エンベデッドバンキングとは?企業が知っておくべきこと

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  1. はじめに
  2. エンベデッドバンキングの利用用途
    1. 埋込型決済
    2. 埋込型融資
    3. 埋込型口座
    4. 埋込型保険
    5. 埋込型投資商品
    6. 埋込型会員プログラム
    7. 埋込型経費管理機能
  3. エンベデッドバンキングが企業にもたらすメリット
  4. エンベデッドバンキングの課題とその解決方法
  5. エンベデッドバンキングの始め方
    1. ニーズと目標を特定する
    2. 適切なエンベデッドバンキングの機能を選択する
    3. 適切な技術パートナーと提携する
    4. 包括的なローンチ計画を策定する
    5. 新機能のローンチとプロモーション
    6. 監視、評価、反復

エンベデッドバンキングとは、非金融ビジネスのプラットフォームに直接実装される金融サービスのことを指します。既存のインターフェースに支払い、ローン、保険などのバンキングソリューションが組み込まれるため、顧客はウェブサイトやアプリを離れることなくこれらのサービスを利用できるようになります。たとえば、e コマースプラットフォームで顧客が高額商品を購入するような場合、購入時にローンオプションが提供され、同時に販売者のポータルページでその処理を完結させることができます。

2024 年時点で 203 億米ドルの収益が見込まれているエンベデッドバンキング市場は、このような実装が一般的になるにつれ、2034 年までに 1,494 億米ドルまで増えることが予想されます。以下では、エンベデッドバンキングの一般的用途や仕組みのほか、企業がエンベデッドバンキングを利用することのメリットと課題について解説します。エンベデッドバンキングサービスの導入を検討している企業は、本記事で紹介されていることを念頭に入れておく必要があります。

本記事の内容

  • エンベデッドバンキングの利用用途
  • エンベデッドバンキングが起業にもたらすメリット
  • エンベデッドバンキングの課題とその解決方法
  • エンベデッドバンキングの始め方

エンベデッドバンキングの利用用途

エンベデッドバンキングとは、非金融サービスのデジタル環境に実装される金融サービス機能のことをいいます。この項目では、企業がエンベデッドバンキングを利用する方法をいくつかの例とともにご紹介します。

埋込型決済

決済サービスプロバイダーと提携して、自社のプラットフォームにペイメントゲートウェイを直接実装することができます。企業のアプリやウェブサイトを通じて顧客が支払い情報 (クレジットカード、デビットカード、デジタルウォレットなど) を入力し、その後、外部の決済ページにリダイレクトすることなく取引がプロバイダーによって処理されます。決済プロセスが容易になることから、これは顧客のサービス乗り換えを促すきっかけとなります。

  • 例:オンライン小売業者が埋込型決済を導入することで、顧客がウェブサイトで直接購入を完了できるようになるケース。

埋込型融資

融資プラットフォームや金融機関と提携して、ローンやクレジット商品を顧客に提供することができます。多くの場合、プラットフォームや金融機関は、自社のプラットフォームで利用できる既存データ (取引履歴、顧客プロフィールなど) を用いて信用評価を行います。審査に通過した顧客は、企業のアプリやウェブサイトから直接ローンや与信を利用できます。この取り決めにより、企業は追加の収益源を確保でき、一方で顧客は新たな資金調達手段を得ることができます。

  • 例:会計ソフトのプラットフォームが後払い (BNPL) オプションを含む中小企業向けローンとオンライン決済を提供するケース。

  • 例:販売時点情報管理 (POS) システムを介して、中小企業が在庫購入資金を調達するためのローンを申請できるようになるケース。融資の承認と資金の支払いは、POS ソフトウェア内で直接行われます。

埋込型口座

BaaS (サービスとしての銀行) プロバイダーと提携して、当座預金口座や普通預金口座などの基本的な銀行サービスを顧客に提供することができます。通常、このサービスは、顧客に代わって銀行口座を開設し、自社プラットフォーム内で口座振込、カード決済、送金などのサービスを利用できるようにするまでが一連の流れとなります。埋込型口座は、ユーザーが財務を管理し、収益にアクセスするための便利な方法を提供します。

  • 例:ライドシェアビジネスにおいて、ドライバーがドライバーアプリを通じて銀行口座を開設できるようになるケース。これにより、ドライバーは収益をすばやく受け取れるようになり、財務状況を便利に管理できます。

埋込型保険

保険会社と提携して、会社のサービスと関連する保険商品を提供することができます。このプロセスには通常、保険の見積もりや購入プロセスを企業のプラットフォームに直接導入することが含まれます。埋込型保険は、保険の購入プロセスの簡素化を促すため、顧客は商品によりアクセスしやすくします。

