多くのグローバル市場でクレジットカード、デビットカード、デジタルウォレットが主要な支払い方法となっているため、ビジネスで現金取引はもはや重視されていないかのように思えるかもしれません。現金が以前ほど広く使用されていないことは事実ですが、多くの利用者が今でも現金を使用しています。2022 年に Accenture が実施したグローバル調査によると、回答者の 66% は今でも月に 5 回以上現金を使用しているため、ビジネスはこの点を考慮に入れて支払い戦略を策定する必要があります。
オーストラリアでは、2022 年に行われた消費者による支払いの 13% が現金決済でした。オーストラリアの利用者との取引に関心がある企業のために、オーストラリアでの現金決済の取り扱いについてビジネスが知っておくべきことを以下に示します。
この記事の内容
- オーストラリアで現金決済に使用される通貨
- オーストラリアでの現金決済の傾向と使用状況
- オーストラリアで現金決済を受け付けるメリット
- オーストラリアで現金決済を受け付ける方法
- オーストラリアでの現金決済に関する法律および法令遵守上の考慮事項
- オーストラリアで現金決済を受け付けるためのベストプラクティス
オーストラリアで現金決済に使用される通貨
オーストラリアの通貨はオーストラリアドルです。AUD または $ と表記されます。オーストラリアドルには 100 セントがあります。オーストラリア紙幣は $5、$10、$20、$50、 $100 があり、硬貨は 5、10、20、50 セントがあります。$1 と $2 の硬貨もあります。オーストラリアの紙幣と硬貨の設計および造幣には、高度なセキュリティ機能が組み込まれており、国の文化、歴史、自然を反映したユニークなデザインが取り入れられています。
以下は、AUD とその他の主要通貨の平均的な為替レートです。注: 為替レートは常に変動しています。
AUD 対 USD (アメリカドル): 過去 2 年間、パンデミック、金利の変動、物価などのさまざまな世界経済要因により、AUD / USD の為替レートは変動しています。2023 年の平均為替レートは、1 USD あたり 0.63 ~ 0.72 AUD でした。
AUD 対 EUR (ユーロ): ユーロ圏とオーストラリアの経済状況による影響を受け、AUD / EUR のレートも変動しました。2023 年の平均為替レートは、1 EUR あたり 0.58 ~ 0.66 AUD でした。
AUD 対 GBP (英ポンド): AUD 対 GBP の為替レートは、両国の経済健全性とブレクジット関連の変化の影響を受けています。2023 年の平均レートは、1 GBP あたり 0.50 ~ 0.54 AUD でした。
AUD 対 JPY (日本円): AUD / JPY のレートは、両国のリスクセンチメントや金融政策の変更にしばしば影響されます。2023 年の為替レートは、1 JPY あたり 0.0102 ~ 0.0115 AUD の範囲で変動しました。
AUD 対 CNY (中国元): AUD / CNY の為替レートは、オーストラリアと中国の貿易関係を反映しています。2023 年のレートは、1 CNY あたり 4.55 ~ 4.89 AUD でした。
オーストラリアでの現金決済の傾向と使用状況
オーストラリアでは、消費者の好みや支払い行動の変化を反映して、現金での支払い傾向や使用状況が劇的に遷移しています。ここでは、最近のデータに基づく概要を説明します。
現金利用の減少: 2022 年の現金決済は消費者による支払いの 13% を占めていますが、減少傾向が続いています。この減少は、デジタル決済手段への移行が進んでいることを示しています。オーストラリア準備銀行 (RBA) のデータによると、現金の利用を示す ATM での引き出し金額は 2007 年以降、一貫して減少しています。
カード支払いや電子決済の優勢: デビットカードやクレジットカードによる支払いは、2022 年に行われた支払いの 76% を占めており、オーストラリアでは依然として優勢です。これは、オーストラリアの人々が継続してカードベースの取引を好んでいることを示しています。NFC テクノロジーによって促進される非接触型カード支払いは、2022 年の対面でのカード支払いの 94% を占めています。
