起業の際に LLC と株式会社のどちらを設立すべきか?決定するための方法

  1. はじめに
  2. LLC とは
  3. 株式会社とは
    1. 株式会社の種類
  4. LLC と株式会社の比較: 類似点と相違点
    1. 類似点
    2. 相違点
  5. LLC と株式会社の比較: スタートアップが選択する方法

スタートアップは、選択する事業形態によって、その後何年にもわたるビジネスの道筋が決まる可能性があります。事業形態は、資金調達、税金、経営のあり方、成長の可能性など、日々の経営や長期的な見通しに影響を与えます。事業形態を決定することは、成長と持続可能性を実現するための計画の基盤となります。

中小企業・起業家評議会の分析によると、2019 年の段階で米国には 610 万を超える雇用主企業があり、そのうち 89% は従業員が 20 人未満でした。しかし、このような中小企業のうち、機関投資家の投資を確保できる段階まで成長するのはごく一部です。LLC を設立するか株式会社を設立するかは、スタートアップが資金を確保し、人材を雇用し、納税義務を管理する能力に直接影響する可能性があります。

革新的なハイテクスタートアップを作る場合でも、地域市場を変革する企業を作る場合でも、LLC と株式会社の違いを理解する必要があります。以下では、これらの事業形態の主な特徴とスタートアップへの影響について説明し、この重要な決定を下す方法についてのガイダンスを提供します。

本記事の内容

  • LLC とは
  • 株式会社とは
  • LLC と株式会社の比較: 類似点と相違点
  • LLC と株式会社の比較: スタートアップが選択する方法

LLC とは

LLC (有限責任会社)は、株式会社とパートナーシップの要素を組み合わせた事業形態です。柔軟性と保護というメリットから、中小企業経営者に人気のある選択肢です。

LLC の主な特徴は以下のとおりです。

  • 有限責任: LLC では、所有者 (メンバーと呼ばれる) の責任は有限です。つまり、事業で負債を抱えたり訴訟の当事者になったりしても、メンバーの個人資産は保護されます。株式会社でも同様の保護があります。

  • パススルー課税: 株式会社とは異なり、LLC は通常、法人税を支払いません。その代わり、事業の利益と損失はメンバーの個人所得に「パススルー」され、メンバー個人がその情報を確定申告書に記載します。これにより、株式会社で起こり得る「二重課税」、つまり、利益がまず企業レベルで課税され、配当として分配される際に再び課税されることを回避できます。

  • 運営の柔軟性: LLC は、運営やガバナンスの面で、株式会社よりも柔軟です。たとえば、年次総会や記録管理に関する要件は株式会社より少なくなっています。

  • 所有権の柔軟性: LLC のメンバー数は任意に決めることができます。また、個人、他の LLC、株式会社に加え、外国の事業体もメンバーになることができます。LLC の共同経営契約書に別段の定めがない限り、メンバーは通常、LLC の所有権を自由に譲渡できます。

  • 経営構造: LLC のメンバーは、自ら事業を管理する (メンバー管理型) か、事業運営を行うマネージャーを任命する (マネージャー管理型) かを選択できます。

株式会社とは

株式会社は、所有者から法的に分離された事業体の一種です。登録した州の法律に基づいて設立され、法律上および税務上は、独立した「個人」とみなされます。つまり、人と同じように財産を所有し、契約を締結し、訴訟の当事者となり、事業活動に従事することができます。

株式会社の主な特徴をいくつか挙げます。

  • 有限責任: LLC と同様に、株式会社の所有者 (株主と呼ばれる) の責任は有限です。つまり、株主は会社の債務や負債に対して個人的な責任を負いません。財務上の責任は、会社に対して投資した金額が限度となります。

  • 株式の譲渡: 株式が会社の所有権を表し、通常は容易に株式を譲渡できます。株式会社の場合、他の事業形態と比べて所有権の売買が容易です。

  • 永続的な存在: 所有者が変わったり亡くなったりしても会社は存続します。これは長期的な事業計画を立てる際に大きなメリットとなります。

  • 二重課税: LLC とは異なり、株式会社は二重課税となる可能性があります。つまり、企業は利益に対して法人として所得税を支払い、株主は配当として分配された利益に対して個人として所得税を支払います。しかし、中小企業によっては、課税方式が LLC と同じである S 株式会社を選択することで、これを回避できる場合があります。

