事前承認による支払いでは、クレジットカードまたはデビットカードで利用可能な残高の特定の金額を一時的に確保します。こうした支払いでは、カードの有効性や、取引に対応するのに十分な資金がカードにあることを確認します。当該の金額はカード発行会社によって取り置かれますが、実際にビジネスに送金されることはありません。こうした支払いは一般的に、ホテルやガソリンスタンドなど、最初の取引の時点で最終的な金額が判明していない状況で使用されます。

事前承認を活用すると、ビジネスで後日に実際の取引額を確実に請求できます。最終的な金額が決定して請求されると、事前承認によって確保されていた金額がリリースされ、実際の金額がアカウントから差し引かれます。購入が完了していない場合は、一定期間の後に事前承認された金額がリリースされ、カードの利用可能な残高に戻ります。リリースされるまでの期間は、カード発行会社のポリシーによって異なる場合があります。このプロセスは、カードの有効性や、カードで潜在的な支払いに対応できることを確認するための標準的な慣行です。サンフランシスコ連邦準備銀行のレポートによると、2022 年に行われたすべての支払いの 31% でクレジットカードが使用されました。これにより、ビジネスで事前承認による支払いを入念に管理し、利用者の取引に確実に対応することがいかに重要かがわかります。

以下では、事前承認による確保についてビジネスで知っておくべきことについて説明します。こうした支払いは些細なことのように思えるかもしれませんが、決済体験の効率性と決済のセキュリティに対して全体的に大きな影響を及ぼします。

この記事の内容

• 事前承認による支払いが確保される期間
  
• 事前承認による支払いの仕組み
  
• 事前承認による支払いとクレジットカード取引
  
• 事前承認による支払いを使用するメリット
  
• 事前承認による支払いが一般的に使用されているビジネスの種類
  

事前承認による支払いが確保される期間

クレジットカードやデビットカードでの事前承認による支払いが確保される期間は、一般的に約 5 ～ 7 日間です。ただし、この期間はカード発行会社のポリシーと取引の種類によって変化する場合があります。一部の銀行やカード発行会社では最大 14 日間まで確保されることがあります。ホテルやレンタカー会社などの特定のビジネスの場合、確保される期間はさらに長くなることがあり、最大で 30 日間になる可能性もあります。

重要なのは、確保される期間の終了前に実際の取引が処理される場合、事前承認による確保が削除され、実際の支払いと置換されることを把握しておくことです。取引が行われない場合、または事前承認された金額を下回る場合は、確保された金額がリリースされます。その後、未使用の資金は、カード保有者のアカウントで再び利用可能になります。また、この資金のリリースのタイムラインは、ビジネスとカード発行会社の両方の処理時間によって変化することもあります。

事前承認による支払いの仕組み

事前承認による支払いは、特に、合計金額がすぐには判明しない場合において、ビジネスでカードの有効性や、カードに取引のための十分な資金があることを確認するための手法として機能します。ここでは、このプロセスの一般的な仕組みを紹介します。

• 事前承認を開始する
  最終的な金額が事前に判明していない取引 (ガソリンスタンドやホテルなど) にカードを使用する際に、ビジネスで事前承認を開始します。この際に、事実上、ご利用のカードで一定の金額が一時的に確保されます。

• 資金を確保する
  事前承認された金額は実際に支払われることはなく、一時的に確保されます。この金額は利用可能な残高から差し引かれ、これらの資金は潜在的な今後の取引のために確保されます。実際のアカウントの残高は、この段階では減りません。ご利用のアカウントで事前承認によって確保される期間の長さは、変化することがあり、ビジネスのポリシーとカード発行会社の慣行によって決まります。通常は数日から数週間程度の範囲になります。

• 最終的な取引金額を知らせる
  (たとえば、ホテルをチェックアウトするときなどに) 最終的なご利用金額が判明したら、ビジネスで取引を完了します。その後、事前承認によって確保された金額は、最終的な金額の実際の支払いと置換されます。

• 未使用の資金をリリースする
  実際の取引金額が事前承認された金額を下回っている場合、または取引がキャンセルされた場合は、確保されていた未使用の資金がリリースされます。つまり、事前承認された金額 (またはその残金) がアカウントで再び利用可能になるのです。

カード保有者は事前承認による確保をモニタリングする必要があります。というのも、事前承認による確保によってカードの購買力が一時的に低下し、今後の購入に影響が及ぶことがあるためです。ビジネスでは、特に、最終的な支払いの前にサービスや商品を提供する場合に、これらの確保された金額をセキュリティ手順として導入できます。そうすることで、支払いの不確実性からビジネスを保護できます。

事前承認による支払いとクレジットカード取引

クレジットカードでの事前承認による支払いを使用すると、ビジネスでカードを検証して、必要な資金が利用可能なことを確認できます。このプロセスではまず、ビジネスからカード保有者のカード発行会社にリクエストを送信し、与信枠が利用可能なことを確認します。その後、カード発行会社によって、リクエストされた金額がカードで確保されます。この確保された金額はクレジット限度額に影響を及ぼしますが、すぐにアカウントに請求されることはありません。つまり、事前承認の段階で負債を負うことはありません。

クレジットカードに特有のこととして、事前承認では、デビットカードの場合における銀行口座の残高ではなく、カード保有者のクレジット限度額と照らし合わせて確認が行われます。この差異は重要です。というのも、それは、事前承認によってカード保有者がそれ以降に利用できる金額は減るものの、取引が確定するまで銀行口座の実際の資金に影響が及ばないことを意味しているからです。

それぞれのカードの種類で事前承認を処理する際の違いは、主に、資金がどこから確保されるかです。事前承認がデビットカードに適用される場合、確保された資金は口座の残高に影響を及ぼし、カード保有者がその他の取引で「残高不足」の警告を受け取ることにつながる可能性があります。反対にクレジットカードでの事前承認では、利用可能な与信枠が減るだけです。