モバイル決済とデジタルウォレットの台頭: モバイル決済とデジタルウォレットの導入が進んでいます。2022 年、オーストラリアでは、対面によるカード支払いの 3 分の 1 がモバイルデバイスで行われました。
オンライン決済と E コマース決済の増加: オンライン決済は、2022 年の消費者による支払い全体の約 18% を占めています。E コマースやオンラインショッピングの増加に伴い、このタイプの決済が増えています。オンライン取引では後払いサービスを含むデジタル決済手段の導入が増加しており、利用者の多くが E コマースでの購入にこれらの手段を使用しています。
支払いの好みにおける利用者層の変化: オーストラリアの若年層、特に 18 ~ 29 歳の若者がデジタル決済への移行を主導しており、2022 年にはこの世代の約 3 分の 2 がモバイル決済を使用しています。高年齢層ではモバイルやデジタル決済の導入が遅れているものの徐々に増加しており、2022 年には 65 歳以上の約 9% がデジタルウォレットを利用し、その数は 2019 年の 3 倍に増えています。
規制変更とイノベーションの影響: New Payments Platform (NPP) をはじめとするオーストラリアの決済システムの規制変更とイノベーションにより、24 時間 365 日の即時電子送金が促進され、現金への依存がさらに低下しています。オーストラリアでのオープンバンキングの導入も、デジタル決済手段に対する利用者の信頼向上と採用増加に一役買っています。
オーストラリアで現金決済を受け付けるメリット
ビジネスにとって、デジタル取引が台頭している環境であっても、オーストラリアで現金決済を受け付けることにはさまざまなメリットがあります。ここでは、オーストラリアで現金を受け付けるメリットをご紹介します。
包括性とアクセシビリティ: オーストラリアの高年齢層、インターネット接続環境が整っていない地方や遠隔地に暮らす人々、バンキングサービスへのアクセス権を持たない個人など、特定の利用者層にとって現金は依然として主要な決済方法です。現金を受け付けることで、このような利用者に対応し、包括性とアクセシビリティを示すことができます。オーストラリアを訪れる多様な観光客の中には、現金への依存度が高い国からの旅行者もいます。現金を受け付けることで、このような顧客基盤との関係を築くことができます。
迅速な売上処理と流動性: 現金取引では迅速な売上処理が可能なため、ビジネスキャッシュフローが改善されます。処理が遅延する場合がある電子決済とは異なり、現金の売上はすぐに利用できます。これは、小さな利益率で運営していて、日常業務のために迅速な資金調達が必要となる中小企業やベンダーにとっては特に役立ちます。
取引コストの削減: 一部のビジネス、特に中小・零細企業では、現金を受け付けるとコスト効果が高くなることがあります。カード取引とは異なり、現金決済では、銀行やペイメントゲートウェイが課す処理手数料やコストがかかりません。カフェや地元の市場など少額の取引が多いビジネスでは、このような取引手数料を回避することで大きな金額を節約できます。
シンプルさと信頼性: 現金取引はデジタルインフラストラクチャに依存しません。POS システムの故障やインターネットの停止など、技術的な複雑さや障害によって電子決済が中断する可能性がある状況では、このシンプルさがメリットとなります。オーストラリアの特定の地域で比較的よく発生する自然災害や停電の際にも、現金を受け付けていると業務を継続できます。
利用者の好みと信頼: 予算やプライバシーの懸念から現金を好む利用者もいます。現金決済では、利用者が支出をより効果的に管理でき、デジタルフットプリントも回避できます。中古品販売や地元の農産物直売所のような特定の場所では、利用者は大抵の場合、現金での支払いを想定しています。
