します。

この記事の内容

  • サービスとしてのソフトウェア (SaaS) 指標の概要
  • 合計契約金額の算定方法
  • 合計契約金額が重要な理由
  • 合計契約金額の限界
  • 合計契約金額を高める方法

サービスとしてのソフトウェア (SaaS) 指標の概要

TCV は企業のパフォーマンスを測る複数の重要指標の 1 つです。以下では、TCV を含む各指標の一覧、各指標の測定対象、各指標を使ってパフォーマンスを評価する方法についてご説明します。

  • 合計契約金額 (TCV): 契約がその契約期間中に生み出すと予想される合計収入を測る指標です。経常収益、1 回限りの手数料、契約に伴うその他の料金すべてが対象となります。

  • 年間経常収益 (ARR): ARR とは、継続支払いから得られる予想年間収入を測る指標です。ARR は、企業が毎年見込むことができる予測可能で安定した収入を測る主要業績評価指標です。ARR は継続支払いのみに注目するもので、1 回限りの支払いは対象外です。

  • 月間経常収益 (MRR): MRR とは、企業が毎月見込むことができる経常収益で、ARR に相当する月単位の指標です。サブスクリプションによる月間収入を追跡し、短期の財務実績を測る重要な指標です。

  • 顧客生涯価値 (CLTV または LTV): 企業が単一の顧客から見込める、その顧客との関係を通じて得られる合計収入を推定する指標です。CLTV は顧客関係を維持する長期的な価値の評価に役立ち、顧客維持への投資の指針となるものです。

  • 顧客獲得コスト (CAC): CAC は、マーケティング費や営業費など、新規顧客の獲得にかかる総コストを測る指標です。CAC と LTV を比較することで、ビジネスモデルの持続可能性に関するインサイトが得られます。

  • 解約率: 顧客解約率とは、一定期間に失った顧客または収入の割合を測る指標です。解約率が高くなると ARR と MRR に影響を与えます。解約率は、顧客満足度やプロダクトマーケットフィットを測る目的で使用されることが多くあります。

これらの指標を用いることで、SaaS 分野における企業の財務の健全性や成長の可能性を総合的に把握できます。TCV は契約の合計価値の全体像を把握する指標であり、ARR、MRR、LTV、CAC、解約率といった他の指標は経常収益、顧客価値、ビジネスの持続可能性に対する深いインサイトを得る指標です。

合計契約金額の算定方法

合計契約金額を算定するには、契約期間全体を通して収入を生むすべての要素を合算します。算入対象となり得る各種の要素など、TCV の算定方法を以下に詳しくご説明します。

TCV 計算の対象となる要素:

  • 経常収益: 経常収益には、契約期間中に見込まれる顧客からのすべての定期的な支払い (例: 月次または年次サブスクリプション料金) が該当します。

  • 1 回限りの手数料: 契約開始時に適用される最初の料金です。たとえば、セットアップ料金や導入料金が該当します。

  • 変動料金: 従量制料金など、契約期間を通して合理的に推定可能な料金です。

  • 更新: 契約が更新される可能性が高く、その規約が判明している場合は、更新期間の金額を TCV に追加できます。たとえば、1,200 ドルの 1 年契約が更新され、もう 1 年間延長されることが予想される場合、TCV を 2,400 ドルにできます。ただし、この場合、ある程度の不確定要素や仮定が伴う可能性があるため、契約で更新が約束されていない限り、更新を前提とせずに TCV を算定する方がより確実です。

  • 割引: 合計金額から割引額を差し引きます。

TCV の計算式:

TCV = (経常収益 × 契約期間) + 1 回限りの手数料 + 推定変動料金

例 1: 単純な TCV の計算

  • 経常収益: 月 100 ドル
  • 契約期間: 12 カ月
  • 1 回限りのセットアップ料金: 500 ドル
  • 変動料金: なし

TCV = (100 ドル × 12) + 500 ドル = 1,200 ドル + 500 ドル = 1,700 ドル

例 2: 変動料金を伴う TCV の計算

  • 経常収益: 月 200 ドル
  • 契約期間: 24 カ月
  • 1 回限りのセットアップ料金: 1,000 ドル
  • 推定変動料金: 月 50 ドル