  • 経営構造: 企業には、株主、取締役会、役員を含む正式な組織があります。株主は取締役会を選出し、取締役会は会社の全体的な方向性と戦略を監督します。取締役会は、日常業務を管理する役員 (CEO、CFO など) を任命します。

株式会社の種類

株式会社にはいくつかの形態があり、それぞれにメリット、デメリット、具体的な用途があります。以下は、主な企業の種類です。

  • C 株式会社: これは標準的な株式会社の種類です。C 株式会社では、所有者は会社と法的に分離され、責任は有限です。また、C 株式会社には正式な経営構造があります。株式を通じて所有権を簡単に譲渡することができます。C 株式会社の主なデメリットは、二重課税の可能性がある点です。まず法人レベルで課税され、利益が株主に配当される際に再度個人レベルで課税されます。

  • S 株式会社: S 株式会社は、C 株式会社に関連する二重課税の問題を回避するように設計されています。法人レベルでは課税されず、LLC と同様に、法人の利益や損失は株主個人が確定申告で報告することになります。ただし制限があります。S 株式会社の株主数は 100 名以下にする必要があり、株主はすべて米国市民または米国居住者である必要があります。また、発行できる株式の種類は 1 種類のみです。

  • B 株式会社: B 株式会社は、利益だけでなく、公益を生み出すことにも取り組む営利企業です。つまり、B 株式会社には社会的責任と株主責任があります。B 株式会社は、社会的・環境的な実績、説明責任、透明性に関する一定の基準を満たす必要があります。第三者 (B Lab) が認定プロセスを担い、認定された場合、企業は B 株式会社であると同時に、C 株式会社または S 株式会社になることができます。

  • 非営利団体: 非営利団体は、慈善、教育、科学、宗教、文学などの目的のために組織されます。IRS の 501 (c)(3) 項に基づき非課税であり、得られた利益はメンバーや理事に分配されるのではなく、団体の使命を推進するために使用する必要があります。多くの場合、非営利団体への寄付は税控除の対象となります。

  • 専門職法人 (PC): PC は、医師、弁護士、会計士、エンジニアなどの専門家のための法人です。多くの州では、このような専門家は通常の会社や LLC を設立することができないため、代わりに PC を設立します。通常、PC では一般的な法人と同様に責任は有限ですが、場合によっては、過誤に対する請求に専門家が個人的に責任を負うこともあります。

  • 非公開会社: 非公開会社は、小規模な事業運営において一般的です。株主数がより限定されており、経営体制もそれほど厳格ではありません。多くの場合、パートナーシップに近い形で運営されます。非公開会社の株式は一般に販売されることはありません。多くの場合、株式が公開されるのを防ぐために譲渡制限が付けられています。

どの事業形態の選択が適切であるかは、株主数、資本の必要性、税制上の考慮、全体的な事業目標など、多くの要因によって決まります。

LLC と株式会社の比較: 類似点と相違点

LLC と株式会社の最大の類似点は、どちらも所有者の責任が有限である点です。しかし、構造、経営、税制、所有権に関する規則などの点で大きな違いがあります。

ここでは、類似点と相違点について説明します。

類似点

  • 有限責任: どちらの事業形態でも、所有者の責任は有限です。つまり、所有者は通常、事業上の債務や負債について個人的に責任を負うことはありません。

  • 固有の法人: LLC と株式会社は、州に申請して設立する固有の法人です。

  • 州の規制: いずれも州法で規制されており、州当局 (通常は州務長官事務所) に必要な書類を提出して設立する必要があります。

相違点

  • 所有権: 株式会社の所有権は、発行される株式によって決まります。株式は簡単に譲渡できるため、所有権も簡単に売却できます。また、株式会社の株主数は無制限です。一方、LLC の所有権は譲渡が困難な場合が多く、他のメンバーの承認が必要な場合もあります。州によっては、LLC のメンバー数が制限されている場合もあります。

  • 経営: 株式会社には、役員、株主、取締役会で構成されるという定まった構造があります。取締役会は会社の事業と業務を監督し、役員は日常的な業務を管理します。株主は取締役会を選出し、会社の主要事項について投票します。LLC はより柔軟です。LLC では、共同経営契約書の条件によって、メンバー (所有者) が管理することも、管理者が管理することもできます。