サードパーティープロバイダーへの依存の低減: 現金を受け付けることで、サードパーティーの金融サービスプロバイダーへの依存を減らし、データ侵害やサービス中断などの関連リスクを軽減できます。この独立性は、デジタル決済プラットフォームと利用者データを共有することに慎重なビジネスにとって特に魅力的です。
衝動買いの増加: 現金は、特に小売業で衝動買いを促進する可能性があります。現金を手渡すという物理的な行為は、カードやモバイルデバイスを使用するよりも利用者にとって抵抗感がありません。
利用者の期待に応える: デジタル決済への移行が進んでいるとはいえ、オーストラリアの人口の一部は今でも現金での支払いを好み、期待しています。この選択肢を提供することで、顧客満足度を高めることができます。
オーストラリアでデジタル決済は急速に普及していますが、現金を受け付けることで包括性、諸経費の削減、即時流動性、シンプルな運営を実現できます。現金とデジタル決済のバランスを取ることにより、幅広い顧客基盤に対応し、オーストラリア市場の利用者の好みの変化に適応できます。
オーストラリアで現金決済を受け付ける方法
法的・規制環境
法定通貨法: オーストラリアの紙幣と硬貨は、オーストラリア全土で使用できる法定通貨です。一般的に、ビジネスは、取引 (オンライン購入など) が行われる前に代替の支払い方法を明示していなければ、取引で現金を受け付ける義務があります。
マネーロンダリング防止 (AML) 規制: 高額の現金決済を受け付けるビジネスは、2006 年マネーロンダリング防止およびテロ資金対策法 (AML / CTF 法) を遵守する必要があります。これには、$10,000 を超える取引での利用者の本人確認と検証が含まれます。
税務コンプライアンス: ビジネスは、税務処理のために、現金による取引を含むすべての取引を記録する必要があります。オーストラリア国税庁 (ATO) の規制に準拠するために、すべての売上について正確な記録を残す必要があります。
公正取引法: オーストラリア消費者法に従い、ビジネスは取引において誤解を招くような行為や不正行為を行ってはなりません。この法律は、料金体系の透明性や支払いの受け付けなど、取引のあらゆる側面に適用されます。
消費者の好みと傾向
利便性とスピード: オーストラリアの利用者は、迅速な取引を重視します。現金決済を適切に処理するには、十分な釣銭と効率的なシステムが必要です。
安全性とセキュリティ: ビジネスは現金を安全に取り扱う必要があります。保護された保管場所、定期的な銀行取引、偽造紙幣の対処・発見についてのスタッフトレーニングなどが必要です。
衛生上の懸念: 特に新型コロナウイルスに関連して、現金の取り扱いに衛生的な懸念を抱いている利用者もいます。手指消毒剤の提供や現金の取り扱い場所を清潔に保つことで、このような懸念に対処できます。
包括性: 現金を受け付けることで、デジタル決済手段にアクセスできない利用者や予算上の理由から現金を好む利用者など、あらゆる利用者層を受け入れることができます。
オーストラリアでの現金決済に関する法律および法令遵守上の考慮事項
ビジネスがオーストラリアで現金決済を取り扱う場合、さまざまな法律および規制上の考慮事項を遵守する必要があります。これらの規制は、透明性、金融犯罪の防止、金融システムの整合性維持を目的として策定されています。ここでは、現金決済に関する主要な法律・規制と、ビジネスへの影響について説明します。
法定通貨法
1965 年通貨法: この法律により、オーストラリアの紙幣と硬貨が法定通貨として定義されています。また、(オンライン取引、航空会社のような特定のビジネスモデルなどで) 事前に明示していなければ、一般的にビジネスは取引で現金を受け付ける必要があることも示されています。
AML / CTF 法: この法律は、サービスがマネーロンダリングやテロへの資金供与に使用されないように対策を講じることをビジネスに義務付けています。利用者のデューデリジェンス、記録管理、疑わしい取引の報告などが義務付けられています。