TCV = (200 ドル × 24) + 1,000 ドル + (50 ドル × 24)

TCV = 4,800 ドル + 1,000 ドル + 1,200 ドル = 7,000 ドル

合計契約金額が重要な理由

TCV は企業にとって重要な指標です。SaaS などの分野に携わる企業にとっては特に重要となります。契約の財務上の影響をすべて把握することで、その情報に基づいて戦略を立てたり、財務の健全性の判断に役立てたりできます。TCV が重要な理由を以下に詳しくまとめました。

  • 財務予測: TCV は財務予測の重要な要素であり、特定範囲の予想収入を長期的に把握できます。

  • 財務管理: TCV を活用することで、企業は既存の契約から生じる収益源を予想し、それに応じて将来の費用に関する計画を策定できるようになり、予算編成やキャッシュフロー管理に関する選択に役立つ情報を取得できます。

  • 投資の優先順位付け: さまざまな契約の TCV を評価することで、投資の優先度を付け、最も収益性の高い契約や顧客層に注力できます。

  • リソース配分: TCV を活用することで、販売、マーケティング、サポートに適切なリソースを割り当て、短期的な利益よりも長期的な収入の創出を優先することができます。TCV が高い契約ほど、顧客満足度や顧客維持を確保するための取り組みや専用のリソースが必要になる可能性があります。

  • 商品・サービスの最適化: TCV から得られるインサイトを活用することで、契約価値の向上につながりそうな機能に注力し、商品・サービスの開発や改善に役立てることができます。

  • 営業チームのパフォーマンス: TCV は営業チームの業績評価に役立ちます。各チームが獲得した契約の質を評価できます。

  • カスタマーサクセスと顧客関係管理: TCV はカスタマーサクセスや顧客関係管理に関する戦略に影響を与えます。特に、顧客維持を確保するために取り組みやサポートに力を入れるべき上得意先を特定する際に重要です。

  • 企業評価: スタートアップか、営業年数の長い企業かにかかわらず、TCV は企業評価に影響を与える可能性があります。多くの投資家は、企業の成長可能性や財務の健全性を評価するために TCV に注目します。

  • 資金調達と投資家とのコミュニケーション: TCV は現在の収入だけでなく、将来の安定した収入を反映した指標であるため、投資家との話し合いで重視される指標の 1 つです。TCV を取り上げることで企業の資金調達に関する話題を深めることができます。

  • 契約の安定性と顧客への依存度: TCV を分析することで、顧客の集中や少数の大型契約への依存に伴うリスクを明らかにできます。契約ポートフォリオすべてで TCV を分析することで、契約層を多様化する戦略を立てることができます。

  • 更新リスクの評価: TCV を用いると、契約更新や解約の影響を評価し、それに応じて契約を立てることが可能になり、収入の変動に伴うリスクを軽減できます。

  • 市場ポジショニング: TCV は、業界基準と比較して契約のパフォーマンスを評価する基準となります。契約の TCV を把握することで、契約によって確保される取引の価値に基づき、競合他社と比較した市場における自社の立ち位置についてインサイトを得られます。

  • 戦略的な交渉: 契約交渉の場面では、TCV を活用して情報に基づく意思決定を行い、自社の戦略目標や財務目標の達成につながる規約を確保できます。

合計契約金額の限界

TCV は契約の財務上の影響を測定できる便利な指標ですが、考慮すべき制限事項がいくつかあります。

  • 資金収入のタイミングの未考慮: TCV を用いることで契約の合計価値を測定できますが、資金収入のタイミングに関するインサイトは得られません。TCV が高くても、それをすぐに回収できるとは限りません。

  • 長期契約が偏重される可能性: TCV によって長期契約が過度に重視される可能性があります。それが必ずしも企業の短期的な成長目標や資金の必要性に沿っているとは限りません。

  • 収益認識の前提: TCV に今後の更新や変動要素などの推定金額が算入されている場合、その前提が実現しないと金額が不正確となり、財務予測によって誤解を引き起こすリスクがあります。