  • 例:オンライン旅行代理店がフライトやホテルの予約プロセスに旅行保険やレンタカー保険を追加オプションとして含めるケース。

埋込型投資商品

投資プラットフォームや証券会社と提携して、顧客に投資サービスを提供することができます。利用できるサービスとして、端株投資、ロボアドバイザリーサービス、投資ポートフォリオの閲覧などが挙げられます。自社のプラットフォームからこれらすべての機能にアクセスできるようにすることで、顧客に新たな投資機会を提供しつつ、サービスを拡大できるようになります。

  • 例:パーソナルファイナンスアプリを通じて、ユーザーが株式または上場投資信託 (ETF) の端株に直接投資できるようになるケース。

埋込型会員プログラム

ロイヤルティプログラムのプロバイダーまたは銀行と提携して、独自のリワードプログラムとロイヤルティプログラムを作成・管理することができます。多くの場合、仮想カードまたは物理カードの発行、特典ポイントの追跡、還元オプションの提供がこの内容に含まれます。企業は、プログラム内容を特定の顧客に合わせてカスタマイズすることで、顧客体験を向上させることができます。

  • 例:コーヒーショップチェーンがモバイルアプリ用のロイヤルティプログラムを導入し、商品購入のたびに顧客に特典ポイントを与え、無料ドリンクや割引と引き換えるようにするケース。

埋込型経費管理機能

経費の追跡・管理機能を埋込型口座や法人カードに実装して、相互に関連付けることができます。これにより従業員は、経費の報告、支出の追跡、レポートの生成を会社のアプリやソフトウェアから直接行えるようになります。埋込型経費管理機能は、従業員の経費報告手続きを簡素化するだけでなく、企業の綿密な支出管理をサポートします。

  • 例:企業が経費管理機能を自社の会計ソフトに組み込んだことで、従業員が会計プラットフォームで領収書のアップロード、経費分類、経費報告書の提出を実行できるようになるケース。

エンベデッドバンキングが企業にもたらすメリット

エンベデッドバンキングのユースケースが増えることで、企業にとって以下のようなメリットが生まれます。

  • 顧客維持とロイヤルティ:顧客の目先のニーズに直結する金融サービス (POS ファイナンスやリワードプログラムなど) を導入することで、企業は顧客体験を向上させることができます。金銭的メリットを手厚く提供し、家計管理をシンプルにしてくれるようなプラットフォームであれば、顧客のリピート率は高まります。

  • 収益:エンベデッドバンキングを利用して、収益源の多様化を実現できます。たとえば、融資、保険、または投資に関するオプションを提供することで、企業は金融サービス手数料やコミッションから多額の収入を得られるようになります。

  • 運用効率:エンベデッドバンキングは、さまざまな形で運用効率を生み出しています。埋込型決済システムは手作業による処理を削減することでエラーや管理コストを抑制し、埋込型経費管理機能は承認と支払いを自動化して経理の業務負荷を減らしています。

  • 顧客データ:エンベデッドバンキングソリューションの中には、顧客の行動や嗜好に即した有益なインサイトを企業に提供する分析ツールが数多くあります。このデータは、ビジネス戦略、マーケティング活動、製品開発など多岐にわたって情報を提供することが可能です。

  • 顧客体験:外部プラットフォームへのアクセスを伴わない金融サービスの提供は、ユーザー体験に新たな利便性をプラスします。これは、競争の激しいオンライン市場において大きな差別化要因となり得ます。

  • 法規制の遵守:フィンテック企業や金融機関と提携することで、企業は金融サービスに関わる複雑な規制に準拠できるようになります。これらのパートナーは、通常、法令遵守を確保するための専門知識やインフラを備えているため、ビジネスそのものにかかる規制負担の軽減が期待できます。

  • カスタマイズと柔軟性:エンベデッドバンキングプラットフォームの多くは、高度なカスタマイズが可能であり、企業は自社のニーズと顧客のニーズに最も適した金融サービスを自由に選択し、変更することができます。この柔軟性は、企業が市場や顧客の期待の変化に適応し、方向性と競争力を維持する上で役立ちます。

エンベデッドバンキングの課題とその解決方法

決済、バンキング機能、財務データには、もれなくリスクや障害が伴います。この項目では、エンベデッドバンキングの課題と、それを軽減するための戦略をいくつか紹介します。

  • セキュリティとデータプライバシー:財務データを扱う場合、データ侵害やセキュリティの失効により、顧客の信頼が著しく損なわれ、多額の財務損失が発生する可能性があります。この課題を克服するには、暗号化、多要素認証、定期的なセキュリティ監査など、最先端のセキュリティ対策を活用します。また、セキュリティを優先し、実績のあるフィンテックサービスと提携することで、防御機能を強化することができます。

  • システム連携:新しいサービスを既存のシステムに統合すると、ユーザー体験や既存の機能が損なわれることがあります。この問題に対処するには、包括的な IT 戦略を策定し、場合によっては財務と特定の技術スタックの両方に精通した熟練開発者を雇用する必要があります。また、柔軟で十分に文書化されたアプリケーション・プログラミング・インターフェース (API) を持つフィンテック企業をパートナーに選ぶことで、サービスの実装も容易になります。

