ノルウェーへの進出は、特に人口の 98% がインターネットにアクセスできる EC にとって、ビジネス成長の大きな可能性を秘めています。ノルウェーで決済を受け付けたい企業は、北欧の近隣諸国の好みと似ていますが、ノルウェー特有の特徴を持つ現地の好みに気付くでしょう。

以下では、ノルウェーの決済市場でビジネスが成功する方法をご紹介します。

• 非接触型決済の普及
  
• 決済体験を向上させる
  
• オンライン決済の保護
  

市場の状況

ノルウェーの顧客は、デジタルと非接触型の決済にさらにシフトしています。ノルウェーは、1 人あたりの 決済カード年間使用率が世界で最も高い国 の 1 つです。デジタル導入は、POS (販売時点情報管理) とオンライン取引に使用される全国決済カードスキームである BankAxept の普及と、ノルウェークローネ (NOK) での モバイル決済 アプリの広範な導入によって促進されました。

ノルウェーは欧州連合に加盟していませんが、一般データ保護規則 (GDPR) などの EU 標準と規制が一致しているため、特に 国際取引 に関しては、ヨーロッパ全土で事業を展開する企業に調和のとれた決済体験がもたらされます。ノルウェーがこれらの規制を遵守することで、金融取引における信頼性とセキュリティに対する評判が一層高まります。

ノルウェーの中央銀行であるノルウェー銀行は、ノルウェーの金融安定性を維持するために不可欠であり、ノルウェー金融監督庁 (Finanstilsynet) は、同国の銀行および金融サービスの健全性を注意深く監視および規制しています。

決済手段

技術の進歩、消費者の選好の変化、規制ガイドラインにより、現金の重要性が薄れつつある現代の決済環境が生まれています。ここでは、ノルウェーで普及している決済手段を詳しく見ていきます。

現在の使用状況

近年、ノルウェーでは現金の使用が低下しています。Norges Bank の 2022 年調査によると、直近の POS 取引で 現金を使用したと回答したノルウェー人はわずか 3% でした。この年、非接触型決済 が主流となり、POS 取引の 86% を占めました。また、オンラインショッピングや海外旅行をする人が増えるにつれて、国際カードの人気も高まっており、同調査によると、国際クレジットカードを使用したカード取引の割合は 2021 年の 37% から 2022 年には 43% に増加しています。

Norges Bank によると、2021 年から 2022 年にかけて モバイルウォレットの取引件数も 133% 増加しており、ノルウェー人がモバイル決済に抱く信頼と利便性が高まっていることがうかがえます。Vipps のようなデジタルバンキングプラットフォームとモバイル決済アプリは、オンラインと店舗でのピアツーピア決済機能と迅速な非接触型決済を提供し、キャッシュレスオプションの普及を促す上で重要な役割を果たしてきました。2022 年、Vipps は デンマークのモバイル決済アプリ MobilePay と合併し、Vipps MobilePay を設立しました。

ノルウェーで人気の B2C 決済手段

• クレジットカードおよびデビットカード (例: BankAxept)
  
• モバイル決済 (例: Vipps)
  
• 銀行送金
  
• 後払い (例: Klarna)
  

ノルウェーで人気の B2B 決済手段

• クレジットカード
  
• 銀行送金
  
• 口座振替
  

新たなトレンド

ノルウェーは、世界的な暗号資産の波から免れていません。2023 年のレポートによると、ノルウェー人の約 8% が暗号資産を所有 しており、その所有率は他のヨーロッパ諸国と同様です。39 歳以下のノルウェー人は、株式よりも暗号資産を多く所有しています。しかし、ノルウェー政府は慎重な暗号資産政策を施行しており、暗号資産は法定通貨ではなく、キャピタルゲイン税の対象となる資産と見なされています。

参入のしやすさと課題

ノルウェーにビジネスを拡大するには、税金、決済の不審請求の申し立て、国際決済、決済のセキュリティ に関する独自の考慮事項が必要です。以下で簡単にご紹介します。

税制

ノルウェーでは、商品およびサービスに対する標準付加価値税 (VAT) の税率は 25% ですが、食品や飲料など特定の商品には 15% の軽減税率が適用されます。顧客は購入価格の一部としてこの税金を決済しますが、企業は税金を徴収してノルウェー税務当局に納付する必要があります。企業側でこれを怠ると、多額の罰則が科せられる可能性があります。

