サービスとしてのソフトウェア (SaaS) 業界の世界的な売上は 2024 年には 3,390 億 USD に達すると予測されています。SaaS ビジネスにとって、サブスクリプション請求は、顧客に柔軟性と選択肢を提供しながら、継続的に売上を回収するための鍵となります。
この記事では、SaaS 請求とは何か、SaaS 請求の仕組み、SaaS 請求の種類についてご紹介します。また、Stripe Billing や Stripe Invoicing などの SaaS 請求管理ソリューションが、SaaS ビジネスの請求をどのように効率化しているかについても見ていきます。
この記事の内容
- SaaS 請求とは
- SaaS 請求の仕組み
- SaaS 請求の種類
- SaaS 請求の機能
- SaaS 請求管理のベストプラクティス
- Stripe Billing と Stripe Invoicing の SaaS 請求対応
SaaS 請求とは
SaaS 請求は、サービスとしてのソフトウェアアプリケーションにサブスクリプション登録している顧客への請求に使用される特別なプロセスです。1 回限りの購入と永久ライセンスを伴う従来のソフトウェアモデルとは異なり、SaaS はサブスクリプションベースで運用されます。請求は継続的なプロセスであり、多くの場合、月単位または年単位で行われます。料金には、ソフトウェアの基本サブスクリプション手数料と、追加機能、データストレージ、またはプレミアムサービスに対する追加料金が含まれます。
SaaS 請求の仕組み
SaaS 請求は、複数のタッチポイントを持つ相互接続システムで、仕組みは次のとおりです。
顧客によるサービスの開始
SaaS 請求プロセスは、顧客がビジネスのオンラインアカウントを作成し、サービスにサブスクリプション登録した時点で始まります。請求体系
顧客が新しいアカウントを作成すると、その顧客とサービスのやり取りに基づいて、請求システムによってさまざまなアクションが開始されます。たとえば、顧客がより高額なサービス段階にアップグレードしたり、アカウントにユーザーを追加したりすると、次回のインボイスが自動的に再計算され、その変更が反映されます。同様に、ダウングレードやキャンセルの場合は、請求要件がリアルタイムで調整されます。通常、このようなオペレーションは自動請求アルゴリズムによって監督され、手動操作は最小限に抑えられています。決済処理
システムによって請求詳細が確認、認証され、料金が適用された後、領収書が作成されます。信用ベースの顧客や請求対象の顧客の場合、これらのプロセスは、ペイメントゲートウェイによって行われます。支払いに失敗すると、督促管理によって督促状が顧客に送信され、支払いが再試行されます。法令遵守とセキュリティ
金融規制への準拠は、SaaS 請求にとって不可欠です。たとえば、暗号化プロトコルにより顧客データが保護され、PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) などの基準によってデータのセキュリティが保証されます。セルフサービスアカウント機能
サブスクリプションを開始した顧客はすぐに、確認の通知と請求サイクルの詳細を受け取ります。サブスクリプション期間中は、セルフサービスポータルにアクセスし、利用状況の確認、支払い情報の更新、サブスクリプション詳細の調整を行うことができます。インボイスの発行と請求
請求期間が終了すると、顧客はインボイスを受け取ります。そのインボイスには料金明細が記載されています。このようなインボイスには、グラフやチャートなどの視覚的な要素が組み込まれていることが多く、顧客が使用状況の指標を理解しやすくなっています。これは、社内でコストを配分する必要がある企業にとっては特に便利な機能です。
以下では、企業による SaaS 請求のさまざまな構成および管理方法について見ていきます。
SaaS 請求の種類
SaaS の請求モデルはいくつかの主要なカテゴリーに分類され、それぞれ異なる機能を備え、メリット、デメリットがあります。
定額請求
これは最もシンプルな請求形態であり、顧客はサービスへのアクセスに対して定額手数料を支払います。通常、定額請求は、複雑な機能セットや複数のユーザー段階を必要としない、わかりやすいサービスに関連付けられています。- メリット: シンプルで予測しやすいため、顧客は自分が何に対して支払っているのかを容易に把握できます。
- デメリット: 画一的なモデルであるため、一部の顧客、特に専門的なサービスを必要とする顧客のニーズに十分に対応できない可能性があります。
- メリット: シンプルで予測しやすいため、顧客は自分が何に対して支払っているのかを容易に把握できます。
ユーザー単位の請求
このモデルでは、顧客はプラットフォーム上のユーザー数に基づいて支払います。B2B サービスでは最も一般的で、組織内の各チームメンバーにアカウントが必要な場合があります。- メリット: 料金体系モデルに拡張性が組み込まれており、それが企業の成長に直結します。
- デメリット: 組織の成長に伴いコストが急速に上昇する可能性があるため、顧客によっては、よりコスト効果の高いソリューションを求めるようになります。
- メリット: 料金体系モデルに拡張性が組み込まれており、それが企業の成長に直結します。
段階的請求
SaaS プロバイダーはここで、さまざまな段階的料金を提供し、それぞれに独自の機能セットを設定します。企業は、多くの場合、さまざまな規模やニーズの顧客に対応するためにこのモデルを使用します。- メリット: 顧客固有のニーズに合った価格帯を顧客自身が柔軟に選択できます。