  • 誤解を生むリスク: 細かい理解に欠ける場合、ステークホルダーが TCV を、当面の収入を測る指標であると誤解してしまい、TCV が契約期間全体に分散されることを認識できない可能性があります。また、TCV だけに基づいて戦略的な意思決定を行うと誤解を招く恐れがあります。総合的に分析するため、CLTV、MRR、解約率といった他の指標と併せて TCV を検証する必要があります。

  • 収益性に対する限定的なインサイト: 性質上、TCV はサービス・商品の提供に伴うコストを考慮しません。TCV が高いことが必ずしも収益性の高さを表すわけではありません。

  • 予測不能となる可能性: 市場の変動、景気の停滞、契約期間中の変更、ダウングレード、キャンセルなどの要素が契約によって生じる価値に影響を与える可能性があるため、TCV は今後の収入を予測する指標としての信頼性が低くなります。

  • 比較に不適: 複数の契約や企業の間で TCV を比較することが難しい場合があります。複数の規約、料金体系モデル、収益認識プロセスが伴う場合は特に難しくなります。

合計契約金額を高める方法

TCV を高めるには、顧客を理解し、商品・サービスを顧客のニーズに適合させ、関係や料金体系を戦略的に管理する必要があります。顧客データを活用して使用パターン、満足度、業界基準を分析します。これにより、強固で持続可能な顧客関係を構築しながら TCV を高める、対象を絞った戦略を立てるための堅牢な基盤を築くことができます。TCV を高める具体的な戦略を以下にご紹介します。

  • アップセルとクロスセル: 既存顧客に高価格帯のプランや追加の商品・サービスを案内し、顧客の使用パターンやフィードバックに基づいて商品・サービスをカスタマイズします。

  • 価値に基づく料金体系: 顧客が認識する価値に基づいて価格戦略を立てます。顧客のメリットを直接反映した料金体系モデルを導入することで、契約価値を高める根拠を生み出すことができます。

  • 契約期間の長期化: 特典や割引によって長期契約の締結を顧客に促します。契約期間が長くなると TCV が直接上昇し、収入予測の安定性が高まります。

  • カスタマイズとパーソナライズ: 個々の顧客のニーズに応じてカスタマイズできるソリューションやアドオンを提供します。高級価格帯や他の追加料金を設けることで TCV を高めることができます。

  • アカウント管理: 価値の高い顧客を特定し、その顧客との関係を発展させるためにリソースを割り当てます。顧客が抱えているニーズとビジネス上の課題を理解することで、契約の範囲を拡大する機会を明らかにできます。

  • パフォーマンスに基づく拡張: パフォーマンス指標や使用量の基準値に基づいて契約を拡張できる条項を定めます。これにより、自社の成功と顧客の成功が連動し、自然な契約の拡張への道筋をつけることができます。

  • 更新戦略: 積極的な更新戦略を立て、契約終了を迎えるずっと前から着手します。価値を示し、顧客の変化するニーズに対応することに重点を置いて、より長期または収益性の高い更新の獲得を目指します。

  • カスタマーサクセス: 自社の商品・サービスによって顧客が望む結果を達成できるよう、カスタマーサクセスプログラムに投資します。満足度の高い顧客は契約を拡張する可能性が高くなり、解約する可能性が低くなります。

  • 市場・競合分析: 市場動向と競合他社を分析して、自社の商品・サービスが競争力と訴求力を維持できるようにします。

  • 契約の柔軟性: 可能な限り契約に柔軟性を持たせることで、顧客が契約期間内に使用量を増減できるようにします。必要に応じて調整できることを顧客が把握していると、上位の価格帯や追加サービスに魅力を感じる可能性があります。

  • 顧客へのインセンティブの提供: 早期の契約更新や上位の価格帯へのアップグレードを促す特典を用意します。これにより、高い TCV を早期に確保し、顧客のライフサイクルを延長することができます。

The content in this article is for general information and education purposes only and should not be construed as legal or tax advice. Stripe does not warrant or guarantee the accurateness, completeness, adequacy, or currency of the information in the article. You should seek the advice of a competent attorney or accountant licensed to practice in your jurisdiction for advice on your particular situation.

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