チャージバックと不審請求の申し立て

ノルウェーの 消費者購入法 は、さまざまな状況 (商品またはサービスが未提供、商品またはサービスが想定基準を満たしていないなど) で、顧客に不審請求を申し立てる権利を認めています。顧客は請求を検証する必要がありますが、消費者保護を優先するヨーロッパの指令に従って、この制度は企業に立証責任を負わせています。

改正決済サービス指令 (PSD2) を遵守するには、強力な顧客認証 (SCA) も必要です。SCA を使用すると、ほとんどのオンライン購入に 2 段階認証が必須となり、不審請求の申し立て時に追加の反証資料を企業に提出できるため、企業は不正取引を防止するための体制が整います。

国際決済

ノルウェー市場で国際の B2B または B2C 決済を受け付ける場合、通貨換算と 国際取引 の仕組みを理解することが重要です。以下で、知っておくべきことをご紹介します。

• 通貨換算
  ノルウェーの国際決済では通貨換算が必要になることがよくあります。これは、特にノルウェーはヨーロッパの多くの国ほどユーロを使用しておらず、追加料金が料金戦略や利益率に影響を与える可能性があるためです。Stripe のようなノルウェーで広く使用されているプラットフォームは、競争力のあるレートで通貨換算サービスを提供しているため、企業は国際決済を簡単に受け付けることができます。

• 透明性の高い換算手数料
  ノルウェーの金融機関は、通貨換算に関連する手数料やマークアップについて明確な情報を提供し、ビジネスと顧客が請求される内容の全体像を把握できるようにする必要があります。

• 複数通貨機能
  ユーロなど、NOK 以外の通貨で決済オプションを提供することで、現地通貨での価格表示を希望する海外の顧客の障壁を減らすことができます。決済ゲートウェイ を多通貨機能と統合することで、企業と顧客の両方にとってこのプロセスがシンプルになります。

セキュリティとプライバシー

ノルウェーには、強力な決済セキュリティ規制があります。欧州経済領域 (EEA) のメンバーであるノルウェーは、EU のガイドラインを多数採用しています。ノルウェーのアプローチは、現代の金融手法に対応しており、ユーザーのセキュリティと透明性に重点を置いています。以下でその概要をご紹介します。

• データ保護法
  ノルウェーは、厳格なデータ保護基準を義務付ける GDPR を遵守しています。組織は、個人データを収集し、リクエストに応じてデータ削除を提供する前に、ユーザーから明示的な同意を得る必要があります。ノルウェーデータ保護当局は、GDPR の法令遵守を監督しています。

• SCA
  ノルウェーでも PSD2 が採用されています。この指令のコアコンポーネントは SCA であり、ほとんどの電子決済に 2 段階認証が義務付けられています。SCA は、PIN (個人識別番号)、1 回限りのパスコード、指紋スキャンなどの身分証明を組み込むことで取引のセキュリティを強化しています。

• マネーロンダリング防止 (AML) ガイドライン
  ノルウェーのマネーロンダリング防止およびテロ資金供与防止 (CFT) 基準は、金融犯罪の防止と違法資金の追跡を目的とした欧州の広範な指令に準拠しています。金融機関は、徹底した顧客デューデリジェンスを実施し、疑わしい取引をノルウェーの金融情報部門に報告する必要があります。

• 金融監督庁の役割
  ノルウェー金融監督庁は、銀行、決済代行業者、およびその他の金融機関がノルウェーの規制枠組み内で運営されていることを確認するために、同国の金融機関を監督しています。同庁は、金融トレンドやテクノロジーの発展に合わせてガイドラインを継続的に見直し、更新しています。

成功のカギ

ノルウェーは決済改善の最前線に立っていますが、グローバル経済における動的な決済システムの近代化と維持には複雑な課題が内在しています。ここでは、ノルウェーで決済を受け付ける企業が適応する方法をいくつか紹介します。