  • 課税: LLC と株式会社の主な違いは課税方式です。株式会社は独立した税務上の事業者として扱われ、法人税率が適用されます。法人として所得税が課税された後、株主への配当金に対して各株主が個人税率で再度課税されます (二重課税) 。これに対し、LLC では通常、パススルー課税が採用されています。つまり、利益と損失は所有者個人の確定申告に引き継がれます。しかし、LLC では法人としての課税も選択できます。その場合、法人は一定の要件を満たせば、S 株式会社の地位を選択することで、二重課税を回避できます。

  • 形式と事務処理: 株式会社は、年次総会の開催、議事録の管理、取締役会の設置など、より多くの形式的手続きや法規制の遵守が求められます。LLC は通常、そのような手続きを遵守する必要はありません。

  • 利益の分配: 株式会社では、所有する株式の数や種類に応じて、利益分配のルールが定められています。一方、LLC はより柔軟で、メンバーの決定に従ってさまざまな方法で利益を分配できます。

LLC と株式会社の比較: スタートアップが選択する方法

適切な事業形態の選択は、法的責任、資金調達の選択肢、税務上の影響、経営の柔軟性、さらには長期的な事業の成功に影響を与える可能性があります。ここでは、スタートアップが LLC と株式会社のどちらを選択すれば良いかを検討します。

  • 創業チームの将来的なビジョン: 計画している事業の種類と、長期的な目標を考慮します。小規模事業や、主要な数人の所有者が主に関与する事業を想定している場合は、柔軟性と簡便性から LLC が適しているかもしれません。しかし、ビジョンが大きく成長すること、上場すること、ベンチャーキャピタルから資金調達することであれば、株式会社 (特に C 株式会社) のほうが良い場合があります。多くの投資家は株式会社の構造を好みます。これは、役割が明確に定義されており、株式会社が身近な存在であるためです。

  • 投資と資金調達のニーズ: ベンチャーキャピタルからの資金調達や新規株式公開 (IPO) を計画しているスタートアップには、多くの場合、株式会社、特に C 株式会社が適しています。これは、株式会社の株式は譲渡が容易で、権利の異なるクラスに分けることができるためです。この点は投資家にとって魅力的です。

  • 経営の柔軟性: LLC は株式会社よりも規制要件が少なく、より柔軟な経営が可能です。正式な会議の要件が少なく、書類提出も少なく、利益配分の柔軟性も高くなります。形式的な義務が少なく、柔軟な経営体制を維持することが重要な場合は、LLC が良い選択になる可能性があります。

  • 税務上の留意点: LLC にはパススルーの方式が適用されます。つまり、利益は所有者の個人所得に転嫁され、それに対して法人が税を負担することはありません。C 株式会社では、利益は法人レベルで課税され、配当として分配される際に個人レベルで再度課税される場合があります。しかし、企業が利益を保持して再投資する場合や、S 株式会社を選択した場合は、この二重課税を軽減できます。

  • 従業員報酬: 多くのスタートアップで一般的に行われていますが、従業員報酬の一部としてストックオプションを計画している場合は、株式会社が最適な事業形態になる可能性があります。LLC の場合、メンバーシップを分配することはできますが、株式会社でストックオプションを発行する場合よりもプロセスが複雑になります。

  • 責任と法的保護: LLC と株式会社の所有者の責任は有限ですが、法律と規制は州によって異なる場合があります。事業内容によっては、LLC と株式会社のどちらかがより有利な場合もあります。

適切な事業形態を選択することは、法的にも財務的にも事業に大きな影響を与えます。しかし、スタートアップはそれぞれ固有の事業を展開しており、すべての事業に当てはまる答えはありません。多くの利益を事業に再投資する予定であれば、株式会社という形態がより有利なことがあります。柔軟性と簡便性を優先するのであれば、LLC のほうが良い選択である可能性があります。事業の特性を十分に理解することで、最適な事業形態を選択し、安定性、成長性、成功の可能性を高めることができます。

徹底的に調査、熟慮し、専門家の助言を得ながら、事業形態を選択するプロセスに取り組みましょう。設立後の事業形態変更は、複雑でコストがかかる場合があります。そのため、最初から時間をかけて正しい決断を下すことが重要です。

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