- デメリット: 低価格帯の機能セットでは、すぐに顧客のニーズに追い付かなくなる可能性があり、アップグレードすると高くつく場合があります。
- メリット: 顧客固有のニーズに合った価格帯を顧客自身が柔軟に選択できます。
従量課金
顧客への請求は、特定のサービスの使用量に基づいて行われます。従量課金は、クラウドコンピューティングなどの業界では一般的で、ストレージやデータの使用量に応じてコストが発生します。- メリット: このモデルでは、顧客は使用した分だけ支払えばよいため、財政面で効率的です。
- デメリット: 組織によっては、請求サイクルごとにコストが変わるため、予算編成が難しくなることがあります。
- メリット: このモデルでは、顧客は使用した分だけ支払えばよいため、財政面で効率的です。
フリーミアム
このモデルでは、基本的なサービスは無料で提供されます。顧客には、高度な機能を有料で利用できるオプションが提供されます。B2C (企業対消費者) SaaS 製品でよく見られるこのモデルのポイントは、アップセルの前に熱心なユーザーを獲得できることです。- メリット: 契約障壁が低いため、広く普及します。
- デメリット: 無料ユーザーから有料ユーザーへのコンバージョン率が低い場合があり、収益に影響します。
- メリット: 契約障壁が低いため、広く普及します。
ハイブリッド
このモデルは、他の請求モデルのさまざまな要素を組み合わせたものです。SaaS 企業は、基本サービスを定額で提供し、使用量や追加機能に応じて追加料金を請求する場合があります。- メリット: カスタマイズが可能で、顧客の幅広いニーズに対応できます。
- デメリット: 複雑であるため、顧客は自分が何に対して支払っているのかを把握しにくくなります。
- メリット: カスタマイズが可能で、顧客の幅広いニーズに対応できます。
それぞれの請求モデルにメリットとデメリットがあり、それぞれが特定の種類のサービスや顧客のニーズに適しています。SaaS 企業は、自社のサービス内容や対象となる顧客に最も合った請求モデルを選択する必要があります。
SaaS 請求の機能
アカウント管理
この機能により、企業と顧客はやり取りのさまざまな側面を、一元化された場所からコントロールできます。顧客はこの場所で、個人情報の更新、利用状況の確認、サービスレベルの調整を行うことができます。企業にとってこの場所は、顧客データ、支払い履歴、サービス段階の詳細のリポジトリーであり、迅速な意思決定と、対象を絞ったやり取りが可能です。インボイスの自動作成
使用状況の指標や決まった期間に基づいてインボイスを作成することで、請求プロセスを自動化します。コスト計算、インボイスの発行、支払いの追跡など、手作業のステップを省くことができます。顧客には、自動請求とともに料金明細が通知されるという利便性がもたらされます。ペイメントゲートウェイ
取引を処理する連携システムであり、クレジットカード、銀行振込、デジタルウォレットなど、さまざまな支払い方法に対応しています。ペイメントゲートウェイによって、企業は支払いの回収を一元化し、口座の照合を容易に行うことができます。一方、顧客は希望する方法で柔軟に支払うことができます。料金とプランの管理
この管理ダッシュボードまたはインターフェイスを使用すると、企業は複数の料金プランまたは段階的料金を設定、管理し、新しい料金戦略を容易に導入できます。顧客は自分のニーズに合ったプランを選ぶことができます。税額計算
この機能により、関連のある税金が自動的に計算され、顧客のインボイスに追加されます。これにより、企業は、適用される税金を手作業で決定するという煩わしさをなくすことができます。通貨換算
複数の国で事業を展開する SaaS 企業については、この機能で価格を顧客の現地通貨に自動換算できます。これにより、顧客はコストを把握しやすくなります。一方、企業は通貨レートを何度も更新する必要がなく、グローバルな事業展開を実現できます。督促管理
督促管理では、支払いの失敗や遅延に対応します。たとえば、支払いの失敗や遅延を顧客に通知したり、支払い回収を再試行したりするプロセスを自動化します。企業にとっては、これにより売上の回収状況が改善します。一方、顧客には、支払いの問題を解決する機会が提供されます。レポート機能と分析
この機能は、顧客行動、売上の動向、解約率に関する有益なインサイトを提供します。企業は、このデータを活用して、マーケティング活動の対象を絞り、戦略を調整することができます。法令遵守の管理
この機能により、すべての決済処理とデータ保存が、データセキュリティと金融取引に関する現地法と国際基準に確実に準拠するようになります。これにより、監査や法的な精査の際に、企業と顧客の両方が保護されます。利用者への通知
これにより、利用者は、支払いの成功、取引の失敗、次回の更新など、アカウントに関する重要なアクティビティーの情報を常に把握しておくことができます。透明性を確保することで信頼を構築し、長期的な顧客関係を維持することができます。
これらの機能それぞれが、企業と顧客のニーズを満たす強力で柔軟な SaaS 請求システムの実現に貢献しています。
SaaS 請求管理のベストプラクティス
詳細なレポート
