経済・商業・企業省が発表した「月間外国貿易報告書」によると、2025 年にスペインは 340 億ユーロ近くに相当する商品をポルトガルに輸出しており、これは総輸出の 8.8% に当たります。さらに、肉製品、医薬品、エッセンシャルオイル、香料油に対するポルトガルの需要により、ポルトガルはスペインの輸出の前年比成長への貢献度が 2 番目に大きい国となり、0.4 パーセントポイントを占める結果となりました。
報告書ではポルトガルへの出荷を「輸出」に分類していますが、税務上の観点では、その用語は欧州連合以外の国への配送のみを指します。この場合に正しい用語は「域内取引」、つまり 2 つの EU 加盟国の企業間での商品の販売またはサービスの提供です。したがって、スペインからポルトガルへ請求する場合は、EU 特有の付加価値税 (VAT) 規則を適用します。
このガイドでは、これらの請求書をどのように発行するか説明し、必要な記載事項の概要を示すとともに、VAT の管理方法をご紹介します。
目次
- VAT を含めずにスペインからポルトガルへ請求するための前提条件
- スペインからポルトガルへの請求書の必須フィールド
- スペインからポルトガルへ請求する際の VAT の管理
- スペインからポルトガルへ請求書を発行する際のよくあるエラー
VAT を含めずにスペインからポルトガルへ請求するための前提条件
EU の税制は、VAT 免除など、EU 取引を行う越境企業に数多くのメリットを提供します。ただし、この軽減措置を利用するには、規制が非常に厳しく、次の前提条件を満たす必要があります。
- ROI への登録
スペインからポルトガルへ商品やサービスを供給するための最初の要件は、ヨーロッパでの VAT 登録です。そのためには、フォーム 036 を提出して、域内事業者登録簿 (スペイン語の頭字語「ROI」でよく呼ばれます) への登録を申請します。登録する際は、「提出の理由」セクションに特に注意を払い、ROI への登録を希望することを明示する必要があります。 - VAT 番号の取得
申請が承認されると (フォーム 036 の提出から遅くとも 3 カ月後)、スペイン税務庁 (AEAT) は EU VAT 番号 を発行します。この軽減措置を利用するには、買い手と売り手のそれぞれが有効な EU VAT 番号を持っている必要があり、請求書にそれぞれの番号が記載されている必要があります。 - VIES システムへの登録
EU VAT 番号を取得すると、事業者または専門職は自動的に VAT 情報交換システム (VIES) に登録されます。このようにして、双方は AEAT または欧州委員会のウェブサイトで、番号の有効性を確認できます。
これらの要件を満たすと、適用される VAT 免除を利用して、ポルトガルの買い手に対して請求書発行と決済の受け取りを開始できます。Stripe Payments を使用すると、企業はカード、電子ウォレット、分割払いのオプションのほか、ポルトガルのオンライン取引の 45% 以上ですでに使用されている Bizum や MB WAY などの現地の決済手段を含む、100 を超える決済手段を利用できます。Stripe Payments は、195 カ国以上の顧客からの決済を受け付けるための現行のすべての規制と、業界で最も厳格なセキュリティ認証にも準拠しています。
スペインからポルトガルへの請求書の必須フィールド
スペインでは、請求書発行義務と EU 請求書に必要な情報は、国王令 1619/2012 や創出と成長法など、いくつかの規制によって定められています。ポルトガルの受取人宛ての請求書に記載する詳細は以下のとおりです。
- 日付: 請求書の日付は、作成されて送信された日を示します。取引日と異なる場合は、それぞれの日付を記載します。ポルトガルに複数の注文を行うスペインの企業は、多くの場合、それらを合計請求書にまとめます。
- 番号またはシリーズ: これは請求書の識別子であり、各請求書を連番かつ日付順に識別する番号またはシリーズが使用できます。
- 発行者の詳細: このフィールドには、発行者の識別情報 (自営業の場合は氏名、有限責任会社や公開会社などの事業体の場合は正式な会社名)、EU VAT 番号、および税務上の住所を含める必要があります。