クレジットカードを使用する場合、事前承認による確保は、実際の支払いが処理されると解除されます。その後、本当の支払いがアカウントに適用され、カード保有者の負債に加算される取引として反映されます。最終的な支払いが事前承認された金額を下回る場合、残りの確保された資金は削除されるため、当該の一時的に利用不可能だった与信枠はカード保有者の元に戻ります。

クレジットカード発行会社が異なれば、自動的に削除される前に事前承認による確保を行える期間についてのポリシーも異なります。ビジネスで取引が確定されない場合、確保された金額は最終的に有効期限切れとなりますが、この期間は数日から数週間にわたる場合があります。

ビジネスとカード発行会社は個々の取引について電子的にやり取りしますが、事前承認はこうしたやり取りの一部です。一連の標準化されたコードとメッセージを使用し、これらの確保された金額を配置してから、実際の支払いとして確定させるか、リリースすることができます。

事前承認を管理する (決済のセキュリティと顧客体験のバランスを取る) ことは、ビジネスにおける取引管理の重要な側面です。また、事前承認の仕組みを把握することは、ビジネスで決済処理と決済システムを最適化するうえで役立ちます。

事前承認による支払いを使用するメリット

事前承認により、ビジネスと利用者の両方に経済的なセーフティーネットがもたらされます。ビジネスにとっては、サービスの提供に取り組む前に、利用者に必要な資金または与信枠があることを確認する手段になります。このステップは、決済での不審請求の申請やチャージバックに対するガードレールのようなものであり、始めから費用の全額が判明していないことのあるホスピタリティやレンタカーなどの業界において、特に便利です。資金を早い段階で押さえることは、予期しないことを回避し、支払いが想定どおりにアカウントへ入金されるようにするうえで役立ちます。

• 予期しない支払いからの保護
  最終的な請求額が増加する場合のあるセクター (ゲストがミニバーを利用することがあるホテルや、直前に延長が行われる可能性のあるレンタカーなど) では、事前承認を活用すると、ビジネスで潜在的な費用を埋め合わせる金額を確保できます。これにより、ビジネスで提供するサービスの対価を受け取れることが保証され、会計および財務計画も合理化されて、より正確な予測と予算編成が可能になります。

• 利用者にとっての透明性の向上
  事前承認によって、請求のトラブルを解消し、顧客体験を向上させることもできます。事前に資金が保証されることで、ビジネスで対価を受け取れる安心感を得たうえでサービスを提供できます。これにより、支払いのフォローアップについて漠然と懸念することなく、最良の顧客サービスの提供に注力できるようになります。

• 利用者にとってのメリット
  事前承認によって、すぐに支払いを行わずにサービスプロバイダーを確保できるようになるため、利用者もメリットを得られます。サービスが不要になったら、大抵の場合は請求されることなく、利用者側で柔軟にキャンセルすることができます。また、取引の完了による経済的な影響をすぐに受けることなく、アカウントの状態を確認できるため、お金の使いすぎを防ぐうえで役立ちます。

• 運用のしやすさ
  事前承認を使用すると、ビジネスで請求と支払いの回収に費やす時間を短縮できるようになり、サービスの提供前に資金の利用可能性が保証されることで、取引プロセスが簡素化されます。また、確保された資金によって確実にサービスへの関心があることが示されているため、このような支払いによって、より計画的に予約を管理できるようになります。

• 簡素化された財務計画
  ビジネスと利用者の両方における財務管理も、事前承認によって改善されます。ビジネスで売掛金をより正確に予測できるようになる一方で、利用者は支出と利用可能な与信枠または資金をより詳細にモニタリングできます。このプロセスによって財務の監視が強化され、予算編成と財務計画の改善に寄与することが可能です。

事前承認による支払いが一般的に使用されているビジネスの種類

事前承認による支払いは、最初の時点で取引の最終的な金額が判明していないビジネスや、サービスの開始から完了までに時間の隔たりがあるビジネスにおいて、よく使用されています。ここでは、その例をいくつか紹介します。

• ホテルと宿泊施設
  これらの施設では、ゲストのクレジットカードで一定の金額を確保することで、潜在的かつ偶発的な経費や損害を埋め合わせるために、事前承認がよく使用されています。

• レンタカーサービス
  レンタル料金や保険、潜在的な損害のための保証金を埋め合わせる金額を確保するために、事前承認が使用されています。

• ガソリンスタンド
  スタンドで支払いを行うサービスでは、カードに燃料費を埋め合わせるのに十分な資金があることを確認するために、事前承認が使用されています。

• レストラン
  特に、常連客がツケ払いを行う状況において、最終的な請求が集計される前に支払い方法の有効性を確認するために、事前承認が使用されています。

• 高額なアイテムを扱う小売店
  一部の小売業者では、高額な取引を処理する前に、資金が利用可能なことを確認するために購入金額の事前承認を行う場合があります。

• オンラインサービスとサブスクリプション
  トライアル期間を提供している企業では、トライアル後にサブスクリプションが継続される場合に請求を行う支払い方法の有効性を確認するために、少額の事前承認を行うことがあります。

• 旅行代理店と航空会社
  旅行を予約する際に、チケットの購入と潜在的な変更またはキャンセルの手数料用の資金を確保するために、事前承認が使用されます。

• レンタルサービス
  これには、機器のレンタル、家具のレンタル、借りたアイテムの返却時の状態によって最終的な費用が変化することのあるサービスなどが該当します。

事前承認は、さまざまなビジネスモデル (特に、予約やレンタル、変化が生じやすい性質のサービスを伴うビジネスモデル) に適応させることができます。