アメリカで有限責任会社 (LLC) を設立する場合、最初に決定すべきことの 1 つが、会社を登録する場所です。本拠地である州が選択肢に入ることは明らかですが、それぞれの州に異なる規則、料金、税構造があります。その違いが収益に役立つ場合もあれば、損をする場合もあります。また費用も州によって異なっているため、意思決定をする前に調査を行うことが重要です。
以下では、申請手数料や継続的な維持費から潜在的な節税まで、特定の州が LLC を設立するために他の州よりも安くなっている要因を探ります。知っておくべきことは、次のとおりです。
この記事の内容
- LLC 設立に最適な州の選び方
- LLC 設立手数料が最も低い州
- LLC 設立にかかる他の費用
- 継続的な LLC 規制遵守費用が最も安い州
- 「安い」州で LLC を設立する場合の隠れた費用
LLC 設立に最適な州の選び方
法人の立ち上げとは異なり、厳密に言えば LLC は法人ではないため、法人化ではなく設立を行うのですが、プロセスは似ています。LLC を設立するために適切な州を選択することは、最も安価なオプションを見つけることだけではありません。
考慮すべき最も重要な要素は次のとおりです。
事業所在地: あなたの事業が主に 1 州で運営されている場合、通常、そこで設立するのが最もシンプルな選択です。これにより、事業を行う州で「州外 LLC」として登録する手間と費用を省くことができます。多くの場合、州外 LLC を維持するための管理上の負担と手数料の方が、より安価な州で設立して得られるメリットよりも高くつきます。
プライバシー保護: 特定の州では、LLC 所有者のプライバシー保護が強化されています。個人情報を公的記録に載せないことを重視している場合は、デラウェア州やニューメキシコ州など、厳格な機密保持規則がある州を検討してください。
法的環境: 一部の州 (デラウェア州など) には、特に事業体に対応する確立された法制度があります。たとえば、デラウェア州の衡平法裁判所は、専門知識と効率性で企業紛争を解決することで知られています。これは、今後複雑な法的問題が予測される企業にとって、魅力的なオプションであると言えます。
評判: 一部の州は、より「ビジネスフレンドリー」であるという評判があるため、投資家やパートナーを惹きつけられます。たとえば、デラウェア州は、確立された会社法と事業者に有利な風土があるため、テクノロジースタートアップや大企業に人気の場所です。
今後の展開: 本拠地の州以外で事業を拡大する予定がある場合は、デラウェア州、ネバダ州、ワイオミング州などの州で設立することが理にかなっているかもしれません。これらの州では、複数の場所での拡大や運営を検討している LLC に対して、多くの場合、規則がより柔軟で寛大になっているからです。
税金: ワイオミング州やネバダ州といった州は、企業に税制上の優遇措置を提供することで知られています。決めるにあたっては、所得税、売上税、給与税、その他の隠れた費用を考慮に入れてください。
手数料: LLC の設立と維持にかかる費用には、申請手数料、年次報告手数料、フランチャイズ税などがあります。これらの料金は州によって異なります。初期費用と継続的な費用の両方を、十分に検討してください。
LLC 設立手数料が最も低い州
2024 年現在、LLC を設立するための手数料が最も低い州は次のとおりです。
アリゾナ州: 申請手数料 50 ドル、年次報告手数料なし
アーカンソー州: 申請手数料 50 ドル
コロラド州: 申請手数料 50 ドル
ハワイ州: 申請手数料 50 ドル
アイオワ州: 申請手数料 50 ドル
ケンタッキー州: 申請手数料 40 ドル
ミシガン州: 申請手数料 50 ドル
ミシシッピ州: 申請手数料 50 ドル、年次報告手数料なし
ミズーリ州: オンライン申請する LLC の場合は申請手数料 50 ドル、年次報告手数料なし
ニューメキシコ州: 申請手数料 50 ドル、年次報告手数料なし
LLC 設立にかかる他の費用
申請手数料が低い州は、設立のための費用を節約したい企業にとって理想的なスタート地点であるとみられますが、自身の LLC に適した州を選択するにあたっては、他のコストも考慮に入れる必要があります。
ここでは、LLC にとって費用対効果の高い州を選ぶときに、知っておくべきその他の費用を見てみましょう。
年次報告手数料: LLC の事業資格を適切に保つため、多くの州で年次報告提出料の形で、年間費用が請求されることが多いです。この手数料は通常 15 ドル~ 50 ドルで、州により異なります。