- 顧客の詳細: ポルトガルの買い手の氏名または会社名、VAT 番号、および税務上の住所を記載します。
- 説明と金額: 各商品またはサービスの説明、販売数量、VAT を除く単価、割引 (該当する場合)、および最終金額を別の行に項目別に記載することが必須です。
- 課税標準: 販売の総額、または取引がゼロ VAT 扱いの要件を満たさない場合に VAT の計算に使用される金額。
- 税率と納付税額: 適用される VAT 税率を記載し、請求書上の VAT 合計額を示します。ポルトガルとの取引に VAT が含まれない場合は、非課税またはゼロ VAT 取引に該当することを明確に示し、関連する法的通知を記載します。
- 法的通知: ポルトガルへの請求書に VAT が含まれていない場合は、免除の理由を明記します。たとえば、商品の販売の場合は「VAT に関する法律 37/1992 第 25 条に基づき VAT が免除される域内供給」という文言を含め、サービスの提供の場合は「法律 37/1992 第 84 条 (1)(2) に基づくリバースチャージ VAT」と記載できます。
- 合計: これは、ポルトガルの顧客が支払う必要のある合計金額です。
スペインからポルトガルへ請求する際の VAT の管理
スペインからポルトガルへの請求書における VAT の適用は、販売の種類 (商品またはサービス)、供給場所、受取人が法人か個人かによって異なります。各状況の概要をまとめました。
ポルトガルの企業向け請求書における VAT
ポルトガルとの EU B2B 取引では、販売される商品に応じて VAT が適用されます。各ケースを個別に確認しましょう。
商品
商品の請求書における VAT の取り扱いは、売り手がポルトガルに商品を発送するかどうかによって異なります。
- ポルトガルへ発送する場合
この場合、取引は商品の域内供給に該当するため、VAT が免除されます。ただし、商品がスペイン国外へ出たことを証明するために、運送会社の納品書などの証明書類を AEAT に提出する必要があります。 - スペインで購入して使用する場合
商品がスペイン国外へ出ない場合、取引は国内販売として扱われ、スペインの VAT 税率が適用されます。同じことが、ポルトガル企業がスペインで実物の商品を購入し、現地で使用する場合にも当てはまります。たとえば、ポルトガルに税務上の住所を持つ企業が、ガリシアに所有する事業用施設を改装するためにスペインで建築資材を購入する場合などが該当します。
サービス
請求書がサービスを対象とする場合、VAT の取り扱いはサービスが行われる場所、つまり顧客が利用する場所によって異なります。
- ポルトガルで提供される場合
一般的なルールとして、いくつかの例外 (EU 企業向け業務がスペイン国内で行われる場合) を除き、規定ではサービスの提供地をクライアントの本社所在地とします。そのため、業務がスペインで行われる場合でも、規制上はポルトガルで取引が発生したものとして扱われます。この場合、請求書に VAT は含まれません。代わりにリバースチャージメカニズムが適用され、法人顧客がポルトガルで該当する間接税を申告します (請求書にはリバースチャージメカニズムが VAT に適用される旨を明記する必要があります)。 - スペインで提供される場合
このルールにはいくつかの例外があります。請求書が以下に列挙する業務のいずれかを対象とする場合、顧客がポルトガルを拠点とする企業であっても、B2B 業務はスペインで行われたものとして扱われます。- 不動産 (商業施設の賃貸や、配管工事、改装、塗装サービスなど、これらの不動産に関わる業務を含む)
- 展示会、見本市、会議などのプロフェッショナルイベントへのアクセス
- ケータリング (スペインのレストランでの企業ディナーなど)
- 短期車両レンタル (最大 30 日間、船舶の場合は 90 日間まで延長可)
- 不動産 (商業施設の賃貸や、配管工事、改装、塗装サービスなど、これらの不動産に関わる業務を含む)
ポルトガルの個人顧客向け請求書における VAT