ユーザーエンゲージメント、支払い履歴、サービス段階に関するデータポイントを収集、分析して、顧客の行動パターンを特定します。この情報は、データに基づいて価格調整を決定したり、対象を絞ったコミュニケーションを行ったりするのに役立ちます。請求の一元化
サブスクリプションから 1 回限りの支払いまで、すべての収益源を統合請求システムで管理します。この統合により、財務報告が簡素化され、データの正確性が向上します。リアルタイム更新
アカウントのステータス、使用状況、またはサービスレベルの変更が、即座に請求システムに反映されるようにします。さまざまな部門間でデータをリアルタイムに同期させることにより、顧客満足度を高めながら、インボイスに関する問題が発生するのを防ぐことができます。顧客とのコミュニケーション
請求の変更やアクションに関して、明確で透明性のあるコミュニケーションを優先します。次回の更新、支払いの成功、取引の失敗について迅速に通知することで、顧客との間に強い信頼関係が培われ、支払いをうまく回収できる可能性が高まります。複数段階の認証
請求関連の変更や、アカウント解約などの機密性の高いアクションに対して、複数レベルの認証を導入します。これにより、不正行為のリスクを最小限に抑え、データの完全性を確保できます。データセキュリティ
請求情報を保存する際には、最高水準の暗号化とデータ保護を優先します。インボイスのカスタマイズ
関連するビジネス詳細やブランディング要素を使ってインボイスをカスタマイズする機能を顧客に提供します。これによりブランドの一貫性を高めながら、顧客体験を向上させることができます。幅広い決済手段に対応する
さまざまな支払い方法を提供し、多様な顧客基盤に対応します。請求サイクルの柔軟性
顧客が請求サイクル (月ごと、四半期ごと、1 年ごと) を選択できるようにします。顧客の好みに対応することは、定着率の向上につながります。トレーニングとサポート
スタッフが請求プラットフォームを効果的に管理するためのスキルと知識を習得できるようにします。社内コンピテンシーを高めることで、業務が円滑に進み、ミスやエラーが減ります。顧客からのフィードバックの収集
請求体験に関して顧客にフィードバックを求めます。この率直な意見に基づいて、プロセスを必要に応じて調整します。災害復旧計画
データ損失やシステム停止などのシナリオを想定した緊急時対応計画を用意します。バックアップと復旧に関する詳細な戦略により、厄介な不測の事態による影響を最小限に抑えることができます。パフォーマンスの監査
請求システムのパフォーマンス監査を定期的に実施し、非効率な点や改善すべき点を特定します。これを行動計画によってフォローアップし、最適化を継続的に行います。
これらのベストプラクティスに従うことで、SaaS 請求管理の効果を高め、財務報告の改善、顧客満足度の向上、顧客維持などを実現できます。
Stripe Billing と Stripe Invoicing の SaaS 請求対応
Stripe Billing と Stripe Invoicing は、企業の複雑な SaaS 請求業務に対応しています。ここでは、その仕組みをご紹介します。
売上回収の安定
SaaS ビジネスには、信頼できる一貫した収益源が必要です。Stripe ソリューションでは、継続請求を自動化する、顧客イベントを管理する、失敗した支払いの再試行を優先する、といった操作によって、収益フローの中断を軽減します。さらに、Stripe Invoicing を使用することで、企業はカスタムの見積もりを迅速に発送し、収入をより安定させるために売掛金管理を自動化できます。支払いの失敗と解約の最小化
SaaS ビジネスにとって、解約や支払いの失敗は大きな懸念材料であり、大幅な収入減につながる可能性もあります。Stripe は、失敗した請求を自動的に再試行し、カードネットワークと直接連携してカード詳細を更新するため、カードの期限切れやカード交換による支払い失敗を減らすことができます。柔軟な料金体系モデル
SaaS 企業は、柔軟性を維持するために、価格戦略を変更しなければならないことがよくあります。Stripe は、シンプルな定額料金から、複雑な段階的請求や従量課金体系まで、さまざまな請求モデルをサポートしています。このため、SaaS ビジネスは、請求システム全体を刷新することなく、価格モデルを、市場の需要やビジネス戦略に合わせて調整することができます。グローバルな展開と通貨の取り扱い
世界中の顧客をターゲットとする SaaS ビジネスでは、通貨の換算と取り扱いが課題となります。Stripe のソリューションは 135 以上の通貨をサポートしており、顧客や企業は好きな通貨を使用できます。このグローバルなサポートでは通貨関連の複雑な処理が不要で、市場へのリーチが拡大します。簡素化された財務報告
財務状況を把握するのは大変なことです。特に経常収益モデルの場合はなおさらです。Stripe には詳細な財務レポートが用意されており、SaaS ビジネスは、追加の会計ツールを使用せずに、売上の健全性を監視する、未払いのインボイスを追跡する、財務の成長軌道を把握する、などの作業を行うことができます。顧客体験と信頼
Stripe は、安全で使いやすい決済体験を提供することで、顧客からの信頼を高め、解約を減らします。
Stripe Billing の詳細と、Stripe Billing を利用して企業が自動化された統合 SaaS 請求システムを実現する方法をご覧ください。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。