フランチャイズ税: 年間費用に加えて、一部の州では LLC にフランチャイズ税の支払いを義務付けています。フランチャイズ税は所得税ではなく、州で事業を行う特権に対する手数料です。たとえばカリフォルニア州は、LLC に年間 800 ドルの税金を請求しますが、ワイオミング州とニューメキシコ州では、継続的な費用がはるかに低くなっています。
登録代理人手数料: ほとんどの州が、登録代理人 (事業を代表して法的文書を受け取る人) を立てるよう LLC に義務付けています。自身が登録代理人を務めることは可能ですが、多くの企業は、通常、年間 100 ドル~ 300 ドルの費用をかけて専門サービスを雇うことを選択しています。
州外 LLC 登録: ある州で LLC を設立し、別の州で事業を行う場合は、事業を行う州で州外 LLC として登録する必要があります。これには、追加の申請手数料と年間費用がかかります。
継続的な LLC 規制遵守費用が最も安い州
継続的な LLC 規制遵守費用について調べてみると、特定の州は、年次報告手数料、フランチャイズ税、その他必要な費用が、際立って安価であることが分かります。ワイオミング州やニューメキシコ州などの州では、継続的な規制遵守費用が最小限に抑えられています。特に、事業が複数の州にまたがって拡大または運営する予定である場合は、税制や法的環境といった他の要因と、上記の節約のメリットを、比較検討することが重要です。
LLC の規制遵守関連の継続的な費用が最も低い州を、いくつかご紹介します。
アリゾナ州: 年次報告手数料とフランチャイズ税なし
アーカンソー州: 年次フランチャイズ税 150 ドル
コロラド州: 定期報告手数料 25 ドル、フランチャイズ税なし
ミズーリ州: 年次報告手数料とフランチャイズ税なし
ニューメキシコ州: 年次報告手数料なし
オハイオ州: 年次報告手数料なし
ワイオミング州: 年次報告手数料 60 ドル、フランチャイズ税なし
「安い」州で LLC を設立する場合の隠れた費用
初期費用や継続的な費用を低く抑えて LLC を設立することは、最良の選択であるように思われるかもしれませんが、後に驚くような追加費用がかかるかもしれません。ここでは、いわゆる「安い」州での登録に関連する、よくある隠れたコストをいくつか紹介します。
州外 LLC 登録: ワイオミング州やデラウェア州などの州で LLC を設立し、主に別の州で事業を行っている場合は、事業を行う州で州外 LLC として登録する必要があります。これは、両方の州で申請手数料と継続的な年間費用を支払うことを意味します。そのため多くの中小企業にとって、単に本拠地の州で登録するより費用が高くつく可能性があります。
会計処理が複雑に: 運営拠点以外の州で LLC を設立すると、会計はより複雑になる可能性があります。複数の州にまたがる税務申告と規制遵守を考慮する必要があり、より高額な会計サービスが必要になる可能性があります。また、複数の税務管轄区域をまたいでいると、エラーのリスクが高まり、罰金や罰則が科せられる可能性が高まります。
登録代理人手数料: 州は多くの場合、登録代理人を立てるよう義務付けています。この代理人は、LLC 設立の州に居住していなければなりません。非居住者である場合は、登録代理人サービスを雇う必要があり、継続的な費用がかさみます。
州税: カリフォルニア州などの一部の州では、現地であまり事業を行っていなくても、多額の年次フランチャイズ税が請求されます。LLC が複数の州で事業を行っている場合、本拠地の州で所得税、売上税、使用税を支払わなければならない場合もあり、他の州で法人化することによる税制上の優遇措置が、意味をなさなくなる可能性があります。
銀行と金融の障壁: 物理的に事業を行っていない州で LLC を設立した場合、ビジネス用銀行口座を開設したり、資金を確保したりすることが、やや困難になるかもしれません。銀行や金融機関は、本拠地の州または事業を行っている州で登録している企業との取引を好む場合があります。そのため、オプションが制限されたり、手数料が高くなったりする可能性があります。
法的保護の面での不都合: 初期費用が少ない州では、事業主に対する法的保護のレベルが手厚くはない可能性があります。たとえば、デラウェア州は、強力な法的枠組みと事業者に優しい裁判所で知られています。これは、争議のときに個人の資産と利益を保護するという点で重要です。保護が弱い州で LLC を設立すると、最初はお金を節約できるかもしれませんが、法的な問題や責任にさらされた場合に、より多くの費用がかかる恐れがあります。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。