個人顧客 (B2C) との取引では、リバースチャージ VAT を適用できないため、ポルトガルの最終顧客に発行する請求書には、取引の種類と販売規模に応じて、スペインまたはポルトガルの VAT を必ず含める必要があります。
電子製品およびサービス
他の EU 加盟国の最終顧客への商品供給を含む取引は「遠隔販売」として知られています。このカテゴリには、ウェブホスティングなど完全にオンラインで提供される電子サービス、および通信、放送、テレビサービスも含まれます。
このような場合、VAT の適用には次の 2 つのシナリオが考えられます。
- スペインの VAT
ポルトガルおよびその他の EU 加盟国の個人向け総販売額 (スペインの顧客への販売を除く) が前年または現在の暦年中に 1 万ユーロを超えない場合、スペインの VAT 税率を適用する必要があります。スペイン企業がポルトガルに販売する多くの商品には軽減税率が適用されます。人体用医薬品、果物、野菜には超軽減税率 4% の VAT が適用されます。 - ポルトガルの VAT
ポルトガルおよび EU 全体の個人向け総販売額 (スペイン国内顧客への販売を除く) が前暦年または現在の年に 1 万ユーロを超える場合、請求書にポルトガルの VAT を適用します。ポルトガルの標準税率は 23% で、軽減税率として 13% と 6% が設定されています。ただし、税率はいつでも変更される可能性があるため、定期的に最新の税率を確認することをお勧めします。このタスクを自動化し、古い VAT 税率を請求するリスクを回避するには、Stripe Tax を使用できます。このツールは EU および利用可能な 100 カ国以上における法改正を反映するよう体系的に更新されています ( 未対応の地域もご確認ください)。Stripe Tax を使用すれば、Stripe 取引の税金の計算と徴収に正確な税率が自動的に適用されます。
EU 全体で、すべての税率は単一システム「VAT One-Stop Shop (OSS)」に統合されています。これにより、企業はすべての EU B2C 販売に関する VAT を単一のポータルで申告し、納付できます。
なお、総販売額が 1 万ユーロを超えない場合でも、少なくとも 2 暦年間継続して適用することを条件に、ポルトガルの VAT を任意で適用できます。この方法は、スペインより税率の低い EU 加盟国に電子製品およびサービスを販売するスペイン企業の間では一般的です。ただし、ポルトガルとの取引ではあまり一般的ではありません。標準税率も、軽減税率や超軽減税率も、いずれもスペインより高いためです。
一般的なサービス
一般的なサービスの請求書では、通常スペインの VAT が適用されます。規制上、業務はスペインにある企業の拠点で行われたものとして扱われるためです。
ただし、不動産関連など、ポルトガルの VAT を適用しなければならない例外も存在します。たとえば、ビゴで自営業を営む左官職人がブラガの個人宅を改装する場合、請求書にポルトガルの VAT を含める必要があります。この義務を果たすには、ポルトガルで VAT 登録を行うか、VAT OSS を利用してスペインから直接申告する方法があります。
まとめとして、ポルトガルの顧客への請求書に VAT を含める必要があるか、および各取引の種類に必要な補足情報を示す 2 つの表を作成しました。
ポルトガルの顧客向け B2B 請求書
|
取引 |
VAT |
備考 |
必須の追加フィールド |
|---|---|---|---|
|
ポルトガルに発送される商品 |
❌ |
売り手と買い手の両方に有効な VAT 番号がある場合の免除 |
|
|
スペインで購入された商品 |
✅ |
発送を伴わないため VAT が含まれます |
追加情報不要: 国内販売と同様に請求書を発行できます |
|
一般的なサービス |
❌ |
リバースチャージ VAT が適用され、顧客がポルトガルの VAT を申告する |
|
|
スペインで提供されるとみなされる、特別規則の対象となるサービス |
✅ |
不動産、イベントへのアクセス、ケータリング、短期車両レンタル、旅客輸送など「例外」とみなされるサービスには、スペインの VAT が適用されます |