  • ユーザー体験:新しいサービスを追加した最初の段階では、ユーザーインターフェイスが複雑になり、ユーザー体験が向上するどころか損なわれることがあります。この問題を軽減するには、設計とユーザーテストに重点を置きます。可能な限り簡素化されたユーザー体験を追求し、新機能が直感的に操作できるようにしてください。

  • 財務の責任とリスク:企業がクレジット、保険、または投資商品またはサービスを提供する場合、債務不履行、詐欺、マーケットボラティリティといった財務リスクはつきものです。包括的なリスク評価と管理戦略を導入することで、これらのリスクは管理することが可能です。高度な分析を用いて顧客の信用力を判断したり、厳格な不正検出メカニズムを導入したりすることも視野に入れる必要があります。

  • 企業規模に応じたサービス品質の維持:ユーザー層が拡大することで、エンベデッドバンキングサービスの品質と信頼性を維持することも時に難しくなります。成長に効果的に応えるには、必要なインフラ投資を予測し、計画することが重要です。パフォーマンス指標と顧客からのフィードバックに注目し、問題の発生時には迅速に対処するようにしてください。

  • パートナーシップの依存関係:主要なバンキングサービスの運用がサードパーティプロバイダーに頼りきりになると、サービスの中断、ビジネスの方向性の対立、または規制状況の変化のリスクを招きかねません。この依存関係の問題を解決するには、目標が一致し、かつ安定した運用を行うパートナーを慎重に選び、会社の利益を保護する柔軟な契約を作成します。また、強力なコンティンジェンシープランを策定しておくことで、業務保護機能をさらに強化することも可能です。

エンベデッドバンキングの始め方

最新のエンベデッドバンキングソリューションは実装がますますシンプルになっていますが、サービスや機能を適切に取捨選択し、それらをローンチするまでのプロセスは複雑になっていたりします。サービスの選択から実装までの手順を網羅した、エンベデッドバンキングを始めるためのステップバイステップガイドを以下にご紹介します。

ニーズと目標を特定する

  • 中核となる製品とサービス、ターゲット層、主な課題は何ですか?エンベデッドバンキングの機能で改善できる自社の商品やサービス、顧客価値を生み出せる領域を特定します。

  • エンベデッドバンキングで成し得ようとしていることは何ですか?新しい収益源の創出、顧客体験の向上、業務効率の改善、データインサイトの獲得を考えている場合は、意思決定プロセスの指針となる目標を明確に定めておく必要があります。

  • 顧客が最も価値を感じ、必要とする金融サービスは何か?市場調査を実施し、顧客からのフィードバックを収集して、顧客のニーズと嗜好を把握します。

適切なエンベデッドバンキングの機能を選択する

  • 当面のニーズに対応するために、埋込型決済や埋込型口座などのコア機能から実装に着手することを検討し、将来の拡張に向けた基盤づくりに取り組みます。

  • ビジネス目標に合致し、顧客と収益に最大限の影響を与えうる機能に重点を置きます。

  • エンベデッドバンキングの機能戦略が時間の経過とともにどのように発展するかを考えます。将来のニーズや市場動向に適応できる柔軟な機能を選択しておくことをお勧めします。

適切な技術パートナーと提携する

  • さまざまなエンベデッドバンキングプロバイダーを、機能、価格、実装オプション、カスタマーサポート、評判に基づいて調査・比較します。

  • 柔軟性の高い API、既存の技術スタックと互換性のある実装オプション、コンプライアンスおよびセキュリティ要件の深い知識を持つプロバイダーを選ぶようにしてください。

包括的なローンチ計画を策定する

  • 実装予定の機能を明確に定義し、現実的なタイムラインと重要なマイルストーンを設定します。

  • プロジェクトには、技術チーム、マーケティングチーム、カスタマーサポートチームなど専任のスタッフを割り当てます。

  • 新機能の内容を顧客に伝達するための計画を作成し、メリットとセキュリティ対策について教示します。

新機能のローンチとプロモーション

  • ローンチ前には、サンドボックス環境ですべての機能を徹底的にテストしておきましょう。

  • また、マーケティングキャンペーンを幅広く展開して、新しいエンベデッドバンキングの機能を宣伝し、そのメリットを顧客に説明します。

  • 顧客の新規利用を促進するために、割引や特典などのインセンティブを付与することもご検討ください。

  • 新機能に関するあらゆる質問や問題にカスタマーサポートチームが対応できるよう、万全の体制を整えておきましょう。

監視、評価、反復

  • 顧客採用率、使用率、収益創出、顧客満足度などの主要業績評価指標 (KPI) を監視します。

  • 顧客からのフィードバックを定期的に収集して、新機能のユーザー体験を把握し、改善すべき領域を特定します。

  • エンベデッドバンキングの戦略は、データインサイトやフィードバックを参考にして継続的に改善するようにしてください。

この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

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