しきい値取引報告 (TTR): ビジネスは、$10,000 を超える現金取引をオーストラリア取引報告分析センター (AUSTRAC) に報告する必要があります。
税務コンプライアンス
- 物品サービス税 (GST) と所得税に関する規制: オーストラリア国税庁 (ATO) は、税務処理のために、現金売上を含むすべての取引を記録・報告することを義務付けています。
公正取引法と消費者法
- オーストラリア消費者法: この法律は、公正な取引慣行に従うことを義務付けています。料金体系や支払いの受け付けに関する誤解を招くような行為や不正行為が禁止されています。
偽造通貨法
- 1981 年犯罪 (通貨) 法: この法律は、偽造通貨を故意に所有または使用することを犯罪としています。偽造紙幣を発見・報告することをビジネスに義務付けています。
職場の衛生と安全に関する規制
- 現金の取り扱いと保管: 現金決済には直接関係しませんが、労働安全衛生法は従業員に安全な労働環境を提供することを義務付けています。これには、盗難などのリスクを最小限に抑えるための現金の取り扱い、保管、輸送に関する安全慣行が含まれています。
プライバシー法
- 1988 年プライバシー法: ビジネスが取引 (ロイヤルティプログラムや AML / CTF 法に基づく利用者の本人確認など) の際に個人情報を収集する場合、情報の取り扱いと保管に関するプライバシー法を遵守する必要があります。
オーストラリアで現金決済を受け付けるためのベストプラクティス
適切な現金処理手順の実施
スタッフのトレーニング: 偽造紙幣の見分け方、正しい現金の数え方、適切な釣銭の出し方など、現金の取り扱いについて従業員を教育します。
現金管理ポリシー: レジの開閉、現金輸送手順、現金の照合など、現金の取り扱いに関する明確なポリシーを策定します。
セキュリティ対策: 金庫、鍵付きのキャッシュドロアー、その他のセキュリティ対策を利用して、盗難や紛失を最小限に抑えます。
正確で透明性の高い記録の維持
売上の記録: 現金取引を正確に記録するシステム (POS システムなど) を設定して、納税義務を確実に遵守し、財務分析に役立てます。
領収書の発行: 透明性を維持し、記録を残すために、現金取引では必ず利用者に領収書を発行します。
監査と照合: 不一致を特定するために、定期的に現金取引の監査とキャッシュドロアーの照合を行います。
AML / CTF 規制の遵守
利用者の本人確認: $10,000 を超える取引では、AML / CTF 法で義務付けられている利用者の本人確認および検証手順に従います。
高額取引の報告: マネーロンダリング防止法を遵守するために、$10,000 を超える取引を AUSTRAC に報告します。
偽造の発見と対処
発見トレーニング: 紙幣のセキュリティ機能を確認するなどの方法で偽造紙幣を発見できるようにスタッフをトレーニングします。
偽造への対処手順: 当局への報告など、疑わしい偽造通貨に対処する手順を策定します。
顧客体験の向上
効率的な取引: 現金取引を迅速に行い、最適な顧客体験を提供します。
衛生慣行: 衛生上の懸念を考慮して、現金の取り扱い場所を清潔に保ち、手指消毒剤を提供します。
消費者の好みと傾向への対応
複数の支払いオプション: 変化する利用者の好みに対応するために、現金を受け付けるだけでなく、デジタル決済手段も提供します。
包括性: 高齢者、ある種の社会経済グループ、旅行者などの特定の利用者層は、現金決済を好んでいる、または現金決済に依存していることに留意しましょう。
安全とセキュリティの重視
現金輸送のセキュリティ: 現金輸送サービスを使用する場合は、輸送中の盗難リスクを軽減するために、サービスが安全基準に準拠していることを確認します。
店舗内のセキュリティ: 盗難を防止するために、監視カメラ、安全な現金取り扱い場所などのセキュリティ対策を検討します。
プライバシーとデータの保護
- 個人データの取り扱い: 取引の際に個人データを収集する場合は、プライバシー法に準拠して情報の取り扱いと保管を行います。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。