• 非接触型決済インフラ
  ノルウェーでは非接触型決済が急増しており、2022 年には約 1,250 万枚の非接触型カード が流通しています\。非接触型カードからモバイル決済アプリまで、企業は対面とオンラインでさまざまな非接触型決済手段を受け付ける準備をする必要があります。

• モバイル適応性
  EC の台頭は、モバイルショッピングの台頭にもつながっています。スマートフォンで適切に機能するようにビジネスのウェブサイトと決済ページを設計することで、スマートフォンで取引を完了することを好む顧客にサービスを提供できます。

• 厳格な法令遵守
  ノルウェーは多くの EU 規制に準拠しているため、規制環境はより複雑になる可能性があります。この市場で事業を展開する企業は、ノルウェーが従う EU 規則とノルウェー独自の基準の両方を理解して、法令遵守を維持することが重要です。

• 強力な不正利用検出および防止ツール
  世界の多くの国と同様に、ノルウェーでもここ数年、デジタル不正利用のケースが増加しています。金融監督庁によると、2024 年上半期の不正カード使用による総損失 は 1 億 9,300 万ノルウェー・クローネ (NOK) でした。ノルウェーがデジタル取引とカードベースの取引に移行する中、企業と顧客を保護するために、3D セキュアなどの高度な不正利用検出メカニズムに投資する必要があります。

重要なポイント

ノルウェーの決済インフラは EU のインフラと複雑に絡み合っていますが、企業は現地市場の微妙な選好に特に注意を払う必要があります。これらの微妙な違いを活用することで、ノルウェーの顧客の決済体験を向上させることができます。ここでは、ノルウェーで決済を受け付けるためのヒントとともに、まとめを紹介します。

非接触型決済を取り入れる

• BankAxept を活用
  ノルウェーの国内決済カードである BankAxept は広く使用されています。この現地システムに関連する信頼からメリットを得るには、決済オプションとして BankAxept を提供してください。

• Vipps 決済を導入
  モバイル決済アプリ Vipps は、ノルウェーの顧客に使い慣れたスムーズな決済体験を提供できます。現地のモバイル決済アプリや、Apple Pay や Google Pay などの一般的なグローバルデジタルウォレットに対応するペイメントゲートウェイを選択 してください。

• 適切な決済端末を使用
  対面決済を受け付ける場合は、決済端末が非接触型決済に対応していることを確認してください。タップ決済 を受け付けることで、待ち時間が短縮され、取引速度が向上します。

決済体験の向上

• 現地化した顧客サポートを提供する
  ノルウェーのようなデジタル先進国であっても、現地語でリアルタイムの顧客サポートを提供することで大きな違いが生まれます。決済インターフェイスを翻訳し、ノルウェー語でサポートを提供することで、言語の壁によって決済プロセスが中断されないようにします。

• 返金と返品について明確にする
  ノルウェーの消費者購買法に準拠した明確な返金および返品ポリシーにより、顧客の信頼を得ることができます。企業のルールを透明性の高い方法で伝えることで、潜在的な紛争の可能性を最小限に抑え、コンバージョン率を高めます。

• 通貨の柔軟性を考慮
  ノルウェーでは国際観光業が一般的であり、国際 B2B 取引も同様です。多通貨での決済オプションを提供することで、自国通貨での決済を希望する海外の顧客にサービスを提供できます。

オンライン決済を保護

• 安全なペイメントゲートウェイを選択
  安全な決済は、クレジットカード詳細などの財務情報を暗号化して安全に送信できる ペイメントゲートウェイ から始まります。ペイメントゲートウェイは慎重に選択し、企業のあらゆるセキュリティニーズを満たしていることを確認してください。

• カード決済を認証
  3D セキュア認証 などの不正利用防止ツールを使用すると、決済を遅くしたり、顧客を不便にしたりすることなく、オンライン決済セキュリティシステムを強化できます。これらのプロトコルを実装して、EC 取引に保護レイヤーを追加します。

• 不正利用防止対策を定期的に更新
  不正利用の検出と防止システムの定期的な更新と、安全な決済手段に関する顧客教育を組み合わせることで、信頼できる決済環境を維持することができます。