追加情報不要: 国内販売と同様に請求書を発行できます |
ポルトガルの個人向け B2C 請求書
|
取引 |
VAT |
備考 |
必須の追加フィールド |
|---|---|---|---|
|
電子製品およびサービス (€10,000/年以下) |
✅ |
スペインの VAT を含めるが、希望する場合はポルトガルで納付することも可能 |
追加情報不要: 国内販売と同様に請求書を発行できます |
|
電子製品およびサービス (€10,000/年超) |
✅ |
ポルトガルの VAT が含まれており、VAT OSS を通じて申告されます |
ポルトガルの VAT 税率が適用されます |
|
一般的なサービス |
✅ |
原則として、提供地で課税されるためスペインの VAT が含まれます |
追加情報不要: 国内販売と同様に請求書を発行できます |
スペインからポルトガルへ請求書を発行する際のよくあるエラー
スペインの企業はポルトガルの企業と大量の取引を行っています。「月間外国貿易報告書」によると、2025 年 12 月だけで、スペインは 27 億ユーロ以上の商品をポルトガルに販売しました。こうした取引の請求書を作成する際、特に多く見られるエラーがいくつかあります。代表的なものを順に確認していきましょう。
法的通知の記載忘れ
商品やサービスをポルトガルに販売する企業が、請求書に法的通知を含めないことがあります。法的通知の記載は、VAT 免除の対象となる取引やリバースチャージ VAT が必要な取引では必須です。このようなエラーを回避し、ポルトガルへの販売をできるだけ円滑に進めるために、Stripe App Marketplace のアプリケーションを活用できます。
たとえば、Billit は、EU 全体でのさまざまな電子請求書要件への対応を確保することに重点を置いた、ヨーロッパで先駆的な電子請求書発行プラットフォームです。
スペインで開発された Invopop は、VERI*FACTU システムと完全に連携しており、スペインからポルトガルへの改変が加えられていない請求書記録を AEAT にリアルタイムで送信します。
事前に VAT 番号を確認しないこと
VAT を含めずに請求書を発行する前に、ポルトガルの買い手の EU VAT 番号を確認することが重要です。番号が無効な場合、規則上その取引は EU 域内供給として扱われません。その結果、VAT が適用され、AEAT から該当する金額の支払いを求められます。
請求書だけで十分だと考えること
ポルトガルへの一部の販売では、請求書だけでは足りません。実物の商品の域内供給にも輸送の証明が必要です。
最も広く使われている書類は「CMR 運送状」(通常は、道路による国際物品運送契約に関する条約のフランス語の頭字語である CMR と呼ばれます) です。輸送された商品、数量、日付、原産国、仕向国、および売り手、買い手、運送業者の詳細が記載されています。
フォーム 349 に請求書を含めないこと
ほとんどの企業は、スペインからポルトガルへ発行された請求書を四半期ごとの VAT 申告書に含めることで、納税義務を果たしています。しかし、重要な税務書類であるフォーム 349 の提出を怠る企業もあります。
このエラーは、ポルトガルの顧客に不定期に販売する企業によく見られます。この情報提供用の納税申告書に VAT 免除の請求書を含めないと、AEAT から該当する VAT 金額の支払いを求められる可能性があります。
1 年間 EU での販売がない状態でポルトガルへ請求書を発行すること
長期間 (通常は 1 年間) EU 取引を行わない場合、AEAT が ROI の登録を自動的に抹消する可能性があります。この場合、抹消が発効する前に通知を受け取りますが、発効後はスペインからポルトガルへの請求書に VAT 免除を適用できなくなります。EU 取引でこの税制上の優遇措置を再び受けるには、フォーム 036 を提出して ROI への再登録を申請する必要があります。AEAT は通常、このような場合に迅速に対応します。
スペインからポルトガルへの請求書発行に関するよくあるご質問
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。